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審決分類 審判 一部無効 観念類似 無効としない W32
審判 一部無効 商標の周知 無効としない W32
審判 一部無効 観念類似 無効としない W32
審判 一部無効 外観類似 無効としない W32
審判 一部無効 称呼類似 無効としない W32
審判 一部無効 称呼類似 無効としない W32
審判 一部無効 外観類似 無効としない W32
審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W32
管理番号 1365132 
審判番号 無効2019-890051 
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-09-10 
確定日 2020-07-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第6039673号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由
第1 本件商標
本件登録第6039673号商標は,「DAN’S」の文字を標準文字で表してなり,2017年(平成29年)8月11日に英国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し,平成29年10月27日に登録出願,第32類「ビール,ミネラルウォーター・炭酸水及びその他のアルコール分を含有しない飲料,果実飲料,スムージー,シロップその他の飲料製造用調製品,清涼飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」並びに第9類,第21類,第29類,第30類,第33類及び第43類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同30年4月12日に登録査定,同月27日に設定登録されたものである。

第2 引用標章及び引用商標
請求人が,本件商標の登録の無効の理由として引用する標章及び商標は以下のとおりである(以下,引用標章1ないし引用標章3をまとめて「引用標章」ということがある。)
1 引用標章1は「Damm」の欧文字を表してなり,請求人が「ビール」等を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているとする標章である。
2 引用標章2は「DAMM」の欧文字を表してなり,請求人が「ビール」等を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているとする標章である。
3 引用標章3は,別掲のとおりの構成よりなり,請求人が「ビール」等を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているとする標章である。
4 国際登録第924729号商標(以下「引用商標」という。)は「ESTRELLA DAMM」の欧文字を表してなり,2007年(平成19年)2月26日に国際商標登録出願,第32類「Beers, ale and porter, other non-alcoholic beverages [excluding "Tomato juice beverages", "Whey beverages", "Vegetable juices"], syrups and other preparations for beverages.」を指定商品として平成21年1月9日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定商品及び指定役務中,第32類「全指定商品」についての登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同項第11号及び同項第15号に該当し,同法第46条第1項の規定により本件商標の指定商品及び指定役務中,第32類「全指定商品」(以下「本件請求商品」という。)の登録は無効とされるべきである。
2 前提となる事実について
(1)請求人について
請求人は,1872年(明治5年)にスペインのバルセロナで創業し,1876年(明治9年)に設立されたスペインの会社である(甲4)。
請求人の名称中「Damm」の文字部分は,創業者の姓に由来するものである(甲5)。
請求人の名称から生じる称呼「ソシェダッド アノニマ ダム」は極めて冗長なうえに,名称中の「Sociedad Anonima(「Anonima」の3文字目の「o」にはアクサンテギュが付されている。)」の文字部分は,スペインにおける法人の種類を示すスペイン語であり識別力に欠ける。
そのため,請求人の名称のうち識別機能を有する部分は「Damm」の部分である。
「Damm」の文字部分から生じる称呼「ダム」は2音という短い音構成なうえ,語呂も良い。
このため,称呼しやすく,かつ,人々の記憶にも残りやすいことなどと相まって,需要者及び取引者の間において請求人は「Damm社」,「Damm」,「ダム社」又は「ダム」として広く認識されている。
なお,請求人も自らの略称として「Damm」を使用している。
さらに近年,請求人は「Damm」をPRするためのウェブサイトを立ち上げ,自社製品及び各種活動に関する記事を継続的に発信しているところ,ウェブサイトのURL及び問い合わせ先メールアドレスのドメインに「damm」の文字を採用している(甲6,甲7)。
このように,請求人は「damm」の語を自社を示す語として極めて重要なもの,いわゆるハウスマーク的な語として位置付けている。
