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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W253540
審判 全部申立て  登録を維持 W253540
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審判 全部申立て  登録を維持 W253540
管理番号 1367183 
異議申立番号 異議2019-900303 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-18 
確定日 2020-10-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第6164941号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6164941号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6164941号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおりの構成よりなり,平成30年10月26日に登録出願,第25類「英国製の被服,英国製のガーター,英国製の靴下止め,英国製のズボンつり,英国製のバンド,英国製のベルト,英国製の履物,英国製の仮装用衣服,英国製の運動用特殊靴,英国製の運動用特殊衣服」,第35類「消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,建具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,畳類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第40類「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。),裁縫,ししゅう,キルティング加工,毛皮の注文仕立て,布地の裁断,布地の縁取り,被服の寸法直し,洋服の仕立て」を指定商品及び指定役務として,令和元年7月10日に登録査定,同月26日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する標章及び商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において,引用する標章及び商標は,以下の(1)ないし(7)であり,(1)を除き,いずれも,登録商標として現に有効に存続しているものである。
(1)使用標章
標章の構成:別掲2(以下「引用商標1」という。)及び別掲3(以下「引用商標2」という。)のとおり。
申立人の業務に係る商品等:オックスフォード大学を表す表示として,同大学のホームページ,刊行物等で使用されていると主張するものである。
(2)登録第2528479号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成2年12月5日
優先権主張:1990年6月7日 グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国
設定登録日:平成5年4月28日
最新更新登録日:平成25年7月23日
書換登録日:平成16年8月25日
指定商品(書換登録):第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」
(3)登録第2549225号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成2年12月5日
優先権主張:1990年6月7日 グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国
設定登録日:平成5年6月30日
最新更新登録日:平成25年6月11日
書換登録日:平成15年9月3日
指定商品(書換登録):第24類「織物,メリヤス生地,フェルト,不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布」及び第26類「テープ,リボン,編みレース生地,刺しゅうレース生地,房類」
(4)登録第2640154号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成2年12月5日
優先権主張:1990年6月7日 グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国
設定登録日:平成6年3月31日
最新更新登録日:平成26年4月1日
書換登録日:平成17年8月24日
指定商品(書換登録):第9類「眼鏡」及び第14類「時計」
(5)登録第2655321号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成2年12月5日
優先権主張:1990年6月7日 グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国
設定登録日:平成6年4月28日
最新更新登録日:平成26年4月1日
書換登録日:平成17年11月9日
指定商品(書換登録):第16類「紙製テーブルクロス」,第20類「家具,屋内用ブラインド,すだれ,ベンチ,びょうぶ,食品見本模型」,第21類「花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,香炉,ガラス製又は陶磁器製の立て看板」,第24類「織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳」及び第27類「畳類,敷物,壁掛け(織物製のものを除く。),人工芝」
