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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W01 審判 全部申立て 登録を維持 W01 審判 全部申立て 登録を維持 W01 審判 全部申立て 登録を維持 W01 審判 全部申立て 登録を維持 W01 審判 全部申立て 登録を維持 W01 |
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管理番号 | 1371037 |
異議申立番号 | 異議2020-900234 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-09-18 |
確定日 | 2021-02-15 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6264493号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6264493号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6264493号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示したとおりの構成からなり、平成31年4月3日に登録出願、第1類「化学品,工業用のり及び接着剤,植物成長調整剤類,肥料,陶磁器用釉薬,塗装用パテ,高級脂肪酸,非鉄金属,非金属鉱物,写真材料,試験紙(医療用のものを除く。),人工甘味料,工業用粉類,原料プラスチック,パルプ」を指定商品として、令和2年6月17日に登録査定され、同月30日に設定登録されたものである。 2 引用商標等 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(7)のとおり(引用商標1ないし引用商標7をまとめて「引用商標」という場合がある。)であり、また、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する商標は、以下の(8)のとおりである。 (1)登録第3190205号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成5年8月23日に登録出願、第1類「化学品,植物成長調整剤類,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),高級脂肪酸,非鉄金属,非金属鉱物,原料プラスチック,パルプ,工業用粉類,肥料,写真材料,試験紙,人工甘味料,陶磁器用釉薬」を指定商品として、同8年8月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (2)登録第3305935号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成5年8月23日に登録出願、第2類「塗料,染料,顔料,印刷インキ,絵の具,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の非鉄金属はく及び粉,塗装用・装飾用・印刷用又は美術用の貴金属はく及び粉,防錆グリース,壁紙剥離剤,媒染剤,木材保存剤,カナダバルサム,コパール,サンダラック,シェラック,松根油,ダンマール,マスチック,松脂」を指定商品として、同9年5月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (3)登録第3305936号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成5年8月23日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,かつら装着用接着剤,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」を指定商品として、同9年5月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (4)登録第3305937号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成5年8月23日に登録出願、第4類「工業用油,工業用油脂,燃料,ろう,靴油,固形潤滑剤,保革油,ランプ用灯しん,ろうそく」を指定商品として、同9年5月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (5)登録第5795777号商標(以下「引用商標5」という。)