さらに請求人は,自社のウェブサイト上においても,自社製品や各種活動の紹介を継続的に行っていて,引用標章が上記ウェブサイト上の目立つ位置に配置され,積極的に使用されている(甲8)。
かかる使用の結果,我が国における取引者及び需要者間においても,請求人は「Damm」又は「ダム社」(甲9,甲19,甲35の5,7)あるいは「ダム」と称されるに至っている(甲10)。
(2)請求人の業務内容
請求人は,ビール生産量の世界ランキングで11位の国であるスペイン(甲11)において有数のビール製造販売会社であり,ビール,ミネラルウォーター,ミルク,乳飲料及び清涼飲料等の飲料の製造・販売を主な事業とする。
請求人は日本を含む世界85の国々へ,ビール,ミネラルウォーター,ミルク,乳飲料及び清涼飲料等の飲料を輸出している(甲12,甲13の1)。
請求人の業務に係る飲料(ビール,ミネラルウォーター,コールドドリンク,ミルク等)の1年間の販売量は1700万ヘクトリットル(=170万キロリットル)である(甲13の1)。
請求人のホームページ上では,各種ビールの他,各種飲料(ミネラルウォーター,ミルク,乳飲料及び清涼飲料)が引用標章3の下に紹介されている(甲13の2・3)。
請求人の1年の販売量は,我が国第2位のビールメーカーであるキリンビール株式会社(甲14)の2018年のビール,発泡酒,新ジャンル等の飲料の課税出荷量(約171万キロリットル)と肩を並べるものである(甲15)。
キリンビール株式会社の上記出荷量については課税出荷量であり,請求人の販売量と単純に比較することは出来ないものの,請求人がキリンビール株式会社と同規模の企業であることが推測され,請求人が国内外において幅広く事業を展開していることは明らかである。
(3)引用標章の使用について
請求人は1921年(大正10年)の広告ポスターにおいて既に商品ラべルに引用標章2に類似の「DAMM」を使用し(甲16),1955年(昭和30年)には新商品である「Voll-Damm」の販売を開始している(甲17)。
このビールの銘柄名「Voll-Damm」の一部には引用標章1が含まれており,商品ラべルでは引用標章3が使用されている。
「Voll-Damm」は1955年(昭和30年)に発売されてから今日に至るまで,60余年にわたり継続的に製造され各国で販売されている。
また,「Voll-Damm」は2004年(平成16年)に米国で開催されたInternational beer competitionで金賞を獲得以来,国際的な品評会等で32回もの受賞を誇る(甲18)。
「Voll-Damm」が国際的に評価の高いビールであることもあり,当然我が国においても「Voll-Damm」は人気を博しており,インターネットなどを通じて販売されている(甲19)。
以上から,請求人は,引用標章2に類似の「DAMM」を1921年(大正10年)頃から約1世紀にわたって,引用標章を1955年(昭和30年)頃から半世紀以上にわたって継続的に使用していることがわかる。
また,1905年(明治38年)から稼動する請求人のビール醸造所(甲20)は,バルセロナの郊外に立地し,その外壁には引用標章3を白色で表示したものを含む看板及び引用標章2に類似の「S.A.DAMM」の看板がバルセロナ市民や観光客の印象や記憶に残るように上部に掲げられている(甲21)。
さらに,2006年(平成18年)には醸造所の再整備を行って歴史ある工場の保全を図り(甲22),バルセロナ市民や世界各国からの観光客による醸造所見学を積極的に受け入れて,1876年(明治9年)以来守り続けているレシピで醸造される請求人のビールについて紹介している(甲23)。
請求人はビール醸造所を通じて,引用標章3及び引用標章2に類似の「S.A.DAMM」が歴史を有する商標であることをバルセロナ市民や世界各国からの観光客に強く印象付けている。
(4)請求人のスポンサー活動について
請求人は,スポーツ分野でのスポンサー活動にも力を注いでいて,1982年(昭和57年)開催のワールドカップのスポンサーとなった後(甲24),1992年(平成4年)開催のバルセロナオリンピックのスポンサーも務めた(甲25),サッカークラブ「FCバルセロナ」とのブランドスポンサー契約は25年以上に渡り継続している(甲26)。
2017年(平成29年)からは日本法人の楽天株式会社もFCバルセロナのスポンサーを務めているため(甲28),日本でもスポーツニュース番組や楽天株式会社のウェブサイト等を通じてなど,様々な場面でFCバルセロナを目にする機会があるところ,請求人はFCバルセロナの公式ビール「ESTRELLA DAMM」を製造販売していて,FCバルセロナのホームスタジアムの観客席の壁面等には,引用商標が記載されたポスターが貼られている(甲29)
かかる事情から日本においても,ニュース番組やインターネットを通じてFCバルセロナの監督又は選手へのインタビュー等の映像が放映される際に,請求人の引用商標が記載されたポスターを目にする機会が格段に増え,引用標章と併せて引用商標も分野や国籍を越えて様々な層の人々に広く知られるに至っている。
(5)請求人の登録商標
請求人は各国に多数の商標登録を保有している。
特に,引用標章1及び引用標章2又はこれらを構成の一部に含む商標を世界23力国において116件保有している。そのうち,引用標章及び引用商標に関する商標登録は合計32件にのぼる(甲30)。
このように請求人は,自社を表示する商標の権利化の重要性に鑑み,先ず,1919年(大正8年)に正式名称である社名についてスペイン本国に商標出願した後(甲31),他の商標に先立ち,引用標章2を1957年(昭和32年)にスペイン国へ出願し(甲32),更に同標章を1964年(昭和39年)に国際登録出願して(甲33),自社を表示する基本的な商標の権利化を図り,権利の維持に努めている。
