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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W42
審判 一部申立て  登録を維持 W42
審判 一部申立て  登録を維持 W42
管理番号 1368379 
異議申立番号 異議2020-900079 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-17 
確定日 2020-11-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第6208171号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6208171号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6208171号商標(以下「本件商標」という。)は、「agile-X」の欧文字と「アジャイルクロス」の片仮名を2段に書してなり、平成30年12月6日に登録出願、第42類「コンピュータハードウェア及び周辺機器の設計及び開発及びこれらに関するコンサルティング並びにこれらに関する情報の提供,情報システム機器の設計及び開発及びこれらに関するコンサルティング並びにこれらに関する情報の提供,その他の機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計及びこれらに関するコンサルティング並びにこれらに関する情報の提供,機械器具に関する試験又は研究及びこれらに関する情報の提供,機械器具に関する試験又は研究に関するコンサルティング」を始め第42類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、令和元年11月21日に登録査定され、同年12月20日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第6181556号商標(以下「引用商標」という。)は、「INTEL AGILEX」の欧文字を標準文字で表してなり、2018年(平成30年)11月29日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成31年3月28日に登録出願、第9類「集積回路,プログラム可能な集積回路,半導体」を指定商品として、令和元年9月20日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定役務中、第42類「コンピュータハードウェア及び周辺機器の設計及び開発及びこれらに関するコンサルティング並びにこれらに関する情報の提供,情報システム機器の設計及び開発及びこれらに関するコンサルティング並びにこれらに関する情報の提供,その他の機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計及びこれらに関するコンサルティング並びにこれらに関する情報の提供,機械器具に関する試験又は研究及びこれらに関する情報の提供,機械器具に関する試験又は研究に関するコンサルティング」については、商標法第4条第1項第11号に該当するから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
(1)本件商標と引用商標の類否について
ア 称呼の類似
(ア)本件商標は、「agile-X\アジャイルクロス」と2段併記で表示した商標であるところ、「アジャイルクロス」「アジャイルエックス」「アジルエックス」及び「アジレックス」なる自然称呼を生ずる商標である。
ここで、本件商標は、欧文字及び片仮名を2段併記で表示した商標であることから、片仮名に即して、「アジャイルクロス」の称呼のみが生じるとの見解もあると思料するところ、本件商標の実際の使用において、常に、2段併記で表示し使用することは到底想定できるものではなく、「agile-X」又は「アジャイルクロス」のように、欧文字及び片仮名をそれぞれ単独で表示し使用することが通常であると推測する。
そして、本件商標が欧文字又は片仮名のいずれかのみでの出願とされなかった理由は、「agile-X」の文字から「アジャイルクロス」の称呼を導き出すこと、「アジャイルクロス」の文字を「agile-X」の欧文字に置き換えることはいずれも困難であるためと容易に想定される。つまり、本件商標は、片仮名が付されることで、辛うじて「アジャイルクロス」の称呼が生じるにすぎず、欧文字について「アジャイルクロス」の称呼は自然称呼とはならない。
そうすると、「agile-X」の欧文字から生じる自然称呼「アジャイルエックス」「アジルエックス」「アジレックス」を、本件商標の自然称呼として認定すべきである。
なお、「agile-X」の欧文字は、「e」と「X」の文字がハイフンで結ばれているところ、英文においてハイフンで結ばれた語は、これに接した需要者・取引者が、2つの語が強く結びついて形成された一体の語と認識するものである。したがって、「アジレックス」の称呼もまた、本件商標の自然称呼として当然に認定されるべきである。
よって、「アジャイルクロス」「アジャイルエックス」「アジルエックス」及び「アジレックス」の全てが、本件商標の自然称呼である。
