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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W141825
管理番号 1369143 
審判番号 取消2019-670015 
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-04-24 
確定日 2020-09-10 
事件の表示 上記当事者間の国際登録第1129908号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1129908号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2012年3月8日にRepublic of Koreaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年6月26日に国際商標登録出願、第14類、第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成26年9月26日に設定登録され、その後、マドリッド協定議定書第6条(4)に基づく基礎出願又は基礎登録の効力の一部終了により、その指定商品は第14類「Shoe ornaments of precious metal;memorial tablets of precious metals;boxes of precious metal;gemstones;coins.」、第18類「Leather leashes;valves of leather;leather for shoes;umbrellas;imitation leather;canes:cosmetic bags sold empty.」及び第25類「Clothing of leather;golf shirts;golf caps;shoes excluding sports shoes;sneakers;leather shoes excluding sports shoes;sports jackets;infants’ clothing;belts[clothing];men’s socks;inner soles.」の指定となったものである。
そして、本件審判の請求の登録は、令和元年5月10日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年5月10日から令和元年5月9日までの期間(以下「要証期間」という。)である。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように省略して記載する。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用されていないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)JUN INDUSTRY CO.,LTD.の通常使用権について
商標使用許諾契約書(乙3)は、2014年5月15日付けで被請求人とJUN INDUSTRY CO.,LTD.(以下「JUN社」という。)との間で締結され、被請求人はJUN社の代表者であるから、JUN社は本件商標の通常使用権者であると主張している。しかしながら、被請求人が2014年5月15日時点で、JUN社の代表者であったかどうかは不明である(乙2)。
また、当該契約書に示されているJUN社の事業者登録番号が乙2の商業登記簿謄本に示されていないため、乙2の法人と一致しているのか定かではない。
加えて、当該契約書には、「商標権者は、マドリッド国際登録の通常使用権を、登録されている全ての国に対し、その商標の存続期間中には、使用権者に許諾する」とあり、日付が2014年5月15日となっているところ、日本の国内登録は2014年9月26日であるため、そもそも当該契約書は日本における使用権を示す根拠にはなり得ない。
以上より、乙2及び乙3は、通常使用権を示す証拠として採用することはできない。
(2)ア JUN社のウェブサイト(乙4)は、韓国語でのみ表示されており、日本の需要者・消費者を対象としたものでないことは明らかである。
靴の写真(乙5ないし乙8)に示されている靴は、その製造地、販売地が不明であることから、商標法第2条第3項に掲げる行為が日本で行われたか明らかではないから、日本における使用行為を示すものではない。
