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審決分類 審判 一部取消 商標の同一性 無効としない 103
管理番号 1367062 
審判番号 取消2019-300181 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-03-12 
確定日 2020-09-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第2037352号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2037352号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、「HERBARIUM」及び「ハーバリウム」の文字を二段に表してなり、昭和60年9月2日に登録出願、第4類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同63年4月26日に設定登録がされ、その後、指定商品を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」とする書換登録が平成21年7月1日にされたものである。そして、商標登録の取消審判(2019-300183、2018-300756)により、第30類の指定商品及び第3類「せっけん類,香料類」について、取り消すべき旨の審決がされ、令和元年9月6日及び同2年7月31日に、それらの確定審決の登録がされた。その結果、本件商標は、第3類「歯磨き,化粧品」を指定商品として現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成31年3月28日であり、その請求の登録前3年以内の同28年3月28日から同31年3月27日までの期間を以下「要証期間」という場合がある。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第3類「化粧品」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第10号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが「化粧品」(以下「請求に係る指定商品」という。)について本件商標の使用をしていないものであるから、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の答弁に対して、要旨次のとおり弁駁した。
(1)本件商標と使用商標の同一性
答弁書に添付の商品写真(乙2)に撮影された商品に表示されているのは、「バラとおぼしき花の図形」、欧文字「HERBARIUM」、「BODY POWDER」、「CHANSON」及び「COSMETICS」のみであり、片仮名「ハーバリウム」は表示されていない。本件商標を構成する欧文字「HERBARIUM」は、英語で「植物標本集、植物標本室(館)」といった意味合いを有し、「ハーバリウム」の他、少なからず「ハーバリアム」と称呼される(甲3)。また、被請求人は、答弁書に添付の商品リーフレット(乙3)では、「ハーバリュウム」と表示している。すなわち、欧文字「HERBARIUM」に相当する片仮名としては、少なくとも、「ハーバリウム」、「ハーバリアム」及び「ハーバリュウム」があり得るところ、本件商標では、欧文宇「HERBARIUM」に対応する片仮名として「ハーバリウム」を選択し、これによって欧文字「HERBARIUM」の称呼を特定している。斯様な次第に付き、本件商標については、欧文字「HERBARIUM」と片仮名「ハーバリウム」は常に同時に使用されなければならない。
答弁書に添付の商品リーフレット(乙3)に表示されている片仮名は「ハーバリュウムボディローション」、「ハーバリュウムボディパウダー」あるいは「ハーバリュウムミルクバスL」であって、いずれも「ハーバリュウム」と表示され、本件商標を構成する片仮名「ハーバリウム」とは異なるため、社会通念上同一の商標の使用であるとは認められない。さらには、上記の片仮名には、欧文字「HERBARIUM」が添えらていない。
乙第4号証の売上報告書には、「ハーバリュウムボディパウダー」とのみ記載されている。片仮名「ハーバリウム」のみならず、欧文字「HERBARIUM」も記載されていない。
したがって、乙第2号証ないし乙第4号証をもって、本件商標と社会通念上同一の商標の使用であるとは認められない。
