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審決分類 |
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W31 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W31 |
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管理番号 | 1368311 |
審判番号 | 不服2019-7136 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-05-31 |
確定日 | 2020-10-28 |
事件の表示 | 商願2017-130182拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,第29類及び第31類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成29年9月29日に登録出願され,指定商品については,原審における同30年8月20日付けの手続補正書により,第31類「バナナ」に補正されたものである。 第2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は,「本願商標は,その構成文字に相応する『最良のものを選び出す』程の意味合いを容易に認識させるものであり,かつ,本願に係る指定商品の業界において,厳選された商品や厳選された原材料を使用した商品に『極撰』の語がしばしば用いられている実情があることから,本願商標をその指定商品に使用したときは,『最良のものとして選び出された商品』であることを表したものとして理解するにとどまり,自他商品の識別標識としては,認識し得ないものといえる。してみれば,本願商標は,単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと判断するのが相当である。したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。また,本願商標は,出願人の業務に係る商品の出所表示として広く認識されているとはいえず,これを出願人がその指定商品に使用した結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められないから,商標法第3条第2項の要件を具備するものとも認められない。」旨を認定,判断し,本願を拒絶したものである。 第3 当審における審尋 当審において,請求人に対し,令和2年3月3日付けで,別掲2に係る証拠を示した上で,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであり,かつ,同条第2項に規定する要件を具備するものとも認められない旨の審尋を発し,相当の期間を指定して,請求人に回答を求めた。 第4 審尋に対する請求人の意見 請求人は,上記第3の審尋に対し,令和2年4月15日付け回答書を提出し,要旨以下のように回答した。 本願商標は,ラベルに表示されるとしても,他の文字等と「極撰」が一体として認識,把握されるものではなく,独立して認識される態様で使用されるものである。 本願商標のかかる構成態様の使用においては,取引者,需要者は「極撰」の文字を,単独で,商標として認識する。 したがって,本願商標は,仮に商標法第3条第1項第3号の規定に該当するとしても使用の結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであるから,本願商標は同条第2項の規定に該当するものである。 第5 当審の判断 1 商標法第3条第1項第3号該当性について 本願商標は,別掲1に示すとおりの構成態様からなるところ,これよりは,直ちに毛筆風の書体をもって「極撰」の文字を縦書きで表してなるものと看取,把握されるものである。 そして,本願商標の構成中,「極」の文字は,「物事の最上・最終のところ。きわみ。」を,「撰」の文字は,「多くの(作品の)中から選び出す。」を,それぞれ意味する語(いずれも「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店)参照。)であるから,本願商標は,その構成全体から「最上のものを選び出した」ほどの意味合いを理解,認識させるものであり,また,「極撰」の文字は,本願の指定商品を含む食品を取り扱う業界において,一般に使用されている実情がある(原審において示した例及び別掲2に示す例参照)。 そうすると,本願商標をその指定商品に使用するときは,これに接する取引者,需要者は,本願商標全体から,「最上のものを選び出した商品」ほどの意味合いを認識するにとどまるとみるのが相当であるから,本願商標は,商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである。 したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。 2 商標法第3条第2項について 請求人は,本願商標は,商標法第3条第2項に該当する旨主張し,証拠として,原審及び当審を通じて,第1号証ないし第28号証(枝番号を含む。以下,枝番号の全てを引用するときは,枝番号を省略して記載する。)を提出している。 そこで,請求人提出の証拠の内容に照らし,本願商標が,商標法第3条第2項に該当するか否かについて,以下検討する。 (1)「ドール 極撰バナナ」と称する商品の販売実績等 請求人は,2016年から2018年に,スーパーマーケット等のKSP-POS加盟店で「ドール 極撰バナナ」と称する商品を販売し,その販売店舗数及び売上実績は,2016年は864店舗,約5億3300万円,約180万袋,2017年は959店舗,約6億4200万円,約230万袋,2018年は717店舗,約5億7200万円,約200万袋であり(第7号証?第9号証),2018年のKSP-POS加盟店1105店舗のバナナの売上実績において,請求人の「ドール 極撰バナナ」と称する商品のシェアは,6.93%である(第7号証)。また,「DIAMOND Chain Store 2019年6月15日号(株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア発行)」(第12号証)によれば,「カテゴリー内 売上げシェア トップ20」(2018年10月?2019年3月)に,「農産」の分野において,「ドール 極撰バナナ」を商品名とする商品は第6位であり,その売上げシェアは「1.22%」である。しかしながら,いずれの売上シェアの数字も,本願商標の周知性を基礎づけるほど高いものであるとはいい難い。 そして,請求人は,極撰バナナの納品量販店・卸をまとめたものとする一覧表(第13号証)を示し,本願商標に係る商品(以下「使用商品」という。)が全国チェーンのスーパーマーケットの合計約1万店で取り扱われ,かつ,全国の多数の小売業者に卸売りされており,取扱店舗の合計は約1万7000店に上る旨を主張しているが,当該一覧表には753の卸売り先と思しき名称と,それらの卸売り先ごとの店舗数と思しきもの(各々の店舗数は黒塗りされていて不明である。)を合計すると1万7131であることが記載されているものの,これら数字を裏付ける証拠の提出はないうえ,実際に,これらの店に商品が納品され販売されたかどうか,販売されていたとしてどのような態様の商標が使用されていたのかどうかについての証拠の提出はない。 さらに,「フィリピンの経済ニュース primer」のウェブサイトにおける2019年4月8日付けの記事において,「ドールのフィリピン産『極撰バナナ』10周年12億本以上販売」の見出しの下,「『極撰バナナ』は・・・今年で発売より10周年を迎え,販売数量は12億本を超えた」(第15号証)との記載があることを示し,1本あたり200円で販売されたと仮定すると,使用商品の売上は1200億円以上となると主張している。 しかしながら,一本当たりの価格や,総売上本数と総売上高の関係を裏付ける証拠の提出はない。また,仮に上記記事に記載されている10年間の総売上本数が事実であるとしても,この総売上本数が我が国におけるものなのか,フィリピン国におけるものなのか,全世界におけるものなのかは不明であるし,同業他社の総売上本数や総売上高については不明であることなどから,この総売上本数及び総売上高の多寡について評価することができない。 その他に,本願商標の使用開始時期,使用期間,使用地域,販売数,市場シェア等について確認できる証拠は提出されていない。 (2)広告宣伝等 ア テレビCM及び家電量販店で放映される映像について 請求人は,2017年ないし2019年の「Dole 極撰バナナ」のTVCMに関する請求人の報道資料及びストーリーボード(第14号証の1?3)を示し,これに記載の内容において,使用商品「バナナ」が紹介された2009年ないし2013年並びに2017年及び2018年のテレビ番組中の放映秒数(テレビパブリシティ)の一覧(第1号証の1?7)に記載の放映地域,放送局,番組名等で放映した旨を主張しており,第14号証の1ないし第14号証の3に掲載されたような「Dole」の文字からなる標章が近くに表示された「極撰」の標章が表示されるTVCMが関東,北海道,福岡等の各地域や家電量販店で放映されたことはうかがえる。しかしながら,テレビパブリシティ(第1号証の1?7)とTVCM(第14号証の1?3)との対応関係を示す証拠の提出はなく不明であること,また,他にTVCMや映像が放映された地域や放映回数等を示す証拠の提出がないことから,実際に放映された地域,放送局,放送曜日,放送時間,放映回数等は不明であり,これらの放送によって,本願商標が,取引者,需要者の目にどの程度触れたかについてうかがい知ることはできない。 イ 2009年12月14日ないし2015年11月10日に制作され,スーパーマーケットの店頭等で掲示,配布されたとする,のぼり,リーフレット,POP,チラシ等(第2号証の1?13)は,「2012極撰商品告知(名刺サイズ)」(第2号証の2)を150万枚,「極撰サイドPOP」(第2号証の3)を1万3200枚,「極撰B5POPカットアウト」(第2号証の4)を1万3270枚,「極撰サイドPOP」(第2号証の5)を1万3200枚,「極撰ポスター570×519」(第2号証の6)を1万2070枚,「2011極撰増量パックB5POP」(第2号証の7)を2000枚,「2011極撰A4チラシ」(第2号証の8)を5万5000枚,「2012極撰ポスター通常版」(第2号証の9)を9000枚,「2013極撰TVCM-B6POP」(第2号証の10)を5400枚,「2014極撰2本パックB6POP」(第2号証の11)を1105枚,「極撰の日POP」(第2号証の12)を430枚,「極撰 年金支給日B5POP」(第2号証の13)を1600枚発行し,極撰バナナの納品量販店・卸をまとめたものとする一覧表(第13号証)に記載の店舗と取引のある年に掲示,頒布したことを主張しているが,これらを裏付ける証拠の提出はない。 したがって,いずれも,具体的な掲示店舗,期間及び内容,具体的な頒布に係る部数及び地域などが不明であるといわざるを得ず,また,上記のぼりやリーフレット中に本願商標が表示されてはいるものの,いずれも「Dole」(構成文字全体の下部に,この幅に合わせた太い直線を有し,「o」の文字がデザイン化されている。以下同じ。)の文字又は「株式会社ドール」の文字が本願商標とともに表示されているものである。 ウ 2013年ないし2018年において,請求人がスポンサーとして本願商標に係る広告を行ったとするマラソン大会等の広告(第3号証の1?19)には,「ちょっと高いがかなり美味しい。」の文字とともに,本願商標及び「Dole」の文字が表示されているもの,上段に「Dole」の文字を配し,その下部に本願商標を表示したラベルが貼付されている商品「バナナ」が表示されているものがほとんどであり,「Dole」の文字が表示されていないものは,わずかに第3号証の3の「シール」とされるもののみであり,当該シールを含め,上記広告物の具体的な掲示地域,場所,期間などは明らかではない。 (3)他者による紹介等 2011年及び2012年の新聞記事等(第4号証の1?3,第4号証の5?9)には,「最高級バナナ『極撰』」,「ドールは高付加価値バナナとして『極撰バナナ』を育成している。」などの記載や「Dole」の文字とともに本願商標が写真中に掲載されているものであるが,その掲載回数は2011年及び2012年がいずれも4回と多いものとはいえず,また,使用商品が紹介されたとする2014年2月24日(CXめざましテレビ)及び同年5月9日(TBSあさチャン!)に関する証拠の提出はない。 (4)キャンペーン等 ア 使用商品のキャンペーンに関する,2010年9月29日に行われた試食調査ないし2015年1月31日を締め切りとするキャンペーン広告(第5号証の1?9)には,いずれも上段に「Dole」の文字を配し,その下部に本願商標を表示したラベルが貼付された商品「バナナ」が表示されている写真が掲載されており(第5号証の1のみ当該ラベルが単体で表示されている。),本願商標のみが商品「バナナ」に使用されているものは見いだせない。 そして,上記試食調査及びキャンペーン広告等の参加者人数,開催場所,頒布部数等について,たとえば,2010年9月29日試食調査(第5号証の1)の対象が一般消費者100名であったこと,2012年4月21日締切及び同年6月30日締切のキャンペーン(第5号証の2)が日本全国で行ったものであって,キャンペーン応募葉書の発行部数が125万枚であったこと等を令和2年4月15日付け回答書において述べているものの,これらを裏付ける証拠の提出はない。 イ 2018年5月9日ないし同年8月7日開催のLOLA’S Cupcakesとのコラボキャンペーンについて,テレビ,新聞,ウェブサイトで紹介されていることはうかがえる(第16号証の2?6)ものの,いつ,どの程度の回数,どのような地域で紹介されたのか等については,裏付けとなる証拠の提出はない。また,ウェブサイトの一部(第16号証の3,第16号証の4)においては,上記アと同様のラベルが貼られたバナナが掲載されているものの,上記アと同様に,本願商標のみが商品「バナナ」に使用されているものは見いだせない。 また,請求人は,テレビ,新聞・雑誌,ウェブサイトによる「極撰」のキーワードの含有率は67.0%であった(第16号証の7)旨を主張しているが,裏付けとなる証拠の提出はなく,具体的にどのような情報をもとに,どのような調査をおこなった結果であるのかも不明である。 ウ 東京マラソン(2010年,2012年?2015年,2018年及び2019年開催)におけるバナナ「極撰」の無償提供と配布及び事前イベント(第17号証?第23号証 以下,「東京マラソン関連イベント」という。)について,テレビ,新聞やウェブサイト等において紹介されているものの,いつ,どの程度の回数,どのような地域で紹介されたのか等については,裏付けとなる証拠の提出はない。また,その紹介の際に,上記アと同様のラベルやそれが貼られたバナナ,上段に「Dole」の文字を配し,その下部に本願商標を表示した箱と思しきものが表示されている(第19号証の2等)ものの,上記アと同様に,本願商標のみが商品「バナナ」に使用されているものは見いだせない。なお,東京マラソン関連イベントにおいて配付用のバナナがどの程度準備されたかについては,テレビや新聞において紹介されている(第18号証の2,第19号証の2等)ものの,実際に配付された本数は不明であるし,参加者にバナナを配付する際に,どのような状態で配付されたのかについては証拠の提出はなく,本願商標が使用された状態で配付されたのかも不明である。 また,東京マラソン関連イベントにおけるチラシの作成数,配付数等について,たとえば,2014年の東京マラソンにおいては3万9000枚を来場者に配付した(第20号証の1)等,具体的な数値の主張はあるものの,これらを裏付ける証拠の提出はない。 エ その他 「『極撰の日』記念日登録イベント」(第24号証),「ドールファンクラブ結成とバナナメッセージプロジェクト発表会の開催」(第25号証)及び「『極撰バナナ』10周年記念イベント」(第26号証)について,それぞれのイベントがテレビ,ウェブサイト等において,紹介されたことはうかがえるものの,どの程度の回数,どのような地域で紹介されたのか等については,裏付けとなる証拠の提出はない。また,上記アと同様のラベルが貼られたバナナ等が表示されているものの,これらのイベントに関しても,上記アと同様に,本願商標のみが商品「バナナ」に使用されているものは見いだせない。 (5)アンケート調査 ア 「バナナブランド認知度に関するインターネット調査結果一覧」(第10号証)は,その実施日を2018年5月21日とし,調査対象を20代から60代の男女6416人とするものであるところ,請求人の主張によれば,その調査手法は,「以下のバナナブランドについて,それぞれあなたにあてはまるものをお選びください。」という問いでブランド名,商品画像を列挙し,「(a)現在も購入している。」「(b)現在は購入していないが,過去に購入したことがある。」「(c)このブランドを知っているが,購入したことがない。」「(d)このブランドを知らない。」の四択からいずれかかを選択してもらい,(a)ないし(c)を選んだ場合を認知とする。というものである。 そして,当該調査結果一覧には,「ドール 極撰」,「ドール スウィーティオ」,・・・「スミフル 甘熟王」,・・・「デルモンテ バナナ」等,18の組合せが記載され,「ドール 極撰」は「70.3%」,「ドール スウィーティオ」は「70.0%」,「スミフル 甘熟王」は「60.5%」,「デルモンテ バナナ」は「60.5%」と記載されているところ,これによれば,「ドール 極撰」の認知度は高いとはいえるものの,他の商品に比べて格別高いものということはできず,また,上記調査によっては,「極撰」のみを提示して調査を行ったものということはできず,かつ,提示した商品画像も明らかにされていない。 よって,当該調査をもって,本願商標又は「極撰」の文字が,請求人の商品「バナナ」において認知度が高いと認めることはできない。 イ 2014年の東京マラソンの大会当日に行ったアンケート(第20号証の5)は,請求人の主張によれば,調査対象は,バナナトロフィーを得た200名のランナーであり,調査手法は,「あなたは,バナナのブランド『極撰(ごくせん)』をご存知でしたか?」という質問を行い,「食べたことがある」「前から知っていた」「知らなかった」を選択するというものであり,85人からの回答が得られ,47%が「食べたことがある」を,15%の人が「前から知っていた」を選択したとしている。 しかしながら,当該アンケートの対象者は,請求人がバナナトロフィーと称するバナナを事前に受け取っている者であって,回答の際にはそのバナナトロフィーには「Dole」の文字や「極撰」の文字が表示されていた(第20号証の3,第20号証の4)ことからすると,この「食べたことがある」又は「前から知っていた」と回答した割合からは,一般における認知率が高いとはいい難いものである。 ウ 「あなた自身に関するアンケート クロス集計(N表)」(第27号証)は,実施期間は2020年3月13日以降のものであり(終了日については記載がなく不明である。),請求人の主張によれば,調査対象は,週1日以上喫食者である,日本全国各地に住む20代ないし60代の各年代男女約1000名ずつ(合計約10,000名)であって,調査手法は,本願商標と同様の構成からなる「極撰」の文字を毛筆風の書体で縦書きし,その構成中「極」の文字の右下から「撰」の文字の右上にかけて「ごくせん」の文字を小さく縦書きしてなる標章を示し,「Q3.上記のロゴのブランドのバナナ『極撰バナナ』をご存知ですか?あてはまるものをお選びください。【答えは1つです】」という問いに対し,「1.知っている」「2.知らない」を選択するというものである。そして,調査結果は,4116名が回答し,そのうち「1.知っている」を選択した者は2431名で,59.1%であったとしている。 しかしながら,本願の指定商品に係る需要者は一般需要者であって,調査対象者を「週1日以上喫食者」に限定する理由は不明であり,そのように限定する理由は見いだせない。また,上記調査で,回答者に聞いているのは「極撰バナナを知っているかどうか」であり,本願商標のみを提示して調査を行ったものということはできない。そして,その調査結果である59.1%の認知率は,本願の指定商品である「バナナ」に高い関心を持つ「週1日以上喫食者」を対象とする調査であることを考慮すると,高い認知率とはいい難いものである。 (6)小括 本願商標を使用した「バナナ」は,遅くとも2010年9月頃から販売されていることはうかがえるものの,その市場シェアは本願商標の周知性を基礎づけるほど高いものとはいいがたいこと,宣伝広告費について確認できる証拠の提出がなく不明であること,その総販売本数,総売上高,広告場所・地域・回数・期間や本願商標の使用地域等について客観的裏付けがないこと,アンケート調査については,調査対象者の範囲が狭く限られていることに加え,調査結果である使用商品の認知度も他の商品に比較して高いとはいい難いことなどから,請求人が提出した全証拠を総合勘案しても,本願商標が,請求人の出所を表示するものとして,需要者の間で全国的に認識されているということを客観的に判断することはできない。 また,請求人提出に係る証拠のほとんどにおいて,本願商標は,「Dole」の文字などと共に長方形内にまとまりよく一体に表示されたラベル等,「Dole」や「株式会社ドール」の文字からなる標章とともに表示されて使用されており,上記態様からは,本願商標のみが,取引者,需要者をして,単独で商標として認識されるものとはいい難いものである。また,請求人の提出に係る証拠には,ほかに本願商標が大きく表示されているものも散見されるものの,いずれも,上記ラベルや「Dole」又は「株式会社ドール」の文字とともに表示されていることから,本願商標のみが,取引者,需要者をして,単独で,商標として認識されるものとはいい難いものである。 この点について,請求人は,例えば2011年から現在までの商品包装用ラベルには本願商標が目立つ態様で単独,独立して表されている旨主張し,審判請求書等にその画像を添付しているところ,請求人の提出に係る証拠からは,当該画像が,単独で,商品に付された具体的な使用を見いだすことができない。 その他,請求人の提出に係る証拠を総合勘案してみても,本願商標が,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるほどに使用されているものと認めるに足る証拠はない。 そうすると,本願商標は,その指定商品である「バナナ」に使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。 したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。 3 請求人の主張について 請求人は,「商標を表示するために長方形のラベルが用いられたり,その際に商標以外の他の文字等が記載されたりするのはありふれたことであり,取引者,需要者はラベルであれば常にそれを全体として商標であると認識するということはない・・・『Dole』の文字(ロゴ)は請求人のハウスマークであり,ハウスマークが個別の商標(ペットマーク)と共に表示されることは一般に行われている(例えば第6号証)。むしろ,商品にはハウスマークとは別途,商標(ペットマーク)を付すのが通常であるともいえ,ハウスマークと別に所定の態様で標章が表示されていれば,取引者,需要者はこれを商標として認識すると考えられる。したがって,ラベルに『Dole』の文字が表示されているとしても,そのことから取引者,需要者が単独で商標として認識しないと直ちにいえるものでない。・・・本願商標は,ラベルに表示されるとしても,他の文字等と『極撰』が一体として認識,把握されるものではなく,独立して認識される態様である。本願商標のかかる構成態様においては,取引者,需要者は『極撰』の文字を,単独で,商標として認識する」旨を主張している。 しかしながら,本願商標は「極撰」の文字からなるところ,これは,上記第5の1のとおり,本願の指定商品との関係においては,商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものであるから,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。 一方,「Dole」の文字及び「株式会社ドール」の文字は,自他商品の識別標識としての機能を発揮するものである。 そうすると,本願の指定商品について,「極撰」の文字からなる本願商標のすぐそばに,請求人のハウスマークである「Dole」の文字からなる標章又は「株式会社ドール」の文字からなる標章が使用された場合には,これに接する取引者,需要者は,「Dole」の文字又は「株式会社ドール」の文字に着目するか,「極撰」及び「Dole」又は「株式会社ドール」の文字を一体の商標として着目するといえる。 したがって,請求人の上記主張を採用することはできない。 4 まとめ 以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであって,かつ,同条第2項に規定する要件を具備するものとも認められないから,登録することができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1 本願商標 別掲2 「極撰」の文字の使用例(下線は合議体による。) (1)「選 NIPPONSELECT ニッポンセレクト」のウェブサイト 「新日本農業 栃木県産 いちご ギフト箱入り 極撰苺 スカイベリー〔約35g×12〕」の見出しの下,「大粒の厳選されたスカイベリーだけを詰合せた贅沢なギフトです。」の記載がある。 (https://www.nipponselect.com/shop/g/gS70570002/) (2)有限会社ヤマハチアップルのウェブサイト 「[極撰]贈答用 青森りんご サンふじ5kg」の見出しの下,「最高品質の御歳暮用高級ギフトです。期間限定,数量限定の【極撰】青森りんごです。」の記載がある。 (https://sakura-apple.jp/products/detail.php?product_id=100) (3)「ふるさとチョイス」のウェブサイト 「期間限定 極撰 完熟フルーツトマト・ろ」の見出しの下,「追随を許さない味だけを求めて緻密な栽培管理によって作り上げた三重県名張発 風農園の渾身のフルーツトマト厳選パッケージ」の記載がある。 (https://www.furusato-tax.jp/product/detail/24208/4631793) (4)「激安専門店」のウェブサイト 「極撰ローストビーフ300gポーク300g詰合せギフト券 和牛」の見出しの下,「特撰黒毛和牛の希少部位『イチボ』のローストビーフと厳選された国産銘柄豚のローストポークを詰合せにいたしました。」の記載がある。 (https://www.kodensha.online/mart/item/m15200566235604.html) |
審理終結日 | 2020-08-25 |
結審通知日 | 2020-08-28 |
審決日 | 2020-09-08 |
出願番号 | 商願2017-130182(T2017-130182) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(W31)
T 1 8・ 17- Z (W31) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上山 達也、小林 正和、堀内 真一 |
特許庁審判長 |
佐藤 松江 |
特許庁審判官 |
須田 亮一 平澤 芳行 |
商標の称呼 | ゴクセン |
代理人 | 飯田 和彦 |
代理人 | 飯田 伸行 |