イ インターネット通信販売サイト「Qoo10」、「BUYMA」及び「楽天」のウェブページ画面(乙9)からは、表示される靴がいつサイト上に存在していたのか、何者によって販売されているのか不明であり、要証期間内にこれらが被請求人によって販売されていたのか不明である。
ウェブページのプリントアウト(乙10ないし乙13、乙15ないし乙20及び乙25ないし乙29)は、2019年8月13日に印刷されたと解されるものであって、要証期間内にこれらのページが本当に存在したのかどうかは不明である。
また、注文管理データ画面(乙23及び乙32)は、当該画面の出所・作成時期が不明であって証拠とはなりえない。
さらに、JUN社の銀行口座の入出金取引明細書(乙24及び乙33)は、インターネット通信販売サイト「BUYMA」(乙10。以下、単に「BUYMA」という。)に掲載されている「【PaperPlanes】PP1464 ウェーブパターン エア スニーカー」の「スニーカー」(以下「使用商品」という。)の取引の事実を示すものではなく証拠とはなりえない。
ウ 以下に述べるとおり、使用商品が日本において被請求人又はその通常使用権者によって販売されたとは認められない。
(ア)使用商品は日本で未発売の商品であること
使用商品が掲載されているBUYMA(乙10)の「テーマ」の欄には「先取り!日本未入荷」と記載されており、同部分のリンクをクリックすると、「日本にまだ入荷してない商品。海外でしか手に入らないもの。」と説明されている(甲3)。すなわち、使用商品は、日本で公式に販売されている商品でなく、海外でしか入手できないことは明らかである。
(イ)使用商品の取引者であるvovooについて
BUYMAにおける使用商品の「お問い合わせ」画面(乙14)に表示されている「vovooさん」のリンクをクリックすると、「vovooは韓国ソウル在住の小さくても暖かいお店です。バイマのパーソナルショッパー活動はまだ始めたばかりですが・・・」と紹介されており(甲4)、「パーソナルショッパー」については、「海外の商品を代わりに購入、日本へお届け!」と説明されている(甲5)。
甲4には、被請求人又はJUN社との関係については一切言及されておらず、甲5からみても、vovooは、単に韓国ブランド商品を国外在住者のために購入し、発送するサービスを行っている者にすぎない。
すなわち、被請求人は、vovooに本件商標を使用した商品を譲渡及び輸出することについて、黙示の許諾を与えている旨述べているが、これを証明する証拠の提出はなく、両者の間に通常使用権の許諾があったことを推認できる程の密接な関連性も見いだせない。
(ウ)使用商品の取引は、日本における使用とは認められない点について
vovooは、「パーソナルショッパー」という「海外の商品を代わりに購入、日本へお届け」する者であって、日本在住の消費者の代わりに海外の商品を購入・依頼人に届けるという輸入の代行業者にすぎない。乙10ないし乙33で示されている取引事実も2人の日本在住の個人からオーダーを受けて、それぞれに1足のスニーカーを届けたというものであって、まさに個人輸入の代行といえるものである。
そして、そのような個人輸入代行行為が商標法第50条第2項でいう「日本国内における使用」に該当しないことは知財高裁平成17年(行ケ)第10817号審決取消請求事件(甲6)からも明らかである。
本件もこれと全く同様であって、日本国外(韓国)に所在する者(vovoo)が日本国外(韓国)に所在する商品(使用商品)について日本国内に所在する者との間で譲渡契約を締結し、使用商品を韓国から日本国内に発送したとしても、vovooによる日本国内における譲渡に該当するものとはいえない。
また、使用商品を輸入するのは被請求人(又はその通常使用権者)ではなく、使用商品を購入した顧客であって、vovooが使用商品を発送したことをもって日本国内における「輸入」には該当しない。
さらに、使用商品は、日本の一個人が自身の使用のために輸入したものであるところ、これは、業(業務)としての生産、証明又は譲渡の対象となる物とはいえないから、商標法上の商品ということはできない。
(3)本件商標と使用商標の同一性について
被請求人が使用に係る商標として挙げる使用商品から靴紐を取った写真(乙6ないし乙8)から認められる商標(別掲2のとおりの構成からなる。以下「使用商標」とい。)と本件商標とを比較すると、円図形の中に表示された被請求人がいうところの「紙飛行機」を表した図形が、本件商標では垂直方向から右側に傾いているのに対し、使用商標は垂直方向に向いている点で異なる。
当該図形は極めてシンプルな構成からなるものであり、このような構成においては、矢印状になっている先端部分がどの方向を指しているかが商標の外観全体に与える印象は大きい。使用商標は真ん中を挟んで左右同一の線対称の図形となっているのに対し、本件商標は右に傾いている点が看者の目にとまる特徴といえる部分であって、両者は外観において同視できるとはいえない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙33を提出している。