(2)乙第2号証
乙第2号証からは、この写真が撮影された時期、場所、撮影者等が明らかではない。さらには、同書証からは、該当する商品が製造された場所(工場)、製造時期等も不明である。答弁書にもこれらの事項に関する陳述が一切なく、陳述内容を裏付ける証拠方法も提出されていない。
また、乙第2号証(商品写真)と乙第3号証(商品リーフレット)に現わされた商品は、商品容器形状等を異にする別個のものである。被請求人は、この点を何ら説明していない。答弁書における被請求人の陳述及び提出証拠は整合性を欠く。
さらに、乙第2号証の商品写真を、インターネットで検索すると2012年8月当時に市場に出回っていた可能性はあるものの(甲5の1・4)、同商品がウェブ検索でヒットしたのはこの1件のみであり、他には一切ヒットしない。したがって、今日、同商品は既に販売されていないと考えられる。すなわち、乙第2号証の商品写真に掲載された商品は、消費税率5%適用当時(例えば、2012年8月頃)に販売されたことがあっても、本件審判請求から3年以内には販売されていなかったと考えるのが極めて自然である。
(3)乙第3号証
乙第3号証の商品リーフレットが印刷された時期、印刷場所、印刷業者等が明らかではない。したがって、同リーフレットが要証期間に印刷されたものであるとは認められない。更には、同書証からは、本件商標権者がこれを取引者・需要者に対して展示し、あるいは、頒布したのかが明らかではない。答弁書にもかかる事項に関する陳述が一切なく、陳述内容を裏付ける証拠方法も提出されていない。
(4)乙第4号証
乙第4号証は、いずれも、「3月分 売上報告書」あるいは「9月分 売上報告書」と記載されるにすぎず、西暦何年(あるいは、平成何年)の「3月分」ないし「9月分」のものであるのか明確ではない。したがって、要証期間内の売上報告書であるか否か明確ではなく、証明力を欠くといわざるを得ない。
また、乙第4号証には、「ハーバリュウムボディパウダー」の販売を示す記録はなく、同製品は販売されなかったと理解される。
そして、乙第4号証は、本件商標権者が全国展開する支店及び営業所のうち、わずか2ヵ所の営業所(すなわち、「四国支店の営業所:3800800000」及び「奈良Gの営業所:14092000000」)から提出されたものにすぎない。しかも、具体的な名称等はマスキングされている。これらの書証は、本件商標権者が全国展開する支店及び営業所から本社である本件商標権者に対する売上報告にすぎず、内輪の書類である。商標法第2条第3項第8号に規定する「取引書類」ではない。これをもって、本件商標権者が商品の取引者・需要者に対して商品を販売したことを証したことにはならない。被請求人は、商品「ハーバリュウムボディパウダー」を取引者・需要者に対して売り上げたことや店頭で販売してことを一切証明していない。
(5)「ハーバリュウムボディパウダー」
請求人が本件商標権者のお問い合わせ窓口から得た情報では、本件商標権者は、過去、同商品を製造し、本件商標権者が運営するサロンで販売していたが、同製品は5年以上前に廃番しているとのことであり、販売を取りやめていることが分かっている。
(6)本件商標権者のウェブサイト
本件商標権者のウェブサイトのうち、「Brands」及び「ONLINE SHOP」の各欄には、本件商標権者が主張する商品「HERBARIUM」あるいは「ハーバリュウム」は一切紹介されていない。また、同商品ばかりでなく、答弁書に添付の書証(乙3)に記載の「フルファム」ブランドの商品及び「せせらぎ」ブランドの商品等も紹介されていない。そうすると、答弁書に添付の書証(乙2、乙3)については、要証期間に用いられたものであるのかどうか疑問であって、その証明力に疑念がある。これらの書証をもって、本件商標の使用を証明するものではない。
(7)本件商標権者の商品カタログ
本件商標権者の最新商品カタログ「CHANSON COSMETICS -総合カタログ- 2018AUTUMN/WINTER」(甲8)には、本件商標の使用に係る商品ばかりでなく、乙第3号証に掲載された全ての商品(すなわち、「フルファム」ブランドの商品及び「せせらぎ」ブランドの商品等)が掲載されていない。乙第3号証(被請求人は商品リーフレットと述べた。)に掲載された全ての商品が、本件商標権者の最新商品カタログには何ら掲載されていない。極めて不自然である。
(8)ウェブサイト「@コスメ」
