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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z32
管理番号 1367050 
審判番号 取消2018-300402 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-06-13 
確定日 2020-09-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第2667438号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2667438号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成3年4月5日に登録出願、第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同6年5月31日に設定登録され、その後、同17年9月28日に指定商品を第30類「茶,コーヒー及びココア,氷」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成30年6月28日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である同27年6月28日から同30年6月27日までを、以下「要証期間」という場合がある。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第32類「清涼飲料,果実飲料」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第32類「清涼飲料,果実飲料」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用をしていないものであるから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人は、本件商標は、その指定商品中「清涼飲料」について要証期間内に日本国内において、本件商標権者により使用されている旨主張しているが、以下のとおり、商標法第50条第2項で定める登録商標の使用を証明するに十分なものではないから、本件商標の登録は取り消しを免れないものである。
(1)被請求人のオンラインショップの画面について
ア 乙第6号証及び乙第7号証について、被請求人はこれが広告であることを意図しているのかもしれないが、広告ならば、それが商標法上の「使用」というためには、標章を付して展示、頒布等をしなければならない(商標法第2条第3項第8号)にもかかわらず、被請求人は、その広告を展示、頒布等をしていることを証明してはいない。
また、乙第6号証の証拠説明書等によると2018年9月5日に印刷されたものとあり、要証期間内の使用を証明した書面ではない。また、乙第7号証によると、天使のポリフェノールと称する商品が通信販売限定商品として2014年7月16日に販売を開始したとの告知記事であって、要証期間内の使用を証明したものとはいえず、また商標法第2条第3項第8号において標章の「使用」となるのは、標章を付して広告を展示、頒布等をした場合であって、要証期間前の商品の販売日というだけで証明されるものではない。
イ しかも、乙第7号証をみると、商品紹介文において「独自開発素材『パセノール』を配合した中高年女性向けの美容サプリメント」と記載されているように、乙第6号証及び乙第7号証の商品は「サプリメント」であって、本件審判請求に係る指定商品のいずれかについての商標の使用を証明したということはできない。
ウ なお、甲第1号証に示されるように、被請求人が示す乙第6号証及び乙第7号証の商品は、健康食品ブランド「天使の健康」の公式通販サイトにおいて販売され、甲第2号証及び甲第3号証に示されるように楽天やアマゾンといった通販サイトでは、薬局(ドラックストア)の分野にて取り扱われている商品であり、当該商品は「清涼飲料」としてではなく「サプリメント」として販売等されていることからも、乙第6号証及び乙第7号証に示される商品は「サプリメント」のみに使用しているのであって「清涼飲料」に使用しているということができないことは明らかである。
エ 以上のとおり、乙第6号証及び乙第7号証は、要証期間内にその広告を展示、頒布等をしていること証明されておらず、さらに、その内容は、被請求人が主張するような「清涼飲料」についてのものではなく、第5類の「サプリメント」に相当する商品として表しているものであるから、本件審判請求に係る指定商品のいずれかについての商標の使用を証明したということはできない。したがって、乙第6号証及び乙第7号証は、商標法第50条第2項で定める登録商標の使用を証明するに十分なものということはできない。
