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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X43
管理番号 1370965 
審判番号 取消2019-300606 
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-08-05 
確定日 2020-12-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5247915号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5247915号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5247915号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成20年11月27日に登録出願、第43類「日本料理を主とする飲食物の提供,西洋料理を主とする飲食物の提供,中華料理を主とする飲食物の提供,アルコール飲料を主とする飲食物の提供,茶・清涼飲料又は果実飲料を主とする飲食物の提供」を指定役務として、同21年7月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和元年8月22日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年8月22日から令和元年8月21日までの期間(以下「要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、被請求人のホームページに本件商標が表示され、当該表示は平成28年から継続して行われている旨主張し、その証拠として乙第1号証を提出している。
しかしながら、被請求人のホームページの「だん家の歩み」及び「ニュース&トピックス」によれば、被請求人は平成20年から本件商標を使用して、秋葉原店、本八幡店、日比谷店の3か所にて飲食物を提供していたところ、要証期間より前の、遅くとも平成28年5月には全店が閉店している(甲3及び甲4)。加えて、被請求人のホームページにおいて、被請求人が営む飲食店の各ブランドを紹介するストアコンセプトにおいて、本件商標及び本件商標を使用した飲食店の紹介が掲載されていない(甲5)。
これらの事実を踏まえると、乙第1号証に見られる本件商標は、要証期間以前に提供されていた役務に使用されていた標章が、削除されずに形式上残存しているにすぎないことは明白である。
よって、乙第1号証をもって、要証期間中に、被請求人によって、本件商標がその指定役務について使用されたとすることはできない。
(2)被請求人は、「串焼き いづも」と同コンセプトの「鍛冶屋 文蔵」の営業も行っており、両者は実質的に同ブランドとして認知されており、その商標を上記ホームページ上に並べて表示していることは、当然、商標の使用に該当する旨主張し、その証拠として乙第2号証を提出している。
しかしながら、乙第2号証は2009年(平成21年)6月21日付けの記事なので、要証期間中の本件商標の使用を証明するものではない。
また、「鍛冶屋 文蔵」は本件商標と社会通念上同一のものではないので、「鍛冶屋 文蔵」の営業事実をもって、本件商標が使用されているとする被請求人の主張は失当である。
なお、本件商標と「鍛冶屋 文蔵」とは明らかに非類似の商標であるから、両商標が実質的に同ブランドと認識されることも考えられない。
(3)さらに、被請求人は、2020年2月に新しいコンセプトの「串焼き いづも」をオープン予定であり、その計画及び準備を行っていたことは、商標の使用に該当する旨主張し、その証拠として乙第3号証及び乙第4号証を提出している。
しかしながら、乙第3号証は、出店予定とされる物件の紹介にすぎず、そこには、本件商標の表示はなく、提供される役務に関する記述も一切ない。乙第4号証は、株式会社藤田建装が作成した設計図面であり、被請求人が作成したものではない。さらに、当該図面は、本件商標の指定役務との関係において、商標法第2条第3項第8号に規定する「役務に関する広告、価格表若しくは取引書類」にも該当しない。
したがって、要証期間中に本件商標が被請求人によりその指定役務について使用されていたことは証明されていない。

第3 被請求人の答弁等
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次の1のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
また、当審において、令和2年5月19日付けで、提出された証拠からは要証期間内における本件商標の使用を確認することができない旨の審尋を送付したところ、これに対し、被請求人は、要旨次の2のように意見を述べ、証拠方法として乙第5号証ないし乙第8号証を提出した。
1(1)被請求人は、ホームページを開設しており、当該ホームページを開いてから数秒経過すると、乙第1号証に示すように、本件商標が表示される。上記表示は平成28年から継続して行われており、このホームページ上での登録商標の表示は、商標法第2条第3項第8号に規定される使用に該当する。
したがって、本件商標は、その指定役務について、継続して商標権者が使用しているので、商標法第50条第1項の規定による取消事由には該当しない。
(2)また、被請求人は、上記ホームページ上に表示される複数の飲食店ブランドを展開しているが、「串焼き いづも」と同コンセプトの「鍛冶屋 文蔵」の営業も行っている。実際、乙第2号証に示すように、需要者によっても「『串焼き いづも』と『鍛冶屋 文蔵』は実質的に同ブランド」として認知されている。
このように、需要者によって「実質的に同ブランド」として認知されている商標を上記ホームページ上に並べて表示していることは、当然、商標の使用に該当し、この点においても商標法第50条第1項の規定による取消事由には該当しない。