また,請求人は,FCバルセロナの公式ビールの銘柄名「ESTRELLA DAMM」に関して,引用商標について21件,引用商標に関連する「estrella damm」の文字について1件の合計22件の商標登録を世界19力国で保有し(甲30),日本においても商標登録を保有している(甲3,甲30の3)。
(6)日本への輸出及び日本での販売
請求人は2004年(平成16年)から日本へ向けてビールの輸出を開始し,2019年(平成31年)までの15年間に約191万リットルの量を販売している(甲35の1)。
請求人のビールは,様々な経路で販売されており,例えば,上記のインターネットを通じた販売(甲19の1・2)に加え,食料品主体のスーパーマーケット「成城石井」の店舗でも,ダム社のコンセプトビールとして知られている「イネディット」が販売され(甲35の2・3),酒類小売りチェーンストア「カクヤス」の店舗でも引用商標が付された「エストレーラダム」が販売されている(甲35の4)。
そのため,インターネットを通じてだけでなく,直接店舗を訪れて請求人のビールを購入することも可能である。
また,請求人のビールは酒類卸販売業者による卸販売等の経路でも販売されていて(甲35の5・6),各種飲食店においても提供されている(甲35の7)。
上記の販売及び提供の結果,請求人の名前は日本のビール市場にも広く浸透し,需要者及び取引者に広く認識されている。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標は,請求人の業務に係る商品「ビール」(以下「使用商品」ということがある。)等を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用標章に類似する商標であって,使用商品と同一の指定商品,第32類「ビール」について使用をするものであり,商標法第4条第1項第10号に該当する。
(1)引用標章の周知性について
上記2のとおり引用標章は,ビール等の飲料を製造販売する請求人の商標として,外国のみならず日本においても広く知られていることは明らかである。
(2)商標の類似について
引用標章からはいずれも該文字に応じて「ダム」の称呼が生じる。
他方,本件商標からは「ダンズ」の称呼が生ずる。
また,本件商標の構成中の「DAN」の文字部分は,一般になじみのある人名である(甲37)こと及び本件商標中の「’s」の文字部分は名詞の所有格を表す語であって(甲38),語尾に位置し,語尾音がそもそも弱く発音されること及び「’s」の文字部分から生じる「ズ」の音が前音との関係で前音に吸収されるように弱く称呼され聴取しづらいことから,本件商標からは「ダン」の称呼をも生じるものである。
まず,本件商標から生ずる「ダンズ」の称呼と引用標章から生じる「ダム」の称呼との類否について述べる。
本件商標は人名である「DAN」の語と所有を表す「’s」の語とを結合させてなる商標である。前者からは「ダン」の称呼が,後者からは「ズ」の称呼が生じるが,後者は所有を表す文字部分であり,かつ語尾に位置することから,当該部分から生じる称呼「ズ」は極めて弱く称呼され,明瞭に聴別することは困難である(甲39の1)。
さらに,本件商標から生ずる「ダンズ」の称呼は,頭高型のアクセントをもって称呼される。すなわち,第一音の「ダ」の部分を強く一拍で称呼した後,他の音「ンズ」を段階的に低く軽く称呼する。また,語尾音である「ズ」は,語尾音であるため聴別しづらいのに加えて,前音との関係で前音に吸収されるように称呼されるため,「ダンズ」の称呼は,一般にあたかも「ダン」と称呼されているかのように聴別される。
よって,本件商標の称呼「ダンズ」は引用標章の称呼「ダム」と全体の音調・音感が近似し,称呼上相紛らわしい。
次に,本件商標の称呼「ダン」と引用標章の称呼「ダム」の類否について検討すると,「ダン」と「ダム」の差異音は第2音の「ン」と「ム」である。
両音は共に唇を閉ざしたまま発音される響きが弱い音であり,さらにいずれも語尾に位置するためことさら弱く称呼され,両音は判別し難い(甲39の2・3)。
また,「ダン」と「ダム」のいずれもアクセントは語頭の「ダ」にあり,また両称呼とも頭高型のアクセントを以って発音されることとも相侯って,第2音の「ン」の音と「ム」の音は極めて弱く称呼される。よって第2音に差異音「ン」と「ム」とを有していたとしても,係る差異音は称呼上印象に残り難く称呼全体に与える影響は小さい。
したがって,本件商標の称呼「ダン」は引用標章の称呼「ダム」と全体の音調・音感が極めて近似し,称呼上相紛らわしい。
上記のように,本件商標から生じる「ダンズ」の称呼及び「ダン」の称呼は,引用標章から生ずる「ダム」の称呼と音感上近似し相紛らわしいので,引用標章は本件商標に類似する。
(3)商品の同一について
引用標章は,「ビール」等の商標として需要者の間に広く認識されている。
使用商品と本件商標の指定商品中第32類「ビール」とは同一の商品である。
(4)まとめ
上記の通り,本件商標は,他人(請求人)の業務に係る商品「ビール」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用標章に類似する商標であって,その商品「ビール」と同一の指定商品「ビール」について使用するものである。
また,本件登録の出願日である平成29年10月27日の時点で,引用標章は我が国の需要者の間で既に周知であり,さらに引用標章の周知性は本件審判請求の時点でも継続している。
