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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W35 |
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管理番号 | 1370252 |
異議申立番号 | 異議2020-900106 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-04-13 |
確定日 | 2020-12-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6223139号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6223139号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6223139号商標(以下「本件商標」という。)は,「LUX」の文字を横書きしてなり,平成30年5月15日に登録出願,第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として,令和元年12月18日に登録査定,同2年2月6日に設定登録されたものである。 2 申立人が引用する商標 申立人が,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は,次の(1)ないし(4)のとおりであり,申立人がシャンプー,コンディショナー,ヘアトリートメント,その他ヘアケア製品,ボディソープ,せっけん類について使用し,我が国の取引者,需要者に広く認識されていると主張するものである。 (1)「LUX」の欧文字を横書きしてなるものである。(以下「引用商標1」という。) (2)別掲1のとおりの構成よりなるものである。(以下「引用商標2」という。) (3)別掲2のとおりの構成よりなるものである。(以下「引用商標3」という。) (4)「ラックス」の片仮名を横書きしてなるものである。(以下「引用商標4」という。) 以下,引用商標1ないし引用商標4をまとめて「引用商標」という。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第64号証を提出した。 (1)申立人の引用商標の周知性について ア 申立人について 申立人は,オランダとイギリスに本拠を有する世界有数の多国籍企業であり,ヘアケア製品,化粧品,飲食料品,洗剤,トイレタリーなどの一般消費財を広く製造・販売する企業である(甲2,甲3)。 申立人はこれまでに,マーガリンとせっけんに始まり,クレンザー製品,ヤシのプランテーション,冷凍食品,インスタント食品,アイスクリーム,缶詰食品,シャンプー,歯磨き,広告代理店事業等といった極めて多岐にわたる商品・役務を提供する事業を世界中で行ってきた(甲3)。 申立人は,世界中でその製品に使用され,世界中の取引者・需要者に広く知られている著名な商標を多数保有しており(甲4?甲11),我が国においてもこれらの著名な商標を付した商品が全国で販売されている。 申立人のブランドは大小合わせて世界で400以上あり,これらのブランドを付した商品の製造・販売を行って,1日に世界で実に25億人の人々により製品が使用されている(甲2,甲4)。 また,世界では毎日9000万世帯が申立人の製品を購入している(甲2)。 イ 申立人による引用商標の使用について 引用商標を付した商品(以下「使用商品」という。)は,1925年に高級石鹸として海外において発売,スキンケア用品として市場で展開され,1972年にイギリスから日本に上陸した(甲12?甲14)。それまで高級化粧石鹸などのスキンケア用品のみであった使用商品は,日本に入ってからはヘアケア製品の分野にも発展していき,移り変わる時代ごとのニーズに応えた商品,ヘアケアの多様な目的に合わせた商品ラインナップ,ノンシリコンシャンプーなど多様なシリーズ・ラインナップで使用商品を販売し続けてきた(甲5)。 近年の使用商品のシリーズはますます拡大している(甲16?甲25)。 使用商品(シャンプー,コンディショナー,ヘアトリートメント,その他のヘアケア製品,ボディソープ,せっけん類)は,日本全国のドラッグストア,スーパーマーケット,コンビニエンスストア,薬局等で販売され,身近に手に取って見ることができる。 また,申立人は商品のマーケティングや宣伝広告にも非常に力を入れており,使用商品の宣伝広告も継続して大々的に行っている。雑誌,街頭ポスター,店頭の広告の他,全国的なテレビコマーシャルも長年にわたって継続して放映されており,引用商標に係るブランドと使用商品は我が国において全国的に知れ渡っている。 以上のとおり,引用商標は使用商品に使用されて日本及び海外において広く販売され,また,日本国内においてはテレビコマーシャルなどの宣伝広告においても全国的に使用されている。 