(2)被請求人が示す判決・審決について
ア 商標法第2条第3項第8号における商標法上の使用を主張するのであれば、その広告に付された標章について、展示、頒布等をしなければならないのであって、単に掲示されたのみでは商標法上の使用には該当しない。
イ 被請求人が示した乙第9号証ないし乙第12号証の判決及び審決例は、出所表示機能を有さない態様において商品及び役務に付された商標について、商標の使用を認めた判断例であって、「天使」と他の語が一体的に表示された表示について認めた事案ではなく、商標法第50条第2項で定める登録商標の使用を証明する根拠となるということはできない。
また、「社会通念上の同一と認められる商標」については、工業所有権法逐条解説[第20版]によると、「社会通念」は社会一般に通用する常識と解されており、すなわち社会一般の概念として同一の商標と解釈される範囲で使用が認められるとされる規定であって、使用態様及びその他の状況を考慮して、登録商標と同一の取り扱いをされている範囲について商標の使用と認められるべきものである。
乙第6号証及び乙第7号証において表示されている商標はいずれも鍵括弧などで一体不可分に表示され、さらに被請求人自身もそれぞれ商標登録(登録第5753335号「天使の健康」)又は商標登録出願(商願2018-029312「天使のポリフェノール」)を行っており、社会通念上の同一としての「天使」についての使用ではなく、それぞれ「天使のポリフェノール」及び「天使の健康」としての商標の使用を行っているのであって、社会通念に照らしてみても本件商標と乙第6号証及び乙第7号証において表示されている商標とは、社会通念上同一と認められる商標ということもできない。
ウ 以上のとおり、乙第8号証ないし乙第25号証の判決及び審決例の基準に照らしてみても、商標法第50条第2項で定める登録商標の使用を証明するに十分なものということはできない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第65号証(枝番号を含む。乙第43号証は欠番。)を提出した。
1 本件商標は、本件商標権者によって、本件審判の請求に係る指定商品中の「清涼飲料」に使用されている。
2 本件商標権者等について
本件商標権者は、日本有数の菓子・食品の製造・販売を業とする会社であり、「天使(エンゼル)」を創業の精神を体現するシンボルとして、天使図形からなる標章を採用し、明治38年(1905年)以来1世紀以上の長きにわたって自社製品に使用し続けている。これは、裁判所においても認められており(乙1)、特許庁における審判事件においても、天使図形のみならず、「天使」、「てんし\天使」、又は、「てんし\天使\テンシ」等の語からなる商標については、強い出所識別能力を有していることが認定されている(乙2?乙5)。
3 本件商標の使用について
本件商標権者は、「天使」の語からなる商標を、「清涼飲料」について、要証期間内に使用している。
(1)本件商標権者のオンラインショップの画面
乙第6号証は、本件商標権者が開設しているオンラインショップの画面の写し(抜粋)である。このショップでは、本件商標権者の提供する、「清涼飲料」(以下「本件商品」という場合がある。)等が販売されている。本件商品には、「天使のポリフェノール」等と表示されて、本件商品は、本件商標権者の「ヘルスケアブランド『天使の健康シリーズ』」の通信販売限定商品として、平成26(2014)年7月15日に販売が開始され、現在まで継続して販売されている(乙7)。したがって、「天使」の語からなる商標は、要証期間内に使用されている。本件商品は、このシリーズの内のドリンクタイプの商品であり、乙第7号証に紹介されているとおり、「『パセノール(TM)』に加えて、『シトルリン』、『ローヤルゼリー』を配合し、パッションフルーツ果汁と果実酢のさっぱりとした甘酸っぱい味わい。」の清涼飲料である。ページタイトル、及び、商品の表示のとおり、本件商品は、常に「天使のポリフェノール」と紹介されている。かかる行為が、商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」及び、商標法第2条第3項第1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」にあたる。
4 上記3の使用態様と第50条第1項に基づく審判における登録商標の使用について
本件商品に表示された「天使のポリフェノール」の標章(以下、「使用商標」という。)は、清涼飲料の宣伝広告として、又は、商品に直接付して使用されている。したがって、使用商標がそのまま商品の名称ではないとしても、第50条第1項に基づく審判における登録商標の使用にあたる。この点は、判決及び特許庁の審決(乙9?乙12)においても、同様に判断されている。
5 本件商標と使用商標の同一性