(6)登録第2713044号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
登録出願日:平成2年12月5日
優先権主張:1990年6月7日 グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国
設定登録日:平成8年3月29日
最新更新登録日:平成27年11月17日
書換登録日:平成19年8月22日
指定商品(書換登録):第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品」,第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」,第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」,第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第26類「腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花(「造花の花輪」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(「電気式のものを除く。」)」
(7)国際登録第1016856号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲4のとおり
国際登録日:2009年5月14日
設定登録日:2011年1月7日
更新登録日:2019年5月14日
指定商品:第18類「Leather and imitations of leather,and goods made of these materials and not included in other classes; animal skins, hides; trunks and travelling bags; umbrellas, parasols and walking sticks; whips, harness and saddlery;handbags; pocket wallets; purses; attache cases; goods of leather and imitation leather, namely bags, wallets and key bags, and parts and fittings thereof, none of the aforesaid being fitted cases or containers;skins and furs, travel and suitcase; leather and imitations of leather and articles made of these materials included in this class; luggage, bags, briefcases, holdalls, canvas bags, wallets,credit card holders, trunks for travel.」
以下,「引用商標1」と「引用商標2」をまとめていうときは「引用商標A」といい,引用商標3ないし引用商標8をまとめていうときは,「引用商標B」といい,引用商標Aと引用商標Bをまとめて「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第8号,同第11号,同第15号及び同第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第29号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)オックスフォード大学の沿革及び商標「OXFORD」の著名性
申立人は,オックスフォード大学(University of Oxford)の商標及びブランド管理等のために設立された同大学の完全子会社である(甲9)。そして,オックスフォード大学は,イギリスに所在する総合大学であり,11世紀の末に大学の礎が築かれた現存する大学としては世界で3番目に古く,英語圏では最古の大学である。また,同大学は,各種の世界大学ランキングで1位の大学に選ばれており,ハーバード大学,ケンブリッジ大学,スタンフォード大学などと並び,常にトップレベルの優秀な大学として評価されている世界有数の名門大学である(甲10,甲11)。
オックスフォード大学は,イギリスでは,28人の首相,他の国でも30人以上の元首らが同大学出身である。さらに,50人以上のノーベル賞受賞者,150人以上のオリンピックメダリストなどを輩出している。また,王族の大学としても有名であり,6人のイギリス国王が学び,日本からも今上天皇陛下,皇后陛下,秋篠宮文仁親王らの皇族が留学している(甲10,甲12,甲13)。
また,オックスフォード大学は,20年以上前に日本事務所を東京都港区に設立し,入学情報の提供や寄付金の募集等,同大学と日本国内の企業,団体,卒業生,一般の人々との協力関係を構築するための活動を行っている(甲14)。