は、「三洋化成工業」の文字を標準文字で表してなり、平成27年3月30日に登録出願、第1類「工業用化学品,界面活性剤,燃料用又は潤滑油用化学添加剤,潤滑油の粘度指数を向上させるための添加剤,可塑剤,金属表面処理剤,工業用抗菌剤,樹脂改質剤,抄紙工程の歩留・濾水性向上剤,消泡剤,洗剤配合用酵素,帯電防止剤(家庭用のものを除く。),乳化剤,分散剤,水性液体吸収剤,食品用保水剤,土壌保水剤,エッチング剤,セメント混和剤,凝集剤,顕色剤,硬化剤,紫外線遮蔽用コーティング剤,精練助剤,染色助剤,電解液,難燃剤,剥離剤,防水剤,離型剤,粘着剤,工業用洗浄剤,フォトレジスト,感光剤,アクリル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,合成樹脂,吸水性プラスチックス(原料プラスチックスに当たるものに限る。),吸水性樹脂」並びに、第2類、第3類、第4類、第5類、第10類及び第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年10月2日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (6)登録第5795779号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成27年3月30日に登録出願、第1類「工業用化学品,界面活性剤,燃料用又は潤滑油用化学添加剤,潤滑油の粘度指数を向上させるための添加剤,可塑剤,金属表面処理剤,工業用抗菌剤,樹脂改質剤,抄紙工程の歩留・濾水性向上剤,消泡剤,洗剤配合用酵素,帯電防止剤(家庭用のものを除く。),乳化剤,分散剤,水性液体吸収剤,食品用保水剤,土壌保水剤,エッチング剤,セメント混和剤,凝集剤,顕色剤,硬化剤,紫外線遮蔽用コーティング剤,精練助剤,染色助剤,電解液,難燃剤,剥離剤,防水剤,離型剤,粘着剤,工業用洗浄剤,フォトレジスト,感光剤,アクリル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,合成樹脂,吸水性プラスチックス(原料プラスチックスに当たるものに限る。),吸水性樹脂」並びに、第2類、第3類、第4類、第5類、第10類及び第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年10月2日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (7)登録第6067713号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲4のとおりの構成からなり、平成29年11月7日に登録出願、第1類「化学品,工業用化学品,界面活性剤,燃料用又は潤滑油用化学添加剤,潤滑油の粘度指数を向上させるための添加剤,可塑剤,金属表面処理剤,工業用抗菌剤,樹脂改質剤,抄紙工程の歩留・濾水性向上剤,消泡剤,洗剤配合用酵素,帯電防止剤(家庭用のものを除く。),乳化剤,分散剤,即効性水分吸収剤,土壌保水剤,食品用保水剤,エッチング剤,セメント混和剤,凝集剤,顕色剤,硬化剤,紫外線遮蔽用コーティング剤,精練助剤,染色助剤,電解液,難燃剤,剥離剤,防水剤,離型剤,殺菌剤用添加剤,殺菌剤製造用の化学助剤,工業用のり及び接着剤,建築用のり及び接着剤,のり及び接着剤製造用のポリマー樹脂,粘着剤,工業用洗浄剤,フォトレジスト,感光剤,原料プラスチック,未加工アクリル樹脂,未加工ポリウレタン樹脂,未加工ポリエステル樹脂,未加工エポキシ樹脂,合成樹脂,吸水性プラスチックス(原料プラスチックスに当たるものに限る。),吸水性樹脂」を指定商品として、同30年8月3日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 (8)申立人が、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するとして引用する商標(引用商標8)は、申立人に係る商標である「三洋化成」の文字を横書きしてなるものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8項、同項第10号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第73号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第8号 ア 申立人の略称の著名性について 申立人は、生活・健康産業関連製品、石油・輸送機産業関連製品、高機能・高付加価値なプラスチック産業関連製品、繊維産業関連製品、情報・電気電子産業関連製品、環境・住設産業関連製品などの多岐にわたる化学製品を製造販売する総合化学メーカーであり(甲9)、1949年に創業、1963年に三洋化成工業株式会社に社名変更した。現在は、国内外に23社の関係会社を有し、連結売上高1555億円の東証一部上場企業である。 申立人は、1949年の創業から71年間、ポリウレタンフォーム原料及びポリエチレングリコールの開発を契機とし、潤滑油添加剤、ウレタン樹脂エマルション、ウレタンビーズ、臨床検査薬、製造専用医薬品、高吸水性樹脂、医療機器、化粧品原料と、その製品開発分野を広め、技術開発の発展と併せて、申立人の略称として「三洋化成」の名称が広く知られるようにとなった。 (ア)申立人による使用 申立人は、継続して、自社の略称として「三洋化成」を使用してきた(甲10?甲13)。2019年に創立70周年を迎えるにあたり、社章及びコーポレート・ロゴをリニューアルし(甲14)、長期にわたって使用してきた略称「三洋化成」を正式に通称社名として採用した(甲15)。 (イ)新聞掲載 申立人の業績や事業開発、企業活動等を報じる新聞記事(甲16?甲68)において、業界紙も一般紙も含め、申立人を「三洋化成」なる略称で掲載している。 (ウ)雑誌掲載 1997年発行の日経ビジネスの掲載記事(甲69)において、申立人の経営を取り上げた際は、その表紙でも、申立人を「三洋化成」なる略称で記載している。 (エ)宣伝・広告 申立人は、新聞、雑誌、ラジオ、シンポジウム、鉄道、スポーツ界等で積極的な宣伝広告を行っている。2014年から2018年まで、数千万の広告掲載費用を費やして全国的な宣伝広告活動を行った(甲70)。 また、申立人は、鉄道施設における宣伝広告(甲71)、プロゴルファーのスポンサー(甲72、甲73)をしている。 (オ)以上の事実から、「三洋化成」は、申立人の著名な略称といえる。 イ 本件商標は、別掲1のとおり、緑色の略円図形と「株式会社長野三洋化成」の文字とを結合して構成したもので、申立人の著名な略称である「三洋化成」の文字を含んでいるが、申立人はその商標登録を承諾していない。 したがって、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標であるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第11号 ア 本件商標について 本件商標は、緑色の略円図形と「株式会社長野三洋化成」の文字とを結合して構成したものであり、全体から「カブシキガイシャナガノサンヨウカセイ」の称呼が生じるが、簡易迅速を尊ぶ商取引の場においては、17音もの長い称呼で取引がなされるよりもむしろ、自他商品識別機能を発揮する構成を捉え、略称することが多い。 そして、本件商標は、文字部分の構成中「株式会社」は法人の組織形態を表す語にすぎず、また、「長野」の文字は地名若しくはありふれた氏を示す識別力のない語である。 したがって、本件商標は、その構成中「三洋化成」の文字が取引者・需要者に対して出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分、すなわち要部といえるから、上記称呼のほかに、「サンヨウカセイ」の称呼をも生じる。 イ 引用商標について 引用商標1ないし引用商標4は、上段に大きく表された「三洋化成」の文字の下に小さく「工業株式会社」の文字が配され、かかる文字部分の横に略六角形の図形が付された構成からなるもので、「三洋化成」の文字部分が大きく目立つ構成であり、さらに、それら構成中の「工業株式会社」の文字は、識別力がない又は極めて弱い語であるから、「サンヨウカセイ」の称呼が生じる。 また、引用商標5は、「三洋化成工業」を標準文字で表してなるところ、「工業」の文字部分は識別力がない又は極めて弱い語であるから、「サンヨウカセイ」の称呼が生じる。 さらに、引用商標6及び引用商標7は、上段に大きく表された緑色の「三洋化成」の文字の下に小さく「工業株式会社」の文字が配され、上段の文字部分が大きく日立つ構成となっているもので、また、その構成中「工業株式会社」は識別力がない又は極めて弱い語であるから、「サンヨウカセイ」の称呼が生じる。 加えて、「三洋化成」は申立人の略称として広く知られているから、引用商標の構成中の「三洋化成」の文字部分には大きな信用が化体し、非常に強い識別力があるから、当該文字部分を要部として、「サンヨウカセイ」の称呼を自然に生じる。 ウ 本件商標と引用商標の類否 以上を踏まえると、本件商標と引用商標は、全体の外観は相違し、観念において比較できないが、「サンヨウカセイ」の称呼を共通にする。 したがって、本件商標は、引用商標とは、出所混同を生じるほどに類似する。 エ まとめ 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは類似し、その指定商品も抵触するから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第10号 引用商標8は、申立人の著名な略称「三洋化成」と実質的に同一であるから、化学製品の取引者、需要者の間で、広く知られているといえる。 そして、本件商標は、「カブシキガイシャナガノサンヨウカセイ」の称呼のほか、「サンヨウカセイ」の称呼をもって取引に資されるから、「サンヨウカセイ」の称呼を生じる引用商標8とは、その称呼において類似する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第15号 引用商標8と、申立人の著名な略称「三洋化成」とは実質的に同一であり、化学製品の取引者、需要者の間で、申立人の標章として広く知られるに至っている。 