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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W10
審判 全部申立て  登録を維持 W10
審判 全部申立て  登録を維持 W10
審判 全部申立て  登録を維持 W10
審判 全部申立て  登録を維持 W10
管理番号 1369157 
異議申立番号 異議2020-900125 
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-01 
確定日 2020-12-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6224651号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6224651号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6224651商標(以下「本件商標」という。)は、「MEDI QTTO」の文字を標準文字で表してなり、平成31年4月8日に登録出願、第10類「整形外科用履物,矯正用履物,医療用ソックス,医療用の圧迫型ストッキング,医療用又は外科用の弾性ストッキング,医療用の圧迫型タイツ,医療用又は外科用の弾性タイツ,圧迫型靴下,医療用補助靴下,整形外科用靴下,治療用靴下,医療用機械器具」を指定商品として、令和2年1月30日に登録査定、同年2月10日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において、引用する登録商標(以下、まとめていうときは「引用商標」という。)は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)国際登録第919760号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
国際登録出願日:2013年(平成25年)4月29日(事後指定)
設定登録日:平成26年10月3日
指定商品:第10類「Articles for heat and cold therapy (as far as included in this class), namely electric heating pillows and pads for medical purposes; draw-sheets for sick beds, including anti-bedsore pads, orthopaedic articles, in particular bandages, medical stockings for arm and leg (compression stockings, anti-thrombosis stockings, support stockings), medical tights (compression, anti-thrombosis and support tights) and parts for the aforesaid goods; orthopaedic articles, namely cervical, trunk, shoulder, arm, hand, leg, knee, foot and ankle joint orthosis; medical apparatus and articles for physiotherapy and rehabilitation (as far as included in this class); surgical, medical, dental and veterinary apparatus and instruments; artificial limbs; silicon parts for prostheses, in particular for improved stump socket grip; artificial eyes and false teeth, and endoprosthetic articles, in particular hip joint prostheses, implants, bone screws.」
(2)国際登録第1101952号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
国際登録出願日:2013年(平成25年)4月26日(事後指定)
設定登録日:平成26年8月1日
指定商品:第10類「Articles for heat and cold therapy, especially electric heating pillows and pads for medical purposes; draw-sheets for sick beds, including anti-bedsore pads; orthopaedic articles; orthopaedic articles, namely bandages, medical stockings for arm and leg (compression stockings, anti-thrombosis stockings, support stockings), medical tights (compression, anti-thrombosis and support tights) and parts for the aforesaid goods; orthopaedic articles, namely cervical, trunk, shoulder, arm, hand, leg, knee, foot