ウ 日本の需要者の間において引用商標と引用商標に係る商品・役務が広く知られていることについて 使用商品の長年にわたる各地での継続的販売と日本国内における大規模で継続した宣伝広告などにより,引用商標と使用商品が日本国内の取引者・需要者間で広く知られている。 また,インターネット検索のGoogleで単に「LUX」「ラックス」の文字のみを入力して検索してみると(本件商標の登録出願前の記事・情報を検索),その検出結果のほとんどが引用商標あるいは使用商品についての記事・情報となっている(甲30,甲31)。このことから,商標「LUX」及び「ラックス」といえば申立人の商標とその商品であり,シャンプーやコンディショナーのようなヘアケア製品やせっけん類の分野に限らず,広範囲の分野の商品・役務の取引者・需要者においてそのように認識されている。 さらに,世界のブランドランキングにおいても「LUX」は上位に位置しており,国内外の取引者・需要者に広く認知されている(甲32,甲33)。 また,商標「LUX」は,特許庁において日本国周知・著名商標として認められている(甲34)。 以上のことから,本件商標の登録出願のはるか前から継続して引用商標は日本国内で使用され,また,テレビコマーシャルをはじめとする様々な媒体を通じた強力な宣伝広告を通じて引用商標が日本国内の取引者・需要者の目に身近に継続的に触れられてきた。 したがって,本件商標の登録出願以前から,すでに引用商標は広く我が国の取引者・需要者間において周知・著名であったものである。 (2)本件商標と引用商標の類似性について 本件商標及び引用商標1ないし引用商標3は,いずれも「LUX」の欧文字を横書きしてなるものであり,わずかな字体の差異を除けば,両者はほぼ同一ともいうべく近似しており,外観類似である。そして,本件商標から生ずる称呼と引用商標1ないし引用商標3から生ずる称呼は同一であり,また,これらの商標から生ずる観念も同一である。 また,引用商標4から生じる称呼及び観念は,本件商標から生ずる称呼及び観念と同一である。 したがって,本件商標と引用商標とは同一又は類似である。 (3)引用商標の独創性について 「LUX」及び「ラックス」という語は造語であり,言葉自体が特定の商品や役務の内容・性質を直接的かつ一義的に意味するものではない。すなわち,引用商標の独自性・独創性は極めて高く,識別力は強い。 (4)商品・役務間の関連性について ア 申立人の事業について 申立人は,上記(1)アのとおり多岐・多方面にわたる分野の事業を営んでいる。 こうした点からみても,周知・著名な引用商標と同一又は類似の商標を他人が使用した場合に取引者・需要者において混同を生じる範囲は極めて広いというべきであり,この点も十分に考慮されるべきである。 申立人は被服の販売に関する事業も行っており,申立人が保有するブランドの1つである男性用化粧品ブランド「AXE(アックス)」における新シリーズの発売開始を記念してオリジナルファッションレーベル「AXE BLACK LABEL(アックスブラックレーベル)」を設立した。このことは各種のメディアの記事においても報じられている(甲35?甲49)。また,申立人の保有するブランドの1つである「BEN&JERRY‘S」(アイスクリームのブランド)の店舗においても同ブランドのオリジナルグッズとしてTシャツや帽子を販売している(甲50?甲53)。 さらに,申立人は,チェーン店で展開している洋服のリサイクルショップとのコラボレーションにより,衣服廃棄を削減する目的として,人々に衣料品廃棄の問題に関心を持ってもらい,リサイクルを呼びかける活動も行っている(甲54,甲55)。 このように,申立人は,被服・衣料品に関連する事業を行っており,申立人の事業の1つと本件商標の指定役務は同一又は類似となっている。 また,引用商標についても商標「AXE」と同様にアパレルブランドを立ち上げ,被服の販売を開始する可能性も十分にあり得る。そうすると,本件商標の使用はあたかも申立人が引用商標を用いたアパレルブランドを手掛け,被服の販売を始めたかのような誤認を取引者・需要者に与える蓋然性が極めて高い。 このように申立人が,被服の販売を含め,極めて広範囲の分野の事業を世界規模で行ってきた結果,引用商標は,提供する商品の他,申立人の事業を指標するものとしても強い出所表示力を発揮しうるものとなっている。 イ 商品・役務間の関連性について 引用商標が長年にわたって使用されてきたシャンプー,コンディショナー,ヘアトリートメントなどのヘアケア製品,ヘアケア用の化粧品,ボディソープ,せっけんなどの身の回りの製品は,自分の身体と身の回りを美しく清潔にするため,また,美しく見せるための商品であり,アパレルや靴,バッグやアクセサリーなどと共にファッションの重要なアイテムの1つとして位置づけられ,取引者・需要者にも一般にそのように認識されている。 そして,被服などのアパレルブランドが化粧品,ヘアケア製品,ボディケア製品を手掛けて製造・販売することや,同様に化粧品,ヘアケア製品,ボディケア製品のブランドが被服(アパレル),アクセサリー,スカーフ,バッグといった製品を製造・販売することは実際の市場において一般によく行われていることであり,両者を共に販売している会社は国内外で数多く存在する(甲58?