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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W303543
審判 全部申立て  登録を維持 W303543
審判 全部申立て  登録を維持 W303543
管理番号 1369152 
異議申立番号 異議2019-900225 
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-16 
確定日 2020-12-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第6148759号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6148759号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6148759号商標(以下「本件商標」という。)は、「TAPIOCA MONSTER」の文字を標準文字で表してなり、平成31年7月25日に登録出願、第30類「茶,コーヒー,ココア,氷,菓子,パン,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,即席菓子のもと,食用粉類」、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、令和元年5月31日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下の4件の登録商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらの商標をまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「MONSTER」(標準文字)
登録出願日:平成22年7月8日
設定登録日:平成22年12月24日
指定商品:第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
2 登録第5393681号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「MONSTER ENERGY」(標準文字)
登録出願日:平成22年7月8日
設定登録日:平成23年2月25日
指定商品:第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
3 登録第6035576号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「MONSTER ENERGY URTLA RED」
登録出願日:平成29年2月16日
設定登録日:平成30年4月13日
指定役務:第5類、第30類及び第32類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
4 登録第6052913号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「MONSTER MEAL DEAL」(標準文字)
優先権主張:2017年6月28日 アメリカ合衆国
登録出願日:平成29年12月26日
設定登録日:平成30年6月15日
指定商品及び指定役務:第29類、第30類及び第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第387号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の使用に係る商標と取扱い商品
申立人の使用に係る「MONSTER」は、申立人が2002年に創設したエナジードリンク(エネルギー補給飲料)事業のブランド「MONSTER ENERGY」の基軸商標として2002年から現在に至るまでの長年にわたり継続して使用されているものであり、同ブランドのエナジードリンクは、2002年に米国で最初に販売を開始後、日本では2012年5月から販売を開始し、現在では日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。申立人は2002年以降、現在まで継続して、当該ブランドから発売された数多くの異なる種類のドリンクの個別商品名のすべてに「MONSTER」の文字を採択しており、当該各種ドリンクの缶の正面に「MONSTER」の文字を特徴的なデザインの太字を用いて大きく目立つ態様で表示して使用している。
このように「MONSTER」を基調とする商標を用いた申立人のエナジードリンク事業の成功は、経済界でも高い評価を受けている(甲2?甲33、甲51?甲58)。
国内市場では、2012年から現在までに「MONSTER」エナジードリンクのシリーズは、「MONSTER ENERGY」(甲5、甲7、甲12)、「MONSTER KHAOS」(甲6、甲7、甲14、甲128、甲130、甲131)、「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」(甲10、甲13、甲15、甲252?甲255)、「MONSTER ENERGY M3」(甲59、甲61、甲101、甲127、甲129、甲131)、「MONSTER COFFEE」(甲60、甲62)、「MONSTER ENERGY ULTRA」(甲101?甲103、甲118)、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」(甲256、甲257、甲263、甲274)、平野歩夢コラボ缶「MONSTER ENERGY」及び同「MONSTER ENERGY ULTRA」(甲231、甲291、甲294、甲297?甲310)、「MONSTER CUBA LIBRE」(甲323?甲326)、及び「MONSTER PIPELINE PUNCH」(甲353、甲357?甲360)が発売された。