このような沿革及び実績により,教育の分野のみならず,一般家庭の消費者に至るまで,オックスフォード大学は,世界的な名門大学として広範囲の需要者の間で広く知られるようになっている。そして,オックスフォード大学を表す表示として,引用商標Aが同大学のホームページ,刊行物等で使用されている(甲2,甲13)。また,申立人は,引用商標B若しくはこれらに類似する商標を付した被服,腕時計,バッグ等をオンラインショップ等にて販売しているほか,各国の企業に引用商標Bのライセンスを行っている(甲15,甲16)。
日本国内でも,申立人は,著名ブランドやキャラクターのライセンスの仲介等を行っている株式会社イングラムを介し,アパレルを中心に,服飾雑貨,インテリア,文房具,知育玩具といった幅広い商品について,引用商標Bに類似する商標について国内企業に使用許諾をしている(甲17,甲18)。
そして,「OXFORD」の表示は,引用商標Aにおいて殊更大きな文字で単独で目立つ態様で表示されている。また,オックスフォード大学出版局が発行する「オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)」,オックスフォード大学の学生が履いていたことに由来する「オックスフォードシューズ(Oxford shoes)」,オックスフォード大学に関する種々の出版物や広告等において,単に「オックスフォード」又は「OXFORD」と表示することが一般的に行われている(甲19?甲21)。
これらの結果,「オックスフォード」又は「OXFORD」がオックスフォード大学を表す表示として需要者の間で広く認識されるに至っている。
よって,「OXFORD」の表示は,オックスフォード大学の略称並びに同大学の業務に係る役務を表示するものとして本件商標の登録出願日及び登録査定時には,取引者,需要者に広く認識されていたことが明らかである。
(2)商標法第4条第1項第8号について
オックスフォード大学は,世界有数の名門大学として周知であり,その略称である「OXFORD」は,オックスフォード大学の略称として著名な名称である。
本件商標は図形部分と「OXFORD」の文字から構成されるところ,オックスフォード大学の名称の著名な略称である「OXFORD」をそっくりそのまま含むものであり,かかる登録はオックスフォード大学の人格的利益を毀損するものである。
したがって,本件商標はオックスフォード大学の著名な略称である「OXFORD」を含み,かつ,同大学が本件商標の出願人に,その商標登録に関し承諾を与えた事実もない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,「OXFORD」の文字部分から,「オックスフォード」の自然称呼を生ずる。
引用商標Bは,「UNIVERSITY・OF・OXFORD」の文字部分から,「ユニバーシティオブオックスフォード」の自然称呼が生ずるが,引用商標Bを構成する「UNIVERSITY」の表示は,大学を意味する英単語として一般的に使用され,また,「OF」の表示は,「・・・の」等を意味する英語の前置詞として認識されているものであり,いずれも自他商品の識別機能を有しないか極めて弱い表示というべきものである。
したがって,「OXFORD」の著名性とその出所表示力の程度の強さに照らせば,引用商標Bに接した者は,「OXFORD」の文字部分とその称呼「オックスフォード」に着目し,引用商標Bは「OXFORD」の文字の前に「UNIVERSITY・OF・」の文字及び記号を付加して構成された商標であると容易に認識理解する。
よって,引用商標Bに接した需要者・取引者は,引用商標Bの構成中「OXFORD」の文字のみに着目し,「オックスフォード」の称呼を認識し,記憶するものである。特に,簡易迅速を尊ぶ商取引において,本件商標が付された商品・役務に接する需要者・取引者は,引用商標Bの表示から「ユニバーシティオブ」の称呼を省略し,「オックスフォード」の称呼を認識し取引にあたることが十分に想定されるものである。
以上から,引用商標Bは,「ユニバーシティオブオックスフォード」のみならず,「オックスフォード」の自然称呼も生ずる。
本件商標の称呼「オックスフォード」と引用商標Bの称呼「オックスフォード」は比較検討するまでもなく同一の称呼である。そして,引用商標Bに接した需要者・取引者が実際の商取引において,称呼「オックスフォード」を用いることが十分に想定されるものである。
よって,本件商標の称呼は引用商標Bの称呼と類似であるから,本件商標と引用商標Bとは類似する商標である。
本件商標の第25類の指定商品及び第35類の指定役務は,引用商標Bの指定商品と類似の商品・役務である。
したがって,本件商標は,引用商標Bとの関係において商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
引用商標Aは,オックスフォード大学の事業に係る表示,すなわち大学教育の商標として,広く一般に知られている商標である。そして,「OXFORD」の文字部分は,オックスフォード大学の商標を知らずに偶然に採択することが極めて考え難い表示であり,引用商標Aは出所表示機能の極めて高い商標である。
一方,本件商標は,図形部分と,その下方に「OXFORD」の文字を配してなるものであり,当該文字部分に照応して「オックスフォード」と発音されるものであるから,その文字部分は,オックスフォード大学の役務の出所標識として広く認識されている「OXFORD」の文字と,その称呼「オックスフォード」の音を含むものである。
したがって,引用商標Aの著名性とその出所表示機能の強さに照らせば,引用商標Aが,たとえ外観上一体的に「UNIVERSITY OF OXFORD」と表示した構成からなるものであるとしても,本件商標に接した需要者・取引者は,「OXFORD」の文字部分とその発音「オックスフォード」を連想するものである。