甲64)。 そして,両分野の商品は同一店舗で販売されたり,同じブランドのオンラインショッピングサイト上に一緒に陳列され販売されたりしている実情からも,両商品・役務の分野の関連性は極めて強いものというべきであって,被服・アパレルの分野と化粧品,ヘアケア製品,ボディケア製品など身の回り製品の分野の取引者・需要者層は重複し,互いに深く関わり合っているのが実情である。 したがって,使用商品と本件商標の指定役務とは極めて関連の強い商品・役務であり,取引者・需要者の層も重複している(甲56,甲57)。 以上のことから,本件商標の指定役務の需要者・取引者層と申立人の業務に係る商品・役務の取引者・需要者層が共通することは明らかである。 (5)申立人の使用商標に化体した信用を害されるおそれについて 申立人はその商標のブランドイメージを維持し,より一層発展させるため,常にブランド管理を行っており,引用商標は,周知・著名商標であり,申立人の提供する商品及び役務に係る絶大な信用が化体した重要な財産である。 したがって,万が一,本件商標の登録が維持されると,申立人と何ら関係のない者により,申立人の意図とは無関係に,申立人が現にその商標を付して使用している商品とその取引者層・需要者層を共通にする役務について,引用商標と同一又は類似の商標,すなわち本件商標が自由に使用されてしまうことになる。その結果として,引用商標の希釈化が生じ得るおそれがあることは否定できない。このような事態が生じた場合,申立人が長年にわたり日本を含む世界各地において多大な努力を費やして培ってきたブランドイメージは著しく毀損され,申立人が多大な損害を被ることは明白である。 (6)結論 以上のとおり,引用商標は,我が国及び外国において周知・著名な商標であることが本件商標の登録出願時にすでに我が国内の取引者・需要者によって認識されていたものであって,本件商標と引用商標は同一又は類似である。 さらに,申立人の事業の1つと本件商標の指定役務は同一又は類似であって,本件商標の指定役務の取引者・需要者と引用商標を使用した商品の取引者・需要者が一致・重複している。 そして,本件商標権者が,本件商標をその指定役務に使用した場合,これに接する取引者・需要者は,あたかも申立人がその周知・著名な商標を使用して提供している役務であるかのごとく誤認するおそれがある。 したがって,本件商標がその指定役務に使用された場合,本件商標に接する取引者・需要者は,申立人又はこれに関連する者の業務に係る役務であるかの如く,その出所について混同する可能性は極めて高い。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。 ア 申立人について 申立人は,オランダとイギリスに本拠を有する世界有数の多国籍企業であり,ヘアケア製品,化粧品,飲食料品,洗剤,トイレタリーなどの一般消費財を広く製造・販売する企業である(申立人の主張)。 申立人はこれまでに,マーガリン,せっけん,クレンザー製品,ヤシのプランテーション,冷凍食品,インスタント食品,アイスクリーム,缶詰食品,シャンプー,歯磨き,広告代理店事業等,多岐にわたる商品・役務を提供する事業を世界中で行ってきた(甲3)。 申立人は,シャンプー,コンディショナー,ヘアトリートメント,ヘアスプレーなどのヘアケア製品やボディソープ,せっけん類において使用する引用商標等,世界中でその製品に使用される商標を多数保有しており,日本においてもこれらの商標を付した商品を全国で販売している(甲4?甲11)。申立人のブランドは大小合わせて世界で400以上あり,これらのブランドを付した商品の製造・販売を行っている(甲2,甲4)。 イ 引用商標の使用について 引用商標は,1925年(大正14年)から,化粧せっけんについて使用が開始されたものであり,我が国においては,1972年(昭和47年)に,使用商品の販売を開始した(甲12?甲14)。 近年では,申立人は,使用商品に「LUXスーパーリッチシャインシリーズ」「LUXビューティーiDシリーズ」「LUXヘアサプリシリーズ」等の商品名を付して販売している(甲16?甲25)。 使用商品は,申立人のウェブサイトにおいて,商品画像等が掲載されており(甲16?甲25),2015年(平成27年)及び2016年(平成28年)には,世界的なスーパースターがアンバサダーとして出演する,テレビCMを日本全国で放送した(甲28,甲29)。 ウ 使用商品に係る売上ランキングについて,Domani及びPR TIMESのウェブサイトにおいて,過去に売上No.1であった期間があることが記載されている(甲15,甲28)。また,使用商品に係る世界ブランドランキングについては,GLOBAL COSMETIC NEWSのウェブサイトにおいて36位,KANTARのウェブサイトにおいて12位であったことが記載されている(甲32,甲33)。 