日本最大のコスメ・美容の総合サイト「@コスメ」において検索しても、本件商標権者が使用していると陳述する「ハーバリュウム」に係る商品は見当たらない(甲9の1?4)。念のため、本件商標の片仮名「ハーバリウム」にて検索した場合にも該当商品はヒットしない(甲9の5)。
(9)ウェブサイト検索
「Google検索」にて、2016年3月1日から2019年6月21日(すなわち、要証期間を含む。)において、「ハーバリュウム」及び「ハーバリウム」を検索しても、本件商標権者の商品は一切ヒットしない。これだけインターネットが普及しているにもかかわらず、本件商標権者の商品がヒットしないのは、不自然である。
(10)本件商標権者の商品の販路
本件商標を使用していると被請求人が主張する商品は「化粧品」の範ちゅうに属する商品であり、不特定多数の取引者・需要者に対して数多くの商品が販売される類いの商品であるから、同商品の販売形態が上記のいずれであっても、同商品は、極めて多数の店舗(販売コーナー)、美容サロン、訪問販売者を介して、需要者に販売されているはずである。したがって、被請求人は、本件商標の使用に係る商品を販売する店舗(販売コーナー)、美容サロン、訪問販売者を数多く具体的に示すことができるにもかかわらず、そのような証拠を提出していない。
(11)まとめ
被請求人は、答弁書において、本件商標を審判請求の対象である指定商品に使用していることについて、何ら具体的かつ詳細な陳述をしていない。また、提出された乙第2号証ないし乙第4号証は、本件商標を審判請求の対象である指定商品に使用していることの証明とはならない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第28号証(枝番号を含む。なお、当合議体において、令和2年6月17日付け回答書に添付の乙第16号証、乙第18号証、乙第21号証、乙第24号証及び乙第25号証を、それぞれ乙第24号証ないし乙第28号証と読み替える。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標権者は本件商標と社会通念上同一である「Herbarium」「ハーバリュウム」を「ボディーパウダー」、「ボディーローション」、「ミルクバス(入浴料)」等に1989年4月から使用し、継続して販売している(乙2、乙3)。これら商品は化粧品に属する商品であることが明らかである。
また乙第4号証より本件商標を使用した商品が要証期間内に実際に販売されていたことがわかる。
(2)以上、乙2号証ないし乙第4号証により、本件商標が日本国内において、本件審判請求の登録前3年以内に「化粧品」について本件商標権者により実際に使用されていることが証明されるものである。
2 審尋及び弁駁に対する回答(令和2年2月20日付け回答書)
(1)本件商標権者の事業形態について
本件商標権者は化粧品、健康食品などの製造販売を主として行う会社である(乙5)。本件商標権者製造の化粧品はデパートやドラッグストアで販売されることはなく、全国に約1000店舗ある本件商標権者の特約店エステティックサロンでカウンセリングに基づいて販売される。そのため、各商品の個別パンフレットなどは用意していない。本件商標権者は委託商品として各特約店エステティックサロンへ商品を引き渡し、その後各特約店エステティックサロンは顧客にカウンセリングを行い、商品を販売するという事業形態を採用している。本件商標権者自らのホームページにおいていくつかの商品のオンライン販売も行っているが、販売割合としては非常に少なく、各特約店エステティックサロンでの売上が大部分を占める。
(2)本件商標を使用した商品の販売方法について
本件商標を使用したボディーパウダーは、昭和61年8月から販売されているものであり、現時点でも販売は続いているが、甲第8号証の総合カタログには掲載していない。カタログに掲載されていないことをもって、本件商標を使用した商品の販売に疑義を呈することは失当である。
本件商標を使用した商品が現在においても販売されていることを示すレジシステムの画面の写しとその内容に関する本件商標権者社員の宣誓は(乙6)、要証期間外の日付とはなるが、変更していない旨も併せて宣誓していることを勘案して頂きたい。
本件商標を使用したボディーパウダーは、その容器を平成20年(2008年)に4200個(乙7)、同25年(2013年)に900個発注し(乙8)、現在においてもその時に発注した容器を使用している。ちなみに現在では外箱の価格表示箇所に「¥3,700(税抜)」のシールを貼付して対応している(乙9)。
