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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3035
審判 全部申立て  登録を維持 W3035
審判 全部申立て  登録を維持 W3035
審判 全部申立て  登録を維持 W3035
審判 全部申立て  登録を維持 W3035
管理番号 1366305 
異議申立番号 異議2019-900285 
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-04 
確定日 2020-08-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第6160848号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6160848号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6160848号商標(以下「本件商標」という。)は,「幸せのパンケーキ」の文字を標準文字で表してなり,平成29年6月12日に登録出願,第30類「パンケーキ,パンケーキを用いた菓子,ホットケーキ,ホットケーキを用いた菓子,パンケーキの生地,ホットケーキの生地,パンケーキのもと,ホットケーキのもと」及び第35類「飲食店に関する経営の診断又は経営に関する助言,飲食店のフランチャイズ事業に関する情報の提供,飲食店の開業・経営に関する調査・企画・情報の提供・指導・助言,飲食店の経営に関するコンサルティング及びそれに関する情報の提供,飲食店及びホテルのフランチャイズ事業の運営及び管理,飲食店事業の運営,経営の診断又は経営に関する助言,飲食物の提供に関する市場調査,市場調査及び分析,飲食物の販売に関する情報の提供,商品の販売に関する情報の提供,飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,パンケーキの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として,令和元年5月20日に登録審決,同年7月12日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する標章
登録異議申立人であるPlus es株式会社(以下「申立人1」という。)及び株式会社エーステクノロジー(以下「申立人2」という。なお,申立人1と申立人2を併せて以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において,引用する標章は,別掲のとおりの「幸せのパンケーキ」の文字よりなり(以下「引用標章」という。),申立人の業務に係る商品及び役務を表す表示として,本件商標の登録出願日において,需要者の間に広く認識されていた商標であり,現在も広く認識され,使用されていると主張するものである。

3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第1579号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,その登録出願日前より使用され,申立人の商標として周知・著名である引用標章と同一又は酷似するものである。また,本件商標権者は申立人と何ら関係のない者である。
したがって,本件商標は,その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものであることは明白である。よって,本件商標は,公序良俗違反に該当するものである。
ア 本件商標権者
本件商標権者は,菓子の販売や飲食物の提供を行う法人であり,世間を騒がしているシンガポールの有名店「ティラミスヒーロー」の商標が先取りされていたとする事件で,商標を先取りしていた会社「株式会社gram」のグループ会社である(甲4?甲7)。
株式会社gramは,商標権者のほか,株式会社gram’s heroes,株式会社gram?routineなどをグループ会社としている(以下,株式会社gram,商標権者及びグループ会社をまとめて「本件商標権者ら」という)。そして,本件商標権者らは,同人らと無関係の他社商標を先取り的に出願又は登録している(甲6,甲7)。
イ 剽窃的出願
「幸せのパンケーキ」の文字についてインターネットで検索すると,本件商標権者らが当該文字を先取り的に出願,登録していることについて多数の記事がヒットする(甲8?甲16)。これらの記事や,引用標章が本件商標の登録出願時点で著名であったこと,本件商標権者が申立人と同業界の者であり,引用標章を知らないはずはないこと,また,本件商標について,申立人が情報提供しており,かつ,商標登録出願もしていることなどから,本件商標権者は,本件商標を先取り的に出願,登録していることは明白である。
そうすると,本件商標権者による本件商標の登録は,適正な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠く行為というべきであり,これに基づいて商標権者を権利者とする商標登録を認めることは,公正な取引秩序の維持の観点からみても不相当であるといわざるを得ない。
したがって,本件商標は,公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標であることは明らかであり,商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用標章の周知性
申立人は引用標章を使用した店舗(以下「引用店舗」ということがある。)を運営する法人である。申立人1は,2013年(平成25年)8月25日に商品の販売を開始し,2014年(平成26年)7月に引用店舗を大阪南船場でオープンした。その後,申立人1は,申立人2を運営会社として渋谷や表参道,大阪梅田など大都市を中心に店舗を増やしていった。そして,本件商標の登録出願時においては,東京・大阪を中心に全国の大都市において,既に少なくとも13店舗が運営されていた。そして,その後も店舗を拡大していき,現在では29店舗もの店舗を運営している(甲3)。
また,申立人は,パンケーキを主とする飲食物の提供を行っているが,2014年(平成26年)より現在まで百貨店の催事等において持ち帰り用の菓子の物販を行っている(甲17)。また,催事以外にも一部店舗において定期的に菓子の物販を行っており,現在では一部店舗において菓子の物販を常時行っている。
引用店舗のいずれもが行列の絶えない店として有名であり,これらの店舗及び引用標章は,引用店舗のオープン当初よりTVや雑誌などマスメディア及びインターネット等の記事で多数紹介され,また引用店舗は,GoogleアプリのTVCMにも登場した(甲19?甲1579)。そして,引用標章は,2016年のYahoo!検索大賞2016において,スイーツ部門賞を取得するほどに著名であった(甲18)。