リニューアル製品及び季節限定製品を含め、現在までに国内発売されたMONSTERエナジードリンクのシリーズは、「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー缶355ml)、「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス缶355ml)、「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」(モンスターアブソリュートリーゼロ缶355ml)、「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジー M3ワンウェイびん150ml)、「MONSTER COFEE」(モンスターコーヒー缶250ml)、「MONSTER ENERGY ULTRA」(モンスターウルトラ缶355ml)、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」(モンスターロッシ缶355ml)、平野歩夢コラボ缶の「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジースペシャルデザイン缶355ml)及び同「MONSTER ENERGY ULTRA」(モンスターウルトラスペシャルデザイン缶355ml)、「MONSTER CUBA LIBRE」(モンスターキューバリブレ缶355ml)、大容量ボトル缶入り「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジーボトル缶473ml)、「MONSTER PIPELINE PUNCH」(モンスターパイプラインパンチ缶355ml)である(甲258?甲264、甲291、甲323?甲326、甲353?甲360)。
(2)広告及び販売促進活動
申立人による当該エナジードリンクの広告及び販売促進活動は、世界の有名アスリート、レーシングチーム、スポーツ競技会、アマチュアスポーツ選手、音楽祭及びミュージシャンに対するスポンサー提供、スポーツ、音楽、コンピュータゲーム(eスポーツ)などの娯楽イベントの開催、米国ラスベガスの公共交通機関モノレールの「モンスター列車」の走行、これらのイベント開催などと関連して頻繁に実施されるエナジードリンク販売キャンペーン、各イベント会場におけるサンプリング(サンプル配布)、2013年2月から2018年11月までの約5年9月の期間に国内で実施された販売プロモーションキャンペーンの応募当選者に対する様々な「モンスター限定グッズ」(Tシャツ、帽子、ダウンジャケット、リストバンド、キーホルダー、ステッカー、ギター、バッグパック、エナジードリンク、クーラーボックス、冷蔵庫、自動車など総計75万点を超えるアイテム)の提供、「MONSTER」の文字を付したポスター・商品ネームプレート・チラシ・陳列棚・冷蔵庫などの店舗用什器の使用及び展示、遅くとも2013年から現在に至るまで約1?2月の頻度で定期的に発行されている新商品発売・懸賞キャンペーン・イベント開催情報などを掲載したプレスリリース、申立人ウェブサイト並びにソーシャルメディアを通じた情報発信を介して、2002年から現在まで世界規模で継続的に実施されている。これらの広告物及び販売促進物には、「MONSTER」及びその音訳「モンスター」の文字が独立の商品出所識別標として認識される態様で使用されてきた(甲7?甲17、甲34?甲91、甲101?甲133、甲136?甲168、甲225?甲274、甲279?甲296、甲323?甲352、別紙2)。
(3)ライセンスによる引用商標の使用
申立人は、2002年から、ブレスレット、ラベルピン、キーホルダー、Tシャツ、スウェットシャツ、帽子、レーシングジャケット、手袋などのアパレル製品、運動用ヘルメット、バッグ類、ステッカー、傘、ビデオゲームなどの「MONSTERR」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトは、ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」、「Monster」の文字を単独で表示し、販売及び宣伝広告している。これらのライセンス商品は、国内の実店舗のほか、オンラインショップや通信販売を介して国内の一般消費者にも販売されている(甲47、甲48、甲58、甲92?甲100、甲134、甲135)。
需要者におけるこれらのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された模倣品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169?甲224、別紙1)。
(4)世界における商標出願及び登録
申立人は、エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について、引用各商標をはじめ、「MONSTER」の文字を基調とする様々な構成の商標について日本を含む世界150以上の国及び地域で商標出願し、登録を取得している(甲58、甲361?甲382)。
(5)申立人の「MONSTER」エナジードリンクの国内市場占有率など
第三者による市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によれば、2013年時点で申立人の「MONSTER」エナジードリンクの国内市場占有率は既に25%を超えており、それ以降も着実に売上を伸ばし、男子若年層を中心とした従来の主要需要者層に止まらず、女性層にも知名度、人気を拡大している。また、実際の市場で申立人の「MONSTER」エナジードリンクは「モンスター」と呼ばれ、「モンスター」の表記で認知されている(甲311?甲322)。
(6)小括
以上の事柄に照らせば、「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務の出所識別標識として国内外の取引者、需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標の構成文字「TAPIOCA MONSTER」は辞書等に記載されている成語ではないところ、「TAPIOCA」は英単語の「tapioca」、「MONSTER」は英単語の「monster」にそれぞれ通じ、これらの語の音訳「タピオカ」(甲385、甲386)及び「モンスター」(甲383、甲384)が「広辞苑」等に掲載される程度まで外来語として一般に広く浸透している。よって、本件商標は、「TAPIOCA」と「MONSTER」の2語を結合したものとして容易に認識、理解される。
(2)「TAPIOCA」及びその音訳「タピオカ」は、「キャッサバの塊根から製した澱粉」等を意味する語として一般に親しまれており(甲385、甲386)、殊に近年は、タピオカ入りの茶(例えば、タピオカ入りミルクティー、タピオカ入りフルーツティー)、タピオカ入りのスムージーなどのタピオカを入れた飲料(いわゆる「タピオカドリンク」)が巷で非常に高い人気を博している(甲387)。