1 本件商標の使用事実の要点
本件商標の通常使用権者(以下、単に「通常使用権者」という。)は、要証期間内に我が国においてその請求に係る指定商品中、第25類「shoes excluding sports shoes;sneakers;」(靴(運動靴及び運動用特殊靴を除く。),スニーカー)について、本件商標を使用している。
2 本件商標の使用の事実
(1)本件商標の商標権者(以下、単に「商標権者」という。)は、主に靴の製造販売を業とする韓国の企業JUN社の代表者である(乙2ないし乙4)。
JUN社は、通常使用権者である(乙3)。
JUN社は、スニーカーなどの靴類及びその包装に、本件商標又はこれと社会通念上同一の商標を付して販売している(乙4)。
「paperplanes」のブランドに係る靴類には、靴、タグ及び商品の包装に本件商標と社会通念上同一の商標が表示されている(乙5ないし乙8)。
我が国では、インターネット通信販売サイト「Qoo10」、「BUYMA」及び「楽天」などを通じて販売されている(乙9ないし乙13)。
使用商品は、ベロの部分に使用商標が表示されている(乙6ないし乙8)。
(2)2019年4月における使用
使用商品に関し、2019年4月10日付けで問い合わせがあった(乙14)。また、同日に、白25.5cmについて、注文を受け、同月15日に発送され、同月20日に商品が到着した(乙15ないし乙20)。
韓国郵便局の発送伝票の写真(乙21)には、発送者、トラッキングナンバー、宛先名及び住所、「2019.04.15」の日付が記載されており、乙15ないし乙20の販売実績詳細を裏付けている。
韓国郵便局の追跡サービスのウェブページ画面(乙22)には、トラッキングナンバー、受取者、受取日「2019-04-20」が記載されており、乙15ないし乙20の販売実績詳細の内容を裏付けている。
JUN社のvovooからの注文に関する注文管理データ画面(乙23)は、2019年4月11日に、vovooから使用商品の白の25.5cmに関して注文があったことを示している。
2019年4月11日における、JUN社の銀行口座の入出金取引明細書(乙24)は、同日にvovooより支払いがあったことを示している。
すなわち、BUYMAを通じて、2019年4月10日に、使用商品の白の25.5cmの注文を受けたvovooは、同月11日にJUN社に同商品の発注及びその代金の支払いをし、同月15日に、商品を韓国から日本に発送し、同月20日に日本の顧客に届いたものである。
(3)2018年11月から12月における使用
使用商品に関し、2018年11月29日に、黒23.5cmについて、注文を受け、同月30日に発送され、同年12月8日に商品が到着した(乙25ないし乙29)。
韓国郵便局の発送伝票の写真(乙30)には、発送者、トラッキングナンバー、宛先名及び住所、「2018.11.30」の日付が記載されており、乙25ないし乙29の販売実績詳細を裏付けている。
韓国郵便局の追跡サービスのウェブページ画面(乙31)には、トラッキングナンバー、受取者、受取日「2018-12-08」が記載されており、乙25ないし乙29の販売実績詳細の内容を裏付けている。
JUN社のvovooからの注文に関する注文管理データ画面(乙32)は、2018年11月29日に、vovooから使用商品の黒の23.5cmに関して注文があったことを示している。
2018年11月29日における、JUN社の銀行口座の入出金取引明細書(乙33)は、同日にvovooより支払いがあったことを示している。
すなわち、BUYMAを通じて、2018年11月29日に、使用商品の黒の23.5cmの注文を受けたvovooは、同日にJUN社に同商品の発注及びその代金の支払いをし、同月30日に、商品を韓国から日本に発送し、同年12月8日に日本の顧客に届いたものである。
(4)商標の使用者
通常使用権者であるJUN社が、韓国において、商標を付した商品を製造し、BUYMAにおける販売者vovooは、その商品が製造された当初のままの形で流通させている。そのような場合には、それが商標権者等以外の販売者により取り扱われているとしても、当該登録商標は、通常使用権者であるJUN社により使用されているといえる。
また、vovooは、「paperplanes」の正規品の販売者と認められた者である。すなわち、本件商標を使用した商品を、譲渡及び輸出することを前提にJUN社らから購入する者であり、本件商標を使用した商品を譲渡及び輸出することについて、黙示の許諾を受けているといえる者である。したがって、vovooも、通常使用権者に相当する者である。
