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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W33
審判 一部申立て  登録を維持 W33
審判 一部申立て  登録を維持 W33
審判 一部申立て  登録を維持 W33
審判 一部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1368395 
異議申立番号 異議2020-900161 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-18 
確定日 2020-11-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第6243684号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6243684号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6243684号商標(以下「本件商標」という。)は,「風和」の漢字を横書きしてなり,平成31年4月1日に登録出願,第33類「清酒,焼酎,合成清酒,白酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,令和2年2月21日に登録査定,同年4月8日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標に係る登録異議申立ての理由において,引用する商標(以下,これらをまとめて「引用商標」という。)は,以下のとおりである。
(1)申立人が商品「清酒」に使用し,広く一般に知られているとする,別掲1のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標1」という。)。
(2)申立人が商品「清酒」に使用し,広く一般に知られているとする,別掲2のとおり,「かぜやわらか」の平仮名及び「風和」の漢字を上下2段に書した商標(以下「引用商標2」という。)。
(3)別掲3のとおり,「かぜやわらか」の平仮名及び「風和」の漢字を上下2段に書してなり,第33類「日本酒」を指定商品とし,広く一般に知られているとする登録第4440967号商標(以下「引用商標3」という。)。なお,引用商標3は平成22年12月22日に存続期間が満了している。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,その指定商品中,第33類「清酒,焼酎,合成清酒,白酒,直し,みりん」(以下「申立商品」という。)について,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号によって取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。なお,枝番号の全てを示すときは,枝番号を省略する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 本件商標
本件商標は,上記1のとおりであり,その構成から「風和」の外観及び「フウワ」の称呼を生ずる。
イ 引用商標
引用商標1は,「風和」を含んだ図形よりなることが明らかであるから,これより「風和」の外観及び「フウワ」の称呼をも生ずるものとするのが取引の実情に則して妥当である。
また,引用商標2及び引用商標3は,「かぜやわらか」と「風和」との二段表記で構成されるものの,商標の要部である「風和」から「フウワ」の称呼をも生ずるものとするのが取引の実情に則して妥当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とは,共に「風和」の外観及び「フウワ」の称呼を共通にするものである。
そして,本件商標の指定商品は第33類「清酒,焼酎,合成清酒,白酒,直し,みりん」を含み,他方,引用商標は少なくとも「清酒」について使用することが明らかであるから,互いに同一又は類似のものである。
エ 引用商標の周知性について
(ア)申立人は,新潟県佐渡市にて大正4年に創業し,約100年の歴史をもつ著名な日本酒の蔵元である(甲3)。申立人の看板商品(代表銘柄)の一つが引用商標である(甲3)。
(イ)申立人の使用に係る商品は清酒(純米酒及び純米吟醸酒)であり,その商品の容器(酒瓶)や包装,商品パンフレットや自社HPに引用商標1及び引用商標2を貼付・掲載している(甲3の1?4)。納品伝票や請求書等の取引書類には通常の文字書体をなす「風和」だけを使用することが多い(甲4の1・2)。
(ウ)申立人による引用商標の使用が開始されたのは1996年(平成8年)であり,現在も引用商標を使用した清酒を販売している(以下,申立人の業務に係る引用商標を付した清酒を「使用商品」ということがある。甲4の3・4,甲5,甲8の4)。使用商品の販売地域は,新潟県の他,北海道,関東首都圏,関西圏,九州・沖縄地域など日本全域である(甲3の3)。
(エ)近年では,申立人は,新潟市で開催されているイベントである「にいがた酒の陣」に参加し,使用商品を展示・販売している(甲6の1)。東京にある新潟のアンテナショップでも使用商品の取扱いがあり,物産展等で使用商品を展示・販売している(甲6の2・3)。東京にある居酒屋で,申立人の銘柄を紹介した(甲6の4)。
(オ)申立人は,国際見本市である「FOODEX JAPAN 2004」にも使用商品を出品している(甲6の5及び6)。
(カ)申立人は,引用商標3を平成12年12月22日には,第33類の日本酒の範囲で商標登録第4440967号の商標権として登録していた(甲2の4)。