発注書・納品書(乙10?乙12)には便宜上片仮名「ハーバリュウム」の文字が記されているが、これは乙第13号証に示す商品である。
このことは、乙第13号証の外箱裏面の写真における商品コードが「21140000」であり、これは、乙第6号証の宣誓書におけるシステム画面のキャプチャー内に表示されたコード、また乙第14号証ないし同第17号証における予約注文書のコード(末尾4桁の0を省略)、乙第18号証の月間出荷数を示すデータベースにおける「ハーバリュウムポディーパウダー」の商品コード、乙第19号証ないし同第22号証の売上報告書の商品コード(末尾4桁の0を省略)や、乙第23号証の月別売上を示すデータベースの写しにおける「ハーバリュウムボディーパウダー」商品のコードとー致する。
そのため、「21140000」のコードが示す「ハーバリュウム」は乙第13号証の商品「HARBARIUM」ボディーパウダーであることがわかる。
(3)本件商標の使用について
本件商標を使用したボディーパウダーは、大量に販売される性質の商品ではなく、かつ、ボディーパウダーは使用期限のない商品であるため、不定期に特約店エステティックサロンヘ注文を募り、発注があった分に関して在庫の容器にパウダーを充填し、特約店エステティックサロンヘ引き渡すといういわゆる受注販売を行っている。
本件商標権者は特約店エステティックサロンに管理上、営業所としての11桁のコードを付与している。ただ末尾6桁は0であるため、書類によっては略して記載することもある。
乙第14号証ないし乙第17号証は各営業所からの予約注文書であり、この注文に基づき商品を引き渡したことを示すのは乙第18号証である。
乙第19号証は営業所コード02006000000が平成28年(2016年)6月に本件商標を使用したハーバリュウムボディーパウダーを販売したことを示す売上報告書であり、これに基づく本件商標権者のデータベースの出力結果が乙第23号証となる。
乙第23号証の表一行目には営業所コード02006000000が2016年6月に本件商標を使用した商品を2点販売したことが分かる。
これらは、本件商標権者の社内書類ではあるが、このような体裁の書類は容易に偽造出来るものではない。また乙第18号証及び乙第23号証は、本件審判請求後に出力したものであるが、要証期間内の売上を示すデー夕であることには変わりがない。
乙第18号証ないし乙第23号証には「ハーバリュウム」の文字とともに商品コード21140000が記載されていることから、上記(2)で述べたとおり、取引の対象となっている商品は、乙第13号証の「HERBARIUM」を使用したボディーパウダーであることが分かる。
よって、化粧品の範ちゅうに属するボディーパウダーの包装に、本件商標と社会通念上同一の商標を付したものを、要証期間内である平成28年(2016年)6月、7月及び9月に本件商標権者の特約店エステティックサロンが販売していることが分かる。
なお、片仮名「ハーバリュウム」が本件商標の片仮名部分「ハ-バリウム」と社会通念上同一の商標とは認められないとの指摘があるが、例えば「aquarium」の片仮名表記には、「アクアリウム」「アクアリュウム」の両方を使用すること、「natrium」の片仮名表記にも「ナトリウム」「ナトリュウム」の両方を使用すること、「sanatorium」の片仮名表記にも「サナトリウム」「サナトリュウム」の両方を使用することを勘案すれば、語尾の「rium」部分の片仮名表記は「リウム」も「リュウム」もどちらの表記も使用することは社会通念上一般的に行われているといえる。
よって、「ハ-バリウム」と記載するか、「バーバリュウム」と記載するかは、外来語を日本語表記した場合のいわゆる「揺れ」の一種であり、実質上同一とみるべきものである。
なお、仮に、「ハ-バリュウム」が本件商標と社会通念上同一と詔められないとしても、上記のとおり、本件商標とは社会通念上同一の商標とは認められる「HERBARIUM」が使用されていたことは明らかである。
(4)請求人の弁駁について
請求人は、本件商標権者のお問い合わせ窓口へ問い合わせたところ、「5年以上前に廃番しているとのことであり、販売を取りやめていることが分かっている。」との主張である。しかし、本件商標を使用した商品について問い合わせを受けることはあるが、その場合は、サロンでのカウンセリングに基づいて販売する商品である旨を説明し、近くのサロンの案内をしている。
また、(1)で述べたとおり、本件商標権者の事業形態として、地域密着の特約店による販売形式を取っているため、長年にわたり使用してくださるお客様の存在から、大規模には販売しないが細々と販売を続けている商品が多数存在し、カタログやウェブサイトなどにはメイン商品のみを掲載している。
