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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W41
管理番号 1365196 
異議申立番号 異議2018-900160 
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-22 
確定日 2020-07-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第6031879号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6031879号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6031879号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成29年8月3日に登録出願され,第41類「会員制による教育・娯楽の提供,ヘルスクラブの提供(健康及びフィットネスのためのトレーニング),知識の教授,研修会の手配及び管理,知識又は技芸の教授,映画の上映,教育又は娯楽に関する競技会の企画・運営」を指定役務として,同30年3月19日に登録査定,同月30日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議申立ての理由として引用する登録商標は,以下の2件の商標であり,いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第5680931号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成26年2月10日に登録出願,第12類「船舶,航空機,鉄道車輌,自動車,二輪自動車,自転車,自動車及び二輪自動車並びにそれらの部品及び付属品,自動車及び二輪自動車用スノーチェーン,自動車及び二輪自動車用タイヤ,自動車及び二輪自動車用ソリッドラバータイヤ,空気タイヤ,自動車及び二輪自動車用アルミニウムホイール,自動車及び二輪自動車用泥よけ用フラップ,自動車及び二輪自動車用ステアリングホイール,チャイルドシート,自動車及び二輪自動車用網棚,自動車及び二輪自動車用警音器,乗物用後進警報器,自動車及び二輪自動車用スキーキャリヤー,自動車及び二輪自動車用ブレーキの構成部品,自動車及び二輪自動車用変速レバーノブ」を指定商品として,同年6月27日に設定登録されたものである。
2 登録第2060227号商標(以下「引用商標2」という。)は,「BENTLEY」の欧文字を横書きしてなり,昭和61年2月26日に登録出願,第12類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同63年7月22日に設定登録され,その後,平成10年5月19日,同20年6月10日及び同30年6月26日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。そして,指定商品については,平成20年10月1日に,第12類「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」とする指定商品の書換登録がされたものである。
上記の引用商標1及び2をまとめていうときは,以下,「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第15号,同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録を取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号について
申立人所有の引用商標は,ブランド発祥の地である英国はもちろん,日本においても自動車について取引者及び需要者の間で広く知られたものとなっている(甲5?甲33)。
本件商標は,その図形部分の構成が引用商標1と実質的に同一といえる程に酷似しているばかりでなく,引用商標2を構成する欧文宇「BENTLEY」をその構成中に含むものであり,引用商標と一見して類似するものである。
したがって,本件商標が,本件商標権者によって役務「会員制による教育・娯楽の提供,ヘルスクラブの提供(健康及びフィットネスのためのトレーニング),知識の教授,研修会の手配及び管理,知識又は技芸の教授,映画の上映,教育又は娯楽に関する競技会の企画・運営」について使用されたときは,取引者及び需要者において,それが申立人の業務に関連する役務であるかのごとく,役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがある。
2 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は,自動車について,取引者及び需要者に広く知られるものとなっている引用商標と一見して類似するものである。
また,本件商標権者による本件商標の登録出願は,申立人が第41類の役務について商標登録出願をおこなっていないことに乗じて,出所表示機能を希釈化させたり,申立人の名声を毀損させる等の不正の目的をもってなされたものである。
3 商標法第4条第1項第7号について
引用商標は,自動車について,申立人の業務に係る商品を示す標識として取引者及び需要者に広く知られた商標であるところ,本件商標は,その図形部分の構成が引用商標1と実質的に同一といえる程に酷似しているばかりでなく,引用商標2を構成する欧文字「BENTLEY」をその構成中に含むものである。
かかる図形部分及び文字部分の構成の一致に鑑みれば,本件商標権者が,引用商標の存在を知ったうえで,申立人が第41類の役務について日本で登録出願を行っていないことに乗じて,剽窃的に登録出願されたものであることは明らかである。