よって,本件登録は,その指定商品中の第32類「ビール」について,商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号について
(1)商標の類似について
上記3(2)のとおり,本件商標は引用標章と類似する。
(2)周知・著名性について
上記2のとおり,引用標章は,請求人の略称であって,商品「ビール」に付されるものとして需要者・取引者の間で著名であり,我が国内の需要者にも広く認識されている。
また,上記2のとおり,引用商標も商品「ビール」に付されるものとして需要者・取引者の間で著名であり,我が国内の需要者によって広く認識されている。
(3)業務の多様化について
請求人は1999年(平成11年)にミネラルウォーターの製造販売を開始して以来,業務の多様化を図っており(甲40),上記2のとおり,現在ではビール以外の飲料「ミネラルウォーター,ミルク,乳飲料,清涼飲料」等も販売していて(甲13の2,3),業務を多角化している。
(4)出所の混同について
上記より,本件商標をその指定商品及び指定役務中,第32類の商品について使用するときは,請求人の商品として著名な「ビール」と同一の本件指定商品「ビール」,及び請求人が販売している商品「ミネラルウォーター」と同一の本件指定商品「ミネラルウォーター」との間で出所の混同を生じることは明らかである。
さらに,請求人が販売している商品「ミネラルウォーター,ミルク,乳飲料,清涼飲料」と類似する本件指定商品「ミネラルウォーター・炭酸水及びその他のアルコール分を含有しない飲料,果実飲料,スムージー,シロップその他の飲料製造用調製品,清涼飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」との関係でも,請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務にかかる商品であると需要者及び取引者が誤認し,請求人の商品「ミネラルウォーター,ミルク,乳飲料,清涼飲料」との間で出所の混同を生じることは明らかである。
(5)まとめ
以上のとおり,本件商標は,他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標である。
また,本件商標の登録出願の時点で引用標章及び引用商標は我が国内の需要者の間で既に周知であり,さらに引用標章及び引用商標の周知性は本件審判請求の時点でも継続している。
よって,本件商標の指定商品中の第32類「全指定商品」について,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第11号について
引用商標は,本件商標の出願の日前に出願され登録されたものであって,両商標は類似しており,その指定商品も同一又は類似するものである。
(1)本件商標と引用商標について
引用商標からは「エストレリャダム」又は「エストレリヤ」の他,「ダム」など複数の称呼が生じる。
引用商標は,「ESTRELLA」と「DAMM」が結合してなる商標であることに加え,世界的に周知著名な請求人を表示する「DAMM」の語(ハウスマーク)が含まれているため,当該「DAMM」の部分のみに着目して「ダム」の称呼も生じる。
他方,上記2のとおり,本件商標からは「ダンズ」の称呼の他に「ダン」の称呼も生じる。
そして,本件商標の称呼「ダンズ」及び「ダン」と引用商標から生じる「ダム」の称呼とは,上記3(2)と同様の理由での音調・音感が近似し,称呼上相紛らわしい。
したがって,引用商標は本件商標に類似する商標である。
(2)本件請求商品と引用商標の指定商品について
本件請求商品中,第32類「ビール」は引用商標の指定商品中「Beers(参考訳:ビール)」と,本件請求商品中,第32類「シロップその他の飲料製造用調製品」は引用商標の指定商品中「syrups and other preparations for beverages(参考訳:シロップその他の飲料製造用調製品)」と同一の商品である。
また,本件請求商品中,第32類「ミネラルウォーター・炭酸水及びその他のアルコール分を含有しない飲料,果実飲料,スムージー,清涼飲料,飲料用野菜ジュース」は,それぞれ引用商標の指定商品中「other non-alcoholic beverages [excluding "Tomato juice beverages", "Whey beverages″, "Vegetable juices″], syrups and other preparations for beverages(参考訳:他のアルコール分を含まない飲料(「トマト果汁飲料」・「乳清飲料」・「野菜ジュース」を除く。),シロップその他の飲料製造用調製品)」と類似する商品である。
そして,本件請求商品中,第32類「乳清飲料」は引用商標の指定商品中「syrups and other preparations for beverages(参考訳:シロップその他の飲料製造用調製品)」と類似する商品である。
したがって,本件請求商品は,引用商標の各指定商品と同一又は類似である。
(3)まとめ
上記のとおり,引用商標は本件商標と類似し,引用商標の指定商品は本件請求商品と同一又は類似である。
よって,本件商標は,その指定商品中,第32類「全指定商品」について,商標法第4条第1項第11号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)引用標章の周知性について
ア 請求人の商品の日本における販売について