よって,本件商標をその指定商品・指定役務に使用したときには,当該商品・役務がオックスフォード大学の役務に係るものであると誤信されるおそれがあるのみならず,当該商品・役務がオックスフォード大学との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係等にある者の業務に係る商品・役務であると誤信されるおそれがある。
本件商標は,構成中に引用商標Aの「OXFORD」の文字部分を採択することにより,取引者,需要者の注意,関心を集め,引用商標Aの顧客吸引力にフリーライドし,あるいはまた,引用商標Aの有する強力な出所表示機能を希釈化するものである。
引用商標Aは,本件商標の登録出願前から使用されていたものである。国際交流や海外留学が一般的となっている現在において,商標権者が本件商標の登録出願時にオックスフォード大学の商標として世界的に広く知られている引用商標Aについて不知であったとは考え難い。本件商標は,引用商標Aが獲得している世界的な名声と顧客吸引力にフリーライドし,これにより,商標権者の市場参入を容易化せんとする意図がうかがえる。それのみならず,本件商標は,引用商標Aの出所表示力を希釈化して引用商標Aのブランド価値を低下させ,オックスフォード大学の資産価値を毀損するものである。
このような状況の下で,取引者,需要者にオックスフォード大学を容易に連想,想起させる本件商標を,オックスフォード大学と無関係の商標権者が使用すれば,オックスフォード大学の業務に係る役務と強く結合している引用商標Aの出所表示力が希釈化され,これにより,世界的な著名商標である引用商標Aのブランド価値が低下し,オックスフォード大学の資産に重大な損害を及ぼすことは避けられない。
本件商標は,引用商標Aの著名性へのフリーライド,出所表示力の希釈化(ダイリューション)という観点からも商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第19号について
引用商標Aは,本件商標の登録出願時には既に日本及び海外において,オックスフォード大学の業務に係る役務を表示するものとして広く認識されていた。本件商標と引用商標Aとは,称呼が類似するため互いに類似する商標である。
本件商標の「OXFORD」の文字部分は,本件指定商品・指定役務の分野で使用される必然性のない語であるから,商標権者が自ら考案し引用商標Aの「OXFORD」の文字部分と偶然に一致した商標とは想定し難い。そして,国際交流や海外留学が一般的となっている現在において,商標権者が本件商標の登録出願時に,オックスフォード大学の業務に係る役務の表示として世界的に広く知られている引用商標Aについて不知であったとは到底考えられず,むしろ,引用商標Aに依拠し採択されたものと推認せざるを得ないものである。
よって,本件商標は,引用商標Aに化体した信用や世界的な名声と顧客吸引力にただ乗りし,商標権者の市場参入を容易化し,不当に商業的利益を得んとする意図で採択されたものと考えられ,本件商標の使用により引用商標Aの出所表示機能を希釈化しその名声を毀損させるおそれがある,すなわち,不正の目的があると推認し得るものである。
本件商標は,周知・著名な引用商標Aと同様,「OXFORD」の文字を含むものであり,一般の消費者は,本件商標の「OXFORD」の表示から,引用商標Aと出所を同じくすると認識するものと考えられるから,本件商標を付した指定商品・指定役務に接した場合,周知・著名な引用商標Aを使用した役務と異なる品質や印象により,戸惑いや不信を抱くことが懸念される。すなわち,本件商標の使用は,引用商標Aの有する自他商品識別力希釈化(ダイリューション)し,また,その名声を汚染(ポリューション)するものである。
したがって,本件商標は,引用商標Aの有する価値や名声,評判,若しくは,信用を毀損させるものであり,オックスフォード大学に損害を加えるものであるから,不正の目的があると推認し得るものである。
以上より,本件商標は,登録出願時及び登録査定時において,大学における教育及び研究を表示するものとして日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって,不正の目的をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第7号について
本件商標の登録を認めることは,高い著名性を有するオックスフォード大学の引用商標Aの世界的な名声,顧客吸引力ヘのただ乗り(フリーライド)を是認するものであり,また,オックスフォード大学と無関係の商標権者が本件商標を使用することは,オックスフォード大学の著名商標の出所表示力及び顧客吸引力の希釈化(ダイリューション)を招来するものである。商標権者のこのような行為は,社会一般の道徳観念に反し,また,公正な競業秩序の維持を旨とする正常な取引慣行に違反するものであり,さらには国際信義に反するものである。
よって,本件商標は,公の秩序又は善良な風俗を害するおそれのある商標であり,商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人の提出に係る甲各号証及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(ア)申立人は,オックスフォード大学の商標及びブランド管理等のために設立された同大学の完全子会社である(甲9)。
(イ)オックスフォード大学は,イギリスのオックスフォードに所在する総合大学であり,11世紀の末に大学の礎が築かれた現存する大学としては世界で3番目に古く,英語圏では最古の大学である(甲10)。また,同大学は,ハーバード大学,ケンブリッジ大学,スタンフォード大学などと並び,常にトップレベルの優秀な大学として評価されている世界有数の名門大学である(甲10,甲11)。