そうすると,本件商標は,不正目的をもってなされたものであり,著しく社会的相当性を欠くものであるから,このような商標登録を認めることは,国際商取引の秩序を乱し,ひいては国際信義に反することになる。

第4 取消理由の通知
当審において,本件商標権者に対し,「本件商標は,他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨の取消理由を令和元年7月22日付けで通知し,相当の期間を指定して意見を求めた。

第5 本件商標権者の意見
上記第4の取消理由に対し,本件商標権者は,何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の著名性について
ア 申立人の提出に係る証拠,同人の主張及び職権調査(インターネット情報)によれば以下のとおりである。
(ア)インターネットウェブサイトの,フリー百科事典「ウィキペディア」における「ベントレー」の記事中には,「ベントレーは,イギリスの高級車・スポーツメーカー,ブランドである。1998年以降はドイツ・フォルクスワーゲングループ傘下となり,同グループのフォルクスワーゲン部門に属する。」,「1919年8月,W.O.はベントレー・モーターズをロンドンのクリックルウッドに設立。」,「2002年にエリザベス2世即位50周年祝賀記念としてベントレー・ステートリムジンがイギリス自動車業界協会より進呈され,以後エリザベス2世女王の公務専用車として使用されている。」との記載があり,「ベントレーのオーナメント」と題した写真には,引用商標1が表示されている(甲6)。
また,同ウェブサイトの「高級車」の記事中には,主な高級車ブランドとして,イギリスで「ロールス・ロイス」「ベントレー」「アストンマーティン」「ジャガー」等の記載がある(甲5)。
(イ)日本自動車輸入組合のウェブサイトには,ベントレーのエンブレムの由来として,「ベントレー社の創始者,ウォルター・オーウェン・ベントレーの頭文字Bに翼をあしらったエンブレムである『ウィンドB』は,1920年代から1930年代にかけて,ルマンレースにおいて5度の優勝という快挙をベントレーボーイズ達によって成し遂げて以来,高性能なオーナードライバーズカーの象徴として今も脈々と引き継がれています。」の記事及び引用商標が表示されている(甲7)。
(ウ)申立人の日本正規販売店と主張するベントレー・モーターズ・ジャパン(以下「ベントレー・ジャパン」という。)のウェブサイトにおいて,申立人の業務に係る商品「自動車」のボンネット上のエンブレム,ハンドルのホーンボタン及びシート(座席)のヘッドレスト部分に引用商標1が表示されている(甲8?甲10)。
(エ)申立人の日本正規販売店と主張するベントレー・ジャパンのショールームは,東京(青山,世田谷),横浜,名古屋,大阪,神戸,広島,福岡,札幌と全国各地に存在している(甲12)。
(オ)インターネットのオンラインニュースによれば,例えば,2017年1月23日付け掲載の「NIKKEI STYLE」のウェブサイトの記事において,「ベントレーもついにSUV プレミアム化の潮流を読む」の見出しの下,「プレミアムブランドのベントレーがついにSUV参入!・・・ベントレーはそもそも1919年に始まった由緒ある英国の高級車ブランド」の記載(甲19),2017年6月9日付け掲載の「日本経済新聞」のウェブサイト記事において,「普段着でポルシェ 高級外車で活況の青山通りを歩く」の見出しの下,「フェラーリ,ランボルギーニ,ベントレー,ポルシェ?。高級輸入車の販売が伸びている。」の記載(甲20),2016年6月9日付け掲載の「日本経済新聞」のウェブサイトの記事において,「高級SUV相次ぎ日本に,ベントレーも初,2695万円で」の見出しの下,「英ベントレーは9日,同社初のSUV『ベンテイガ』を報道陣に公開した。販売価格は2695万円で・・・」の記載(甲21),2017年2月1日掲載の「ENRICH(エンリッチ)」のウェブサイトの記事において,「16年のベントレー販売台数は新記録となる11023台」の見出しの下,「日本での販売台数は434台(JAIA調べ)を記録し,前年17.3%増を記録。これは06年に記録した537台(JAIA調べ)に次ぐ2番目に大きな販売で,日本市場では5年連続の販売増を続けている。」の記載(甲22)にみられるように,申立人に係る商品「自動車」は高級車であり,近年,我が国においては,販売台数が増加傾向であること等が掲載されている(甲16?甲22)。
(カ)「ウェブリオ株式会社」の提供する「Weblio辞書」のウェブサイトにおいて,「実用日本語表現辞典」の見出しの下,「ベントレー」の項目に「イギリスで設立された高級自動車メーカー。フォルクスワーゲンの傘下企業となっている。『コンチネンタル』などの車種が知られている。車両価格は数千万円クラスである。」との記載があり,また,「大車林 三栄書房」の見出しの下,「ベントレー」の項目に「W.O,ベントレーが1919年に設立したイギリスのメーカー。」等の記載がある(http://www.weblio.jp/content/%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC)(職権調査)。
イ 判断
上記ア(ア)?(カ)によれば,引用商標は,申立人が自社の製造・販売する自動車の商標として,1920年代から継続的に使用してきた結果,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,自動車業界の取引者のみならず,自動車に関心がある需要者の間にも広く知られていたものというべきである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
ア 引用商標1