(3)さらに、被請求人は、「串焼き いづも」に関しては、新たなコンセプトでの営業も予定し、好適な店舗を探し求めていた。そして、2019年4月に三菱地所プロパティマネジメント株式会社から提案された「汐留ビルディング・ハマサイトグルメ」(乙3)は新たなコンセプトでの営業に好適だったので、「汐留ビルディング・ハマサイトグルメ」における開店を速やかに決定し、乙第4号証に示すように、2019年7月24日には新店舗レイアウトが完成している。このレイアウトに基づき、2020年2月に、新たなコンセプトの「串焼き いづも」をオープン予定である。
商標権者が、「串焼き いづも」の開店のために上記した具体的かつ積極的に計画及び準備を行っていたことは、当然、商標の使用に該当する。
したがって、具体的かつ積極的に計画及び準備を行っていた点においても、本件商標は、その指定役務について、商標権者により継続して使用されていたこととなり、商標法第50条第1項の規定による取消事由には該当しない。
2 審尋に対する意見
乙第5号証は、乙第1号証に示したホームページの作成に関する契約書である。2011年(平成23年)8月30日に、株式会社大塚商会(以下「大塚商会」という。)との間でホームページ作成に関する契約が締結されたことを示すものである。
乙第6号証は、乙第5号証に示すホームページ作成の契約が締結された後、平成23年10月25日に、大塚商会の100%子会社である株式会社ウェブスマート(以下「ウェブスマート」という。)から送られてきたデザイン確認書を示すものである。当該デザイン確認書は、料理写真は異なるが、全体としてのレイアウトや、「串焼き いづも」の表示等において、乙第1号証に示したホームページの原案であることは明らかである。
乙第7号証は、ウェブスマートが大塚商会の100%子会社であることを示すものである。
乙第8号証は、乙第1号証に示したホームページの「ニュース&トピックス」を示したものである。
乙第5号証及び乙第6号証により、平成23年10月25日から間をおかずにホームページが作成され、掲載されたことは明らかである。そして、乙第1号証に示すホームページが乙第6号証に示す原案とほぼ同一のレイアウトを有している以上、「串焼き いづも」が表示された当初のホームページが現在に至るまで継続して使用されていると考えることが社会通念上当然であり、逆に、途中の期間で使用していなかったと考えることは不自然である。
したがって、要証期間において「串焼き いづも」がホームページ上で表示されていたことになる。なお、乙第1号証に示した「串焼き いづも」は消し忘れではない。
実際、乙第8号証では、要証期間における多数のニュース&トピックスが掲載されており、リアルタイムで掲載されなければ意味のない情報が掲載されていることからも、ホームページが更新され続けていたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 請求人及び被請求人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。
(1)本件商標に係る商標権者(以下、単に「商標権者」という。)は、飲食店を経営する会社であり(甲3)、ストアコンセプトの異なる様々なブランド(「だん家」、「霧笛屋」、「鍛冶屋 文蔵」、「すし屋 銀蔵」等)の飲食店を経営している(甲5)。
(2)商標権者は、平成20年7月に「串焼き いづも」と称するブランドの飲食店(以下「飲食店『串焼き いづも』」という。)の秋葉原店、同年10月に同日比谷店、平成21年3月に同本八幡店をそれぞれ開店した(甲3)。そして、「多趣味人生徒然録」と題するウェブサイトにおいて、「本八幡そぞろ歩き No.31 串焼き いづも(鍛冶屋文蔵)」の見出しの下、2009年(平成21年)6月21日付けで飲食店「串焼き いづも」の本八幡店が紹介されている(乙2)。
(3)商標権者は、2011年(平成23年)8月30日に自社のホームページの制作を大塚商会に依頼した(乙5)。そして、同年10月25日に作成の当該ホームページの原案には、商標権者が経営する各飲食店のブランドとともに、本件商標が表示されている(乙6及び乙7)。
(4)2013年(平成25年)2月4日に飲食店「串焼き いづも」の日比谷店が閉店した(甲4)。また、同年11月に飲食店「串焼き いづも」の秋葉原店が、平成28年5月に同本八幡店がそれぞれ改装し、「鍛冶屋 文蔵」と称するブランドの飲食店(以下「飲食店『鍛冶屋 文蔵』」という。)として開店した(甲3)。
(5)株式会社藤田建装は、2019年(令和元年)7月24日に商標権者宛てに「串焼きいづも 浜松町ハマサイト店」と題する「基本設計図」を作成した(乙4)。当該基本設計図には、店舗のレイアウトが示されている(乙4)。
(6)商標権者のホームページは、要証期間内に何度も更新されており(乙8)、2019年(令和元年)9月12日に印刷された当該ホームページには、商標権者が経営する各飲食店のブランドとともに本件商標が表示されている(乙1)。
2 商標権者のホームページにおける使用について
(1)被請求人は、商標権者のホームページに本件商標が表示されていることから、本件商標は、商標法第2条第3項第8号に規定される使用をされている旨主張している。
(2)前記1(1)、(3)及び(6)によれば、商標権者は、飲食店を経営する会社であって、ストアコンセプトの異なる様々なブランドの飲食店を経営しているところ、平成23年10月25日(要証期間前)及び令和元年9月12日(要証期間後)の時点において、商標権者のホームページには、当該飲食店の様々なブランドとともに、「串焼き いづも」の文字からなる本件商標が表示されていることが認められる。
しかしながら、要証期間内において、当該ホームページに本件商標が表示されていることを示す証拠の提出はないから、本件商標が要証期間内に商標法第2条第3項第8号に規定される使用をされていると認めることはできない。