そして、本件商標は、「カブシキガイシャナガノサンヨウカセイ」の称呼のほか、「サンヨウカセイ」の称呼をもって取引に資されるから、「サンヨウカセイ」の称呼を生じる引用商標8とは、称呼において共通し、類似する。 したがって、引用商標8の周知・著名性や、本件商標と引用商標8との類似性を踏まえると、本件商標権者によって本件商標が使用された場合には、その商品が申立人に係る商品又は申立人と経済的・組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると取引者・需要者において誤認混同を生じる蓋然性が高い。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (5)その他 申立人は、引用商標を、事業会社の重要商標として使用を継続する予定である。 4 当審の判断 (1)「三洋化成」及び引用商標8の周知性について ア 申立人の提出証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。 (ア)申立人は、有機合成薬品や石油化学製品等の化学製品を取り扱う会社であり、1963年に三洋化成工業株式会社に社名変更、複数の関係会社を含めた連結売上高は1555億円である(甲9、甲10)。 (イ)申立人は、1963年より「三洋化成ニュース」と称する自社の広報誌などを発行(甲10?甲13)、2019年2月には、申立人の通称社名として「三洋化成」の略称を採用することを新聞等を通じて公表している(甲14、甲15)。 申立人は、同社の活動内容を紹介する新聞記事や雑誌記事の見出し等において、「三洋化成」と略称されることもあるが、多くの記事の本文中には申立人を特定するために「三洋化成工業」の記載がある(甲16?甲69)。 (ウ)申立人は、雑誌や新聞等の広告掲出費用として、年間1千万円から2千5百万円(2014年?2018年)程度を支出している(甲70)とされるが、2019年4月以降の鉄道施設における「三洋化成」の文字を表示した宣伝広告(甲71)、「三洋化成」の文字を服に表示するプロゴルファーによるスポンサー広告(甲72、甲73)を除いて、具体的な広告内容(「三洋化成」の文字の周知性の向上に寄与する広告手法)は不明である。 イ 以上を踏まえて検討すると、申立人は50年以上にわたる、化学製品(有機合成薬品や石油化学製品等)の製造、販売実績があり、新聞・雑誌等の記事においては、その見出しに「三洋化成」の文字が使用されているとしても、記事の本文では、申立人の略称として「三洋化成工業」の文字が主に使用されており、「三洋化成」の文字単独で申立人を特定する記事は多くはないこと、申立人が自己の通称を「三洋化成」とすることを決定公表したのも2019年2月と比較的最近(本願商標の出願日の2月前)であること、申立人の広告宣伝費も多額とは評価し難いこと、それら広告が「三洋化成」の文字を使用していることはうかがえるものの、当該文字の周知性の向上に寄与する程度も明らかではないこと、申立人の商品について「三洋化成」の文字からなる引用商標8を使用する具体的態様や当該商標を付した製品の売上規模も不明であることを考慮すれば、「三洋化成」の文字は、「三洋化成工業」の文字と併せて、我が国における化学製品等を取り扱う一部の事業者の間において、申立人の略称としてある程度認知されているとしても、「三洋化成」の文字単独で、申立人の略称又はその業務に係る商品に係る商標として、我が国の需要者及び取引者の間において広く知られるに至っているとは認められない。 したがって、「三洋化成」の文字及び当該文字からなる引用商標8は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の略称又はその業務に係る商品(化学製品等)を表示するものとして、我が国の需要者の間で、広く認識され、著名となるに至っているとは認められない。 (2)商標法第4条第1項第8号 本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、その構成中に「株式会社長野三洋化成」の文字を有してなるものである。 そして、本件商標は、その構成文字に「三洋化成」の文字を含むが、当該文字は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の略称として広く知られ、著名となるに至っているものとは認められない。 そうすると、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標ではなく、商標法第4条第1項第8号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第10号 ア 申立人が引用する引用商標8(三洋化成)は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間で、広く認識されている商標ではない。 