(イ)引用商標は、「INTEL AGILEX」と欧文字で表示した構成態様からなるところ、「インテルアジレックス」「インテルアジャイルエックス」「インテルアジルエックス」なる自然称呼が生ずる商標である。
一方、引用商標のうち、「INTEL」部分は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く著名な半導体素子メーカー「インテル・コーポレーション」の略称であることに鑑みるに、引用商標は「INTEL」と「AGILEX」とに分離して把握されると認定するのが相当である。
また、引用商標は、スペースが設けられており、「INTEL」と「AGILEX」が視覚上分離して把握されること、構成文字全体から生じる上記の3つの称呼は10ないし13音と構成音数も多く冗長であることから、引用商標に接した取引者、需要者は、引用商標を語義、外観、称呼において一連の語としては認識せず、「INTEL」及び「AGILEX」の2語からなる表示であると認識するものである。
以上の分析より、引用商標からは、「インテルアジレックス」「インテルアジャイルエックス」「インテルアジルエックス」の他に、「インテル」「アジレックス」「アジャイルエックス」及び「アジルエックス」なる自然称呼が生ずると考えることが妥当である。
(ウ)そこで、上記(ア)及び(イ)のとおりの本件商標と引用商標の自然称呼の類否を検討すると、両者は「アジャイルエックス」「アジルエックス」「アジレックス」の称呼において同一である。
イ 外観の類似
本件商標と引用商標の外観を比較すると、両者は一部大文字と小文字との違いはあるものの、「AGILEX(agileX)」の文字列が共通する。
一方、両商標はハイフンの記号の有無、「アジャイルクロス」の片仮名の有無、「INTEL」の欧文字の有無の差を有するものである。
しかしながら、上述のとおり、本件商標の実際の使用においては、常に2段併記で表示し使用することは想定できるものではなく、需要者・取引者が実際に接する商標は「agile-X」又は「アジャイルクロス」だと考えられることから、「agile-X」部分と「アジャイルクロス」部分とのそれぞれについて、引用商標との比較がなされるべきである。
また、上述のとおり、引用商標に接する需要者・取引者は、引用商標を「INTEL」と「AGILEX」とに分離して把握するものである。
そして、「AGILEX」と「agile-X」の差異である大文字と小文字は、どちらにも置き換えて使用することが一般的であることから、需要者・取引者の興味を引く部分、需要者・取引者の印象・記憶に強く残る部分とはならない。また、上述のとおり、2つの語がハイフン「-」を介して表示されている場合、これに接した需要者・取引者は2つの語が強く結びついて形成された一体の語と認識するものである。よって、ハイフンの有無についても、需要者・取引者の興味を引く部分、需要者・取引者の印象・記憶に強く残る部分とはならない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、「AGILEX」と「agile-X」の文字から受ける視覚的印象が共通し、時と処を異にしてみたときには、需要者・取引者が類似する標章として相見間違うおそれがある。
よって、本件商標と引用商標は、その外観において、商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるものであり、類似する商標というべきである。
(2)指定商品又は役務の類似
本件商標の異議申立ての対象役務は、第42類「コンピュータハードウェア及び周辺機器の設計及び開発及びこれらに関するコンサルティング並びにこれらに関する情報の提供」である。(決定注:登録異議申立書における「登録異議の申立てに係る商標登録の表示」には、本項「3」の冒頭に明示した指定役務が記載されている。)
一方、引用商標の指定商品は、第9類の「集積回路,プログラム可能な集積回路,半導体」である。
そして、本件商標の異議申立ての対象役務は、引用商標の指定商品が設計予備開発業務等役務の主題となる商品であるため、密接に関連する関係にある。その結果、本件商標の異議申立ての対象役務は、引用商標の指定商品に類似する関係に立つ役務に当たるといえる。殊更、引用商標を使用する集積回路FPGAは、購入者が購入後にプログラム可能な集積回路であるため、コンピュータハードウェア及び周辺機器の設計及び開発過程に組み込まれるおそれのある集積回路であり、引用商標を付した商品の購入者と本件商標の役務の提供者及び提供対象者が共通し、容易に誤認混同が生じやすい類似する役務と商品の関係にある。
よって、本件商標の異議申立ての対象役務と引用商標の指定商品とは、互いに類似の商品又は役務である。
(3)むすび
以上より、本件商標と引用商標とは標章が類似する商標であるとともに、本件商標の異議申立ての対象役務は引用商標の指定商品と類似である。
なお、インターネットで本件商標「agile-X」の文字を入力し検索すれば、本件商標の情報より多くの引用商標の情報が検索されることからも、現実に両商標は混同が生じているものである(甲3)。
よって、本件商標は、引用商標との関係において、異議申立ての対象役務について商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 当審の判断