使用商品の日本における販売量についてであるが,我が国における年間のビールの消費量は,2017年(平成29年)の1年間だけで,51億1600万リットル(511.6万キロリットル)とされており(乙1),請求人の2004年(平成16年)から2019年(令和元年)までの,日本における15年間の販売量は,日本におけるビールの総消費量と比較して,非常に少ない量である。
また,使用商品の日本における販売について,請求人は,商品「イネディット」がスーパーマーケット「成城石井」で販売されている旨を述べているところ,「成城石井」というスーパーマーケットについては,他のスーパーマーケットにはない商品まで取り揃えていることをひとつの特徴としており(乙2),ビールについても,他店では手に入らない珍しいものが多数販売されている(乙3)。
請求人はまた,酒類小売のチェーン店である「カクヤス」での販売についても述べているが,「カクヤス」についても,「成城石井」同様,他の酒屋では取り扱っていない酒類まで取り扱うチェーン店であり(乙4),このように,ビールの品揃えに特別に富んだ「成城石井」及び「カクヤス」の特徴を考慮すれば,これらの店舗で使用商品が取り扱われていることをもって,引用標章が使用商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている証拠にはならない。
請求人はさらに,インターネット上でも使用商品が購入できるとしている。
しかしながら,例えば,Amazonにおいて,使用商品「イネディット」が販売されているところ,当該ウェブサイト内の当該商品の紹介ページには請求人についての言及は一切なく,同ページ内で引用標章を明瞭に確認することもできない(乙5)。
さらに,インターネット上には,商品「イネディット」を購入し,そのレポートを掲載した個人運営のブログが確認できるところ(乙6,乙7),これらのブログにおいても,「イネディット」という商品名こそ触れられているが,引用標章あるいは請求人についての言及はされていない。
上記のように,請求人の商品の日本における販売量については,日本における年間のビールの総消費量に比して,非常に少ない量にすぎず,実店舗において使用商品を取り扱う小売店も限られているといえる。
また,インターネット上で使用商品を販売している者や需要者でさえも,引用標章あるいは請求人を認識しているとはいいがたく,請求人により提出された各証拠は,引用標章が使用商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている証拠にはならない。
イ 請求人の業務内容について
請求人とキリンビール社とは同規模の企業であるという主張の裏付けとして請求人が提出したキリンビール社の課税出荷量(甲15)は,ビール,発泡酒,新ジャンルのみの出荷量であるところ,請求人の販売量には,「beer」の他,「cold drinks」「milk」「shakes」との記載があり(甲13の1),比較の対象としている,両社の販売商品が完全に異なっている。
したがって,この比較をもって,請求人がキリンビール社と同規模の企業であるとはいえない。
また,請求人は,請求人のウェブサイトにおいて,引用標章3の下にミネラルウォーター,ミルク,乳飲料,清涼飲料が紹介されている旨述べているが,これらの商品が日本で販売されていることを確認できる資料はない。
したがって,これらのビール以外の商品が,請求人の商品ラインナップにあることが,引用標章が使用商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている証拠にはならない。
ウ 引用標章の使用について
請求人のウェブサイト上の年表のみからは,引用標章2及び引用標章1が,いつから日本において使用されていたのかは明らかでなく,また,当該標章が,請求人所在のスペインでの使用により,我が国の需要者の間に広く認識されるにいたっていることを具体的に確認できるものでもない。
エ 請求人のスポンサー活動について
請求人が,ワールドカップやオリンピック,サッカーチーム「FCバルセロナ」のスポンサーを務めている事実は確認できるものの,これらのスポンサー活動により実際に,引用標章が需要者の間に広く認識されるにいたっていることを確認できない。
オ 小括
以上のように,審判請求書記載の内容及び提出された証拠を検討してみても,引用標章が,請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識された商標であるとはいえない。
(2)商標の類否について
請求人は,本件商標と引用標章との類否について,称呼のみについて検討しているが,商標審査基準原則に従い,本件商標と引用標章の外観,称呼及び観念のそれぞれについて,類否を検討する。
ア 本件商標と引用標章について
本件商標は,ローマ字の「D」「A」「N」,そして「’(アポストロフイ)」を挟んで,最後に「S」を配した計4文字と符号1つで構成されており,引用標章はいずれもローマ字の「D」「A(a)」「M(m)」「M(m)」の計4文字で構成されている。
イ 観念について
本件商標と,引用標章との観念について比較する。
上記アのとおり,本件商標はローマ字「DAN’S」で構成されているところ,3番目の「N」と4番目の「S」との間のアポストロフィは,所有格を表わすのに用いられる符号であり,本件商標を日本語に訳した場合,「ダン(名前)のもの」などといったような日本語になる。
アポストロフィの役割については,我が国においても,広く一般に理解されているところであり,また,一般に目にする機会も多いことから馴染みもあり,本件商標からは「ダン(名前)のもの」程の観念が直ちに想起されるものといえる。
一方で,引用標章ついては,請求人の提供する商品について知る者であれば,同社についての観念が生じるものといえる。
