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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W30
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W30
管理番号 1369070 
審判番号 不服2019-9421 
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-12 
確定日 2020-11-19 
事件の表示 商願2017-118061拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「Uji Matcha」の文字を標準文字で表してなり、第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成29年3月7日に登録出願された商願2017-29700に係る商標法第11条第3項の規定による団体商標登録出願として、同年9月6日に登録出願されたものである。
その後、原審における平成30年6月1日付けの手続補正書により、その指定商品は第30類「京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用した菓子,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用したパン,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用したサンドイッチ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用した中華まんじゅう,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用したハンバーガー,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用したピザ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用したホットドッグ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用したミートパイ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用した調味料,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用したアイスクリームのもと,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用したシャーベットのもと,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用した穀物の加工品,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用したチョコレートスプレッド,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した抹茶を使用した即席菓子のもと」と補正された。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、「Uji Matcha」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「Uji」の文字は「京都府南部の市。宇治川の谷口に位置し、茶の名産地。」の意味を有する「宇治」のローマ字表記として、「Matcha」の文字は「茶の新芽を採り、蒸した後、そのまま乾燥してできた葉茶を臼で碾いて粉末にしたもの。熱湯を注ぎ掻きまぜて飲む。主として茶の湯に用いる。ひきちゃ。散茶。」の意味を有する「抹茶」のローマ字表記として一般に使用されている。
そして、食品を取り扱う業界において、「Uji Matcha」の語は「京都府南部の宇治産の抹茶を使用した商品」の意味合いをもって一般に紹介されている実情がある。
そうすると、本願商標を、その指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、ローマ字表記であるとしても、「京都府南部の宇治産の抹茶を使用した商品」であること、すなわち単に商品の品質、産地又は原材料を普通に用いられる方法で表示したものと認識するというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

3 当審による審尋(令和2年5月18日付け審尋)
(1)当審の暫定的見解(本願商標「Uji Matcha」は「宇治抹茶」の語を英語読み風に欧文字で表記したものと容易に認識でき、構成文字全体として「(京都)宇治地方で製造又は販売した抹茶」程度の意味合いを認識できるから、単に商品の産地、販売地、品質又は原材料を表示するにすぎず、商標法第3条第1項第3号に該当する。)を請求人に通知し、意見を求めた。
(2)請求人は、本願商標は商標法第3条第2項の要件を具備する旨を主張するものの、その判断に必要とされる要件に基づき、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったことが具体的な証拠に基づき立証されていないため、合議体は、請求人に証拠の提出を求めた。

4 請求人による回答
(1)本願商標が、「宇治抹茶」の語を英語読み風に欧文字表記したものであることに異存はないが、「宇治の抹茶」であれば商品の産地を表示する普通名称であるとしても、「宇治抹茶」と一連の一つの語としたときは商品の産地や品質等を表示するものではなく、また、欧文字表記は普通に用いられる方法ではないから、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
(2)本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当しないから、同条第2項の適用の有無を論ずるまでもなく登録されるべきである。
なお、そもそも「宇治抹茶」は、商標法第7条の2第1項の規定に基づき地域団体商標として商標登録されているから、当然、その欧文字表記である本願商標も同法第3条第2項の要件を満たしているはずである。