(1)本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「agile-X」と「アジャイルクロス」の文字を2段に書してなるものであり、その構成態様から下段の片仮名が本件商標の称呼を特定したものであり、該文字に相応し「アジャイルクロス」のみの称呼を生じるものとみるのが自然である。
そして、本件商標は、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(2)引用商標
引用商標は、上記2のとおり、「INTEL AGILEX」の文字からなるものであり、該文字に相応し「インテルアジレックス」の称呼を生じるものと判断するのが相当である。
そして、引用商標は、その構成中にスペースがあること、前半の「INTEL」の文字が申立人の商標(ブランド)として著名であること、及び一般にハウスマークとペットネームを併せて表示することが少なくないことをあわせ考慮すれば、看者をして、その構成中「INTEL」の文字をハウスマーク、「AGILEX」の文字をペットネームと理解、認識させることが少なくないものであって、両文字に相応し「インテル」及び「アジレックス」の称呼も生じるものといえる。
そうすると、引用商標は、その構成中「INTEL」の文字から「(申立人のブランドとしての)INTEL」の、構成文字全体から「(申立人のブランドとしての)INTELのAGILEXという商品」のような観念(意味合い)を生じ、「AGILEX」の文字からは特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者は、外観において、前者の構成文字全体と後者の構成文字全体、「INTEL」及び「AGILEX」の文字部分とは、いずれもそれらの構成態様が明らかに異なるから、相紛れるおそれのないものである。
次に、称呼においては、本件商標の称呼「アジャイルクロス」と引用商標の称呼「インテルアジレックス」「インテル」及び「アジレックス」とは、いずれも語調語感が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念においては、前者が特定の観念を生じないものであるから、比較できない。
そうすると、両者は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
イ なお、申立人は、本件商標及び引用商標はいずれも「アジャイルエックス」「アジルエックス」「アジレックス」の称呼を生じるとして、両者は該称呼を共通にする類似の商標である、及び、本件商標は2段併記での使用は想定できず欧文字部分と他の商標を対比すべきなどとして、本件商標の欧文字部分と引用商標は綴りを共通にする類似の商標である旨主張している。
しかしながら、本件商標は、欧文字と片仮名を2段に書してなるものであり、また、2段併記での使用が想定できないと認め得る事情は見いだせない。
加えて、本件商標の構成中上段の「agile-X」の文字自体は、その構成中「agile」の文字が「アジャイル」と発音される英語の成語であるから、「アジャイルエックス」の称呼を生じるといえるものの、本件商標は、上記(1)のとおり下段の「アジャイルクロス」の文字がその称呼を特定したものとみるのが自然であるから、その構成文字全体が一体不可分のものというべきものである。
したがって、本件商標は、「アジャイルクロス」のみの称呼を生じるものであって、その構成文字全体が一体不可分のものというべきものであるから、申立人のかかる主張は、その前提において理由がない。
ウ さらに、他に本件商標と引用商標が類似するというべき理由は見いだせない。
したがって、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、両商標の指定役務と指定商品の類否について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標の指定役務中、登録異議の申立てに係る指定役務についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
異議決定日 2020-10-30 
出願番号 商願2018-150081(T2018-150081) 
審決分類 T 1 652・ 262- Y (W42)
T 1 652・ 261- Y (W42)
T 1 652・ 263- Y (W42)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大島 勉 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 山田 啓之
板谷 玲子
登録日 2019-12-20 
登録番号 商標登録第6208171号(T6208171) 
権利者 JBCCホールディングス株式会社
商標の称呼 アジャイルクロス、アジャイルエックス、アジャイル、アジール 
代理人 前田 大輔 
代理人 朝倉 美知 
代理人 中村 知公 
代理人 特許業務法人松田特許事務所 
代理人 伊藤 孝太郎 

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