(3)本件商標の指定商品及び指定役務(以下、「本件指定商品等」という。)は、茶、コーヒー、ココア、氷、菓子、パン等の飲食料品、飲食料品の小売・卸売、並びに飲食物の提供として把握されるものであるから、これらに「TAPIOCA」の文字を使用しても、単に当該商品又は役務の提供に供する物(飲食物)がその原材料に「タピオカ」を使用していること、「タピオカ」入りのものであること等の品質(質)その他の特徴を表示するものとして認識、理解されるものにとどまり、自他商品役務識別標識としての機能を発揮しない。仮に、自他商品役務識別標識として機能し得る場面があるとしても、「MONSTER」の文字と比較した場合、その出所識別力が極めて弱いことは明白である。したがって、本件商標においては、その構成中の「MONSTER」の文字が商品役務の出所識別標識として強く支配的な印象を取引者、需要者に与え、独立の出所識別標識として機能し得るものである。
(4)したがって、本件商標は、引用商標1「MONSTER」と類似のものである。また、本件指定商品等のうち、第35類の指定役務は、引用商標1の登録に係る指定商品と類似のものであり、当該引用商標は、本件商標よりも先に登録出願されたものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標の構成において出所識別標識として強い印象を取引者、需要者に与えるのは、「MONSTER」の文字部分であるということができる。また、本件商標は、「MONSTER」に他の文字(「TAPIOCA」)を結合した構成のものとして容易に認識、理解されるものであるから、申立人の使用に係る「MONSTER ENERGY」「MONSTER KHAOS」「MONSTER ABSABSOLUTELY ZERO」等の「MONSTER」ファミリー商標(以下、「MONSTER」の欧文字と他の文字等を結合してなる商標を「MONSTERファミリー商標」という場合がある。)と同一の構成の商標として把握される。
本件商標と申立人の使用に係る「MONSTER」及びMONSTERファミリー商標を比較対照すると、これらはたとえ同一又は類似のものということはできないとしても、「MONSTER」の文字の外観、「モンスター」の称呼(音)、外来語「モンスター」の観念を包含するものとして看取される点を共通にし、その意味で外観、称呼及び観念が近似する。
この点に加えて、本件商標と申立人の使用に係るMONSTERファミリー商標は、「MONSTER」と他の文字を結合してなる商標として容易に認識、理解されるものであるから、同種の構成の商標ということができる。
したがって、本件商標と申立人の使用に係る「MONSTER」の類似性は、相当程度高いものであることが明らかである。
(2)本件指定商品等のうち、第35類の飲食料品の小売等に係る役務は、申立人のMONSTERエナジードリンクと類似のものである。加えて、本件指定商品等は、ティータイム、おやつ、休憩、食後のデザート等として日常で消費される茶、コーヒー、ココア、氷、菓子、パン等の飲食料品、飲食料品の小売・卸売、並びに飲食物の提供として把握されるものであるから、申立人のMONSTERエナジードリンクと製造部門、販売場所、原材料、用途、効能、需要者層が一致ないし重複する類似のもの、あるいは関連性が極めて強い商品及び役務というべきである。
(3)本件指定商品等の需要者は一般消費者を多く含むものであり、通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。
(4)前述のとおり、申立人の使用に係る「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、申立人の商品出所識別標識として本件商標の登録出願時及び登録査定時には需要者の間で広く認識されていた。
(5)したがって、本件商標が本件指定商品等に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、申立人の使用に係る「MONSTER」及び申立人会社を直観し、当該商品等が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれがあることが明らかである。
また、本件商標の使用は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所識別力希釈化するものであり、また、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標が使用された場合、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力が希釈化するおそれが高いものであり、また、本件商標の使用は、申立人がこれらの商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、申立人に経済的および精神的損害を与える。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証、同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、米国の飲料メーカーであり、2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」を創設し、米国において販売を開始した(甲7)。
イ 申立人は、我が国においてはアサヒ飲料株式会社を通じて2012年(平成24年)5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」の販売を開始し、その販売量は同年9月には累計100万箱を超え、12月には累計157万箱となった(甲7?甲9)。
ウ 申立人は、我が国において2013年(平成25年)5月に「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ)」(甲10)、2014年(平成26年)8月に「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジー M3)」(甲59)、同年10月に「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー)」(甲60)、2015年(平成27年)7月に「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ)」(甲101)、2017年(平成29年)6月に「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ)」(甲257)、2018年(平成30年)4月に「MONSTER CUBA-LIBRE(モンスターキューバリブレ)」(甲323、甲324)、2019年(平成31年)4月に「MONSTER PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ)」(甲357?甲360)の販売を開始した(以下、これら商品と上記ア及びイの商品をまとめて「申立人商品」という。)。