このような事実からも,引用標章は,遅くとも本件商標の登録出願日において,全国の多数の人に周知され著名な商標であったことは明らかである。
イ 小括
したがって,本件商標をその指定商品及び指定役務に使用すると,申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあることは明白であるため,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号について
申立人は,2014年(平成26年)8月より現在に至るまで,東京や大阪などの大都市をはじめ各地の百貨店で定期的に催事をし,パンケーキ菓子等の物販を行っている(甲17)。したがって,引用標章は,第30類「菓子」においても著名性を獲得しているものと見るのが相当である。
そうすると,本件商標の指定商品又は指定役務中の少なくとも第30類「パンケーキ,パンケーキを用いた菓子,ホットケーキ,ホットケーキを用いた菓子」及び第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,パンケーキの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」については,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標権者は,引用標章にフリ-ライドし,登録されていない区分があることを奇貨として,不正な目的をもって剽窃的に出願したものであることは明白である。よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用標章の周知性について
ア 申立人の提出に係る甲各号証及び同人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(ア)申立人は,申立人の業務に係るパンケーキ,菓子及びパンケーキを主とする飲食物の提供等に引用標章を使用している旨主張している。
そして,引用標章を使用したパンケーキを提供する飲食店(引用店舗)が,2014年(平成26年)にオープンし,2019年(令和元年)には東京や大阪を中心として29店舗存在している(甲3)ところ,これらの店舗における売上高,市場規模等の販売実績を証する証拠の提出はない。また,引用店舗に関する広告は,当該店舗のウェブサイトのみである。
なお,申立人と引用店舗の関係を証する証拠の提出はない。
(イ)「幸せのパンケーキ」に関する催事が,2014年(平成26年)8月より,本件商標の登録審決時(令和元年5月20日)までに34回開催された(甲17)。
(ウ)2015年(平成27年)より本件商標の登録審決時までに我が国において引用店舗及びそこで提供されるパンケーキがTV,雑誌記事等において紹介されているところ,その数は約90件であり,またその半数以上が地方局での放送及び地方のタウン誌等での掲載である(甲19?甲21,甲23?甲27,甲29,甲31?甲49,甲51?甲59ほか)。
(エ)2017年(平成29年)5月より同年8月において,関西圏で放送された,他人(Googleアプリ)のTVCMにおいて引用店舗が取り上げられた(甲19,甲60,甲132,甲133)。
(オ)2014年(平成26年)8月ないし2019年(令和元年)において引用店舗及びそこで提供されるパンケーキが「Yahoo!検索大賞2016」及び個人のSNS等を含むインターネット記事によって紹介された(甲18,甲19,甲22,甲30,甲50,甲84ほか)。
(カ)2015年(平成27年)より本件商標の登録審決時までに外国において引用店舗及びそこで提供されるパンケーキがTV,雑誌の記事等において紹介されており,その数は2件である(甲19,甲87,甲111)。また,外国人による又は外国人向けのインターネット記事においても,引用店舗及びそこで提供されるパンケーキが紹介された(甲19,甲91,甲1545,甲1547?甲1579)。
イ 上記アにおいて認定した事実によれば,以下のとおりである。
(ア)「幸せのパンケーキ」と称する飲食店(引用店舗)が,本件商標の登録出願前の2014年(平成26年)頃から,東京,大阪等に複数店舗存在し,また,引用店舗が,デパート等の催事等によってもパンケーキ等を提供(販売)していることは,引用店舗のウェブサイト,Yahoo検索大賞及び個人のSNS等のウェブサイトの記事等よりうかがい知ることができる。
しかしながら,引用店舗におけるパンケーキの売上げの実績を裏付ける証拠は提出されておらず,業界における申立人業務の市場占有率等を客観的に示す証拠も見いだせない。また,引用店舗に関する広告は,当該店舗のウェブサイト以外確認できない。
そうすると,引用店舗におけるパンケーキの売上げ,市場シェア及び広告等による引用標章の周知性の程度を推し量ることはできない。
(イ)TV番組及び雑誌における引用店舗並びにそこで提供されるパンケーキの紹介方法は,TV番組及び雑誌の一部において行われているものであって,放送時間や誌面の割合もそれほど多いとは認められない。またその半数以上が地方局での放送及び地方のタウン誌によるものであって,その視聴者及び購読者は,限られた地域に限定される。そして,TVCMの放送地域も関西のみであり,放送期間も平成29年の4か月程度とさほど長いものとはいえない。
(ウ)外国におけるTV,雑誌記事等においても,引用店舗及びそこで提供されるパンケーキが紹介又は取り上げられたことはうかがえるものの,その数はわずかであり,販売実績に係る主張はないから,引用標章は,外国の需要者の間での周知性を認めることはできない。
(エ)その他,申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても,引用標章が申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして我が国及び外国の需用者の間に広く認識されていたと認めるに足る事実は見いだせない。
(オ)したがって,提出された証拠によっては,引用標章が申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録審決時において,我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたとは認められないものである。
(2)本件商標と引用標章の類似性について