(ウ)オックスフォード大学は,各国の指導的政治家や学者を輩出しており,28人のイギリス首相など30人以上の各国元首らが同大学出身である。さらに,55人のノーベル賞受賞者,150人以上のオリンピックメダリストなどを輩出している。
また,王族の大学としても有名であり,6人のイギリス国王が学び,日本からも今上天皇,皇后雅子,秋篠宮文仁親王らの皇族が留学している(甲10,甲12,甲13)。
(エ)オックスフォード大学は,日本事務所を東京都に設立し,同大学と日本国内の企業,団体,卒業生,一般の人々との協力関係を構築するための活動を行っている(甲14)。
(オ)引用商標Aは,同大学のホームページ,刊行物等で使用されている(甲2,甲13)。引用商標Bは,被服,腕時計,バッグ等に使用され,オンラインショップ等で販売されている(甲15,甲16)。また,日本国内でも,株式会社イングラムを介し,衣類,アクセサリー,雑貨,文房具等幅広い商品について,国内企業に使用許諾をし,当該商品に使用されている(甲17,甲18)。
(カ)オックスフォード大学出版局が発行する,「オックスフォード英語辞典」及び「一冊でわかるシリーズ」において,「オックスフォード」又は「OXFORD」と表示されている(甲19,甲21,職権調査)。
イ 上記アにおいて認定した事実によれば,オックスフォード大学は,英国はもとより我が国においても,古くから英国の伝統と由緒ある大学として著名であり,本件商標の登録出願時及び登録査定時においても,需要者の間に広く知られていたものと認められる。
しかしながら,申立人が著名な略称であると主張する「OXFORD」及び「オックスフォード」の文字は,イングランドOxfordshireの首都名(新英和中辞典 研究社)であり,提出された証拠によっては,申立人との関係を有する大学出版局の発行する辞書,書籍等の販売に使用されていることがうかがえるとしても,「OXFORD」及び「オックスフォード」の文字や引用商標を使用して,オックスフォード大学の業務に係る商品及び役務を広告・宣伝した時期,回数,方法や,当該商品及び役務をどの地域で,どのくらい販売,提供したものか等,その周知性の度合いを客観的に判断するための具体的な資料の提出はないから,申立人提出の上記証拠によっては,「OXFORD」及び「オックスフォード」の文字並びに引用商標の使用状況を把握することができず,その周知性の程度を推し量ることはできない。
そのほか,申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても,「OXFORD」及び「オックスフォード」の文字並びに引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で,オックスフォード大学の業務に係る商品及び役務を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。
したがって,提出された証拠によっては,引用商標が,我が国において,オックスフォード大学の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識され,本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められないものであり,かつ,「OXFORD」及び「オックスフォード」が当該大学の著名な略称ということもできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,四個の三角形の頂点を中央に合わせ,やや隙間を空けて四角形状に組み合わせた図形(以下「本件図形」という。)と当該図形の下部に「OXFORD」の欧文字を本件図形より幅広に配した構成よりなるところ,本件図形と文字部分とは,視覚上分離して看取されるばかりでなく,本件図形については,特定の文字を認識させるとはいえないことから,特定の称呼及び観念を生じるとはいい難く,また,「OXFORD」の文字部分との間に称呼及び観念上のつながりがあるとはいえないことから,両部分は,それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
そうすると,本件商標に接する取引者,需要者は,本件図形と文字部分のそれぞれを出所識別標識としての機能を有する要部として認識,理解するというのが相当であるから,文字部分を要部として抽出し,引用商標Bと比較して商標の類否を判断することが許されるというべきである。
そこで,本件商標の文字部分についてみるに,その構成文字は「OXFORD」の文字を同書,同大,等間隔でまとまりよく一体に表され,また,これから生じる「オックスフォード」の称呼も,よどみなく一連に称呼し得るものである。
したがって,本件商標は,その文字部分に相応して,「オックスフォード」の称呼を生じるものであり,また,当該文字は,「イングランドOxfordshireの首都」の観念を生じるものである。
イ 引用商標Bについて
引用商標Bは,別掲4のとおり,それぞれベルトとおぼしき図形を円形状に表し,その下部を結び,当該図形の内側に上段に王冠2個と下段に王冠1個を並べ,その間に「DOMI/NVS/ILLV/MINA/TIO/MEA」の文字が記載された見開きの書籍風の図を配し(以下「引用図形」という。),さらに,ベルトとおぼしき図形に円弧状に「UNIVERSITY・OF・OXFORD」の欧文字を配した構成よりなる。