エ 申立人商品のうち、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」、「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER ENERGY ULTRA」、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」及び「MONSTER PIPELINE PUNCH」の容器の側面には、その中央に「MONSTER」の文字の下に「ENERGY」の文字を、比較的近接して配置してなる別掲1のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下「別掲1商標」という。)が表示されている(甲7、甲10、甲59、甲101、甲130、甲257?甲263、甲357ほか)。
また、「MONSTER COFFEE」の容器には、その中央に別掲1商標の上段のデザイン化された「MONSTER」の文字部分(以下「MONSTERロゴ」という。)と「COFFEE+ENERGY」の文字が2段に表示され、「MONSTER CUBA-LIBRE」の容器には、「MONSTERロゴ」が表示されている(甲60、甲324ほか)。
そして、これら一連の商品を指称する際は、「モンスターエナジー」ブランドと総称されている(甲8、甲10、甲59、甲60、甲129、甲130ほか)。
オ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、別掲1商標を表示している(甲73?甲80、甲82ほか)。
カ 我が国において、別掲1商標が表示されたステッカー、衣類、帽子、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲48、甲98ほか)。
キ 平成25年7月以降、我が国の税関において、申立人の商標(国際登録第1048069号など)に係る商標権を侵害する疑いがある貨物(帽子、ショートパンツ、Tシャツなど)が多数発見されている(甲169?甲224)。
ク JMR生活総合研究所による消費者調査 No.196「エナジードリンク(2014年(平成26年)7月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であった(甲311)。また、同消費者調査 No.232「エナジードリンク(2016年(平成28年)8月版)」でも、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」であり、2位は「モンスターエナジー」であった(甲312)。
ケ 有限会社飲料総研の調査によれば、我が国における2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)。
コ ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年(平成26年)4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTER ENERGY」であった(甲319)。
サ 申立人及びアサヒ飲料株式会社は、本件商標の登録出願の日前から、申立人商品のキャンペーンに係るニュースリリース、ポスターなどで申立人商品を「モンスター」と表示しているものが見受けられ、また、両社以外のウェブページにおける当該キャンペーンについてのポスターやその他の記事においても「MONSTER」及び「モンスター」の文字が表示されているところ、「MONSTER」及び「モンスター」の文字が、必ずしも統一的に使用されているものではなく、当該ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等には、申立人商品の画像又は別掲1商標若しくは「モンスターエナジー」の文字が同時に表示又は掲載されている(甲69、甲71、甲79、甲101?甲103、甲111、甲113、甲115、甲118、甲119、甲124ほか)。
(2)上記(1)のとおり、申立人は、我が国において、2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後現在まで、計9種の申立人商品を販売するとともに、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じ、申立人商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であったこと、申立人商品の認知度が2014年(平成26年)において、その数値は31%と47.6%と差異はあるものの、いずれの調査でも第2位であったことが認められ、2016年(平成28年)の認知度はその数値は不明であるものの2位であったと確認できることから、申立人商品は、本件商標の登録出願の日(平成30年7月25日)前から、登録査定日(令和元年5月13日)はもとより現在においても継続して、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されていることがうかがい知ることができる。
そして、申立人商品は、そのほとんどの容器の中央に「MONSTER ENERGY」の文字が別掲1のとおりの態様で表示されていること、及びニュースリリース、各種記事などにおいて「MONSTER ENERGY」「モンスターエナジー」と表示され、「モンスターエナジー」と称されていることから、「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字は、いずれも本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人及びアサヒ飲料株式会社の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されていることがうかがい知ることができる。
そうすると、「MONSTER ENERGY」の文字からなり、指定商品中に「エナジードリンク」を含む引用商標2は、申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間においては、広く認識されていることが推認できるものである。
しかしながら、申立人商品の広告宣伝は、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じて行われているものの、老若男女を問わず幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じたものとはいえないばかりか、我が国における申立人商品の清涼飲料に対する市場占有率等も確認することができないこと等を総合的に判断すると、申立人商品及び引用商標2は、幅広い需要者層を有する一般的な清涼飲料の分野においてまでも、取引者及び需要者の間に広く認識されるに至っているとまでは認めることができない。