エ 申立人は被服の販売に関する事業も行っており,2016年3月には申立人のオリジナルファッションレーベル「AXE BLACK LABEL(アックスブラックレーベル)」を設立し,全8型のブラックシャツを製作し販売しており,そのことが複数のウェブサイトにおいて報じられた(甲35?甲49)。また,申立人の保有するブランドの1つであるBEN&JERRY'S(アイスクリームのブランド)の店舗において,同ブランドのオリジナルグッズとしてTシャツや帽子を販売しており,そのことが複数のウェブサイトにおいて紹介されている(甲50?甲53)。 オ 以上によれば,申立人は,400を超えるブランドを有し,ヘアケア製品,化粧品,飲食料品,洗剤,トイレタリーなどの一般消費財を広く製造・販売する企業であり(甲2?甲14),我が国において,使用商品を1972年(昭和47年)から販売している(甲14)。 しかしながら,申立人が,使用商品について,自身のウェブサイトやテレビCMを通じ広告宣伝を行っていることはうかがえるものの,使用商品を広告宣伝した時期,期間,回数,地域,提供数等を具体的に示す証拠の提出はない。 そして,使用商品が,我が国において,過去に売上No.1であった期間があることや,世界ブランドランキングにおいてある程度上位にランクインしたことはうかがえるものの(甲26,甲28,甲32,甲33),使用商品の周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,引用商標に係る申立人の業務に係る商品の売上高や市場シェアなどの販売実績,メディアを通じた広告・宣伝の程度(例えば雑誌の発行部数,販売地域,販売数量等),取引状況を見いだすことはできず,我が国における客観的な使用事実に基づいて引用商標の使用状況を把握することができないから,本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。 また,引用商標が,申立人の業務に係る役務に使用されて,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る役務を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めるに足る証拠はない。 そうすると,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品又は役務を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 (2)本件商標と引用商標等の類似性の程度について ア 本件商標について 本件商標は,「LUX」の欧文字を横書きしてなるところ,当該文字は「ルクス:照度の単位」(「ランダムハウス英和大辞典第2版」株式会社小学館)の意味を有する語であるから,「ルクス」の称呼を生じ,「ルクス:照度の単位」の観念を生じるものである。 イ 引用商標について 引用商標1及び引用商標2は,「LUX」の欧文字を横書きしてなるところ,上記(1)のとおり,需要者の間に広く知られていたものではないから,上記アのとおり,「ルクス」の称呼を生じ,「ルクス:照度の単位」の観念を生じるものである。 また,引用商標3は,金色の「LUX」の文字(「L」の文字の右下端と「X」の文字の左下端を「U」の文字の下でつなげてなる)を横書きしてなるところ,引用商標1及び引用商標2と同様に,「ルクス」の称呼を生じ,「ルクス:照度の単位」の観念を生じるものである。 そして,引用商標4は「ラックス」の片仮名を横書きしてなるところ,当該文字は,辞書等に掲載がなく,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語を表したものと理解されるものである。 ウ 本件商標と引用商標の類否について (ア)本件商標と引用商標1及び引用商標2について 本件商標と引用商標1及び引用商標2とを比較すると,両者は構成文字のつづりを同一にするものであるから,外観において類似するものといえる。 次に,称呼においては,両者は共に「ルクス」の称呼を生じるものであるから,称呼において,両者は同一である。 また,観念においては,両者は共に「ルクス:照度の単位」の観念は生じるものであるから,両者は観念において共通する。 そうすると,本件商標と引用商標1及び引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのある同一又は類似の商標というべきである。 (イ)本件商標と引用商標3について 本件商標と引用商標3とを比較すると,外観においては,両者は色彩の違い及び引用商標3は「L」の文字の右下端と「X」の文字の左下端を「U」の文字の下でつなげてなるものである点において異なるものであるが,両者は欧文字のつづりを同一にすることから,外観上似かよった印象を与えるものということができる。 次に,称呼においては,両者は共に「ルクス」の称呼を生じるものであるから,称呼上,両者は同一である。 