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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X09
管理番号 1365045 
審判番号 取消2018-300376 
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-06-06 
確定日 2020-07-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第5495504号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5495504号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成23年12月12日に登録出願,第9類「携帯電話の付属品,電気通信機械器具の部品及び付属品」を指定商品として,同24年5月25日に設定登録され,その後,商標登録の取消し審判により,指定商品中第9類「携帯電話の付属品(「携帯電話機用イヤホンジャック用防塵具・携帯電話機用イヤホンジャック用防塵プラグ・携帯電話機用イヤホンジャック用アクセサリー・携帯電話機用イヤホンジャック」を除く。),電気通信機械器具の部品及び付属品(「電気通信機械器具用イヤホンジャック用防塵具・電気通信機械器具用イヤホンジャック用防塵プラグ・電気通信機械器具用イヤホンジャック用アクセサリー・電気通信機械器具用イヤホンジャック」を除く。)」について取り消すべき旨の審決がされ,同28年8月18日にその確定審決の登録がされ,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成30年6月20日である。
また,本件審判の請求の登録前3年以内の期間である平成27年6月20日から同30年6月19日までの期間を,以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める旨述べ,審判請求書,審判事件弁駁書及び口頭審理陳述要領書及び上申書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,第9類「全指定商品」(以下「取消請求商品」という。)について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 審判事件弁駁書,口頭審理陳述要領書及び上申書における主張
(1)被請求人は,カタログ(乙1)に記載の商品が本件商標の指定商品に属するものと述べるが,そもそも,カタログ(乙1)の発行者とおぼしき株式会社グラート(以下「グラート社」という。)は本件商標権者ではない。さらには,「2018 工具・副資材NO.5」と発行年を想起させる数字が記載されているものの,発行日を示す記載はなく,発行部数,発行先とも不明である。
(2)被請求人は,納品書(乙2)として51枚を提示している。しかし,商品名の欄に「スマッピー」の文字は見受けられるが,これがいかなる商品であるかは何ら示されておらず不明である。全ての納品書(乙2)が本件商標権者から「(株)グラート ストロベリーナイス」に対するものであり,かつ表計算ソフトでいつでも容易に作成可能な態様のものである。何らの客観性も示されていない。なお,甲第3号証(乙第3号証にて提示された「株式会社グラートのホームペ-ジ」内の「会社概要」のページ)によれば,グラート社の所在地は被請求人と同一の「東京都台東区柳橋2-4-4」である。
(3)乙第3号証の日付は「2018年7月29日」であり,本件審判請求の予告登録日以降である。さらに乙第4号証の撮影日も「平成30年7月27日」であり,かつ事後的に貼付可能なシールによる表示がなされている。乙第5号証も日付は「2018年7月29日」であり,本件審判請求の予告登録日以降である。
以上述べてきたとおり,答弁書における被請求人の主張は,いずれも客観性を持ち合わせていない証拠に基づくものであるか,又は本件審判請求の予告登録日以降の証拠に基づくものであって,何ら理由がない。
(4)乙第1号証ないし乙第10号証について