そして,引用商標Bは,その構成中において大きく顕著に表された「UNIVERSITY・OF・OXFORD」の文字部分に相応して,「ユニバーシティーオブオックスフォード」の称呼を生じ,「オックスフォード大学」の観念を生じさせるものである。
また,引用図形は,その構成中の見開きの書籍風の図に記載された文字が,何を意味するものであるかを理解することができず,王冠,書籍風の図を含めた構成全体で,我が国において親しまれた事物を表したものともいえないから,引用図形からは,特定の称呼及び観念は生じないものというべきである。
ウ 本件商標と引用商標Bとの比較
そこで,本件商標と引用商標Bとを比較するに,両者は,それぞれ上記ア及びイのとおりの構成態様からなるものであるから,両商標は,その構成中の文字部分において,「OXFORD」の文字を有するとしても,全体から受ける印象が明らかに相違するものであり,外観上,相紛れるおそれはない。
また,本件商標からは,「オックスフォード」の称呼を生じるのに対し,引用商標Bからは,「ユニバーシティーオブオックスフォード」の称呼を生じ,両称呼は,その音の構成及び数において明らかに相違するものであって,それぞれを一連に称呼しても,語感,語調が相違し,互いに聴き誤るおそれはない。
さらに,本件商標は「イングランドOxfordshireの首都」の観念を生じるのに対し,引用商標は「オックスフォード大学」の観念を生じるものであるから,両商標は,観念において相違するものである。
加えて,本件図形と引用図形を比較したとしても,上記のとおり各図形の形状において明らかな相違があるから,両者は外観において相紛れるおそれはない。
また,両図形は,いずれも特定の称呼及び観念は生じないから,称呼及び観念において比較することができない。
その他,本件商標と引用商標Bとが類似する商標であるとする理由は,見いだせない。
以上のことを総合して考察すると,本件商標と引用商標Bとは,その外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標Aとの類似性の程度
引用商標1は,別掲2のとおり,濃い青色の四角形内上方の右側に引用商標Bと同様の図形を配し,その下方に「UNIVERSITY OF」の欧文字と「OXFORD」の欧文字を上下二段に配置した構成よりなるものであり,また,引用商標2は,別掲3のとおり,濃い青色の長方形内の左側に引用商標Bと同様の図形を配し,その右側に「UNIVERSITY OF」の欧文字と「OXFORD」の欧文字を上下二段に配置した構成よりなるところ,それぞれ,その構成中の文字に相応して,「ユニバーシティーオブオックスフォード」の称呼を生じ,「オックスフォード大学」の観念を生じるものである。
なお,濃い青色の四角形及び長方形図形は,単に,背景としての装飾と認識されるものであることから,格別に看者の注意をひくものではない。
そして,引用商標Aの構成中,図形内に表された「UNIVERSITY・OF・OXFORD」と上下二段に表された「UNIVERSITY OF OXFORD」の各文字は,その全体をもって「オックスフォード大学」を意味する文字として取引者,需要者に看取,認識されるものとみるのが相当であり,その構成中の「OXFORD」の文字部分のみが独立して商品及び役務の自他識別標識として認識され,取引に資されるとみるべき特段の事情は見いだし得ないものである。
したがって,本件図形の下に「OXFORD」の文字を配した本件商標と引用商標Aとは,全体として異なる視覚的印象や記憶を与え,看者に全く別異のものとして認識されるものであって,いずれも「OXFORD」の文字をその構成中に有するとしても,類似性の程度は決して高いとはいえないものである。
イ 出所の混同について
引用商標Aは,前記(1)イのとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る役務を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。
そして,本件商標と引用商標Aとは,上記アのとおり,類似性の程度は高いとはいえないものである。
これらの事情を考慮すれば,本件商標の指定商品及び指定役務と申立人の取扱いに係る役務が同一又は類似し,その需要者の範囲を共通にする場合があるとしても,引用商標Aは,オックスフォード大学の取扱いに係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているとは認められないものであり,本件商標との類似性の程度も高いとはいえないことからすれば,本件商標権者が,本件商標をその指定商品及び指定役務について使用をしても,取引者,需要者が,引用商標Aを連想又は想起することはなく,その商品及び役務が他人(オックスフォード大学)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標と引用商標Aとは,上記(3)アのとおり,全く別異のものであって,それぞれの外観,称呼及び観念において比較した場合においても,両者は非類似の商標というべきであり,前記(1)イのとおり,引用商標Aは,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,オックスフォード大学の業務に係る商品及び役務を表すものとして,我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたとは認められないことから,本件商標と引用商標Aは類似する商標であって,引用商標Aが需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に,本件商標は不正の目的をもって使用するものであるとする申立人の主張は,その前提を欠くものである。