当該商品を知らない場合には,特定の観念が生じることはない。
いずれの場合も,本件商標は,引用標章と,観念において相紛らわしいものではない。
ウ 外観について
次に,外観について検討する。本件商標は欧文字「DAN’S」によって構成されているのに対し,引用標章はローマ文字「Damm(DAMM)」によって構成されている。
本件商標と,引用標章とは,3文字目,4文字目に,「N」「S」(本件商標)と「M(m)」「M(m)」(引用標章)という違いがあるところ,計4文字という少ない構成文字数のうちの2文字の相違が全体に与える印象は著しいものとなる。
また,本件商標にのみアポストロフィが含まれるところ,このアポストロフィは所有格を表わすのに用いられる符号であり,本件商標に接した需要者・取引者は,「ダン(名前)のもの」などといったような観念を直ちに想起するため,観念上の相違とあいまって,本件商標と引用標章との間の2文字の違いによる外観上の相違は,より明確に認識されることとなる。
したがって,外観においても,本件商標は,引用標章と相紛らわしいものではない。
エ 称呼について
最後に,称呼について検討する。まず,引用標章からは,「ダム」との称呼が生じる。
他方,本件商標からは,その構成文字から,「ダンズ」との称呼のみが生じる。
この点,請求人は,本件商標の「’s」部分からは,「ズ」の称呼が生じるが,(中略)当該部分から生じる称呼「ズ」は極めて弱く称呼され,明瞭に聴別することは困難である旨述べているところ,このような認定は個別の商標ごとに異なるものであり,例えば,本件商標のように,計3音という短い音構成の商標においては,「’s」部分が所有格を示すのに用いるものであり,語尾に位置するということのみをもって,当該部分から生じる称呼「ズ」が極めて弱いものになるとはいえない。
本件商標の場合は,全体を称呼しやすいことも手伝い,構成音の強弱に差をつけずに,「ダンズ」との称呼が生じるものといえる。
語尾音の「ズ」の有無において称呼の相違がある旨の審決例(乙8)もあるが,本件商標と,引用標章においては,2音目(引用標章においては語尾音)においても,「ン」(本件商標)と「ム」(引用標章)という相違があり,共通しているのは,冒頭の「ダ」のみであるから,より明確に聴別し得るものである。
オ 小括
以上のように,本件商標と,引用標章とは,外観,称呼,観念のいずれの要素においても相異なる非類似の商標である。
(3)まとめ
以上のように,引用標章は,請求人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標ではなく,また,本件商標と引用標章とは,類似しないため,商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標の類否について
上記1(2)のとおり,本件商標は,引用標章とは類似しない。
ローマ宇の「ESTRELLA」と,「DAMM」とからなる結合商標である引用商標についても,当然に,本件商標とは類似しない。
(2)引用標章及び引用商標の周知性について
上記1(1)のとおり,引用標章は,需要者に広く知られた商標ではない。引用商標についても,需要者に広く知られた商標ではない。
(3)請求人の業務の多様化について
請求人は,ビール以外の飲料を販売していることを述べた上で,請求人運営の英語によるウェブサイト内の,商品ラインナップを紹介するページの写し(甲13の2・3)及び同ウェブサイトの年表の写し(甲40)を提出している。
しかし,これらのみによっては,請求人が,我が国において,多角的経営を行っている事実を確認することはできず,本国スペインにおいて多角的経営を行っているとしても,我が国の需要者がそのことについて広く認識しているといえるものではない。
(4)まとめ
以上の事実を考慮すると,本件商標は,請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標ではないため,商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)商標の類否について
引用商標は,ローマ宇の「ESTRELLA」と,「DAMM」とからなる結合商標であるところ,請求人は,「DAMM」部分が,周知著名な請求人のハウスマークであることから,当該部分にのみ着目して,「ダム」との称呼が生じる旨主張している。
仮に,引用商標との比較において,当該商標中,「DAMM」部分が分離抽出されるとしても,上記1(2)のとおり,本件商標と,ローマ字の「D」「A」「M」「M」によって構成される商標とは,類似しないのであるから,本件商標と,引用商標とは類似の商標ではない。
(2)まとめ
本件商標は,引用商標と類似の商標ではないため,商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

第5 当審の判断
1 引用標章及び引用商標の周知性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次の事実を認めることができる。
ア 請求人は,スペインのバルセロナにビール工場を有し,その外壁には「S.A.DAMM」の文字が表示されている(甲21)。
イ 使用商品を販売するウェブサイトにおいて,請求人は「ダム社」と紹介されていることがうかがえるが,その掲載日は不明である(甲9,甲19,甲35の5・7)。
ウ ウェブサイトの情報によると,使用商品は,我が国において販売されていることがうかがえ,当該ビールのラベルには,引用商標3(同視できる商標を含む。)が表示されている(甲9,甲19)が,その掲載日は不明である。