and ankle joint orthosis; medical apparatus and instruments for physiotherapy and rehabilitation; surgical, medical, dental and veterinary apparatus and instruments; artificial limbs; silicon parts for prostheses, especially for improved stump socket grip; artificial eyes and false teeth; endoprosthetic articles, especially hip joint prostheses, implants, bone screws.」

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人は、引用商標を、医療用の弾性圧迫着衣について、1964年から現在に至るまで、長年にわたり日本を含む世界各国において継続的に使用してきた。その結果、遅くとも本件商標の登録出願日には、引用商標は、国内外の関連する需要者及び取引者の間で、申立人の業務に係る商品の出所を示す表示として、広く知られるに至っていたというべきであり、その周知・著名性は、現在に至るまで維持されている。
イ 申立人は、1920年創業のドイツ法人であって、とりわけ医療用の弾性圧迫着衣、たとえばストッキング、靴下、スリーブ、サポーター、並びにこれらに関連する器具を製造販売する業者である。申立人の製品は、独自の編立技術に基づいて製造され、業界内でもトップクラスの品質を誇り、また、治療用とはいえ日常着用するものとしてファッション性を追求し、様々な色彩やデザインのバリエーションを展開している点に独自の特徴を有し、多くの患者や医療従事者の間で高い名声と人気を博するに至っている。引用商標は、申立人の商品名ないし商号の要部として、また、代表的出所標識(ハウスマーク)として、遅くとも1964年から継続的に、ドイツ及び世界各国において使用されてきたものである。その後、申立人は、欧州を中心に国際的に事業を展開し、現在、25のドイツ国外所在の支社を有し、90か国以上に製品を輸出している(甲8)。
また、2013年には、ドイツのバスケットボールクラブのメインスポンサーを務めるなど、幅広い活動を通じて、高い注目を受けてきたことが容易に想像される(甲9、甲10)。
ウ 申立人は、医療向け弾性圧迫着衣とこれに関連する商品が高く評価され、国際的に名高い賞を継続的に受賞してきた。
「Red Dot Design Award(レッド・ドット・デザイン賞)」、2011年、2016年及び2017年受賞。「iF Design Award(iFデザイン賞)」、2011年、2013年、2015年ないし2017年、2019年及び2020年受賞。「Top 100 Innovation award」、2019年受賞。「German brand award」、2017年ないし2020年受賞。「German INNOVATION award」、2020年受賞。「レッド・ドット・デザイン賞」は、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレンデザインセンターが主催する国際的なプロダクトデザイン賞である。「iFデザイン賞」は、ドイツの組織インダストリー・フォーラム・デザイン・ハノーファーが1953年から主催する、工業製品の国際的な賞である(甲11?甲16)。
エ 以上のとおり、申立人は、1964年から継続的にドイツを中心として国際的に医療用弾性着衣の営業活動を行い、世界的に権威ある賞の表彰を数多く受けるなど、顕著な評価を受けてきた。そして、これらの活動には、申立人の商号の要部、あるいはそのハウスマークである引用商標が常に使用されてきた。これらの営業活動や受賞歴を通じて、その名声は広く伝播され、引用商標の知名度が、ドイツないし世界各国において、関連する取引者、需要者間で広く浸透するに至ったことは想像に難しくない。
オ 申立人は、1995年に日本市場に進出し、弾性着衣や弾性包帯を取り扱う商社であるナック商会株式会社(以下「ナック商会」という。:甲18)を通じて、我が国への輸出を開始したが、2019年9月以降は、メディ・ジャパン株式会社(以下「メディジャパン」という。:甲19)を設立し、我が国における申立人の営業拠点として活動している。弾性圧迫着衣は、医療機関ないし特定の専門業者によってのみ取り扱われ、メーカー側の営業活動もコンビニエンスストアや百貨店などの大衆的なルートではなく、医療機関や専門業者等の特定のルールでの活動が中心となる。また、それに伴い流通経路や需要者層が限定されることから、新聞、雑誌、テレビ放送などのメディアを通じた広範囲かつ無限定の販促広告活動は一般的でない。よって、当該業界における長年にわたる継続的な販売活動こそが、自社の製品が需要者による選択肢の一としてあり続けることが、ブランドの知名度の高さを推認させる材料となる。
申立人は、自身のハウスマークや商号のみならず、多種の医療用弾性圧迫着衣商品に「medi」ないし「メディ」を接頭辞として冠する商品を多用していることがわかる(甲17)。
メディ・ジャパンの顧客一覧(甲21の3)には、登録済みの顧客総数は、1117件に上り、そのうち80%近くが専門の代理店か、医療機関であり、全国に広く分布していることがわかる。
日本市場における年間売上高は、2014年が約3億7千万円、2015年が約4億3千万円、2016年が約4億8千万円、2017年が約5億3千万円、2018年が約5億9千万円、2019年が約6億円である。