本件商標は,「幸せのパンケーキ」の文字を標準文字で表してなるものであり,引用標章は,別掲のとおり,「幸せのパンケーキ」(「幸」の文字は他の文字より大きく表されている。以下同じ。)を横書きしてなるところ,両者は,構成する文字を共通にするものであるから,類似する。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
引用標章は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録審決時において,申立人の業務に係る商品及び役務であることを表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることができないものである。
そうすると,本件商標は,引用標章と類似するとしても,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用標章は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録審決時において,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。
そうすると,本件商標と引用標章とが類似するとしても,本件商標の登録出願時及び登録審決時において,本件商標権者が本件商標をその指定商品又は指定役務について使用したときには,これに接する取引者,需要者が引用標章を連想,想記することはないというべきであり,本件商標は,その取引者,需要者をして,当該商品及び役務が申立人又は同人らと経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品又は役務であるかのように,その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。
その他,本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は,上記(2)のとおり引用標章と類似するといえるものの,引用標章は上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録審決時において,申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。
そうすると,引用標章が需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に,本件商標は不正の目的をもって使用するものであるとする申立人の主張は,その前提を欠くものである。
また,申立人が提出した証拠からは,本件商標権者が不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的,その他不正の目的をもって本件商標を出願し,登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は,引用標章が本件商標の登録出願時点で著名であり,本件商標権者は,申立人と同業界の者であって,引用標章にフリーライドし,先取り的に出願,登録しようとした目的に鑑みれば,本件商標の登録は,適正な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠く行為というべきであり,本件商標の登録を認めることは,公正な取引秩序の維持の観点からみても不相当であるから,公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標である旨主張している。
しかし,上記(1)のとおり,引用標章は,本件商標の登録出願時及び登録審決時において,申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして,我が国及び外国の需要者の間で広く認識されていたものと認められないものであり,商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないから,本件商標が,引用標章の持つ顧客吸引力(名声・信用・評判)にフリーライドすることや,顧客吸引力等をき損(希釈化)させるなどの不正の目的をもって使用するものであると認めることもできないものである。
その他,申立人の提出した証拠からは,具体的に本件商標権者が申立人の事業を妨害し,不正の目的があることを見いだすことができない。
そして,申立人が提出した証拠からは,本件商標の出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は見当たらず,本件商標をその指定商品及び指定役務について使用することが,社会の一般道徳観念に反し,商取引の秩序を乱すものともいえず,その他,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
加えて,本件商標は,その構成自体が,非道徳的,きょう激,卑わい,差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではない。
してみれば,本件商標は,その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとはいえないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(7)申立人の主張について
申立人は,意見書の提出を希望しているところ,本件異議申立ては,登録異議申立書について補正できる期間(理由補充期間)が経過しているため,これを採用することはできない。
(8)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく,その登録は,同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲
別掲(引用標章)


異議決定日 2020-08-11 
出願番号 商願2017-77545(T2017-77545) 
審決分類 T 1 651・ 255- Y (W3035)
T 1 651・ 251- Y (W3035)
T 1 651・ 271- Y (W3035)
T 1 651・ 222- Y (W3035)
T 1 651・ 22- Y (W3035)
最終処分 維持  
前審関与審査官 堀内 真一 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 大森 友子
平澤 芳行
登録日 2019-07-12 
登録番号 商標登録第6160848号(T6160848) 
権利者 株式会社gram-cube
商標の称呼 シアワセノパンケーキ、シアワセノ、シアワセ 
代理人 鳥巣 慶太 
代理人 鳥巣 実 
代理人 中嶋 慎一 
代理人 鳥巣 慶太 
代理人 中嶋 慎一 
代理人 鳥巣 実 

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