エ 請求人のウェブサイト(甲4?甲8,甲12,甲13,甲16?甲18,甲20,甲22,甲24?甲26,甲36,甲40)は,外国語で表示されており,翻訳文の提出もないため,これらの書証の立証内容は不明である。
また,当該ウェブサイトには年又は日付を表示したと思しき数字が表示されているページがあるところ,これらの数字が何を表しているのかも不明である。
なお,当該ウェブサイトの“our-products”のページの“Damm beers”と題するページには,ビールと思しき商品の画像が表示されており,そのラベルのいくつかには「DAMM」又は「Damm」の文字若しくは引用標章が付されている(甲36)
オ 請求人の各種ビールの日本への販売量を示す資料とする書証(甲35の1)には,2桁から7桁の数字が表示されているところ,当該資料は外国語で記載されており,翻訳文の提出もないため,これらの数字が何を表しているのか不明である。
(2)以上によれば,請求人は,スペインのバルセロナに「S.A.DAMM」の文字を表示した工場を有し,我が国における使用商品を取り扱う者において,「ダム社」と指称され,使用商品には,引用標章3が付されていることはうかがえる。
また,我が国において使用商品が販売されていることはうかがえるものの,当該商品(ビール)の我が国における販売期間,販売数,市場規模等は確認ができず,その他使用商品の宣伝広告の実績等も確認できない。
そうすると,請求人が提出した証拠をもってしては,引用標章及び引用商標が,使用商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることはできない。
その他,引用標章及び引用商標が,使用商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されていたと認める事情はない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,前記第1のとおり,「DAN’S」の文字を標準文字によりまとまりよく一体に表され,これより生じる「ダンズ」の称呼はよどみなく一連に称呼されるものであるから,その構成全体をもって看取,把握されるとみるのが相当である。
また,当該文字は辞書類に載録された既成語とは認められないものであるから,特定の意味を有しない一種の造語として理解されるものである。
そうすると,本件商標は,これより「ダンズ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は,前記第2(4)のとおり「ESTRELLA DAMM」の欧文字を横書きしてなり,「ESTRELLA」の文字と「DAMM」の文字との間に半文字程度のスペースがあるとしても,それらの構成文字は,まとまりよく一体に表されており,構成文字全体から生じる「エストレージャダム」又は「エストレッラダム」の称呼も格別冗長というべきものではなく,よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして,引用商標は,その構成中の「ESTRELLA」の欧文字がスペイン語で「星」の意味を有する語(西和辞典 株式会社白水社)であるとしても一般に広く親しまれている語ということはできず,また,「DAMM」の欧文字は,辞書類に載録された既成語とは認められないものであるから,引用商標全体としても,特定の意味を有しない一種の造語として理解されるものである。
そうすると,引用商標は,その構成中の文字部分のいずれかが取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの,又は,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼及び観念が生じないと認めるに足る事情は見いだせないから,いずれかの文字部分を分離して抽出しなければならない特段の事情はない。
この点について,請求人は「DAMM」は請求人を表示する語であって,世界的に周知著名であるから,引用商標は,その構成中の「DAMM」の文字部分が着目され,当該文字部分より生ずる「ダム」の称呼をも生ずる旨主張する。
しかしながら,上記1のとおり,引用標章あるいは「DAMM」の文字が,請求人の製造に係るビールを表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることはできないから,「DAMM」の文字部分が着目されるとする請求人の主張は採用できない。
したがって,引用商標からは,「エストレージャダム」又は「エストレッラダム」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると,外観においては,それぞれ上記(1)及び(2)のとおりであって,その文字構成及び文字数が明らかに相違し,外観上,判然と区別し得るものである。
また,称呼においては,本件商標から生ずる「ダンズ」の称呼と,引用商標から生ずる「エストレージャダム」又は「エストレッラダム」の称呼とは,その音構成及び音数において明白な差異を有するものであるから,両者は,称呼上,明確に聴別できるものである。
そして,観念については,本件商標及び引用商標からは特定の観念を生じないものであるから,観念において比較することはできない。
以上からすれば,本件商標と引用商標とは,観念において比較できないとしても,その外観においては,判然と区別し得るものであり,称呼においても,明確に聴別できるものであるから,これらを総合的に考慮すれば,両者は,相紛れることのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