ページタイトル、及び、商品には、使用商標(天使のポリフェノール)が表示されている。ここで、使用商標中の「ポリフェノール」の語は、「複数の水酸基が結合した芳香族化合物の総称。」であって、単なる含有物の普通名称である。そうすると、使用商標の要部は、「天使」の部分にあり、本件商標と社会通念上同一というべきである。かかる表示に接した需要者は、「『天使』印のポリフェノール(を含有した飲料)」であることを容易に認識する。商標法第50条の審判における使用証明については、登録商標と使用商標との完全同一までは要求されていないことはいうまでもなく、「社会通念上同一と認められる商標」については、判決及び特許庁の審決(乙13?乙25)のとおり、従前より比較的緩やかに解されてきた特許庁の審理実績に鑑みても、本件商標権者が開設しているオンラインショップや本件商品に表示されている使用商標は、本件商標の使用と認められるべきである。
本件商標は、漢字の「天使」を大書し、その下に平仮名の「てんし」と付記してなる。他方、使用している商標は「天使」の語のみからなる。これは「登録商標が二段併記等の構成からなる場合であって、上段及び下段等の各部が観念を同一とするときに、その一方の使用」に該当するから、登録商標の使用であることは明らかである。
6 以上より、本件商標は、要証期間内に、本件商標権者によって、指定商品である「清涼飲料」について、広告として、又は、商品そのものに付して使用されている。
7 審尋に対する被請求人の意見
(1)天使のポリフェノール「パセノール」について
天使のポリフェノール「パセノール」は、本件商標権者の独自開発成分を原料とし、「天使の健康シリーズ」と総称される商品の一つとして、通信販売限定で販売されている。この点、2014年7月8日付けの「中高年女性向け美容サプリメント『パセノール(粒)』&『パセノールドリンク』新発売」と題する記事(乙32)に明らかなように、天使のポリフェノールとの商品は、粒状の「サプリメント」商品と、本件商品であるドリンク状の「清涼飲料」商品との2種がある(乙33)。
(2)本件商標の使用について
ア 乙第34号証について
乙第34号証は、本件商標権者の発行・配布に係る、2017年11・12月号のカタログであり、これは、表題に記載のとおり2017年11月ないし12月に配布された。このカタログの作成時期は、同年10月であり、納期は同年10月23日である(金額欄のみマスキングした:以下同じ)(乙36)。このカタログは、株式会社ゼネラルアサヒ(以下「ゼネラルアサヒ」という。)(乙43)に発注され、26万部が作製されて、被請求人に納入された。カタログには、その表紙の最下部に、「※価格は2017年10月現在、消費税8%で計算しています。」とも記載されている。乙第34号証のカタログは、通販商品に同梱して配布されている。
イ 乙第37号証について
乙第37号証も、本件商標権者の発行・配布に係る、2018年1・2月号のカタログである。制作は、上記乙第34号証同様、ゼネラルアサヒが行い、25万部が制作され、本件商標権者に納付された。納期は2017年12月20日である(乙38)カタログには、その表紙の最下部に、「※価格は2017年11月現在、消費税8%で計算しています。」とも記載されている。
ウ 乙第39号証について
乙第39号証も、本件商標権者の発行・配布に係る、2018年3・4月号のカタログである。制作は、ゼネラルアサヒが行い、26万5千部が制作され、本件商標権者に納付された。納期は2018年2月23日である(乙40)カタログには、その表紙の最下部に、「※価格は2018年2月現在、消費税8%で計算しています。」とも記載されている。
エ 乙第41号証について
乙第41号証も、本件商標権者の発行・配布に係る、2018年5・6月号のカタログである。制作は、ゼネラルアサヒであり、27万部が本件商標権者に納入された。納期は2018年4月23日である(乙42)カタログには、その表紙の最下部に、「※価格は208(審決注:2018の誤記と思料)年4月現在、消費税8%で計算しています。」とも記載されている。
オ 上記のカタログの発送について
本件商標権者が配布する上記のカタログは、制作者・制作時期や制作・配布部数等も明らかで、かつ、商品に同梱されて全ての商品購入先に配布されていて、これらの行為が要証期間内に行われていることも、明らかである(乙44?乙47)。
8 弁駁書の主張に対する被請求人の意見
(1)乙第6号証及び乙第7号証に関する「被請求人のンラインショップの画面について」
ア カタログの配布について
被請求人は、本件商標の広告・配布の事実を提出し(乙34?乙47)、また、カタログの制作・配布等の行為は、要証期間内になされている(乙34?42)。
イ 本件商品について