被請求人は,「グラート社は,ナイス企画社の取締役でもあるA氏が100%出資する会社であり,・・・本件商標権の通常使用権者である」とし,「カタログ(乙1)は,本件商標『スマッピー』を使用していることを示すページの写しであり,・・・商談の際にはこのバインダーにとじられた状態で客先に提示して使用する」旨述べるが,被請求人は令和元年8月3日付け答弁書においてグラート社との関係について何ら言及しなかった。上記開示のとおり,本件商標権者とグラート社とは実質同体といってよい関係であり,結果,乙第1号証及び乙第2号証とも依然何らの客観性も示されていない。乙第8号証の写真の提示も,それが要証期間に使用された証拠はない。また,乙第3号証ないし乙第5号証のいずれも本件審判請求の予告登録日以降のものであることは既に指摘のとおりである。
(5)乙第11号証ないし乙第17号証について
被請求人は,陳述書(乙11)他を提示し「新たな使用証拠」として述べているが,一連の提示資料を踏まえても,請求人が本件商標を取消請求商品に使用したと認めるに足る客観的な証拠は全く提示されていない。
乙第11号証が単一の取引先によるものにすぎず,その記載の形式・態様からも,被請求人側で,自己の主張に沿った陳述内容を作成したことが容易に推測されるものであって信ぴょう性が不十分であることに加え,乙第15号証との関連性も,グラート社が「株式会社ヤマトフィナンシャル」から何らかの代引き料金の振込入金を受けたことを示すのみであり,その取引において本件商標が使用されたことを何ら客観的に示すものではない。
乙第16号証においては「スマートフォン用アクセサリー」との説明書きが見られるのみであり,本件商標を使用している事実はない。
また,被請求人は「加除式バインダーのカタログの外観写真」(乙17)を提示するが,これは要証期間に本件商標の使用をしていたことを何ら客観的に示すものではない。
3 まとめ
以上より,被請求人の主張にはいずれも理由がなく,本件商標の登録は取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求め,審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証(枝番号を含む。)を提出している(審決注:上申書の証拠方法として提出した乙第12号証の1ないし3を乙第15号証の1ないし3,乙第14号証を乙第16号証及び乙第15号証を乙第17号証に振り替える。)。
1 審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書及び上申書における主張
(1)本件商標の使用に係る商品について
本件商標は,カタログ(乙1)に示す商品名「スマッピー スマホ用イヤホンジャック」と称する商品について使用されている(以下「本件商品」という。)。
本件商品は,スマートフォン等のイヤホンジャックに挿入して使用するものであり,本件商品にビーズ等のアクセサリーを施してアクセサリーとすることができるとともに,イヤホンジャックの防塵・防水の効果も期待できるものである。ここで,「スマートフォン等」とは,携帯電話機又は電気通信機械器具であり,本件商品はこれらの機器用イヤホンジャック用のアクセサリーや防塵プラグとされるものである。
したがって,本件商品は,本件商標の指定商品に属するものである。
(2)本件商品の生産・譲渡について
本件商品は,本件商標権者により生産され,譲渡されている。本件商標権者は,納品書(乙2)に示すように,本件商品をグラート社に納品している。納品書(乙2)には,本件商標が商品名として記載されている。グラート社への納品は,2011年(平成23年)9月から現在まで継続して行われている。納品書(乙2)は,本件審判請求の予告登録日から3年以内の納品書51枚(平成27年7月3日?平成30年6月12日)である。
グラート社に納品された本件商品は,グラート社が運営する乙第3号証に示す浅草橋駅近郊の店舗「アクセサリー&パーツショップ Strawberry Nice」にて,乙第4号証で示すように,10個入り又は100個入りのパッケ-ジに商標「スマッピー」が付されて陳列され販売されている。本件商品は,本件商標権者により乙第4号証で示すように包装して,本件商標や品番,入数,販売価格を表示したシールを貼ってグラート社に納品される。このようにして,本件商標権者は,本件商品の包装に本件商標を付して本件商標を使用(商標法第2条第3項第1号)している。また,本件商標権者は,本件商品の包装に本件商標を付した商品を譲渡して本件商標を使用(商標法第2条第3項第2号)している。