以上の資料、情報から、1995年から2019年までは、ナック商会を通じて、2019年以降は子会社であるメディ・ジャパンを通じて、申立人の商品が継続的に、我が国において販売されてきたことがわかる。
国内販売業者のウェブサイト(甲22)に示すように、申立人を示す表示として「medi」、「メディ」の文字が使用されており、メーカー一覧中に含まれている。すなわち、申立人は、医療用弾性着衣メーカー中の主な選択肢の一として列挙されている。これは、申立人が、当該業界における代表的なメーカーであり、「medi」、「メディ」の表記が申立人を指し示すことが、我が国の関連需要者の間で広く浸透していることを推認させるものである。
以上のように、申立人は、1995年から現在に至るまで、25年以上にわたり、国内商社及び日本支社を通じて、継続的に、我が国において医療用の弾性圧迫着衣とその関連器具を販売してきた。そして、取引において、常に引用商標が使用されてきた。その結果、申立人は、日本市場においても、医療用弾性着衣の分野で、主たるメーカーとしての確固たる地位を築き、引用商標は、我が国の関連する需要者、取引者間で高い知名度を獲得したということができ、遅くとも本件商標の登録出願日には、取引者、需要者の間で広く認識されるに至ったというべきであり、その周知著名性は、現在に継続されているというべきである。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 商標の類否について
本件商標は、上記1のとおり、「MEDI QTTO」の文字を標準文字で表してなるものである。また、他方、引用商標は、上記2のとおり、横一列に書した「medi」の文字のみからなる、あるいは、当該文字部分を要部として構成されるものである。
本件商標は、その構成中に「MEDI」の文字部分を含み、これは引用商標の文字要素である「medi」の文字と実質的に同一であり、その称呼「メディ」も共通する。本件商標の構成中「MEDI」の文字部分は、他の文字要素「QTTO」の文字部分と観念上のつながりは見いだせない。
また、構成中の「MEDI」の文字部分は、申立人の業務に係る商品の出所を表示する商標として関連する需要者及び取引者の間で広く認識されるに至っている「medi」の文字と実質的に同一である。本件商標の構成中「MEDI」の文字部分と「QTTO」の文字部分とは、同じ書体、同じ大きさで表現されている。しかしながら、両語の観念上のつながりは弱く、さらに、本件商標において「MEDI」の文字部分がより目立つ冒頭に配されていることに加えて、引用商標それ自体の我が国の医療用弾性着衣業界における周知著名性を考慮すれば、本件商標の構成中「MEDI」の文字部分は、強く支配的な印象を看者に与え、独立した出所識別標識として把握され得るというべきである。
よって、本件商標の構成中「MEDI」の文字部分は、「QTTO」の文字部分と分離して看取され、また、強く支配的な印象を需要者に与えることから、独立した出所識別標識、すなわち本件商標の要部と認識される。
そして、本件商標の構成中の「MEDI」の文字部分は、「メディ」なる称呼を生じさせ、引用商標の称呼「メディ」と共通する。また、引用商標と、同じ文字つづりからなり外観も実質的に同一である。よって、少なくとも称呼、外観において、両商標は相紛らわしい。
すなわち、本件商標が、その指定商品に使用される場合、看者は、本件商標の構成中「MEDI」の文字部分を要部として捉え、これと実質的に同一の構成を有する引用商標の構成中「medi」の文字を要部として捉え、これを実質的に同一の構成を有する引用商標との間で、出所の誤認混同を生じさせる蓋然性が高い。
よって、本件商標と引用商標とは、互いに類似するというべきである。
イ 両商標に係る指定商品について
本件商標に係る指定商品は、引用商標に係る指定商品に含まれるか、密接に関係するものであり、両商標の指定商品は、同一又は極めて密接に類似するものであることは明らかである。
ウ 小括
以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 両商標の類似度について
上述のとおり、本件商標と引用商標とは、「MEDI」の文字において共通し、極めて高い類似性を有する。
イ 引用商標の周知度について
申立人は、引用商標を、医療用の弾性圧迫着衣、とりわけストッキング、スリーブ等について、我が国においては、遅くとも1995年から現在に至るまで、長年にわたり継続的に使用されてきた。その結果、遅くとも本件商標の登録出願日には、引用商標は、関連する需要者及び取引者の間で、申立人の業務に係る商品の出所を示す表示として、広く知られるに至っていたというべきであり、その周知・著名性は、現在に至るまで維持されている。
ウ 引用商標が造語であるか又は構成上顕著な特徴を有するか、ないしハウスマークであるかについて
引用商標は、当該業界において、ありふれて採択されていない、申立人によって独自に創作、採択された商標である。引用商標は、申立人の主要なハウスマークとして、また、商号の要部として長年にわたって使用されてきたものである。事実、申立人所有の登録商標の中には、引用商標以外にも、「medi」の文字を接頭辞として冠する商標が数多く存在する。引用商標は、創造性の高い造語であり、また、申立人のビジネスを代表する申立人固有の商標として、さらに、展開する多数のバリエーション名に共通する接頭辞として、統一的に使用されている。
エ 企業における多角経営の可能性について
両商標に係る指定商品が同一又は類似することは明らかであるから、本件において、申立人自身の多角経営の可能性は本号の適用判断の要因として考慮に値しない。
オ 商品・役務間の関連性ないし商品等の需要者の共通性その他取引の実情について