また、申立人商品は、その容器に「MONSTER」及び「ENERGY」の各文字が比較的近接して表示されているものがほとんどであり、MONSTERロゴのみが表示されている商品である「MONSTER CUBA-LIBRE」についての出荷数、シェア等の販売実績は確認できない。
さらに、「MONSTER」及び「モンスター」の文字は、ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等において、申立人又は申立人商品の略称として表示又は掲載が見受けられる場合があるとしても、それらの文字は常に申立人商品又は「モンスターエナジー」若しくは別掲1商標の文字と共に表示又は掲載されていること及び申立人商品は「モンスターエナジー」ブランドと総称されている実情があることも踏まえると、申立人商品の獲得した上記認知度は、「Monster Energy」(モンスターエナジー)を中心とした「モンスターエナジー」ブランドのエナジードリンクとして、集合的に生じているというべきである。
そして、「MONSTER」及び「モンスター」の文字は、宣伝文句などにおいて申立人又は申立人商品の略称として用いられる場合があるとしても、それらは必ずしも統一的に使用されているものではなく、申立人商品は上記のとおり「モンスターエナジー」ブランドと総称されることもあり、また、申立人商品の認知度を紹介するインターネット記事情報(甲311、甲319)で「モンスターエナジー」(MONSTERENERGY)の認知度が紹介されているとしても、「MONSTER」及び「モンスター」の文字単独での認知度は示されていない。
そうすると、申立人商品又は「モンスターエナジー」の文字若しくは別掲1商標と関連なく表示されている「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字までもが、需要者において申立人商品を表示するものと理解されるとはいい難い。
したがって、「MONSTER」の文字からなる引用商標1は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、引用商標3及び引用商標4は、いずれもそれらが使用された指定商品又は指定役務についての販売等の取引実績が確認できないから、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標3及び引用商標4の周知性の程度を推し量ることはできない。よって、引用商標3及び引用商標4が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
以上を総合勘案すると、引用商標2は、申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間においては、広く認識されていることが推認できるものの、引用商標1、引用商標3及び引用商標4は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものとは、認めることができない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標と引用商標1の比較
ア 本件商標について
本件商標は、「TAPIOCA MONSTER」の文字を標準文字で表してなるところ、同書同大、等間隔で外観上まとまりよく一体的に表されており、「TAPIOCA」及び「MONSTER」の各文字が、それぞれ「タピオカ(cassava から製した食用のでんぷん)」及び「怪物。化物。」(参照:「リーダーズ英和辞典」研究社)の語義を有するものであるとしても、これより生じる「タピオカモンスター」の称呼は、格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼できるものであり、また、当該語は、辞書等に載録されているものではなく、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないため、構成全体からは特定の観念を生じないとみるのが相当である。
そして、本件商標は、たとえその構成中の「TAPIOCA」の文字が、「タピオカ」の意味を有する語として一般に知られているとしても、かかる構成においては、該文字部分が指定商品及び指定役務の品質、質等を表示したものとして認識されることはない。
加えて、本件商標は、その構成中のいずれかの文字部分を分離抽出し、他の商標と比較検討することが許されるというべき事情は見いだせない。
また、上記1のとおり、「MONSTER」の文字は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことから、本件商標は、その構成中「MONSTER」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということはできない。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「タピオカモンスター」のみの称呼を生じ、特定の観念を生じないものといわなければならない。
イ 引用商標1について
引用商標1は、「MONSTER」の文字を標準文字で表してなり、該文字に相応し「モンスター」の称呼を生じ、「怪物。化け物。」の観念を生じるものである。
なお、「MONSTER」の文字は、上記1のとおり申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
ウ 商標の比較
本件商標と引用商標1との類否を検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「TAPIOCA MONSTER」と引用商標1の構成文字「MONSTER」の比較において、両者は「TAPIOCA」の文字の有無という差異を有し、これらの差異が両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、両者は明確に区別できる。
次に、本件商標から生じる「タピオカモンスター」と引用商標1から生じる「モンスター」の称呼を比較すると、前半部における「タピオカ」の音の有無という差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、聞き誤るおそれはない。