引用商標1は,別掲2のとおり,中央に円的な図形と,黒色の円図形の内側に白抜きで「B」の文字を配した部分の左右両側に,細長の羽根が複数重なった風切羽と,風切羽上方中央寄りに帯状の雨覆と,黒色の円図形中央に向かってS字状に湾曲する翼上面と,黒色の円図形下方に短い羽根が複数枚重なった尾羽を配した構成からなり,全体として,大きな円図形を背景とし,上側外形線の中央がやや円弧上で,下側外形線の中央が半円でその左右に円弧上に広げた羽及びその下方にやや円弧状に広げた尾羽をモチーフとする図形よりなるものであり,「英国製高級車(メーカー)であるベントレーのエンブレム」の観念を生じるものである。
イ 引用商標2
引用商標2は,上記第2の2のとおり,「BENTLEY」の文字よりなり,「ベントレー」の称呼,及び「英国製高級車(メーカー)であるベントレー」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,中央に円的な図形と,黒色の円図形の内側に白抜きで「B」の文字を配した部分の左右両側に,細長の羽根が複数重なった風切羽と,風切羽上方中央寄りに帯状の雨覆と,黒色の円図形中央に向かってS字状に湾曲する翼上面と,黒色の円図形下方に短い羽根が複数枚重なった尾羽を配した構成からなり,全体として,大きな円図形を背景とし,上側外形線の中央がやや円弧上で,下側外形線の中央が半円でその左右に円弧上に広げた羽及びその下方にやや円弧状に広げた尾羽をモチーフとする図形(以下「図形部分」という。)とその下に「BENTLEY LIFE」の欧文字を横書きした構成からなるところ,図形部分と文字部分は,その構成態様の違いにより視覚的に分離され,それぞれが独立して自他役務の識別標識の機能を有するものといえるものである。
そして,本件商標の図形部分は,構成全体が引用商標1と酷似するものである。
また,本件商標の「BENTLEY LIFE」の文字部分は,辞書等に載録のないものであるから,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものであるが,「BENTLEY」と「LIFE」の文字部分との間には,1文字分のスペースがあって,視覚上分離して看取されるばかりでなく,「BENTLEY」の文字は,上記(1)のとおり,取引者及び需要者の間に広く知られていることに照らすと,「BENTLEY」の文字部分は,役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきである。
そうすると,本件商標中,取引者及び需要者間に,強く支配的な印象を与える「BENTLEY」の文字部分と引用商標2は,同一の文字のつづりからなるものである。
したがって,本件商標と引用商標の類似性の程度は高いものというべきである。
(3)引用商標の独創性の程度について
引用商標1は,別掲2のとおり,左右に広げた羽をモチーフとする図形であり,極めて独創性が高いといえるものである。
また,引用商標2は,上記第2の2のとおり,「BENTLEY」の文字よりなるところ,該文字は,一般的な辞書に掲載されていない造語といえるものであるから,独創性の程度は高いとみるのが相当である。
(4)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品との関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定役務は「会員制による教育・娯楽の提供,ヘルスクラブの提供(健康及びフィットネスのためのトレーニング),知識の教授,研修会の手配及び管理,知識又は技芸の教授,映画の上映,教育又は娯楽に関する競技会の企画・運営」であって,主に教育や娯楽等に関する役務であるのに対して,引用商標の指定商品は「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」等の乗物に関係する商品であることからすれば,商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているとか,商品と役務の用途,商品の販売場所と役務の提供場所が共通するといった事情は見いだせないことから,直ちにこれらの関連性が高いということはできず,需要者の範囲も一致するとはいえない。
(5)出所の混同のおそれについて
以上(1)ないし(4)からすれば,本件商標の指定役務と引用商標の指定商品の関連性が高いとはいえず,また,需要者の範囲も一致するとはいえないとしても,引用商標は,その著名性が高いものであって,本件商標は引用商標との類似性の程度が高いこと,さらには,引用商標はその独創的性の程度が高いといえるものである。
そうすると,本件商標権者が,本件商標をその指定役務に使用した場合,これに接する取引者及び需要者は,引用商標を連想又は想起し,その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから,その余の申立ての理由について論及するまでもなく,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標


別掲2 引用商標1




異議決定日 2020-03-23 
出願番号 商願2017-102607(T2017-102607) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (W41)
最終処分 取消  
前審関与審査官 旦 克昌 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 小松 里美
小俣 克巳
登録日 2018-03-30 
登録番号 商標登録第6031879号(T6031879) 
権利者 ユーケー アーサー ブランド マネジメント カンパニー リミテッド
商標の称呼 ベントレーライフ、ベントレー、ベントリー、ライフ、ビイ 
代理人 大上 寛 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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