また、vovooにより、本件商標が付された商品が韓国から日本に輸入されたが、在外者による輸入について、「登録商標が付された商品が、我が国において流通に供されるために輸入されたときには、その輸入行為をとらえて、これを、当該外国法人による同法2条3項2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に該当する「使用」行為と解しても差し支えないというべきである」(東京高裁平成15年7月14日(平成14年(行ケ)第346号)と判示されている。したがって、本件商標に係る取引について、通常使用権者による使用とみなすことができる。
(5)使用商標
乙6ないし乙8の写真のスニーカーのベロの部分には、使用商標が表示されている。本件商標との違いは、円形の図形部分の中に表示された紙飛行機が、本件商標では垂直方向から右側に少し傾いているのに対し、使用商標では垂直方向に向いている点である。このように、本件商標と使用商標との差異は、図形部分の僅かな傾きのみであって、使用商標は、本件商標とは社会通念上同一の商標といえる。
第4 当審の判断
1 請求人及び被請求人の提出に係る証拠並びに被請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)JUN社は、靴の製造、卸売、小売及び輸出入等を業とする韓国の企業である(乙2)。
(2)商標権者は、2016年(平成28年)1月12日の就任以降、JUN社の社内取締役である(乙2)。
(3)商標権者は、2014年(平成26年)5月15日に、JUN社に対し、本件商標について、商標権の存続期間中における使用を許諾した(乙3)。
(4)JUN社は、韓国語で表示された自社のウェブサイトにおいて、「paperplanes」のブランドの靴(以下「JUN社商品」という。)を価格(韓国ウォン)とともに掲載している(乙4)。
(5)JUN社商品には、その商品、商品のタグ及び商品の包装に「paperplanes」の欧文字及び円の中に2つの三角形と1つの四角形がそれぞれ接するように配された図形からなる商標が付されている(乙5ないし乙8)。また、JUN社商品に付されたタグには、他の外国語による表示と並べて、日本語による表示も記載されている(乙5)。
(6)JUN社商品が日本語で表示されたインターネット通信販売サイトである「Qoo10」、「BUYMA」及び「楽天」のウェブサイトに価格(日本円)とともに掲載されている(乙9)。
(7)BUYMAのウェブサイトには、使用商品(「【PaperPlanes】PP1464 ウェーブパターン エア スニーカー」の名称の「スニーカー」)が掲載されている(乙10)。当該ウェブサイトは日本語で記載されており、色・サイズの選択とともに、使用商品の価格は日本円で表示されている(乙10)。
(8)使用商品には、黒、グレー及び白の3色があり、使用商品であるスニーカーのベロの部分には、使用商標が付されている(乙6ないし乙8及び乙11ないし乙13)。
(9)vovooは、韓国ソウル在住の販売者であり、BUYMAの「パーソナルショッパー」(海外の商品を代わりに購入し、日本へ届ける者)である(甲4及び甲5)。
(10)2019年(平成31年)4月10日にBUYMAのウェブサイトにおいて、ニックネームが「BM53753A92F4」の顧客(以下「A氏」という。)が、使用商品のグレーの25.5cmの在庫について、日本語により問い合わせをし、これに対し、vovooが、日本語により購入可能である旨の回答をした(乙14)。
(11)vovooは、2019年(平成31年)4月10日に東京都在住のA氏から使用商品の白の25.5cmを受注した(乙15ないし乙20)。
(12)vovooは、2019年(平成31年)4月11日にJUN社に対し、使用商品の白の25.5cmを注文し(乙23及び被請求人の主張)、同日にJUN社の銀行口座に入金した(乙24)。
(13)vovooは、A氏へ使用商品の白の25.5cmを2019年(平成31年)4月15日に発送し、A氏は、同月20日に当該商品を受け取った(乙15ないし乙22)。
(14)vovooは、2018年(平成30年)11月29日に東京都在住でニックネームが「けろはる」の顧客(以下「B氏」という。)から使用商品の黒の23.5cmを受注した(乙25ないし乙29)。
(15)vovooは、2018年(平成30年)11月29日にJUN社に対し、使用商品の黒の23.5cmを注文し(乙32及び被請求人の主張)、同日にJUN社の銀行口座に入金した(乙33)。