また,申立人が提出した証拠からは,本件商標権者が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的,その他の不正の目的をもって本件商標を出願し,登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第8号該当性について
申立人は,「本件商標は,オックスフォード大学の著名な略称『OXFORD』を含むものであり,かつ,その登録につき,オックスフォード大学の承諾を得ていないものである。」旨主張している。
しかしながら,申立人がその略称の著名性を示す証拠は,前記(1)イ認定のとおりであり,申立人は,「OXFORD」の文字が単独で我が国においてオックスフォード大学の略称として広く使用され知られている事実について,自身と関連する出版社の辞書や書籍等以外立証しておらず,「OXFORD」の文字は,甲各号証によっては,我が国においてオックスフォード大学の著名な略称と認めることはできない。
してみれば,本件商標は,その構成中に「OXFORD」の文字を有しているとしても,他人の著名な略称を含む商標ということができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は,本件商標を登録出願した行為は,社会一般の道徳観念に反し,また,公正な競業秩序の維持を旨とする正常な取引慣行に違反するものであり,さらには国際信義に反するものである旨を主張している。
しかし,前記(1)イのとおり,引用商標Aは,本件商標の登録出願時及び登録査定時において申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,我が国及び外国において需要者の間で広く認識されていたものと認められないものであり,商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないから,本件商標が,引用商標Aの持つ顧客吸引力(名声・信用・評判)にただ乗り(フリーライド)することや,信用,名声,顧客吸引力等を毀損(希釈化)させるなどの不正の目的をもって使用をするものであると認めることもできない。
また,申立人の提出した証拠からは,具体的に本件商標権者が申立人の事業を妨害し,不正の目的があることを裏付ける事実を見いだすことができない。
そして,申立人が提出した証拠からは,本件商標の出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は見当たらず,本件商標をその指定商品及び指定役務について使用することが,社会の一般道徳観念に反し,商取引の秩序を乱すものともいえず,その他,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
さらに,本件商標は,他の法律によりその使用等が禁止されているものではないし,特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反するものとはいえない。
加えて,本件商標は,その構成自体が,非道徳的,きょう激,卑わい,差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではない。
してみると,本件商標は,その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」に該当するということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(7)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第8号,同第11号,同第15号及び同第19号のいずれにも該当するものではなく,その登録は,同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲
別掲1(本件商標)色彩については原本参照

別掲2(引用商標1)色彩については原本参照

別掲3(引用商標2)色彩については原本参照

別掲4(引用商標3?引用商標8)



異議決定日 2020-09-29 
出願番号 商願2018-133537(T2018-133537) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W253540)
T 1 651・ 23- Y (W253540)
T 1 651・ 262- Y (W253540)
T 1 651・ 271- Y (W253540)
T 1 651・ 222- Y (W253540)
T 1 651・ 263- Y (W253540)
T 1 651・ 261- Y (W253540)
最終処分 維持  
前審関与審査官 堀内 真一 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
山田 正樹
登録日 2019-07-26 
登録番号 商標登録第6164941号(T6164941) 
権利者 株式会社OXFORD Corporation
商標の称呼 オックスフォード 
代理人 朝倉 美知 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 杉浦 健文 
代理人 前田 大輔 
代理人 中村 知公 

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