以上のとおり,本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)引用標章の周知性について
上記1のとおり,引用標章は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国の需要者の間に広く認識されているものとは認められない。
(2)本件商標と引用標章の類否について
ア 本件商標について
本件商標は,「DAN’S」の文字を標準文字で表してなり,上記2(1)のとおり,その構成文字に相応した「ダンズ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
イ 引用標章について
引用標章1は,前記第2の1のとおり,「Damm」の欧文字を書してなり,引用標章2は,前記第2の2のとおり,「DAMM」の欧文字を書してなり,引用標章3は,別掲のとおり「Damm」の欧文字をデザイン化して表しているものであるところ,当該「Damm」及び「DAMM」の文字は,辞書類に載録された既成語とは認められないものであるから,特定の意味を有しない一種の造語として理解されるものである。
そうすると,引用標章は,その構成文字に相応した「ダム」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用標章の類否について
本件商標と引用標章とを比較すると,外観においては,1文字目及び2文字目の「D」及び「A(a)」の文字が共通するものの,3文字目及び4文字目が「N」と「M(m)」及び「S」と「M(m)」で相違し,かつ,3文字目と4文字目の間の「’(アポストロフィ)」の有無という差異を有しているから,4文字という少ない文字構成である両商標の外観全体において,当該差異が,視覚的印象に与える影響は大きく,外観上,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に,本件商標から生じる「ダンズ」の称呼と引用標章から生ずる「ダム」の称呼とは,構成音及び音数に明らかな差異があるから,称呼において互いに聴別できるものである。
そして,観念については,本件商標及び引用標章からは特定の観念を生じないものであるから,観念において比較することはできない。
以上からすれば,本件商標と引用標章とは,観念において比較できないとしても,その外観においては,相紛れるおそれはなく,称呼においても,互いに聴別できるものであるから,これらを総合的に考慮すれば,両者は,相紛れることのない非類似の商標というべきである。
(3)小括
上記(1)のとおり,引用標章は申立人の業務に係る商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国の需要者の間に広く認識されているものとは認められず,また,本件商標と引用標章は非類似であるから,本件商標の指定商品と引用標章の使用商品が同一又は類似であるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり,引用標章及び引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国の需要者の間に広く認識されているものとは認められない。
また,上記2及び上記3のとおり本件商標と引用商標及び引用標章は非類似の商標であり,その類似性は低いものである。
そうすると,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,その取引者及び需要者をして,当該商品が請求人の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ではなく,また,当該商品が請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ともいえないから,請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じるおそれがある商標ではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同項第10号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
別掲(引用標章3)




審理終結日 2020-03-09 
結審通知日 2020-03-11 
審決日 2020-03-25 
出願番号 商願2017-142761(T2017-142761) 
審決分類 T 1 12・ 271- Y (W32)
T 1 12・ 263- Y (W32)
T 1 12・ 262- Y (W32)
T 1 12・ 251- Y (W32)
T 1 12・ 255- Y (W32)
T 1 12・ 253- Y (W32)
T 1 12・ 252- Y (W32)
T 1 12・ 261- Y (W32)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 駒井 芳子押阪 彩音 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 大森 友子
金子 尚人
登録日 2018-04-27 
登録番号 商標登録第6039673号(T6039673) 
商標の称呼 ダンズ、ダン、デイエイエヌ 
代理人 杉村 光嗣 
代理人 杉村 憲司 
代理人 中島 淳 
代理人 門田 尚也 
代理人 西尾 隆弘 
代理人 加藤 和詳 

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