(16)vovooは、B氏へ使用商品の黒の23.5cmを2018年(平成30年)11月30日に発送し、B氏は、同年12月8日に当該商品を受け取った(乙25ないし乙31)。
2 前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
本件商標は、別掲1のとおり、円の中に2つの三角形と1つの四角形がそれぞれ接するように配された図形及びその下に「paperplanes」の欧文字を表した構成からなるものである。
本件商標の構成中の欧文字部分は、一般に親しまれた語である「paper」及び「plane」の両語を結合させたものと容易に認識、理解される構成であることから、その構成文字に相応して「ペーパープレーンズ」の称呼を生じ、「紙飛行機」といった意味合い(観念)を想起させるものである。
そして、本件商標の構成中の図形部分は、その構成及び欧文字部分から想起される意味合いが相まって、円の中に紙飛行機を表したとの印象を与えるものである。
他方、使用商標は、別掲2のとおり、色彩を異にするものの、いずれの使用商標も、円の中に2つの三角形と1つの四角形がそれぞれ接するように配された図形及びその下に「paperplanes」の欧文字を表した構成からなるものである。
使用商標の構成中の欧文字部分は、本件商標と同様に、「ペーパープレーンズ」の称呼を生じ、「紙飛行機」といった意味合い(観念)を想起させるものである。
また、使用商標の構成中の図形部分は、本件商標の構成中の図形部分と比べて、僅かに反時計回りに回転しているとしても、同様の構成態様からなるものである。
そして、本件商標と同様に、欧文字部分から想起される意味合いと相まって、当該図形部分は、円の中に紙飛行機を表したとの印象を与えるものである。
そうすると、本件商標と使用商標とは、欧文字部分において、構成文字を共通にし、同一の称呼及び観念を生じるものであり、また、図形部分においては、いずれも円の中に紙飛行機を表したとの印象を与えるものであって、外観において同視されるものである。
してみると、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標というべきである。
(2)使用商品について
ア 使用商品は「スニーカー」であるから、本件商標の指定商品中、「shoes excluding sports shoes;」の範ちゅうに含まれる商品であり、また、「sneakers;」と同一の商品である。
イ 前記1(1)のとおり、JUN社は、靴の製造、卸売、小売及び輸出入等を業とする韓国の企業であり、前記1(4)のとおり、同社のウェブサイトには、JUN社商品(靴)が掲載されている。
そうすると、JUN社商品は、JUN社の製造に係る商品であるといえる。
また、前記1(5)のとおり、JUN社商品には、「paperplanes」の欧文字及び円の中に2つの三角形と1つの四角形がそれぞれ接するように配された図形からなる商標が付されており、前記1(8)のとおり、使用商品には、別掲2のとおりの構成からなる使用商標が付されていたものである。
そうすると、使用商品もJUN社商品であるといえるから、使用商品は、JUN社の製造に係る商品であるといえる。
そして、使用商品には使用商標が付されていたのであるから、使用商品には、JUN社により使用商標が付されていたということができる。
(3)使用時期について
前記1(13)のとおり、vovooは、A氏へ使用商品の白の25.5cmを2019年(平成31年)4月15日に発送し、A氏は、同月20日に当該商品を受け取ったのであるから、vovooは、平成31年4月20日にA氏に対し使用商品を譲渡したといえる。
また、前記1(16)のとおり、vovooは、B氏へ使用商品の黒の23.5cmを2018年(平成30年)11月30日に発送し、B氏は、同年12月8日に当該商品を受け取ったのであるから、vovooは、平成30年12月8日にB氏に対し使用商品を譲渡したといえる。
加えて、前記(2)のとおり、使用商品には、使用商標が付されていたのであるから、vovooは、平成30年12月8日及び同31年4月20日にA氏又はB氏に対し使用商品に使用商標を付したものを譲渡したといえる。
そして、平成30年12月8日及び同31年4月20日は、いずれも要証期間内である。
(4)使用者について
ア 前記1(3)のとおり、商標権者は、2014年(平成26年)5月15日に、JUN社に対し、本件商標について、商標権の存続期間中における使用を許諾した。
加えて、前記1(2)のとおり、商標権者は、2016年(平成28年)1月12日の就任以降、JUN社の社内取締役であるから、JUN社は、本件商標の通常使用権者であるとみて差し支えない。