よって、カタログ等に掲載されていないことをもって、本件商標権者の陳述や証拠に疑義を呈することは失当である。
3 審尋に対する回答(令和2年6月17日付け回答書)
特約店エステティックサロンは、本件商標権者とは別組織の個人事業主であり、これは、本件商標権者と営業所コード06101の個人事業主との特約店契約書(乙27)から証明される。
乙第24号証より、個人事業主である営業所コード06101の特約店エステティックサロンから本件商標と社会通念上同一の商標を使用したボディパウダーの発注があったこと、乙第25号証より、本件商標権者より、営業所コード06101の特約店エステティックサロンを含む多くの特約店エステティックサロンへ本件商標と社会通念上同一の商標を使用したボディパウダーの引き渡しがあったこと、乙第26号証より、営業所コード06101の特約店エステティックサロンが本件商標と社会通念上同一の商標を使用したボディパウダーの売上報告を本件商標権者に行ったことがわかる。なお、本件商標権者と特約店との決まりとして、売上報告は実際に売上があった時から2ヶ月以内に行われる。
また、営業所コード06101の特約店エステティックサロンが顧客へ本件商標と社会通念上同一の商標を使用したボディパウダーの販売をした売上領収書の控え(乙28)は、レジからの再発行分となるが、これにより要証期間内である2016年(平成28年)7月21日に本件商標と社会通念上同一の商標を使用したボディパウダーが販売されたことがわかる。
以上のことから、特約店エステティックサロンは、本件商標権者とは別組織であり、本件商標権者から特約店エステティックサロンへ本件商標と社会通念上同一の商標を使用したボディパウダーを引き渡すことは商標法第2条第3項第2号の使用の行為に該当し、さらに、特約店エステティックサロンが2016年(平成28年)7月21日に顧客に本件商標と社会通念上同一の商標を使用したボディパウダーを販売したことは、商標法第2条第3項第2号の使用の行為に該当することは明らかである。
よって、本件商標と社会通念上同一の商標が日本国内において、本件審判請求の登録前3年以内に「化粧品」について本件商標権者により実際に使用されていることが証明されるものである。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 乙第6号証は、本件商標権者の従業員の宣誓書原本の写しであって、そこには「HERBARIUM(ハーバーリュウム)ボディパウダーは、現在も取引可能となっています。」との記載、並びに本件商標権者のレジシステム「売上入金入力」画面の一部が掲載されていて、そこには品番の欄に「21140000」、品名の欄に「ハーバリュウムボディパウダー」と表示されている。
イ 乙第13号証は「本件商標を使用した商品写真」とするものであって、表面には、「HERBARIUM」(以下「使用商標」という。)「BODY POWDER」、「CHANSON」「COSMETICS」の文字が表示され、その裏面には、販売名「ハーバリュウム」「ボディパウダー」、製造販売元「株式会社シャンソン化粧品」、商品コード「21140000」の文字等が表示されている。
ウ 乙第23号証は、本件商標権者の「商品データベース‐月別売上」であって、そこには、商品名「21140000 ハーバリュウムボディパウダー(ハーバリュウムボディパ)」、売上期間「2016年4月?2017年3月」の表示のもとに、ブロック「東北支店」、営業所コード「06101000000」、9月「1」と表示されている。
なお、この出力日は「2020/02/17」である。
エ 乙第26号証は、営業所コード「06101000000」、住所「仙台市」、氏名「近」(「近」以降はマスキングされている。以下「近氏」という。)から、本件商標権者にあてた、平成28年9月30日付け「9月分売上報告書」であって、そこには、商品名「ハーバリュウムボディパウダー」、商品コード「2114」、当月小売売上 数量「1」と記載されている。
オ 乙第27号証は、本件商標権者が「近氏」(特約店の屋号は「仙台・・CEサロン・・」)と交わした平成19年12月26日付け「特約店契約書」であり、それは、商品の委託販売及び売買に関することを内容として、書面による申し出がない場合は、契約期間満了の翌日から1年間継続、以後も同様とする旨の記載がある。
