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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W10
管理番号 1368368 
異議申立番号 異議2019-900215 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-02 
確定日 2020-11-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第6142967号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6142967号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6142967号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成30年7月2日に登録出願,第10類「おしゃぶり,氷まくら,三角きん,支持包帯,手術用キャットガット,吸い飲み,スポイト,乳首,氷のう,氷のうつり,ほ乳用具,魔法ほ乳器,指サック,避妊用具,業務用美容マッサージ器,医療用機械器具,家庭用電気マッサージ器,医療用手袋」を指定商品として,同31年4月4日に登録査定,令和元年5月10日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標について,商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから,その登録は取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。
申立人は,自慰補助器具,性交補助器具,振動マッサージ器,家庭用電気バイブレーター式マッサージ器等を販売する会社であり,申立人は商品の企画やデザインを行い,申立人の管理の下,商品を中国で製造し,日本,中国等で商品を販売している。
本件商標権者は,申立人の商品についての中国における販売を代理する者であることから,別掲2に示す申立人の「AiCe」商標(以下「申立人商標」という。色違いのものを含む。以下同じ。)について当然に知っている者である。
本件商標は,造語であって,かつ,独創的なデザインを有する商標である。このような商標を本件商標権者が偶然にも採用したということはなく,本件商標権者は,申立人商標を熟知しており,申立人商標を知りながら,申立人に無断で登録出願をしたものである。
このように,本件商標権者は,申立人商標が我が国で商標登録されていないことを奇貨として,剽窃的及び先取り的に登録出願,登録を行ったものであり,申立人に損害を与える目的で,不正の目的をもって本件商標を使用する又は使用しようとするものであることは明白である。また,申立人が日本や外国において獲得した顧客吸引力,信頼をただ乗りしようとするものである。
以上から,本件商標の登録出願の経緯には,社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号の意義について
商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き,その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には,その商標は商標法4条1項7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし,同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として,商標自体の性質に着目した規定となっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法4条1項各号に個別に不登録事由が定められていること,及び,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(東京高裁平成14年(行ケ)第616号,平成15年5月8日判決参照)。
(2)本件商標の構成について
本件商標は,別掲1のとおりの構成からなり,その構成自体が,非道徳的,卑わい,差別的,きょう激又は他人に不快な印象を与えるような構成態様であるとは認められない。
(3)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
ア 申立人は,性的活動用機器及び器具等(以下「申立人取扱商品」という。)を販売する会社である(甲2)。
イ 申立人のウェブサイト(甲2)には,申立人取扱商品の画像が1頁の下に掲載されており,申立人商標が確認できるものの,当該ウェブサイトの作成日は確認できない。
また,申立人取扱商品の包装箱の写真(甲3)には,当該ウェブサイトに掲載されたものと同一の申立人取扱商品の写真が含まれており,申立人商標が確認できるものの,当該写真からは,撮影日,製造者及び販売者が確認できない。
そして,申立人商標は,別掲2のとおりの構成からなり,本件商標とはその構成が同一といえるほど類似するものといえる。
さらに,申立人が,申立人による2012年(平成24年)10月6日付けニュースリリースであると主張する甲第4号証には,「2012年10月6日?8日『2012年第10回全国(広州)性文化節』出店」の見出しの下,「オナホールやバイブなどなど『トイズハート』を中国広州の方たちに見てもらいます。・・・開催日:2012年10月6日?8日/場所:広州錦漢展覧中心」等の記載があるものの,申立人の名称の記載は見あたらず,掲載されている写真は小さく不鮮明であって,申立人が,申立人商標を付した商品を中国における展覧会に出展したといった事実は確認できない。