イ 前記1(9)のとおり、vovooは、韓国ソウル在住の販売者であって、BUYMAの「パーソナルショッパー」(海外の商品を代わりに購入し、日本へ届ける者)であり、前記1(10)のとおり、vovooは、BUYMAにおいて、顧客からの問い合わせを日本語で受けて、日本語で回答している。
そして、前記1(6)及び(7)のとおり、BUYMAは、日本語で表示されたインターネット通信販売サイトであり、商品の価格も日本円で表示されている。
そうすると、vovooは、韓国ソウル在住であるものの、BUYMAにおいて、日本の顧客に向けて商品を販売していること明らかである。
ウ 前記1(11)ないし(13)のとおり、vovooは、2019年(平成31年)4月10日にA氏から使用商品の白の25.5cmを受注し、同月月11日にJUN社に対し同商品を注文し、同日にJUN社の銀行口座に入金し、同月15日に同商品を発送した。
そうすると、JUN社は、2019年(平成31年)4月11日から同月15日までの間に、vovooに対し、使用商品の白の25.5cmを譲渡したものと推認することができる。
また、前記1(14)ないし(16)のとおり、vovooは、2018年(平成30年)11月29日にB氏から使用商品の黒の23.5cmを受注し、同日にJUN社に対し同商品を注文し、同日にJUN社の銀行口座に入金し、同月30日に同商品を発送した。
そうすると、JUN社は、2018年(平成30年)11月29日又は同月30日に、vovooに対し、使用商品の黒の23.5cmを譲渡したものと推認することができる。
そして、前記イのとおり、vovooは、韓国ソウル在住であるものの、BUYMAにおいて、日本の顧客に向けて商品を販売していること明らかであることに加え、前記1(5)のとおり、JUN社商品に付されたタグには、他の外国語による表示と並べて、日本語による表示も記載されていることからすると、JUN社は、vovooが使用商品を日本の消費者向けに販売することを認識しつつ、vovooに対し、使用商品を譲渡したもの推認することができる。
エ 前記ア及びウ並びに前記(2)イ及び(3)を総合すると、通常使用権者であるJUN社は、使用商品に使用商標を付したものを日本の消費者向けに販売することを認識しつつ、vovooに対して譲渡し、vovooは、要証期間内にA氏及びB氏に対し当該商品を譲渡したということができる。
かかる事実によれば、使用商標は、要証期間内に通常使用権者であるJUN社によって、日本国内において、vovooを通じて使用をされたものと評価することができる。
したがって、使用商標の使用者は、通常使用権者であるJUN社である。
(5)小括
以上によれば、通常使用権者であるJUN社が、要証期間内である平成30年12月8日及び同31年4月20日に、請求に係る指定商品中「shoes excluding sports shoes;sneakers;」の範ちゅうに含まれる「スニーカー」に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付したものを譲渡したと認めることができる。
この行為は、商標法第2条第3項第2号にいう「商品・・・に標章を付したものを譲渡・・・する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
(1)通常使用権について
ア 請求人は、商標使用許諾契約書(乙3)は、2014年(平成26年)5月15日付けで被請求人(商標権者)とJUN社(代表者は被請求人(商標権者))との間で締結されているが、被請求人(商標権者)がその時点において、JUN社の代表者であったかどうかは不明である(乙2)旨主張している。
前記1(2)のとおり、商標権者がJUN社の社内取締役に就任したのは、2016年(平成28年)1月12日であるから、当該許諾契約書の作成時点では、商標権者はJUN社の社内取締役であったとはいえないが、たとえ商標権者がJUN社の社内取締役でなかったとしても、代表者でもなかったということはできず、また、少なくとも代表者ではなかったというべき事情は認められない。
したがって、2014年(平成26年)5月15日の時点で商標権者がJUN社の社内取締役ではなかったからといって、JUN社が通常使用権者でなかったということはできない。
仮に、商標使用許諾契約書(乙3)に疑義があるとしても、要証期間内である平成30年12月8日及び同31年4月20日の時点においては、商標権者はJUN社の社内取締役であったのだから、少なくとも、その時点においては、商標権者は、JUN社に対し、本件商標の使用について黙示の許諾があったものと推認することができる。
以上により、JUN社は、通常使用権者であるといえる。