(3)この点について、被請求人は、平成23年10月25日(要証期間前)及び令和元年9月12日(要証期間後)の時点における当該ホームページのレイアウトはほぼ同一であるから、本件商標が表示された当初のホームページが現在に至るまで継続して使用されていると考えることが社会通念上当然であり、逆に、途中の期間で使用していなかったと考えることは不自然である旨主張している。
前記1(2)及び(4)によれば、商標権者は、飲食店「串焼き いづも」を3店開店しているが、いずれも要証期間前に閉店又は飲食店「鍛冶屋 文蔵」へ改装していることが認められる。
また、前記1(5)によれば、商標権者は、要証期間内である令和元年7月24日に飲食店「串焼き いづも」の浜松町ハマサイト店の開店の準備をしていたことがうかがわれるが、要証期間内に当該浜松町ハマサイト店が開店したことを示す証拠の提出はない。
そうすると、要証期間内において、飲食店「串焼き いづも」は開店(営業)していなかったといわなければならない。
してみると、商標権者のホームページにおいて、開店(営業)していない飲食店「串焼き いづも」を表すと認められる本件商標を表示しているというのは不自然というほかない。
他に、商標権者のホームページにおいて、要証期間内に本件商標が表示されていたことを認めるに足る証拠の提出はない。
したがって、たとえ、商標権者のホームページが要証期間内に何度も更新されているとしても、本件商標が要証期間内に当該ホームページに表示されていたものと認めることはできない。
3 商標権者のホームページにおける「鍛冶屋 文蔵」の文字の表示について
(1)被請求人は、商標権者は飲食店「串焼き いづも」と同コンセプトの飲食店「鍛冶屋 文蔵」の営業も行っており、両者は実質的に同ブランドとして認知されているから、「実質的に同ブランド」として認知されている商標を商標権者のホームページに表示していることは、本件商標の使用に該当する旨主張している。
(2)前記1(2)によれば、「多趣味人生徒然録」と題するウェブサイトにおける見出しにおいて、「串焼き いづも(鍛冶屋文蔵)」との記載があることが認められる。
しかしながら、この記載のみによって、飲食店「串焼き いづも」と飲食店「鍛冶屋 文蔵」とが実質的に同ブランドとして認知されていると認めることはできない。
他に、両飲食店が実質的に同ブランドとして認知されていることを認めるに足る証拠の提出はない。
仮に、両飲食店が実質的に同ブランドとして認知されているとしても、「鍛冶屋 文蔵」の文字からなる商標は、本件商標とはその構成文字を異にするから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということはできない。
したがって、「鍛冶屋 文蔵」の文字からなる商標が商標権者のホームページに表示されているとしても、本件商標が当該ホームページに表示されているということはできない。
4 飲食店「串焼き いづも」の開店のために具体的かつ積極的に計画及び準備を行っていたことについて
(1)被請求人は、商標権者は2020年(令和2年)2月に新たなコンセプトの飲食店「串焼き いづも」をオープン予定であり、当該飲食店の開店のために具体的かつ積極的に計画及び準備を行っていたことは、本件商標の使用に該当する旨主張している。
(2)前記1(5)によれば、株式会社藤田建装は、令和元年7月24日に商標権者宛てに「串焼きいづも 浜松町ハマサイト店」と題する「基本設計図」を作成し、当該基本設計図には、店舗のレイアウトが示されているのだから、当該基本設計図には、「串焼き いづも」の文字が付されていたといえるとともに、商標権者は、飲食店「串焼き いずも」の浜松町ハマサイト店の開店の準備をしていたことがうかがわれる。
しかしながら、たとえ当該基本設計図に「串焼き いづも」の文字が付されていたとしても、当該基本設計図は、オープン予定の店舗の設計図であると認められるから、当該設計図は、本件商標の指定役務に関する広告、価格表又は取引書類ということはできない。
また、飲食店「串焼き いづも」の開店のために具体的かつ積極的に計画及び準備を行っていたことが、商標法第2条第3項各号のいずれかの行為に該当するものとも認めることはできない。
したがって、飲食店「串焼き いづも」の開店のために具体的かつ積極的に計画及び準備を行っていたとしても、本件商標が使用をされていると認めることはできない。
5 まとめ
以上のとおり、被請求人の提出に係る証拠によっては、被請求人が、要証期間内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る役務についての本件商標の使用をしていることを証明したとはいえず、また、当該使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしたともいえない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲 本件商標




審理終結日 2020-10-28 
結審通知日 2020-11-04 
審決日 2020-11-18 
出願番号 商願2008-99203(T2008-99203) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (X43)
最終処分 成立  
前審関与審査官 箕輪 秀人中島 光 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 山田 啓之
板谷 玲子
登録日 2009-07-17 
登録番号 商標登録第5247915号(T5247915) 
商標の称呼 クシヤキイズモ、イズモ 
代理人 吉松 こず恵 
代理人 加藤 道幸 
代理人 木村 満 
代理人 塘口 絢子 
代理人 椎名 智子 
代理人 松嶋 さやか 
代理人 相田 隆敬 

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