5 当審の判断
(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
ア 本願商標は、「Uji Matcha」の欧文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は「京都府南部の旧郡。」(「コンサイス日本地名辞典 第5版」三省堂)を指称する「宇治」の語と、「茶の新芽を採り、蒸した後、そのまま乾燥してできた葉茶を臼で碾いて粉末にしたもの。」(「広辞苑 第7版」岩波書店)の意味を有する「抹茶」の語を組み合わせた「宇治抹茶」の語を英語読み風に欧文字で表記したものと容易に認識できるもので、構成文字全体として「(京都)宇治地方で製造又は販売した抹茶」程度の意味合いを認識できる。
イ さらに、本願商標の指定商品と関連する食品や飲料の取引において、「宇治抹茶」又はそれを原材料とする商品が広く製造、販売されており、例えば別掲のとおり、その欧文字表記として「Uji Matcha」(UJI MATCHA)等の欧文字が採択されている実情もある。
ウ そうすると、本願商標は、その指定商品との関係において、単に商品の産地、販売地、品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本願商標の商標法第3条第2項該当性
ア 商標登録出願された商標が、商標法第3条第2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、実際に使用している商標及び商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の生産又は販売の数量、並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否かによって決すべきものである(参照:平成18年(行ケ)第10054号、平成18年6月12日知財高裁判決)。
イ 請求人は、請求人(又はその構成員)が実際に使用している商標及び商品、使用実績(販売実績や広告宣伝実績など)を明らかにするための具体的な証拠を何ら提出しない。
したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものと認めることはできないから、商標法第3条第2項の要件を具備するものとはいえない。
(3)請求人の主張
ア 請求人は、本願商標は、ローマ字による表記自体が普通に用いられる方法ではなく、また、その構成中「Matcha」の表記はローマ字表記としては独特であるから、商標法第3条第1項第3号に該当しない旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、請求人も認めるとおり、上記(1)アのとおり、「宇治抹茶」の語を欧文字で表記したものと容易に認識できるもので、上記(1)イのとおり、実際の取引において「宇治抹茶」の欧文字表記として採択されている実情もあるから、本願商標は、その指定商品に係る需要者、取引者をして、単に商品の産地、販売地、品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示するものと認識されるにすぎない。
イ 請求人は、「宇治の抹茶」は商品の普通名称といわざるを得ないとしても、「宇治抹茶」と一連の一つの語としたときは商品の品質等を表記するものとはいえないから、その欧文字表記である本願商標も商品の品質等を普通に用いられる方法で表示するものとはいえない旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、上記(1)アのとおり、構成文字全体として「(京都)宇治地方で製造又は販売した抹茶」程度の意味合いを容易に認識できるのだから、「宇治の抹茶」が商品の普通名称であればなおさら、その指定商品に係る需要者、取引者をして、単に商品の産地、販売地、品質又は原材料を表示するものと認識されるにすぎない。
ウ 請求人は、過去の地域団体商標の登録例を援用し、「宇治抹茶」は商標法第7条の2第1項の規定に基づき地域団体商標として登録されているから、当然同法第3条第2項の要件も具備するはずであり、その欧文字表記である本願商標も同項の要件を具備するはずである旨を主張する。
しかしながら、商標登録出願された商標の登録適格性は、個別の商標や取引の実情を踏まえた上で判断すべきであるばかりか、請求人の援用する過去の登録例は、本願商標とは商標の種別(地域団体商標団体商標)や登録要件(商標法第7条の2第1項と同法第3条第2項)が相違するから、明らかに事案を異にするもので、本願商標に係る判断に影響しない。
なお、地域団体商標制度は、商標法第3条第2項よりも登録要件を緩和し、同項適用にあたり実務上要求される商標の認識範囲及び程度よりも範囲が狭くまた程度が低い場合であっても商標登録を受けられるようにしたもの(参照:「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕」特許庁編)で、その登録にあたり同法第7条の2に基づき要求される周知性の程度は、同法第3条第2項に基づき登録を受ける場合に要求されるものよりも狭く、また低いもので足りる(前掲書参照)とされるから、それぞれ相互に独立した別異の要件であることは明らかである。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、請求人提出の証拠によっては同法第3条第2項の要件を具備すると認めることはできない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲

別掲 「Uji Matcha」(UJI MATCHA)の欧文字表記をする「宇治抹茶」を原材料とする商品の事例(原審における平成30年4月18日付け拒絶理由通知書)
(1)「tissage」のウェブサイトに、「ミルフィーユ」の見出しの下、「宇治抹茶」、「Uji Matcha」、「【宇治抹茶クリーム×ホワイトチョコレート】」、「京都宇治の抹茶を使用したクリームをサンドしたミルフィーユです。」の記載がある。
https://www.m-k-international.co.jp/tissage/items/mille-feuilles/uji-matcha.html
(2)「日本食糧新聞」の新聞記事情報(2018年4月4日)に、「ロッテ、鎧塚氏監修の“生”チョコパイ4種 1年限定専門店で」の見出しの下、「アイテムは・・・宇治抹茶と焙煎くるみで仕上げた『UJI MATCHA(宇治抹茶)』・・・を揃え、テークアウトでの販売となる。」の記載がある。


審理終結日 2020-09-08 
結審通知日 2020-09-15 
審決日 2020-09-30 
出願番号 商願2017-118061(T2017-118061) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W30)
T 1 8・ 17- Z (W30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 駒井 芳子保坂 金彦柿本 涼馬 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 阿曾 裕樹
大森 友子
商標の称呼 ウジマッチャ、ウジチャ 
代理人 特許業務法人京都国際特許事務所 

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