さらに、観念においては、本件商標は特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標1からは「怪物。化け物。」の観念が生じるから、両者は、観念上、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観及び称呼が明らかに相違し、観念において相紛れるおそれがないから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者及び需要者に与える印象、記憶等を総合して全体的に考察すれば、両者を同一又は類似の商品について使用しても、相紛れるおそれはないとみるのが相当であるから、非類似の商標というべきである。
(2)小括
本件商標は、上記(1)のとおり、引用商標1とは類似する商標ではないから、本件商標の指定商品及び指定役務に引用商標の指定商品と同一又は類似の商品及び役務が含まれるとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人は、本件商標は申立人の使用に係る「MONSTER」及びMONSTERファミリー商標(以下、これらを「申立人商標」という場合がある。)との関係で出所の混同を生じるおそれがある旨主張していると認められるので、まず、その点について検討する。
(1)申立人商標の周知性
上記1のとおり、引用商標2は、「MONSTER ENERGY」の文字からなり、指定商品中に「エナジードリンク」を含むものであるところ、「MONSTER ENERGY」の文字は、申立人商品を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間においては、広く認識されていることがうかがえるものの、「MONSTER」からなる引用商標1、「MONSTER」の文字を構成中に含む引用商標3及び引用商標4は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の取引者、需要者において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、他に引用商標2を除く申立人商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の取引者、需要者において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めるに足りる事情は、見いだせない。
(2)本件商標と申立人商標との類似性の程度
本件商標は、上記2(1)アのとおり、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「タピオカモンスター」の称呼を生じ、特定の観念を生じるものではない。その他、本件商標の構成態様において、「MONSTER」の文字部分が識別標識として着目されるとすべき特段の事情も見いだせない。
そして、本件商標と申立人商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではない。
よって、本件商標と申立人商標は、たとえ各商標が「MONSTER」の文字を構成中に含むとしても、その類似性の程度は低いというべきである。
(3)本件商標の指定商品及び指定役務と申立人商品との関連性
本件商標の指定商品は、飲料や菓子などの飲食料品の一種であり、指定役務は飲食料品を提供するサービスの一種であるから、清涼飲料の一種である申立人商品とは、飲食料品店を通じて一般消費者に向けて流通する商品である点や、飲食を求める一般消費者に向けたサービスである点において、販売部門や流通経路に関連性があり、需要者の範囲も一部重複するものといえる。
(4)小括
上記(3)のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務と申立人商品とは、販売部門や流通経路、また需要者層においてある程度関連性があり、上記(1)のとおり、引用商標2が申立人商品を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間においては、広く認識されていることが推認できるとしても、引用商標2を除く申立人商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品又は役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることができないことに加え、上記(2)のとおり、本件商標と申立人商標は、類似性の程度は低いものであることからすると、本件商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標と申立人商標は、商標権者がこれをその指定商品又は指定役務に使用しても、取引者、需要者をして申立人商標を連想又は想起することはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記2(1)アのとおり、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本件商標は、上記3のとおり、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして申立人の使用商標を連想又は想起させることのないものである。
その他、その商標登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足りる具体的な証拠の提出もない。
そうすると、本件商標は、申立人の使用商標の信用力、顧客吸引力にフリーライドするものとはいえず、また、他に商標権者が本件商標をその指定役務に使用することが社会一般の道徳に反し公正な取引秩序を乱す、あるいは国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号のいずれにも該当せず、同条第1項の規定に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲 別掲1



異議決定日 2020-11-26 
出願番号 商願2018-95128(T2018-95128) 
審決分類 T 1 651・ 272- Y (W303543)
T 1 651・ 22- Y (W303543)
T 1 651・ 26- Y (W303543)
最終処分 維持  
前審関与審査官 白鳥 幹周 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 小出 浩子
小田 昌子
登録日 2019-05-31 
登録番号 商標登録第6148759号(T6148759) 
権利者 片岡物産株式会社
商標の称呼 タピオカモンスター、モンスター 
代理人 柳田 征史 

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