ウ 申立人は,中国において,2012年6月6日に申立人商標を第28類の商品(玩具等)について登録出願し,権利期間を2013年10月14日から2023年10月13日とする商標登録がされ(甲5,甲6),また,台湾において,申立人商標が第25類の商品について権利期間を2019年7月1日から2029年6月30日とする商標登録がされている(甲7)。
エ 申立人は,2016年5月1日の中国地域代理授権証(甲8)をもって,本件商標権者に対して,申立人商標について,中華圏地域で商品やブランドの宣伝,商品展示,卸販売,小売販売などのすべての商業活動を承認していると認められる。
オ 申立人が本件商標権者に発行した請求書(甲9?甲15)は,本件商標の登録出願前のものであるが,申立人商標を付した商品の取引であることを確認できない。
カ 申立人商標を付した商品について,我が国における販売数,売上高,市場シェアなどの販売実績,使用地域,並びに広告宣伝の方法,期間,地域及び規模を示す具体的な証左は見いだせない。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 上記(2)のとおり,本件商標は,その構成自体が,非道徳的,卑わい,差別的,きょう激又は他人に不快な印象を与えるような構成態様ではない。
そうすると,本件商標は,その構成自体が,公序良俗に違反するものということはできない。
イ 上記(3)イによれば,申立人商標は,本件商標とはその構成が同一といえるほど類似するものといえる。
しかしながら,申立人は,本件商標の登録出願前に中国において,申立人商標の商標登録を有しているところ,本件商標権者と何らかの取引があったとしても,その具体的な内容については明らかではなく,申立人商標に係る取引と認めるに足りず,申立人商標を付した商品が我が国おいて具体的に取引されている証左は見いだせないから,申立人商標が中国や我が国において需要者に認識されているということはできない。
また,申立人は,本件商標権者に対して,申立人商標について,中華圏地域で商品やブランドの宣伝,商品展示,卸販売,小売販売などのすべての商業活動を承認している(甲8)ことが認められるから,本件商標権者は,本件商標の登録出願時には申立人商標の存在を知っていたものといえる。
しかしながら,そのことのみをもって直ちに本件商標権者が申立人商標を,不正な目的をもって剽窃的及び先取り的に登録出願したものであるとまではいえない。
そうすると,申立人の提出した証拠からは,本件商標権者が,申立人商標を,不正な目的をもって剽窃的及び先取り的に登録出願,登録を行ったものであり,申立人に損害を与える目的で,不正の目的をもって本件商標を使用する若しくは使用しようとするものであること,又は,申立人が日本や外国において獲得した顧客吸引力,信頼をただ乗りしようとするものであることを認め得るような事実は確認できず,ほかに,本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような事情を示す具体的な証拠の提出はない。
その他,商標法の先願登録主義の原則の例外となり得るような,本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底認容し得ないような場合に該当すると認めるに足りる具体的事実を見いだすことはできず,また,本件商標は,これを,その指定商品について使用することが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するというものではなく,他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。
ウ 上記ア及びイのとおり,申立人の主張及び同人の提出に係る甲各号証をすべて考慮しても,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であると認めることはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(5)申立人の主張について
申立人は,本件商標は,申立人商標を勝手に商標登録出願したものであり,本件商標権者は申立人の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として,申立人商標を明白に認識しながら,申立人に何の断りもなく,剽窃的及び先取り的に出願,登録を行ったものである旨主張する。
しかしながら,申立人と本件商標権者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は,あくまでも,当事者同士の私的な問題として解決すべき問題であるから,そのような場合にまで,「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情があると解することはできない。
したがって,申立人の主張は採用することができない。
(6)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当せず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(申立人商標:色彩については,甲第2号証を参照。)


異議決定日 2020-01-21 
出願番号 商願2018-86010(T2018-86010) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W10)
最終処分 維持  
前審関与審査官 谷村 浩幸 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 渡邉 あおい
平澤 芳行
登録日 2019-05-10 
登録番号 商標登録第6142967号(T6142967) 
権利者 東莞市瑞奕実業有限公司
商標の称呼 アイス、エイアイシイイイ 
代理人 ▲吉▼川 俊雄 

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