イ したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間において広く認識されている商標とはいえない引用商標8と、商標が同一又は類似といえるかを検討するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第11号 ア 本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、緑色の楕円状の図形の右側に「株式会社長野三洋化成」の文字を表してなるところ、図形部分と文字部分は、その配置及び構成要素の差異から、視覚上分離して認識されるもので、両者を一体不可分のものとして把握すべき事情もないため、それぞれが独立して自他商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものである。 そして、本件商標の構成中「株式会社長野三洋化成」の文字部分は、同種文字を、同じ書体、大きさで、横一列にまとまりよく表してなるもので、構成文字全体をして法人(株式会社)の名称を表してなるものと認識、理解できるものの、「株式会社」の文字部分は、法人の種別(株主が組織する有限責任会社)を表すものであるから、自他商品の出所識別標識としての称呼、観念が生じない文字部分である。 したがって、本件商標は、その構成文字全体から生じる「カブシキガイシャナガノサンヨウカセイ」の称呼に加えて、「ナガノサンヨウカセイ」の称呼をも生じるが、特定の観念は生じない。 イ 引用商標について (ア)引用商標1ないし引用商標4は、別掲2のとおり、六角形状の枠内の下部に「S」のような模様を配置した図形の右側に、「三洋化成」の文字及び「工業株式会社」の文字を上下二段(上段の文字は下段の文字より大きい)に横書きした構成からなるところ、図形部分と文字部分は、その配置及び構成要素の差異から、視覚上分離して認識されるもので、両者を一体不可分のものとして把握すべき事情もないため、それぞれが独立して自他商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものである。 そして、引用商標1ないし引用商標4の構成中、「三洋化成」及び「工業株式会社」の文字部分は、文字の大きさが異なるものの、同種文字を、上下二段に近接してまとまりよく表してなるもので、構成文字全体をして法人(株式会社)の名称を表してなると認識、理解できるものの、「株式会社」の文字部分は、法人の種別を表すものであるから、自他商品の出所識別標識としての称呼、観念が生じない文字部分である。 したがって、引用商標1ないし引用商標4は、その構成文字全体から生じる「サンヨウカセイコウギョウカブシキガイシャ」の称呼に加えて、「サンヨウカセイコウギョウ」の称呼をも生じるが、特定の観念は生じない。 (イ)引用商標5は、「三洋化成工業」の文字を標準文字で表してなるところ、同種文字を、同じ書体、大きさで、横一列にまとまりよく表してなるから、構成文字全体をして特定の意味を有さない造語を表してなるものと認識、理解できる。 したがって、引用商標5は、その構成文字に相応して「サンヨウカセイコウギョウ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。 (ウ)引用商標6は、別掲3のとおり、「三洋化成」の文字及び「工業株式会社」の文字を上下二段(上段の文字は下段の文字より大きい)に表した構成からなるところ、同種文字を、上下二段に近接してまとまりよく表してなるもので、構成文字全体をして法人(株式会社)の名称を表してなると認識、理解できるものの、「株式会社」の文字部分は、法人の種別を表すものであるから、自他商品の出所識別標識としての称呼、観念が生じない文字部分である。 したがって、引用商標6は、その構成文字全体から生じる「サンヨウカセイコウギョウカブシキガイシャ」の称呼に加えて、「サンヨウカセイコウギョウ」の称呼をも生じるが、特定の観念は生じない。 (エ)引用商標7は、「三洋化成」の文字を横書きしてなるところ、構成文字全体をして特定の意味を有さない造語を表してなるものと認識、理解できる。 したがって、引用商標7は、その構成文字に相応して「サンヨウカセイ」の称呼が生じるが、特定の観念は生じない。 ウ 本件商標と引用商標の比較 (ア)本件商標と引用商標1ないし引用商標4及び引用商標6を比較すると、外観においては、一部の構成文字(「三洋化成」、「株式会社」)が共通するとしても、全体としては、構成文字が相違し、異なる法人名称を表してなると理解できるもので、図形部分の差異又は有無も相まって、互いに紛れるおそれはなく、また、称呼においては、一部の構成音(「サンヨウカセイ」、「カブシキガイシャ」)が共通するとしても、全体の構成音や音数が明らかに相違するため、互いの印象は異なるもので、観念においては比較できない。 したがって、本件商標は、引用商標1ないし引用商標4及び引用商標6とは、外観、称呼及び観念のいずれも相紛れるおそれはないから、類似する商標とはいえない。 (イ)本件商標と引用商標5を比較すると、外観においては、一部の構成文字(「三洋化成」)が共通するとしても、全体としては、構成文字が相違し、図形部分の有無も相まって、互いに紛れるおそれはなく、また、称呼においては、一部の構成音(「サンヨウカセイ」)が共通するとしても、全体の構成音や音数が明らかに相違するため、互いの印象は異なるもので、観念においては比較できない。 