イ 請求人は、商標使用許諾契約書(乙3)に示されているJUN社の事業者登録番号が乙2の商業登記簿謄本に示されていないため、乙2の法人と一致しているのか定かではない旨主張している。
証拠によれば、商標使用許諾契約書(乙3)にはJUN社の事業者登録番号が記載されており、当該番号がJUN社の商業登記簿謄本(乙2)には記載が認められない。
しかしながら、商標使用許諾契約書(乙3)と商業登記簿謄本(乙2)には、いずれも商標権者の氏名及びJUN社の名称が記載され、当該記載は一致しているから、事業者登録番号の記載の有無にかかわらず、両証拠に記載の法人は一致しているものとみて差し支えないというべきである。
仮に、商標使用許諾契約書(乙3)に疑義があるとしても、黙示の許諾があったものと推認することができること前記アのとおりである。
ウ 請求人は、商標使用許諾契約書(乙3)には、「商標権者は、マドリッド国際登録の通常使用権を、登録されている全ての国に対し、その商標の存続期間中には、使用権者に許諾する」とあり、日にちが2014年5月15日となっているところ、日本の国内登録は2014年9月26日であるため、そもそも当該契約書は日本における使用権を示す根拠にはなり得ない旨主張している。
しかしながら、たとえ本件商標の設定登録日(平成26年9月26日)が商標使用許諾契約書(乙3)の日付(2014年(平成26年)5月15日)の後であるとしても、当該契約書の記載からして、契約書の日付の後に設定登録された我が国における本件商標の使用権が除外されていると解釈することはできないというべきである。
なお、商標使用許諾契約書(乙3)に疑義があるとしても、黙示の許諾があったものと推認することができること前記アのとおりである。
(2)使用商標の使用について
ア 請求人は、靴の写真(乙5ないし乙8)に示されている靴は、その製造地、販売地が不明であることから、商標法第2条第3項に掲げる行為が日本で行われたか明らかではないから、日本における使用行為を示すものではない旨主張している。
また、請求人は、インターネット通信販売サイト「Qoo10」、「BUYMA」及び「楽天」のウェブページ画面(乙9)からは、表示される靴がいつサイト上に存在していたのか、何者によって販売されているのか不明であり、要証期間内にこれらが被請求人によって販売されていたのか不明である旨、ウェブページのプリントアウト(乙10ないし乙13、乙15ないし乙20及び乙25ないし乙29)は、2019年8月13日に印刷されたと解されるものであって、要証期間内にこれらのページが本当に存在したのかどうかは不明である旨、注文管理データ画面(乙23及び乙32)は、当該画面の出所・作成時期が不明である旨、JUN社の銀行口座の入出金取引明細書(乙24及び乙33)は、BUYMAに掲載されている使用商品の取引の事実を示すものではない旨主張している。
しかしながら、たとえ、個々の証拠のみをみれば請求人の主張のとおりであるとしても、被請求人提出の証拠全体を踏まえて総合的にみれば、前記2のとおり判断するのが相当である。
イ 請求人は、使用商品は、日本で公式に販売されている商品でなく、海外でしか入手できない旨主張している。
しかしながら、たとえ、使用商品が我が国において公式に販売されている商品ではないとしても、本件商標が我が国において使用をされていること前記2のとおりである。
ウ 請求人は、vovooは、日本在住の消費者の代わりに海外の商品を購入・依頼人に届けるという輸入の代行業者にすぎず、2人の日本在住の個人からオーダーを受けて、それぞれに1足のスニーカーを届けたというものであって、個人輸入の代行といえるところ、個人輸入代行行為が商標法第50条第2項でいう「日本国内における使用」に該当しない旨主張している。
また、請求人は、日本国外(韓国)に所在する者(vovoo)が日本国外(韓国)に所在する商品(使用商品)について日本国内に所在する者との間で譲渡契約を締結し、使用商品を韓国から日本国内に発送したとしても、vovooによる日本国内における譲渡に該当しない旨主張している。