上述のとおり、引用商標は、医療用の弾性圧迫着衣(ストッキング、サポーター、スリーブなど)とこれを補助する器具について使用している。他方、本件商標に係る指定商品は、上記1のとおりであり、まさに引用商標の使用されてきた商品と重複し、あるいは極めて密接な関連性を有する。需要者は医療従事者あるいはリンパ・静脈等の血管循環系疾患の患者に限定され、取り扱う製造業者及び販売業者の範囲、並びに商品の流通経路は、極めて専門的かつ局所的といえる。よって、混同可能性の判断に際しては、通常の大衆品はおろか、一般的に扱われる医療機器とも異なり、当該分野固有の取引実情が勘案されるべきである。
カ 小括
以上のように、本件商標は、引用商標との間で高い類似度を有すること、引用商標は、申立人の業務に係る商品を示すものとして、取引者、需要者の間で広く知られていること、引用商標は、申立人により独自に採択された、ありふれて採択されていない独特な創造商標であって、かつ、申立人のハウスマークないし商号の要部として用いられてきたものであること、本件商標に係る指定商品と、申立人の業務に係る商品とは、重複ないし密接に関連している。
これらの事情を考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接した需要者及び取引者は、申立人又は同人と資本関係又は業務提携関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとくその出所について誤認混同を生じるおそれが十分にあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似する。
また、本件商標は、本件商標権者のライセンシーと思しき企業が、着圧ソックスの製造販売を業としている(甲23)。着圧ソックスなるものが、医療用の弾性圧迫ストッキングに該当するものかは不明であるが、関連するものであることは疑いない。かかる状況において、本件商標権者が、その出願時点において、周知著名な引用商標を知しつしていたことは明らかである。すなわち、本件商標権者は、その知り得る立場からすれば、申立人ないし引用商標に何ら依拠することなく、偶然に本件商標を採択したとは考えられない。
よって、本件商標権者は、本件商標の登録出願時において、外国又は日本国内において周知著名な引用商標の存在を知りながら、その顧客吸引力にフリーライドする目的で、引用商標と類似する本件商標を登録出願しようとしたものである。
したがって、本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている引用商標と類似し、また、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の主張及び提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、1920年(大正9年)創業のドイツ法人であり、1964年(昭和39年)に「mediストッキング(圧迫ストッキング)」が誕生し、また、1991年(平成3年)に社名変更し、「medi」が傘ブランドとされた。2013年(平成25年)には、ドイツバスケットボールリーグ1部の「BBCバイロイト」のメイン・タイトルスポンサーとなり、同クラブの名称は、「mediバイロイト」に変更されている(甲4)。
(イ)申立人の日本支社のウェブサイト(甲5)、世界における支社一覧のウェブサイト(甲8)には、引用商標2が表示されているものの、本件商標の登録出願日及び登録査定日前のものとは確認できない。
(ウ)申立人が受賞している「Red Dot Design award」、「iFデザイン賞」、「Top100 award」等(甲11)は、企業として受賞しているものであって、「medi Gmbh&Co.KG」の表示とともに引用商標2が表示されている。
そして、具体的な商品について、「mediven for men」、「mediven active」及び「Genumedi PSS」等と紹介されているものである(甲14、甲15)。
(エ)申立人は、弾性着衣や弾性包帯を取り扱うナック商会を通じて、我が国へ輸出しているところ、ナック商会は、1995年(平成7年)に申立人の輸入販売元となり医療用弾性ストッキング・スリーブを販売開始している(甲18)。
また、2019年(令和元年)には、支社であるメディジャパンを設立し、我が国における申立人の営業拠点として活動している(甲5)。
そして、ナック商会が我が国の顧客向けに頒布したカタログの写し(甲17の1?30)は、作成日が不明のものがあるものの、平成26年から同30年までのカタログの写しには、表紙の右上に引用商標2が表示され、弾性ストッキングや弾性スリーブの商品が掲載されている。
しかしながら、その配布先や数量については不明である。
また、メディジャパンが我が国の顧客向けに頒布したチラシの写し(甲17の31?33)には、引用商標2が表示されているものの、商品に関する記載はなく、その作成日、作成数量及び配布先については不明である。
(オ)メディジャパンのウェブサイト(甲19)は、本件商標の登録査定後のものである。
(カ)申立人がナック商会及びメディジャパン宛てに発行したインボイスの右上には、引用商標2が表示されている(甲20、甲21の1・2)。
(キ)メディジャパンの顧客一覧(甲21の3)は、取引の対象商品についての記載はなく、その作成日、作成者、裏付けとなる証拠の確認ができない。
また、申立人は、日本市場における年間売上高一覧を示しているが、その裏付けとなる証拠や市場シェアが不明であり、その売上高は評価し得ない。
イ 以上からすれば、申立人は、1920年(大正9年)創業のドイツ法人であり、医療用の弾性圧迫着衣とするストッキング、靴下等を製造しており、我が国において、ナック商会やメディジャパンを通じて、医療機関や専門業者へ販売していることは推認し得るものである。