したがって、本件商標は、引用商標5とは、外観、称呼及び観念のいずれも相紛れるおそれはないから、類似する商標とはいえない。 (ウ)本件商標と引用商標7を比較すると、外観においては、一部の構成文字(「三洋化成」)が共通するとしても、全体としては、構成文字が相違し、図形部分の有無も相まって、互いに紛れるおそれはなく、また、称呼においては、一部の称呼(「サンヨウカセイ」)が共通するとしても、全体の構成音や音数が明らかに相違するため、互いの印象は異なるもので、観念においては比較できない。 したがって、本件商標は、引用商標7とは、外観、称呼及び観念のいずれも相紛れるおそれはないから、類似する商標とはいえない。 エ 申立人の主張 申立人は、本件商標及び引用商標1ないし引用商標6は、「三洋化成」の文字部分が強く支配的な印象を与える要部であること、その他の文字部分(「株式会社」、「長野」、「工業株式会社」、「工業」)は識別力がない又は極めて弱いこと、「三洋化成」は申立人の略称として広く知られているから、いずれからも「サンヨウカセイ」の称呼が生じる旨を主張する。 しかしながら、本件商標及び引用商標1ないし引用商標6は、上記ア及びイのとおり、構成中の文字部分のまとまりのよさから、特定の文字部分が強い印象を与えるものではなく、また、本件商標並びに引用商標1ないし引用商標4及び引用商標6は、構成文字全体が法人の名称を表してなるものと認識、理解できるもので、さらに、上記(1)のとおり、「三洋化成」は広く認識されている略称又は商標ではなく、当該文字部分のみが強く支配的な印象を与えるものではないから、「サンヨウカセイ」の称呼が生じるとはいえない。 オ 小括 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは、類似する商標ではないから、その指定商品について比較するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (5)商標法第4条第1項第15号 引用商標8は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品(化学製品)を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されているものではない。 また、引用商標8は、引用商標7と構成文字が共通するところ、上記(4)ウ(ウ)のとおり、本件商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれはなく、類似性の程度も極めて低い。 したがって、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品の関連性の程度に関わらず、本件商標に接する取引者、需要者が、引用商標8又は申立人の業務に係る商品との関連を具体的に連想又は想起することは考えにくく、また、当該商品が、申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。 したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ではないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (6)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものでないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標。色彩は原本を参照。) ![]() 別掲2(引用商標1ないし引用商標4) ![]() 別掲3(引用商標6。色彩は原本を参照。) ![]() 別掲4(引用商標7。色彩は原本を参照。) ![]() |
異議決定日 | 2021-02-02 |
出願番号 | 商願2019-46813(T2019-46813) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W01)
T 1 651・ 263- Y (W01) T 1 651・ 262- Y (W01) T 1 651・ 255- Y (W01) T 1 651・ 23- Y (W01) T 1 651・ 261- Y (W01) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 浦崎 直之、佐藤 緋呂子、谷口 洸太 |
特許庁審判長 |
半田 正人 |
特許庁審判官 |
阿曾 裕樹 大森 友子 |
登録日 | 2020-06-30 |
登録番号 | 商標登録第6264493号(T6264493) |
権利者 | 株式会社長野三洋化成 |
商標の称呼 | ナガノサンヨーカセー、サンヨーカセー、サンヨー |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |