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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2020890074 審決 商標
無効2019890065 審決 商標
無効2018890005 審決 商標
無効2017890071 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W293043
審判 全部無効 外観類似 無効としない W293043
審判 全部無効 観念類似 無効としない W293043
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W293043
管理番号 1368271 
審判番号 無効2017-890065 
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-09-15 
確定日 2020-10-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第5903256号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5903256号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成28年3月9日に登録出願、第29類「タピオカ入りの乳製品」、第30類「タピオカ入りのコーヒー,タピオカ入りのココア,タピオカ入りの菓子,タピオカ,食用タピオカ粉」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同年11月1日に登録査定、同年12月9日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第4806987号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、平成14年3月8日に登録出願、第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,その他の食品香料(精油のものを除く。),草を原料とする茶,その他の茶,ココア飲料,コーヒー飲料,エスプレッソコーヒー飲料,その他のコーヒー及びココア,氷,マフィン・スコーン・クッキー・ペストリー及びその他の焼いてなる菓子及びパン,即席菓子のもと,即席パンのもと,チョコレート,キャンディ,アイスクリーム,冷凍菓子,その他の菓子及びパン,みそ,ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」及び第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,給食の提供,その他の飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用食器乾燥機の貸与,業務用食器洗浄機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」並びに第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品及び指定役務として、同16年10月1日に設定登録され、その後、同26年5月20日に商標権の存続期間の更新登録がされたものであり、現に有効に存続しているものである。
2 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標(以下「請求人商標」という。)は、引用商標と同一の構成からなる商標であり、これは、請求人がコーヒー、ココア、乳製品、菓子等及びこれら商品の提供(以下「請求人商品・役務」という場合がある。)に使用していると主張するものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 審判請求書における主張
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人商標の著名性
(ア)日本における展開
請求人が運営するコーヒーチェーン「スターバックスコーヒー」(以下「請求人店舗」という。)は、現在、日本において1000店を超える店舗を展開し(甲3の1)、高品質のコーヒーを販売、提供する世界的に著名なコーヒーチェーンであり、コーヒーのみならず、ココアや乳製品、菓子等の様々な飲食物を販売、提供し(甲3の3、4)、カップの側面や店舗の看板等に請求人商標を使用している(甲4)。
請求人商標は、1996年(平成8年)の日本第1号店のオープン以来、請求人のハウスマークとして使用され、最近に至るまで一貫して使われてきた。2000年には日本100店目の請求人店舗がオープンし(甲3の2)、その頃から全国展開が本格化され、一週間に2店程度を出店する高スピードで各地に進出し、遅くとも同年には、日本国内において、需要者の間で広く認識されるようになった(甲6の36)。また、2015年5月には、鳥取県で初の店舗がオープンし、これをもって全都道府県に請求人店舗が展開されるに至った(甲3の2)。
さらに、2005年5月から請求人商標を付したチルドカップコーヒー「スターバックス ディスカバリーズ」を全国のコンビニエンスストアで販売している(甲3の2)。また、請求人商標を付した高品質な即席コーヒーやドリップ式のコーヒーは、請求人の店舗だけでなく全国のスーパーや百貨店においても取り扱われている(甲3の5)。
(イ)各種メディアにおける請求人商標に関する記事等
日本における請求人の事業展開により、請求人商標が需要者及び一般消費者に広く認識されていることは、多数の新聞、雑誌記事やインターネット上の記事、書籍において、「緑色のロゴマーク」というように、請求人商標が請求人を表す象徴的なマークとして言及されている(甲6?甲8)。
さらに、その独自のコンセプトや経営哲学等が関心を集め、請求人の商品やサービスを紹介するものから経営学に関するものまで、請求人を題材とした様々な書籍が発行されているが、これらの書籍の多くはその表紙や本文中に請求人商標が掲載されている(甲8の2、甲9、甲12)。
以上の新聞、雑誌記事やインターネット上の記事、関連書籍等より、請求人商標は需要者から「おしゃれ」、「高級感がある」といったイメージを伴って高い信用、名声、顧客吸引力を得ていることが分かり、請求人商標が高い著名性を獲得している。
(ウ)アンケート調査結果
請求人商標の緑色の円環部分が、多くの一般消費者又は需要者に認識される著名な標章であるか否かを検証するために行われたアンケート調査においては、請求人商標の緑色の円環部分及び当該部分に配置された白抜きの文字と図形(判読不能なように加工済)からなる標章の認識度が検証された(甲11)。
本アンケート調査の結果によれば、当該標章を見て想起する会社又は店の名前を問う質問に対して、産業を限定しなくても77.72%の人が自由回答で「スターバックス」と回答し、産業をコーヒーショップに限定すると83.88%の人が「スターバックス」と回答している。また、集計対象をコーヒーショップ需要者とした場合、産業の限定なしで81.99%、コーヒーショップに限定した場合88.44%の人が「スターバックス」と回答し、集計対象を潜在的なスターバックス需要者とした場合、産業の限定なしで82.76%、コーヒーショップに限定した場合89.34%の人が「スターバックス」と回答している。この結果から、請求人商標中の緑色の円環並びにその帯状部分に白抜きで文字及び図形が配置された構成(以下「請求人商標中の緑色円環図形構成」という場合がある。)の標章が、一般消費者に「スターバックス」を想起させる著名な標章であることは明らかである。
したがって、請求人商標は、請求人商標中の緑色円環図形構成について、需要者及び一般消費者の間で著名であるといえる。
(エ)小括
以上より、請求人の日本における請求人商標の使用実績や各種メディアによる記事、アンケート調査結果から、請求人商標は著名性を有し、その中でも特に、請求人商標中の緑色円環図形構成について著名性が確立しているといえる。
イ 本件商標と請求人商標との類似性
本件商標と請求人商標とは、外観の中でも緑色の二重の円環並びに内側の円環の帯状部分に白抜きの文字及び図形を配した構成において共通する(甲16)。請求人商標は、単に請求人商標自体が著名であるというだけでなく、当該構成についても著名性を有し、当該構成は需要者及び一般消費者に特に強い印象を与える部分であるため(甲11)、本件商標は請求人商標と類似する。両商標の構成中、文字や図形、これらから生じる称呼や観念が異なるとしても、全体として離隔的に観察した場合には、これらの相違点は全体の構成と比較して看者の印象、記憶に大きな影響を及ぼすものではなく、全体の構成から生じる強い印象を凌駕するものではない。また、たとえ文字や図形から両商標の区別がつく消費者がいるとしても、アンケート調査の結果に示されているように、消費者はこの両商標に共通する全体の構成によって請求人商標を識別しているため、全体の構成という共通点から請求人と被請求人との間には何等かの関係性があると消費者が考えるおそれがあることは明らかである。
ウ 請求人商標の特徴
請求人商標は、1987年に請求人の現会長がスターバックス社を買収した際に、買収元のイル・ジョルナーレ社とスターバックス社の文化の融合を象徴するために、両社のシンボルマークを組み合わせた新しいシンボルマークとして創作されたものである(甲12)。具体的には、旧スターバックスのシンボルマークであったセイレーンのマークとイル・ジョルナーレの緑色が合わさったものであって、明確なコンセプトをもって独自に創作されたものであり、その独自性は極めて高い。
エ 請求人商標がハウスマークであるか
請求人商標は、1996年の日本第1号店のオープン以来、請求人のハウスマークとして使用されてきた。なお、平成23年4月から、請求人のハウスマークは請求人商標から変更され(甲3)、本件商標の出願日及び登録査定日には請求人のハウスマークはすでに変更されていたが、請求人商標はハウスマークの変更後も複数の店舗で使用が継続されている(甲13)。
また、請求人商標は、日本進出以来、国内において膨大かつ広範囲の使用実績を有し、本件商標の出願時及び登録査定時においても、多くの需要者及び一般消費者に請求人を表す商標として記憶されていたことは明らかである。
オ 請求人における多角経営の可能性
請求人は、自らの業務に関連する複数の子会社を以前から有している(甲14)。請求人は自らの業務であるコーヒーチェーンのみならず、他の飲食業に関する子会社を複数有しており、飲食物の販売、提供の役務について幅広く事業展開している。
また、日本においては、2005年5月からサントリー株式会社と提携してチルドカップコーヒーの販売を開始するなど(甲6の17)、日本独自の事業展開、多角化も図られている。
これらの請求人による事業展開の状況に鑑みれば、本件商標がその指定商品・役務に使用された場合、その出所について、請求人の子会社や関連会社等といった経済的又は組織的に何らかの関係にある企業によって販売、提供された商品・役務であると需要者に誤認混同されるおそれがある。
カ 商品間、役務間の関連性
請求人は、世界的に著名なコーヒーチェーンとしてコーヒーのほか、ココアや乳製品、菓子等を自身の店舗において販売、提供しており(甲3の3及び4)、それにはテイクアウト用の商品の販売やテイクアウト専門の店舗も含まれる。本件商標の指定商品・役務とこれらの商品・役務は原材料や需要者の範囲、業種等が共通し、同一営業主の製造、販売又は提供に係る商品・役務と誤認されるおそれがあるため同一又は類似の関係にある。
したがって、本件商標の指定商品・役務と請求人の業務との間には、極めて強い関連性がある。
キ 需要者の共通性
コーヒーやココア、乳製品、菓子、食用粉類等は日常生活で普通に販売、提供されているものであるから、本件商標の指定商品・役務の需要者と請求人が販売、提供する商品・役務の需要者は、いずれも一般消費者である。
したがって、需要者の範囲は共通する。
ク その他
本件商標は、全体の構成において請求人商標と共通し、当該構成には著名性及び独創性がある。そして、請求人商標は、請求人による多年にわたる努力の結果、需要者及び一般消費者の間で広く知られ、高い信用、名声、顧客吸引力を獲得するに至っている。本件商標の出願時には、日本に進出して約20年が経過しており、請求人商標はすでに日本全国で広く知られていた。
このような状況に鑑みれば、被請求人は、本件商標の登録出願時には請求人商標の存在を認識していたと強く推認され、偶然にも著名で独創的な請求人商標と構成を同じくし類似する本件商標を出願したとは考えがたい。むしろ、請求人商標に化体した高い信用、名声、顧客吸引力にフリーライドする目的で本件商標を出願したと考えられ、このような不正の目的がある以上、本件商標は請求人の業務に係る商品等と誤認混同を生じさせるような態様で使用されるおそれがある(甲15)。
ケ 小括
したがって、本件商標をその指定商品・役務に使用した場合、請求人商標の著名性に鑑みれば、これに接する需要者は、特にその著名性が顕著な請求人商標中の緑色円環図形構成に着目し、著名な請求人商標を連想、想起し、商品・役務の関連性や請求人の事業展開の状況等から請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品・役務であると出所を誤認混同するおそれがあり(広義の混同)、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標との類否
(ア)外観
本件商標と引用商標とは、その構成中、緑色の二重の円環よりなる点で共通する。そして、内側の円環の帯状部分には、具体的な文字及び図形はそれぞれ異なるものの、いずれも白抜きで欧文字が上下段に分かれて配置されており、左右にありふれた図形が配置されている点で共通する。また、本件商標は上段8文字、下段7文字、引用商標は上段9文字、下段6文字の欧文字からなり、その配置バランスも共通する。なお、本件商標の下段部分には「TAPIOCA」、引用商標の下段部分には「COFFEE」とあり、いずれも各々の商品を示す語が配されている。さらに、白、黒色の犬(本件商標)と白、黒色の女性(引用商標)とで異なるものの、中央部にはキャラクター化された図形が配置されている。
このように、本件商標と引用商標とは、緑色の二重の円環からなる点で外観が共通し、またそれぞれの細かい要素は異なるものの、内側の円環の帯状部分に上下に分かれて白抜きの欧文字(下段については、商品の品質又は役務の質を示す語)が、左右にはありふれた図形が配置され、中央部に図形(キャラクター)が配置されており、このような外観における全体の構成が共通する。
(イ)称呼
本件商標に関しては、下段の「TAPIOCA」は商品の品質又は役務の質を示す語であるから、上段の「BULLPULU」部分について「ブルプル」の称呼が生じる。引用商標についても、下段の「COFFEE」は商品の品質又は役務の質を示す語であるから、上段の「STARBUCKS」部分について「スターバックス」の称呼が生じる。
(ウ)観念
本件商標からは特定の観念は生じず、引用商標からは先天的には特定の観念は生じないものの、その著名性から世界的なコーヒーチェーンである請求人が想起される。
イ 取引の実情
本件商標と引用商標とは、緑色の二重の円環に白抜きの文字及び図形といった特徴的な構成からなる商標であり、当該構成は請求人を想起させるものとして著名であるところ(甲11)、このような特徴を持つ商標に接した需要者にとっては、その特徴的な外観、特に細かい要素よりも商標の全体的な構成がより強い印象を与える。
本件商標と引用商標の指定商品・役務における取引の実情についてみると、コーヒー飲料や菓子といった商品は通常数百円程度の比較的安価な商品であり、需要者は陳列された各商品のパッケージの瞬間的な見た目に注目して商品を購入する場合も多いと考えられる(甲6の3)。また、飲食物の提供の役務については、店舗の看板等に商標を使用することが一般的に行われており、需要者は商標が使用された看板等を離れた場所から視覚によって認識しこれを目印として入店することも多いと考えられる(甲7の8)。
したがって、このような取引の実情を考慮すれば、比較的安価な飲食物やそれら飲食物の提供の役務に使用される商標の類否判断においては、看者に強い印象を与える外観の要素が最も重要になると考えられる。
引用商標は、請求人商標と同一の構成からなる商標であり、世界的なコーヒーチェーンである請求人を表す著名な商標であるが、特に引用商標中の緑色の二重の円環並びに内側の円環の帯状部分に白抜きの文字及び図形を配した構成に著名性があり(甲11)、この引用商標の全体の構成は、それを瞬間的に見た場合や離れた場所から見た場合に看者により強い印象を与える。本件商標の構成は、外観において、引用商標のこのような特に著名性のある上記構成と共通するから、本件商標がその指定商品・役務に使用された場合、需要者がそれら商品等を瞬間的に又は離れた距離から見た際に、引用商標と出所が誤認混同されるおそれがあるため、両商標は類似する。
なお、両商標の構成中、文字や図形、これらから生じる称呼や観念が異なるとしても、瞬間的に見た場合や離れた場所から見た場合には、これらの相違点は全体の構成と比較して看者の印象、記憶に大きな影響を及ぼすものではなく、全体の構成から生じる強い印象を凌駕するものではない。
以上より、他に相違する部分があるとしても、上記のような取引の実情を考慮すれば、最も重要な要素である外観、その中でも特に瞬間的な印象や離れた場所から見た場合に看者に強い印象を与える全体の特徴的な構成において共通することから、本件商標と引用商標は類似する。
ウ 指定商品・役務の類否
本件商標の指定商品・役務である第29類「タピオカ入りの乳製品」、第30類「タピオカ入りのコーヒー,タピオカ入りのココア,タピオカ入りの菓子,タピオカ,食用タピオカ粉」及び第43類「飲食物の提供」は、引用商標の指定商品・役務中の商品・役務の範ちゅうに属するものであって、それらの商品・役務は原材料や需要者の範囲、業種等が共通し、同一営業主の製造、販売又は提供に係る商品・役務と誤認されるおそれがあるから、両商標の指定商品・役務は類似する。
エ 小括
したがって、本件商標は、引用商標と類似の商標であり、その指定商品・役務は引用商標の指定商品・役務と同一又は類似であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 審判事件弁駁書における主張
(1)請求人商標のうち、その構成に特に著名性があること
ア 被請求人は、本件商標のうち識別力を発揮するのは、「BULLPULU」の文字部分及び中央に描かれた白色の犬の図形であり、これに対して、請求人商標については、「STARBUCKS」の文字部分及び中央に描かれた女性の図形が識別力を発揮するとして、両商標が類似しないと主張する。
しかし、上記1(1)アにおいて述べたとおり、請求人の日本における請求人商標の使用実績や各種メディアによる記事及びアンケート調査結果から、単に請求人商標が著名であるといえるだけでなく、その中でも特に請求人商標中の緑色円環図形構成が特徴的で著名性が確立しており、当該構成が強い識別力を有する部分であるといえる。なお、一商標に2以上の要部を有する商標であっても、要部がそれぞれ独立して識別力を発揮することがあり、その場合は、各要部を分離してそれぞれの有する外観、称呼、観念等について他人の商標との類否を判断することも許され、共通の要部を持つ商標同士は全体として互いに類似するといえる(リラ宝塚事件、最判昭和38年12月5日第一小法廷民集17巻12号1621頁)。
したがって、請求人商標のうち「STARBUCKS」の文字部分が識別力を有するとしても、さらに上記構成も識別力を発揮し得、その場合、上記構成に着目して両商標の類否を判断することも許される。
イ 円環部分に文字が配置された図形について、被請求人は、そのような図形がありふれたものであると主張して、乙第1号証ないし乙第28号証の登録例を引用する。
しかし、請求人商標のうち著名性が認められるのは、単に円環部分に文字が配置された図形であるという点ではなく、「緑色の円環並びにその帯状部分に白抜きで文字及び図形を配した構成」についてである。ありふれた図形であるとの被請求人の主張の根拠として引用された登録例については、18件は白黒であり、残りの10件の中にも緑色を基調としたものは1件も存在しない。また、文字が白抜きでないものや、円環の帯状部分に図形が描かれていないものもある。
したがって、請求人商標とこれらの登録例とでは、請求人商標は円環が緑色であること、円環の帯状部分に白抜きの文字及び図形を配しているという特徴を有する点で異なり、これらの登録例によっては、当該特徴を持つ請求人商標の構成がありふれているとはいえない。
なお、仮に被請求人が主張するように文字及び図形が配された円環がありふれた図形であるとしても、(請求人商標と本件商標との間で共通する特徴である)緑色の円環並びにその帯状部分に白抜きで文字及び図形を配置した構成が請求人を表す商標として著名であるという事実から、そのような請求人商標の特徴がすでに識別力を獲得するに至っており、同様の特徴を有する標章が使用されれば、需要者の間で出所について混同が生じるおそれがあるといえる。
ウ 円環部分が緑色であることは、請求人商標の上記構成のうち、極めて印象的な特徴である。このことは、請求人を含む著名なブランドのロゴを被験者156人に記憶を基に描かせるというアメリカで行われた実験において、請求人のロゴについては、156人中110人が緑色を基調とした円環又は円形の図形を描いていることから明らかである(甲18。なお、当該実験は、請求人のロゴが円環のものから円形のものへ変更された平成23年以降に行われた。)。
さらに、日本においても、新聞、雑誌記事やインターネット上の記事等において請求人商標が「緑色のロゴマーク」等と言及されていることから、単に文字が配置された円環図形ではなく、その円環が緑色であることが請求人商標の中で極めて印象的な特徴であり、需要者の間で深く浸透していることがわかる。
エ したがって、請求人商標中の緑色円環図形構成が最も特徴的な部分であり、当該部分が識別力を発揮している。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 被請求人は、本件商標の「BULLPULU」の文字部分及び中央に描かれた白色の犬の図形と、引用商標の「STARBUCKS」の文字部分及び中央に描かれた女性とを比較して、両商標が非類似であると主張する。
しかし、引用商標中の緑色の円環並びにその帯状部分に白抜きで文字及び図形を配した構成が特に強い識別力を発揮しており、両商標の類否も当該構成を比較して判断されるべきである。
そうだとすれば、上記1(2)で述べたとおり、両商標は類似する。
イ 被請求人は、本件商標の中央に配置された犬の図形について「周囲の色と異なる写実的な白色の犬」とし、これに対して、引用商標の中央に配置された女性の図形については「周囲の色と同一色の抽象的に図案化された冠を着けた女性」として、両商標は外観上異なると主張する。
しかし、本件商標中の犬の図形は、白色及び黒色を基調としているところ、その背景も白色であることから、周囲の色と異なるものではなく、同じく白色及び黒色で描かれた引用商標中の女性の図形と比べ、配色に関する差異は極めて小さい。また、上記1(2)イで述べたとおり、両商標の指定商品・役務に関する取引の実情を考慮すれば、需要者はパッケージの瞬間的な見た目に注目し、看板等を離れた場所から目印として見て入店することが多くあることから、中央の図形に関する色彩の若干の差異や図形が写実的であるか抽象的であるかといった細部の差異よりも商標の全体的な構成の方が看者に強い印象を与える。
ウ 本件のように、商標の全体的な構成が看者に強い印象を与える図形商標について、当該商標と構成を同じくする商標との類否が問題となった事案においては、特徴的な構成を同じくするという理由から両商標が類似すると判断されている審決例及び裁判例がある。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 被請求人は、両商標が類似しないことをもって、出所について混同を生じるおそれがないと主張する。
しかし、そもそも両商標の類否はその全体の構成の対比によって判断されるべきである。その場合に上記(2)で述べたとおり両商標は類似すると考えられるものの、仮に両商標が類似しないとしても、著名な商標の場合、その強い識別力から当該著名商標がより連想されやすくなるため、商標が類似しないことのみによって出所について混同を生じるおそれがないとはいえず、例えば著名な商標と商標の構成上の発想を同じくする商標についても混同のおそれは生じる。
本件商標についてみれば、文字や図形の種類に差異があるとしても、緑色の円環並びにその帯状部分に白抜きで文字及び図形を配した構成からなるという全体の発想が請求人商標と共通し、さらに当該構成は請求人を表すものとして著名性が確立している(甲11等)。
したがって、本件商標は、請求人商標の特徴的な構成である請求人商標中の緑色円環図形構成について発想を同じくするものであるから、その指定商品・役務に使用された場合、請求人商標との間で出所について混同を生じるおそれがある。
イ 本件と同様に、著名な商標と構成上の発想を同じくする図形商標について出所について混同を生じるおそれの有無が問題となった事案において、子細に見れば差異があるものの、全体として著名な商標の特徴とその構成の軌を一にするという理由で出所についての混同を生じるおそれが認められた審決例及び裁判例が多数存在する。
3 結語
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第28号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、緑色の二重円内の上段に「BULLPULU」、下段に「TAPIOCA」の各文字及び左右に丸印を白抜きで表し、二重円内の中央に、周囲の色とは異なる白色で写実的に大きく表された犬の図形とその犬の図形の影を左側に配した構成からなるところ、「BULLPULU」の文字部分は、辞書等に記載がない語であり、「TAPIOCA」の文字は、「ランダムハウス英和大辞典(株式会社小学館)」によれば、「タピオカ:カッサバ(cassava)の根から作った食用澱粉」の意味を有する我が国でも親しまれた英語であり、食品の名称として知られているものであるから、本件商標の指定商品及び指定役務との関係において、商品の品質及び役務の質を表し、自他商品・役務識別標識としての機能を有しないか、極めて弱いといえるものであるから、「BULLPULU」の文字部分と、中央に周囲の色とは異なる白色で写実的に大きく表された犬の図形が自他商品・役務識別標識としての機能を果たしているとみるのが相当である。
そして、「BULLPULU」及び「TAPIOCA」の文字からは、「ブルプルタピオカ」の称呼を生じ、また、本件商標の要部である「BULLPULU」の文字に相応して「ブルプル」の称呼も生じ、文字からは特定の観念は生じないものの、中央に周囲の色とは異なる白色で写実的に大きく表された犬の図形からは犬の観念が生じる。
(2)引用商標について
引用商標は、緑色又は黒色の二重円内の上段に「STARBUCKS」、下段に「COFFEE」の各文字及び左右に星形の図形を白抜きで表し、二重円内の中央に、周囲の色と同一色で大きく表された抽象的に図案化された冠を着けた女性の図形を配した構成からなるところ、「STARBUCKS」の文字部分は、辞書等に記載がない語であり、「COFFEE」の文字は、「(飲料としての)コーヒー、一杯のコーヒー」等の意味を有する我が国でも親しまれた語であり、飲料の名称として知られているものであるから、引用商標が用いられている商品及び役務については、商品の品質及び役務の質などを表し、自他商品・役務識別標識としての機能がないか、極めて弱いものであることから、「STARBUCKS」の文字部分が独立して自他商品・役務識別標識としての機能を果たしているとみるのが相当である。
そして、「STARBUCKS」及び「COFFEE」の文字からは、「スターバックスコーヒー」の称呼を生じ、また、引用商標の要部である「STARBUCKS」の文字に相応して「スターバックス」の称呼も生じ、「(コーヒーショップ名としての)スターバックスコーヒー」、及び中央に周囲の色と同一色で大きく表された女性の図形から女性の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 外観においては、本件商標は、看者の目につく中央の位置に、周囲の色と異なる写実的な白色の犬の図形が浮き立つように大きく配置されているが、引用商標は、中央に周囲の色と同一色の抽象的に図案化された冠を着けた女性の図形が周囲と同化するように配置されていることから、商標全体としての外観は明らかに異なる。さらに、中央部分の図形同士を対比しても、色合い、図形のモチーフのいずれにおいても全く異なる。
また、二重円内に配置された構成文字が、外観は全く異なり、称呼が一音たりとも一致せず、観念が全く異なることから構成文字部分は明らかに異なる。
イ 称呼においては、本件商標は、「ブルプルタピオカ」又は「ブルプル」の称呼を生じるのに対し、引用商標は、「スターバックスコーヒー」又は「スターバックス」の称呼を生じるものであるから、両者は、それぞれの称呼における構成音に1つの共通点もなく、かつ、構成音数も異なることから、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。
ウ 観念においては、本件商標は、犬の観念が生じるのに対し、引用商標は、「(コーヒーショップ名としての)スターバックスコーヒー」の観念を生じ、両者の観念に共通点はないものであるから、観念上、相紛れるおそれのないものである。
エ そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいえない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と請求人商標とが混同するかについて
本件商標は、請求人商標と外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、これに接する取引者、需要者が請求人商標を連想又は想起することのないものというのが相当である。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者が請求人商標を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生じるおそれはないものといわなければならない。
(2)請求人は、円環部分(二重円内)に文字が配置された図形に関する認知度がある旨を主張しているが、円環部分に文字が配置された図形はあまたある(乙1?乙28)。
円環部分(二重円内)に文字が配置された図形自体はありふれたものであり、商標の要部になり得ない。また、そもそも商標は、全体観察をすべきであり、円環部分(二重円内)に文字が配置された図形自体はありふれたもので、商標の要部になり得ないうえに、円環部分(二重円内)に配置された文字の外観、称呼及び観念において共通する点がないどころか、類似する点すらも一点もないように明らかに異なり、内部に配置された図形の外観、称呼及び観念においても全く共通するところはなく明らかに異なることからも商標全体として全く異なるものであり、混同を生じるおそれはないものといわなければならないから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとはいえない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 請求人商標及び請求人商標中の緑色円環図形構成の周知性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
ア 請求人は、1971年に米国ワシントン州シアトルにおいて「スターバックスコーヒー」の第1号店をオープンした米国の企業であり、我が国においては、1995年10月にスターバックスコーヒージャパン株式会社を設立、1996年に日本第1号店がオープンした。スターバックスコーヒージャパン株式会社は、2017年3月31日現在、資本金は約255億円、国内で1260店舗を展開し、事業内容を「コーヒーストアの経営、コーヒー及び関連商品の販売」とする企業である。「スターバックスコーヒー」は、コーヒーを中心とした各種飲料、菓子、パン等を販売し、またそれらを提供する我が国においても良く知られたコーヒーチェーン店である(甲3の1?4、甲6)。
イ 請求人商標は、1996年(平成8年)の日本第1号店のオープンから2011年(平成23年)4月に変更されるまで、請求人のハウスマークとして店舗の看板や商品の容器等に付されて使用されていた(甲3の2、甲4、甲13)。
ウ 2005年9月から請求人商標を付したチルドカップコーヒーを全国のコンビニエンスストアで販売を開始した(甲3の2、甲6の17)。
エ 請求人を題材とした書籍等が発行され、その表紙や本文中に請求人商標が掲載された(甲9、甲12)。
オ 2011年(平成23年)4月以降においても請求人商標を使用している店舗がある(甲13)。
カ 甲第11号証は、請求人商標中の緑色円環図形構成部分が著名な標章であるか否かを検証するために行ったアンケート調査の報告書である。
この調査は、平成29年7月21日から22日まで、日本全国に在住する20歳から69歳までの男女552名にインターネットを使用して、緑色の円環部分のうち文字及び図形をモザイク処理したもの(以下「緑色の円環加工図形」という。)に対して質問したものである。
なお、アンケート調査における調査票においては、緑色の円環加工図形を画像として掲載するうえで「この画像はある会社が運営するお店の設備やお店で販売する商品の図柄の一部を抜き出して加工したものです。元々の図柄では、円の中心部に絵があり、緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていましたが、下記の画像では、絵の部分を白く塗りつぶし、文字部分にはモザイク処理を施し、会社名が読み取れないようにしてあります。」と記載している。
当該アンケートに対する質問と回答のうち、緑色の円環加工図形を見て想起する会社又は店の名前を問う質問に対して、「産業を限定なし」の場合「スターバックス」と回答した者は429人(77.72%)と一番多く、次に多い回答である「わからない」と回答した者は102人(18.48%)であり、「外食産業に限定」の場合「スターバックス」と回答した者は393人(71.20%)と一番多く、次に多い回答である「わからない」と回答した者は132人(23.91%)であり、「コーヒーショップに限定」の場合「スターバックス」と回答した者は463人(83.88%)と一番多く、次に多い回答である「わからない」と回答した者は71人(12.86%)であった。また、集計対象が「コーヒーショップ需要者」については、「スターバックス」と回答した割合は、「産業を限定なし」の場合81.99%、「外食産業に限定」の場合76.34%、「コーヒーショップに限定」の場合88.44%であった。さらに、集計対象を「潜在的なスターバックス需要者」については、「スターバックス」と回答した割合は、「産業を限定なし」の場合82.76%、「外食産業に限定」の場合77.12%、「コーヒーショップに限定」の場合89.34%であった。
(2)上記(1)アないしオによれば、請求人の運営する「スターバックスコーヒー」は米国を発祥とする我が国でも著名なコーヒーチェーン店であって、請求人商標は、1996年(平成8年)から2011年(平成23年)4月に変更されるまで、我が国において請求人のハウスマークとして使用されていたものであり、その当時、請求人商品・役務を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されていたといえる。
しかしながら、2011年(平成23年)4月のハウスマークの変更から約5年後の本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点においては相当の期間が経過したといえ、加えて、同様にその状況が継続していたことを示す証拠はわずかであることから、その証拠のみをもって、請求人商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時においても周知性を維持していたとまではいえない。
また、請求人は、甲第11号証におけるアンケート調査の結果から、請求人商標中の緑色円環図形構成について需要者及び一般消費者の間で著名である旨主張する。
確かに、上記(1)カのとおり、当該アンケート調査の結果において、アンケート調査の対象物である緑色の円環加工図形を見て想起する会社又は店の名前を「スターバックス」と回答した割合は、いずれの集計結果においても高いものであったといえる。
しかしながら、当該アンケート調査は、日本全国に在住する者を対象とする全国的な規模の調査であるにもかかわらず、調査期間は2日間のみであり、対象人数が552名と少ないものである。また、アンケートの調査票においては、調査の対象物である緑色の円環加工図形の画像の上部に「円の中心部に絵があり、緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字が表示されていました」と表記していることから、当該アンケート調査の回答者は、緑色の円環加工図形の円の中心部に絵があることや緑色の輪の部分には会社名が特定できる白い文字があることを前提にイメージし、回答することになっているといえ、その条件の下では、当該アンケート調査が、純粋に請求人商標中の緑色円環図形構成についての周知性を調査したものとはいい難いものである。
そうすると、当該アンケート調査の結果をもって、請求人商標中の緑色円環図形構成の周知性を評価することは困難であることから、請求人の上記主張を採用することはできない。
さらに、その他の証拠から、請求人商標中の緑色円環図形構成が、請求人商品・役務について、単独で使用されているといった状況は見いだせない。
してみれば、請求人商標及び請求人商標中の緑色円環図形構成は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、我が国における取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認められない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、緑色の二重円環内において、左右に白抜きで丸印を配し、さらに白抜きで上段に「BULLPULU」の欧文字を下段に「TAPIOCA」の欧文字を円弧に沿って書してなり、また、中央円内には犬の図形とその影を左側に配した構成からなるところ、中央の図形部分と欧文字部分は、それぞれが視覚上分離、独立して認識、看取されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成中、「BULLPULU」及び「TAPIOCA」の文字部分が、中央の図形部分から分離して観察され得るものである。
そして、本件商標は、中央の図形部分からは、特定の称呼及び観念を生じるものではなく、また、「BULLPULU」の文字部分は、辞書等に載録がない語であって、さらに、「TAPIOCA」の文字は、「研究社新英和大辞典第6版(株式会社研究社)」によれば、「タピオカ(カッサバの根から製した食用・糊用の澱粉)」の意味を有する我が国でも親しまれた英語であり、本件商標の指定商品及び指定役務との関係において、商品の品質及び役務の質を表し、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱いといえるものであり、「BULLPULU」の文字部分が独立して自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るとみるのが相当である。
してみれば、その構成中の「BULLPULU」及び「TAPIOCA」の文字部分全体に相応して、「ブルプルタピオカ」の称呼を生じるほか、「BULLPULU」の文字に相応して「ブルプル」の称呼をも生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲2のとおり、緑色の二重円環内において、左右に白抜きで星印を配し、さらに白抜きで上段に「STARBUCKS」の欧文字を下段に「COFFEE」の欧文字を円弧に沿って書してなり、また、中央円内には冠を着けた女性とおぼしき図形を配した構成からなるところ、中央の図形部分と欧文字部分は、それぞれが視覚上分離、独立して認識、看取されるものである。
そうすると、引用商標は、その構成中、「STARBUCKS」及び「COFFEE」の文字部分が、中央の図形部分から分離して観察され得るものである。
そして、引用商標は、中央の図形部分からは、特定の称呼及び観念を生じるものではなく、また、「STARBUCKS」の文字部分は、辞書等に載録がない語であって、さらに、「COFFEE」の文字は、引用商標の指定商品及び指定役務の一部(例えば「第30類 コーヒー」、「第43類 飲食物の提供」)については、商品の品質及び役務の質を表し、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱いといえるものであり、「STARBUCKS」の文字部分が独立して自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得るとみるのが相当である。
してみれば、その構成中の「STARBUCKS」及び「COFFEE」の文字部分全体に相応して、「スターバックスコーヒー」の称呼を生じるほか、「STARBUCKS」の文字に相応して「スターバックス」の称呼も生じるものであり、さらに、その構成中の文字部分全体に相応して「(請求人のブランドとしての)スターバックスコーヒー」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 外観について
本件商標と引用商標とを比較すると、両商標は上記(1)及び(2)のとおりであって、明らかに区別し得るものであるから、外観上、相紛れるおそれはない。
なお、請求人は、本件商標と引用商標とは、緑色の二重の円環からなる点で外観が共通し、内側の円環の帯状部分に上下に分かれて白抜きの欧文字が、左右にはありふれた図形が配置され、中央部に図形が配置されており、このような外観における全体の構成が共通する旨主張する。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、いずれも緑色の二重円環図形を有する点において共通するものの、それぞれの構成態様に照らせば、当該図形部分は、いずれもそれのみが特に強調された体裁で表されてはおらず、視覚的に強い印象をもって看取、把握されるものではないというべきであり、当該図形部分が、独立して自他商品及び自他役務の識別標識として機能し、取引に資されるとはいい難いことから、請求人の主張は採用できない。
イ 称呼について
本件商標から生じる「ブルプルタピオカ」又は「ブルプル」の称呼と引用商標から生じる「スターバックスコーヒー」又は「スターバックス」の称呼とは、構成音、構成音数に顕著な差異を有するものであるから、称呼上、相紛れるおそれはない。
ウ 観念について
本件商標は特定の観念を生じないのに対し、引用商標はその構成中の文字部分全体から「(請求人のブランドとしての)スターバックスコーヒー」の観念を生じるものであるから、両商標は、観念において相紛れるおそれはない。
エ 小括
そうすると、本件商標と引用商標とは、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品及び指定役務が互いに類似するものであるとしても、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり、請求人商標及び請求人商標中の緑色円環図形構成は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものということはできない。
また、前記第2の2のとおり、請求人商標は引用商標と同一の構成からなるものであって、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、それと同様に、本件商標と請求人商標とは、非類似の商標であって、その類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する需要者をして、請求人商標を連想、想起させることはなく、その商品及び役務を請求人の業務に係る商品又は役務、あるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)(色彩は、原本参照。)



別掲2(引用商標、請求人商標)(色彩は、原本参照。)




審理終結日 2019-08-01 
結審通知日 2019-08-06 
審決日 2019-08-21 
出願番号 商願2016-31348(T2016-31348) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (W293043)
T 1 11・ 271- Y (W293043)
T 1 11・ 261- Y (W293043)
T 1 11・ 262- Y (W293043)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 康浩 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 小松 里美
金子 尚人
登録日 2016-12-09 
登録番号 商標登録第5903256号(T5903256) 
商標の称呼 ブルプルタピオカ、ブルプル 
代理人 駒津 啓佑 
代理人 今井 優仁 
代理人 本阿弥 友子 
代理人 中岡 起代子 
代理人 窪田 英一郎 
代理人 加藤 ちあき 
代理人 乾 裕介 

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