(キ)使用商品は,1996年(平成8年)の販売開始年には,売上額が約650万円,販売酒量が約480万リットル,1997年(平成9年)から2012年(平成24年)までは,売上額が約1000万円から2000万円,販売酒量が約1100万リットルから約1800万リットルと右肩上がりに着実に増加している。さらに,2013年(平成25年)からは増加割合が急勾配となり,直近の2019年(平成31年)では,売上額が約4000万円,販売酒量が約3300万リットルに達している(甲5の3)。
(ク)平成29年11月1日の第88回関東信越国税局酒類鑑評会にて,使用商品は純米吟醸酒の分野で優秀賞を受賞している(甲7の1及び2)。
(ケ)使用商品について,製造開始して間もない頃から,「新潟清酒産地呼称協会」の認定を受けている(甲7の5,甲8の5)。
(コ)「新潟酒本」「Japanist(栃木)」等の雑誌や新聞記事において引用商標を含めた申立人の銘柄やその高い品質について紹介されている(甲8)。また,佐渡市内の郵便局では引用商標1を含んだ切手の販売も行っている(甲9)。
インターネット記事においては,グルメ情報配信者並びに酒卸店及び料理店が引用商標を含めた申立人の銘柄やその品質の高さを紹介している(甲10,甲11)。新潟県以外でも,関東圏,関西圏,九州地域に所在の取引者,需要者が投稿したインターネット記事においても使用商品の品質について高い評価を受けている(甲11の1?3)。
(サ)以上のように,引用商標は長期間の着実かつ積極的な販売・周知活動により,新潟県及び県外の取引者,需要者から申立人の清酒銘柄として相当程度認知され,酒類の権威ある公的機関からも全国の需要者からも高い名声,評価,信用を獲得するに至っている。
オ 引用商標は少なくとも清酒分野において未登録周知商標である。そして,本件商標と引用商標とは,外観及び称呼を共通にする類似の商標であり,また,その商品も同一又は類似のものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人は,上記のとおり,商品「清酒」について,「風和」と明らかに認識し得る図形若しくは「フウワ」と容易に称呼し得る文字からなる商標又はこれらの結合からなる商標を広く使用し今日に至っており,商品「清酒」の一銘柄としての譲渡数量も極めて大きいし,その優れた品質や味わいについて高い名声,評価,信用を獲得している。したがって,本件指定商品である「清酒」の分野の需要者は,「風和」からなる本件商標が,本件指定商品について使用された場合,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
申立人の提出した証拠及び主張によれば,以下のとおりである。
ア 申立人は,新潟県佐渡市において,大正4年に創業した日本酒の蔵元であって,使用商品を1996年(平成8年)から製造していることが認められる(甲3,甲5,甲8の4)。
イ 申立人は,使用商品の売上げ実績について,1996年(平成8年)の販売開始年には,売上額が約650万円,販売酒量が約480万リットル,1997年(平成9年)から2012年(平成24年)までは,右肩上がりに増加し,2019年(平成31年)では,売上額が約4000万円,販売酒量が約3300万リットルに達している旨(甲5)主張しているが,当該売上額及び販売酒量の販売実績が,商品「清酒」を取り扱う業界において, どの程度の実績であるのか明らかではない。
ウ 「にいがた酒の陣」において,申立人は,出展蔵元として紹介され(甲6の1),「ブリッジにいがた」のイベントの一つの「佐渡/沢根ごっつぉー展」(2019年(平成31年)1月28日(月)?31日(木):甲6の2),「新潟地酒の会」(平成30年4月:甲6の3)において,引用商標1を付した使用商品を含む,申立人の業務に係る清酒が紹介されている。また,「FOODEX JAPAN2004」(甲6の6)において,新潟清酒産地呼称協会による「試飲いただくお酒のリスト」中に,使用商品が掲載されているところ,これらのイベント及び展示会における入場者数等は不明である。
エ 申立人は,使用商品について,第88回関東信越国税局酒類鑑評会(平成29年11月1日)の純米吟醸酒の部において優秀賞を受賞している(甲7)ものの,当該品評会は,わずか6県を対象としたものでしかないうえに,3部(吟醸酒,純米吟醸酒,純米酒)に分かれて審査されるものであり,さらに最優秀賞,特別賞に比べ優秀賞は多くの銘柄が受賞しているものであるから,これをもって,使用商品が広く知られていたとはいい難い。
オ 「新潟酒本」(2016年(平成28年)12月10日株式会社ニューズ・ライン発行:甲8の1),「Japanist」(2016年(平成28年)7月25日ジャパニスト株式会社発行:甲8の2),「新潟発」(2003年(平成15年)11月1日株式会社恒文社発行:甲8の5)において,使用商品に関する掲載は認められるものの,当該雑誌の頒布地域・発行部数は不明である。
カ 「オリジナルフレーム切手『朱鷺の舞う島 銘酒巡り』」(2020年(令和2年)2月14日販売/受付開始日:甲9)の切手の中に引用商標1が表示されているが,本件商標の登録査定の一週間前程に,新潟県佐渡市内の全郵便局で販売開始されたものでしかない。
キ インターネット記事やブログ(甲10の1・3?7,甲11の3・4)において,使用商品が紹介されているものの,その数は多いものとはいえない。
ク 「佐渡ケ島日本酒会」(甲6の4)及び上記キに挙げた以外のインターネット記事及びブログ(甲10の2,甲11の1・2)においても,使用商品が紹介されているものの,当該イベント及び記事は,本件商標の登録査定後のものであるか,又は掲載日が不明であるから,採用することができない。
ケ 以上からすると,引用商標は,使用商品「清酒」に使用されていることは認められるとしても,本件商標の登録出願時及び登録査定時におけるその売上額,販売酒量の販売実績は明らかではなく,また,雑誌や新聞記事等へ掲載された数は決して多いものとはいえない。