そして、申立人のインボイス、ナック商会やメディジャパンが我が国の顧客向けに頒布したカタログやチラシに引用商標2が付されていることが認められる。
しかしながら、引用商標を付した申立人の業務に係る商品の売上高、市場シェア、宣伝広告の範囲及び回数等が明らかでないから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間に申立人の業務に係る商品を表すものとして広く認識されていたものと認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標は、上記1のとおり「MEDI QTTO」の欧文字を標準文字で表してなるところ、中央に1字の空間があるとしても、同書、同大、等間隔でまとまりよく一体的に表してなるものであって、当該構成文字からは冗長ともいえない「メディキュット」の称呼を生じ、当該文字は辞書等に載録が認められないから、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標1は、別掲1のとおり「medi」の欧文字からなり、引用商標2は、別掲2のとおり、赤色四角形内の中央下方に「medi」の白抜き欧文字及び当該文字の「m」及び「edi」の文字の下に白抜き横線を配してなる構成からなり、その構成中の「medi」の白抜き欧文字が要部といい得るものであるから、それぞれの欧文字に相応して、「メディ」の称呼を生じ、当該文字は辞書等に載録が認められないから、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について検討するに、本件商標及び引用商標は、上記ア及びイのとおりの構成からなり、両商標は、構成文字数及び構成態様が明らかに異なり、外観上、明確に区別できるものである。
つぎに、称呼においては、本件商標から生じる「メディキュット」の称呼と引用商標から生じる「メディ」の称呼とは、その構成音数において明らかな差異を有するものであるから、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
さらに、観念においては、本件商標及び引用商標は、ともに特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することができないものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において明らかに相違するから、これらを総合的に考慮すれば、両商標は紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は、たとえ、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標と引用商標は、非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間に広く知られているとは認めることはできない。
また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、紛れるおそれのない非類似の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用をした場合、これに接する需要者が、引用商標を連想、想起し、その商品が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本願商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間において広く認識されているとは認められないものであって、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、本件商標に接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起させるものではない。
また、申立人からは、不正の目的を証明するための具体的な証拠の提出もない。
そうすると、本件商標は、引用商標の著名性に便乗する等、不正の目的をもって使用をするものと認めるに足る事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲

別掲1(引用商標1)


別掲2(引用商標2:色彩については原本を参照。)




異議決定日 2020-12-02 
出願番号 商願2019-49167(T2019-49167) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W10)
T 1 651・ 262- Y (W10)
T 1 651・ 261- Y (W10)
T 1 651・ 263- Y (W10)
T 1 651・ 271- Y (W10)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 幹太 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 小松 里美
榎本 政実
登録日 2020-02-10 
登録番号 商標登録第6224651号(T6224651) 
権利者 エルアールシー プロダクツ リミテッド
商標の称呼 メディキュット、メディ、キュット、キュウテイテイオオ 
代理人 松尾 和子 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 石戸 孝 
代理人 山尾 憲人 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 中村 稔 
代理人 藤倉 大作 
代理人 勝見 元博 

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