ところで、「商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは、特段の事情のある場合はさておき、商標権者等が、その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり、登録商標を使用する場合のみを指すのではなく、商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において、流通業者等が、商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり、当該登録商標を使用する場合を含むものと解するのが相当である。このように解すべき理由は、今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば、商品を製造した者が、自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず、むしろ、中間流通業者が介在した上で、消費者に販売することが常態であるといえるところ、このような中間流通業者が、当該商品を流通させる過程で、当該登録商標を使用している場合に、これを商標権者等の使用に該当しないと解して、商標法第50条不使用の対象とすることは、同条の趣旨に反することになるからである。」(知的財産高等裁判所 平成24年(行ケ)第10310号判決)。
そうすると、外国法人が、当該国の販売者に対し、我が国において消費者に販売されることを認識しつつ登録商標を付して商品を譲渡し、当該販売者が登録商標を付した状態で我が国の消費者に対して当該商品を譲渡した事実が認められる場合には、当該登録商標は、当該外国法人によって、日本国内で、使用をされたものと評価することができると解するのが相当である。
そして、前記2(4)エのとおり、通常使用権者であるJUN社は、使用商品に使用商標を付したものを日本の消費者向けに販売することを認識しつつ、vovooに対して譲渡し、vovooは、要証期間内にA氏及びB氏に対し当該商品を譲渡したということができるのであるから、かかる事実によれば、使用商標は、通常使用権者であるJUN社によって、日本国内において、vovooを通じて使用をされたものと評価することができるというべきである。
そして、このように評価することができることを踏まえれば、前記事実を個人輸入の代行と捉えて、本件商標の使用を否定することは妥当ではないというべきである。
エ 請求人は、使用商品は、日本の一個人が自身の使用のために輸入したものであるところ、これは、業(業務)としての生産、証明又は譲渡の対象となる物とはいえないから、商標法上の商品ということはできない旨主張している。
しかしながら、前記ウのとおり、使用商標は、通常使用権者であるJUN社によって、日本国内において、vovooを通じて使用をされたものと評価することができるものであり、前記1(1)のとおり、JUN社は、靴の製造、卸売、小売及び輸出入等を業とする韓国の企業であることからすれば、使用商標が付された使用商品は、業としての譲渡の対象というべきであって、商標法上の商品というべきである。
(3)本件商標と使用商標との同一性について
請求人は、本件商標及び使用商標の図形部分は極めてシンプルな構成からなるものであり、このような構成においては、矢印状になっている先端部分がどの方向を指しているかが商標の外観全体に与える印象は大きいから、両者は外観において同視できるとはいえない旨主張している。
しかしながら、本件商標及び使用商標の図形部分は、いずれも、円の中に2つの三角形と1つの四角形がそれぞれ接するように配される構成からなるものであり、欧文字部分から想起される意味合いと相まって、円の中に紙飛行機を表したとの印象を受けるような図形からなるものであるから、当該図形部分から受ける印象は、図形の傾きによって変わるものとは認められない。
そうすると、本件商標と使用商標との図形部分は、外観において同視されるものというべきである。
(4)以上のとおりであるから、請求人の主張は、いずれも採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が、その請求に係る指定商品中「shoes excluding sports shoes;sneakers;」の範ちゅうに含まれる「スニーカー」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】


審理終結日 2020-04-08 
結審通知日 2020-04-10 
審決日 2020-04-28 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W141825)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 順子 
特許庁審判長 中束 としえ
特許庁審判官 木村 一弘
山田 啓之
登録日 2012-06-26 
商標の称呼 ペーパープレーンズ 
代理人 吉川 俊雄 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 

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