そうすると,使用商品(申立人の業務に係る商品)「清酒」に使用されている引用商標は,申立人の業務に係る商品を表すものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において需要者の間に広く知られていたと認めることができない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
ア 本件商標
本件商標は,上記1のとおり,「風和」の漢字を横書きしてなるところ,当該文字は,辞書等に掲載が認められないものであって,当該文字に相応して「フウワ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないといえる。
イ 引用商標
引用商標1は,別掲1のとおり,筆文字風の高いデザインを施した構成からなるものであるから,これより直ちに特定の称呼,観念を生ずるものとはいえない。
引用商標2及び引用商標3は,別掲2及び別掲3のとおり,「風和」の漢字の上部に「かぜやわらか」の平仮名が併記されてなるものである。
そして,「風」の漢字は「かぜ」の読みを,「和」の漢字は,「やわらかなさま」等の意味をも有し(株式会社岩波書店 広辞苑第7版),「和らぐ(やわらぐ),和らぎ(やわらぎ)」等のように送り仮名と共に表されて「やわ」と読まれる場合もある(株式会社小学館 大辞泉第2版)。また,一般に漢字に平仮名が併記されている場合,当該漢字の読みを正確に表示していないとしても,当該平仮名によって漢字の読みを特定していることが多く,送り仮名を含めて読まれる場合もあるといえる。そうすると,引用商標2及び引用商標3は,上記のとおり「和」の漢字が「やわらかなさま」の意味を有することも相まって,「かぜやわらか」の平仮名が「風和」の漢字の読みを特定したものとみるのが自然であるから,「カゼヤワラカ」の称呼のみを生ずるというべきであって,「風がやわらかなさま」程の意味合いを連想させるとしても特定の観念を生ずるとまではいえない。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標とを比較すると,上記のとおり,本件商標が「風和」の漢字を横書きしてなる一方,引用商標1は,筆文字風の高いデザインを施した態様であることから,また,引用商標2及び引用商標3は,平仮名の有無に差異があることから,本件商標と引用商標とは,外観において相違する。
また,称呼において,本件商標から「フウワ」の称呼を生ずる一方,引用商標1からは,特定の称呼を生ずることはなく,引用商標2及び引用商標3からは,「カゼヤワラカ」の称呼を生ずるから,本件商標と引用商標とは,いずれも明らかに相違し十分に聴別し得るものである。
そして,観念においては,本件商標及び引用商標から特定の観念が生じないから,これを比較することができない。
してみれば,本件商標と引用商標とは,観念において比較することができないとしても,その外観及び称呼において,相紛れるおそれのないものであるから,これらを総合して勘案すれば,非類似の商標というべきである。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
引用商標は,上記(1)のとおり,申立人の業務に係る商品を表すものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
また,本件商標と引用商標とは,上記(2)のとおり,非類似の商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものであるから,同号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標は,上記(1)のとおり,申立人の業務に係る商品を表すものとして,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
また,本件商標と引用商標とは,上記(2)のとおり,非類似の商標であるから,類似性の程度は低いものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品中,申立商品について使用しても,取引者,需要者が,引用商標を連想又は想起することはなく,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないとするのが相当である。
その他,本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標は,その指定商品中,申立商品について,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれにも該当するものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲

別掲1(引用商標1)


別掲2(引用商標2)


別掲3(引用商標3)



特許庁は,著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては,著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
異議決定日 2020-11-11 
出願番号 商願2019-45687(T2019-45687) 
審決分類 T 1 652・ 252- Y (W33)
T 1 652・ 255- Y (W33)
T 1 652・ 271- Y (W33)
T 1 652・ 251- Y (W33)
T 1 652・ 253- Y (W33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 駒井 芳子古里 唯 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 大森 友子
藤村 浩二
登録日 2020-04-08 
登録番号 商標登録第6243684号(T6243684) 
権利者 株式会社日本リート
商標の称呼 フーワ 
代理人 松浦 康次 

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