本件商品は、上記7(1)のとおり清涼飲料であり、本件商品のパッケージにもその旨明記されている。また、現実にも、いわゆる薬局(ドラッグストア)で販売されている商品が医薬品に限られていないことは常識に属する。現にamazon「ドラッグストア」(乙48)では、医薬品のほか、マスク等の衛生商品、ティッシュペーパーのような日用品、たばこのような商品の他、いわゆるエナジードリンクまで極めて多種の商品が販売されている。
(2)本件商標と使用商標との社会通念上の同一性は肯定されるべきである
工業所有権逐条解説において、「使用態様及びその他の状況を考慮」すべきと特掲されている点にも考慮が払われるべきである。けだし、「通常の取引社会においては、常に登録商標と同一のものを使用するのではなく、当該商標を付する商品・役務の性質等に応じて、これに適宜変更を加えて使用するのが一般的であるという、実務上の要請に即」するべきだからである(乙49)。使用商標「天使のポリフェノール」中の「ポリフェノール」は、当該清涼飲料の含有成分の普通名称であるから、その要部は、「天使」の部分にあり、本件商標の使用と判断されるべきことは、審判事件答弁書において既に述べた。
判決及び特許庁の審決(乙13?乙25)では、登録商標に付加された語の識別力が弱いものが多いが、必ずしも指定商品の普通名称ではなく(あるいは他の商品も含まれ)、かつ、多義語である場合もある。これに対して、本件商品に表示された「天使のポリフェノール」中の「ポリフェノール」の語は、市場において、飲食料品に含有される優良な物質名(含有成分)であることは良く知られている(乙50?乙55)。したがって、判決及び特許庁の審決に徴して、使用商標の要部が「天使」の部分にあることも明らかである。
以上より、判決及び特許庁の審決(乙56?乙65)に鑑みても、本件商標と使用商標との社会通念上の同一性は肯定されるべきである。したがって、本件商標は、要証期間内に「清涼飲料」について使用されている。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第33号証は、本件商品の画像の写しであるところ、これには、「パセノールドリンク」と称される商品の包装容器が掲載されていて、その表面に「天使のポリフェノール」との表示があり、側面には「●名称:清涼飲料水」との表示されている。
(2)乙第34号証は、商品カタログ(抜粋)であるところ、これには、その表紙に「Vol.8 商品カタログ/2017年11・12月号/天使の健康」の表示があり、2葉目の上方には、「天使のポリフェノール『パセノールTM(審決注:TMは「ル」の右上に小さく表示。以下同じ。)』」と表示され、下方には、乙第33号証と同様の「パセノールドリンク」と称される商品の包装容器の表面に「天使のポリフェノール」と表示されている。
さらに、4葉目には、商品の購入に関するQ&A、WEB会員への登録案内及び会員特典、並びに商品や注文についての問合せ先として、「森永製菓『天使の健康』お客さまセンター」の表示及び問合せ電話番号、ホームページアドレス等が表示され、「【お客様の個人情報について】」の見出しの下、その取り扱いについての説明が記載されている。
(3)乙第37号証は、商品カタログ(抜粋)であるところ、これには、その表紙に「Vol.9 商品カタログ/2018年1・2月号/天使の健康」の表示があり、2葉目の上方には、「天使のポリフェノール『パセノールTM』」と表示され、下方には、乙第33号証と同様の「パセノールドリンク」と称される商品の包装容器の表面に「天使のポリフェノール」と表示されている。
さらに、4葉目には、商品の購入に関するQ&A、WEB会員への登録案内及び会員特典等、乙第34号証の3葉目と同様の記載がある。
(4)乙第39号証は、商品カタログ(抜粋)であるところ、これには、その表紙に「Vol.10 商品カタログ/2018年3・4月号/天使の健康」の表示があり、2葉目の上方には、「天使のポリフェノール『パセノールTM』」と表示され、下方には、乙第33号証と同様の「パセノールドリンク」と称される商品の包装容器の表面に「天使のポリフェノール」と表示されている。
さらに、4葉目には、商品の購入に関するQ&A、WEB会員への登録案内及び会員特典等、乙第34号証の3葉目と同様の記載がある。
(5)乙第41号証は、商品カタログ(抜粋)であるところ、これには、その表紙に「Vol.11 商品カタログ/2018年5・6月号/天使の健康」の表示があり、2葉目の上方には、「天使のポリフェノール『パセノールTM』」と表示され、下方には、乙第33号証と同様の「パセノールドリンク」と称される商品の包装容器の表面に「天使のポリフェノール」と表示されている。
さらに、4葉目には、商品の購入に関するQ&A、WEB会員への登録案内及び会員特典等、乙第34号証の4葉目と同様の記載がある。
(6)乙第50号証は、「アサヒカルピスウェルネス株式会社」のオンラインショップ画面であるところ「りんごに含まれる“ポリフェノールの一種『プロシアニジン』は・・・」の記載がある。