カ 乙第28号証は、2016年7月21日付け「売上領収伝票」の写しであって、「06101001」、「CEサロン」「宮城県仙台市」、品番/品名に「21140000」、「ハーバリュウムボディパウダー」、数量「1」、発行日「2020年5月26日」及び「(再発行)」の表示がある。
(2)上記(1)からすれば、以下の事実が認められる。
ア 使用商標が表示されている箱には「BODY POWDER」及び「ボディパウダー」の各文字があるから、当該箱は「ボディパウダー」(以下「使用商品」という。)の包装用の箱と認められ、また、製造販売元「株式会社シャンソン化粧品」の表示は、本件商標権者の名称と同一である。
イ 近氏は、平成19年12月26日付けで本件商標権者と委託販売等に関する特約店契約を結んでおり、当該契約は現在も有効に存続している。
ウ そして、2016年7月21日付けで、近氏に係る特約店(営業所)において、「ハーバリュウムボディパウダー」旨の商品が1個販売された。
エ 近氏に係る特約店は、平成28年9月30日付け「9月分売上報告書」において商品名「ハーバリュウムボディパウダー」旨の商品を数量「1」売り上げたことを、本件商標権者に報告し、本件商標権者は当該売り上げを「商品データベース」に蓄積している。
2 判断
(1)使用商標について
本件商標は、別掲1のとおり欧文字「HERBARIUM」及び片仮名「ハーバリウム」の文字を2段に表した構成からなるところ、片仮名は欧文字の読みを特定したものと無理なく理解できることから、本件商標の欧文字と片仮名は「ハーバリウム」の称呼及び「植物見本集」(甲3)の観念を共通にする。一方、使用商標は、本件商標の欧文字部分とそのつづりを共通にするものであるから、本件商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときの、一方の使用であり社会通念上同一の商標と認められる。
(2)使用商品について
使用商品は、本件商標権者の製造に係る「ボディパウダー」であり、これは、本件審判の請求に係る指定商品「化粧品」の範ちゅうに含まれる商品である。
(3)使用者について
本件商標権者と近氏との委託販売等に関する特約店契約は、要証期間を含む平成19年12月26日より現在まで有効に存続している。
そうすると、近氏は、使用商品を含む本件商標権者の商品の販売について委託されている者であるといえるから、本件商標権者より黙示の許諾があった通常使用権者と推認することができる。
(4)使用時期について
近氏に係る特約店が「ハーバリュウムボディパウダー」旨の商品を販売(譲渡)した平成28年7月21日は要証期間内である。
そして、当該販売に係る売上票に付された商品の商品コードと使用商品の箱に付された商品コードが同一であり、「9月分売上報告書」に付された当該商品の商品コードは、使用商品の箱に付された商品コードの上4桁と同一であることから、当該商品は使用商品であると認められる。
そうすると、近氏に係る特約店は要証期間内に使用商品を販売(譲渡)したものと認められる。
(5)小括
上記(1)ないし(4)からすれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間内に日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品「化粧品」の範ちゅうに含まれる商品の包装に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して譲渡したと認められ、この行為は商標法第2条第3項第2号に該当する。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本件商標




2 使用商標(色彩は原本参照)




審理終結日 2020-07-21 
結審通知日 2020-07-28 
審決日 2020-08-13 
出願番号 商願昭60-89679 
審決分類 T 1 32・ 11- Y (103)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 大森 友子
岩崎 安子
登録日 1988-04-26 
登録番号 商標登録第2037352号(T2037352) 
商標の称呼 ハーバリウム 
代理人 高梨 範夫 
代理人 鈴木 亜美 
代理人 保崎 明弘 
代理人 水野 勝文 
代理人 和田 光子 

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