また,観念においては,両者は共に「ルクス:照度の単位」の観念は生じるものであるから,両者は観念において共通する。 そうすると,本件商標と引用商標3は,外観において似かよった印象を与えるものであって,称呼及び観念を共通にするものであるから,両者の外観,称呼,観念等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 (ウ)本件商標と引用商標4について 本件商標と引用商標4とを比較すると,本件商標は欧文字からなるものであって,引用商標4は片仮名からなるものであって,両者は構成文字が異なるものであるから,外観上,判然と区別し,相紛れるおそれはないものである。 次に,称呼においては,本件商標から生じる「ルクス」の称呼と引用商標4から生じる「ラックス」の称呼とは,語頭における「ル」と「ラ」の音の違いに加え,語頭音の促音の有無という差異を有し,この差異が共に3音という極めて短い称呼全体の語調語感に及ぼす影響は少なくなく,それらをそれぞれ一連に称呼しても,互いに聞き誤るおそれのないものである。 また,観念においては,本件商標からは「照度の単位」の観念を生じるのに対し,引用商標4は特定の観念を生じないものであるから,両者は,観念上相紛れるおそれはない。 そうすると,本件商標と引用商標4は,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。 (3)商標の独創性について 引用商標1ないし引用商標3については,「LUX」の欧文字は,「照度の単位」の意味を有する既成語であるから独創性が低いものである。また,引用商標4については,「ラックス」の片仮名は辞書等に掲載のない造語であるから,独創性は低くはない。 (4)本件商標の指定役務と引用商標が使用される商品の関連性について 本件商標の指定役務と使用商品とは,本件商標の指定役務の提供と使用商品の製造・販売とが同一事業者によって行われているのが一般的とまではいえないし,本件商標の指定役務に係る商品と使用商品との用途も異なるものであるから,需要者の範囲が一致するともいえず,関連性は低いというべきである。 (5)商標法第4条第1項第15号該当性について 上記(1)のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。そして,上記(2)ウ(ア)及び(イ)のとおり,本件商標と引用商標1ないし引用商標3とは類似の商標であるとしても,本件商標の指定役務と使用商品の関連性は低いことに加え,引用商標1ないし引用商標3は独創性が低いものである。 また,引用商標4の独創性が低くはないものであるとしても,上記(2)ウ(ウ)のとおり,本件商標と引用商標4は非類似の商標であって,別異の商標というべきものであることに加え,本件商標の指定役務と使用商品の関連性は低いものである。 そうすると,本件商標は,本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他,本件商標が引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (6)申立人の主張について 申立人は,申立人が被服の販売に関する事業も行っていること(甲35?甲53),アパレルを主軸とする有力ファッションブランドが,化粧品を手がける例(甲56)及び,実際に,化粧品ブランドがファッションサイトを開設(甲57)したり,アパレルブランドがシャンプーやコンディショナー等のヘアケア商品,化粧品,せっけん等を販売(甲58?甲60,甲62?甲64)したりする例を挙げ,本件商標の指定役務に係る商品と引用商標が使用される商品の関連性は高い旨,主張している。 しかしながら,アパレルブランドが化粧品を手がけたり,化粧品ブランドがアパレルを手がけたりすることが散見されるとしても,上記(4)のとおり,本件商標の指定役務と使用商品との関連性は低いというべきであるから,申立人の主張は採用できない。 (7)むすび 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 引用商標2 別掲2 引用商標3(色彩は原本参照。) |
異議決定日 | 2020-12-15 |
出願番号 | 商願2018-70904(T2018-70904) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W35)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小島 玖美、滝口 裕子、堀内 真一 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
須田 亮一 大森 友子 |
登録日 | 2020-02-06 |
登録番号 | 商標登録第6223139号(T6223139) |
権利者 | 内田 高 |
商標の称呼 | ルクス、ラックス、エルユウエックス |
代理人 | 中山 真理子 |
代理人 | 竹中 陽輔 |
代理人 | 達野 大輔 |