(7)乙第51号証は、「エーザイ株式会社」のホームページであるところ「ポリフェノールとは、植物が過酷な自然を生き抜くために果実や果皮に蓄える成分のことです。・・・でもポリフェノールを含んだ食べ物を・・・・」の記載がある。
(8)乙第52号証は、「有限会社中垣技術士事務所」のホームページであるところ、「この黒い実にはポリフェノールが豊富に含まれ・・・有機アロニア100%果汁は、新鮮な果実から冷却加圧搾汁され、低温殺菌されていますので、有機成分が損なわれることなく瓶詰めされています。」の記載がある。
(9)乙第53号証は、「株式会社DHC」のオンラインショップ画面であるところ、「DHCの『ポリフェノール』には,月見草種子、りんご、お茶、赤ワインから抽出したポリフェノールを配合しました。」の記載がある。
2 上記1において認定した事実によれば、以下のように判断できる。
(1)使用商標について
本件商標は、別掲1のとおり、「天使」の漢字を、その下に「てんし」の平仮名を小さく、それぞれを横書きに表した構成よりなるものであって、当該構成より、平仮名は「天使」の漢字の読みを表したものと無理なく看取、把握されるものである。
そうすると、本件商標からは、「テンシ」の称呼及び「天使」の観念が生じるというべきである。
他方、被請求人が主張する「天使のポリフェノール」の標章(使用商標)は、上記1より、本件商標権者の取り扱いに係る「パセノールドリンク」と称される商品(使用商品)に使用されていることが認められる。そして、使用商標の構成中の「ポリフェノール」の文字は、飲食料品に含有される物質(成分)名であると認められるから、当該文字部分は、本件審判の請求に係る指定商品である清涼飲料,果実飲料との関係では、識別標識として機能しないか、又は、極めて弱いというべきである。
また、「天使の」の文字中の「の」文字は、格助詞にすぎないものであるから、使用商標は、「天使」の文字部分が要部として理解されるというべきである。
そうすると、使用商標の要部である「天使」の文字からも、「テンシ」の称呼及び「天使」の観念が生じる。
以上によれば、本件商標と使用商標とは、外観上の相違はあるものの、使用商標の要部は、同一の称呼及び観念を生ずる本件商標中の漢字部分「天使」と同一の文字であることからすれば、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であるというべきである。
(2)使用者及び使用時期について
使用商標が表示されている、平成29年(2017年)11月頃から翌年6月頃までに発行された商品カタログには、「森永製菓」の表示があり、これは本件商標権者の略称といえることから、本件商標の使用者は本件商標権者と認められ、また、当該商品カタログには、商品や注文の問い合わせ先、商品の購入に関するQ&Aや顧客の個人情報の取扱いについての説明などが掲載されていることから、本件商標権者が、顧客へ配布するために当該カタログを制作し、要証期間内に頒布したことが推認できる。
(3)使用商品について
使用商品は、その包装容器の側面に「清涼飲料水」と表示があることから、本件審判の請求に係る指定商品中の「清涼飲料」の範ちゅうに含まれる商品と認められる。
(4)小括
以上(1)ないし(3)によれば、本件商標権者は、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品中の「清涼飲料」に本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付したカタログを頒布したと認められる。
そして、上記使用行為は、商標法第2条第3項第8号にいう商品に関する広告に標章を付して頒布する行為に該当する。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者が、その請求に係る指定商品中、「清涼飲料」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲
1 本件商標



2 使用商標




審理終結日 2020-06-30 
結審通知日 2020-07-02 
審決日 2020-07-31 
出願番号 商願平3-35037 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z32)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 岩崎 安子
大森 友子
登録日 1994-05-31 
登録番号 商標登録第2667438号(T2667438) 
商標の称呼 テンシ 
代理人 小野寺 隆 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 小林 彰治 
代理人 廣中 健 

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