また,グラート社は,通販サイト「オンラインショップ Strawberry Nice」を運営しており,乙第5号証に示すように,本件商品である「〔イヤホンジャック〕イヤホンジャック(スマッピー) 丸カンタイプ 10個入(カラー8色) KA-740?747」や「〔イヤホンジャック〕イヤホンジャック(スマッピー)丸カンタイプ 100個入(カラー2色) KA-740?741」を販売している。
(3)使用態様について
乙第1号証,乙第2号証,乙第4号証及び乙第5号証に示される,本件商品に付される本件商標の形態は,ゴシック体で書されるものであり,黄色で着色されてロゴ化して表示されて登録されている本件商標の形態と異なるが,両者は同一の片仮名で表されている。したがって,両者は社会通念上同一と認められる商標である。
(4)本件商標権者の住所について
本件商標権者である株式会社ナイス企画(以下「ナイス企画社」という。)の本店住所は,ナイス企画社の現在事項全部証明書(乙6)に記載のとおり「東京都台東区浅草橋一丁目18番9号」である。したがって,本件商標権についても,上記住所を本件商標権者の住所とする「登録名義人の表示変更登録申請書」(乙7)を提出した。ナイス企画社は,上記本店住所にて経理部門等の本社機能及び店舗にて商品管理を行っており,前の住所地(東京都台東区柳橋2丁目4番4号)は営業所と称して,商品の企画・製造・販売に関する業務を行っていた。なお,上記営業所は,令和元年5月7日に移転した。
(5)グラート社及び本件商標権者との関係について
グラート社は,平成18年9月19日に登記し,実在していた会社であったが,閉鎖事項全部証明書(乙9)のとおり,同30年12月30日にナイス企画社と合併し,同31年1月24日に閉鎖登記した。グラート社は,ナイス企画社の取締役でもあるA氏が100%出資する会社であり,A氏はナイス企画社の代表者の妻であり,ナイス企画社の同族会社とされていたものである。要証期間においては,グラート社は,ナイス企画社が商品企画,製造した商品を店舗で販売する役割を担っていたことから,本件商標権の通常使用権者である。
(6)カタログについて
カタログ(乙1)は,本件商標を使用していることを示すページの写しであり,乙第8号証の写真に示すように,加除式のバインダーにとじて店舗「アクセサリー&パーツショップ Strawberry Nice」にて展示し,商談の際にはこのバインダーにとじられた状態で客先に提示して使用するものである。本店舗は小規模な事業者が運営する店舗であり,大規模事業者のごとくカタログを取引者・需要者に頒布するような事業規模ではない。
乙第1号証及び乙第8号証で示す加除式バインダーのカタログの外観写真を乙第17号証として提出する。当該カタログの背表紙には「株式会社グラート 2018年度 パーツカタログ」と記載される。グラート社は,このカタログを運営店舗内で展示(商標法第2条第3項第8号)している。
(7)納品書について
グラート社がナイス企画社の商品の販売を担当していたことからすれば,納品書(乙2)に記載の商品名「スマッピー」は,カタログ(乙1)の商品「スマッピー イヤホンジャック用アクセサリー」と一致することは明らかである。元来,納品書(乙2)は,商品名である本件商標,数量,原単価などの文字は記載されるが,商品の写真が記載されているような書類ではない。当該納品書に記載された商品「スマッピー」がグラート社に販売され,グラート社がこの商品写真を掲載したバインダーカタログを店舗で営業用に使用している事実からすると,本件商標権者からグラート社に商品が販売された時点で本件商標の使用行為がされていたことは明らかである。
(8)新たな使用証拠について
グラート社の顧客である有限会社カワダ(以下「カワダ社」という。)の代表取締役は,要証期間において,グラート社から,カタログ(乙1)の商品「スマッピー スマホ用イヤホンジャック」をヤマト運輸の代引きにて購入したことを陳述(乙11)している。代引きされた料金は,決済代行会社であるヤマトフィナンシャル株式会社(以下「ヤマトフィナンシャル社」という。)よりグラート社に振込されている。例えば,乙第11号証の7月21日付納品書の¥6,544は,同日付における伝票(乙15の3)ナンバー「360501538460」として記載される。カワダ社は,インターネットホームページ(乙13)に記載のとおり,「草津ガラス蔵」としてとんぼ玉(吹きガラス)の創作体験やガラスアクセサリーを販売する店舗を運営しており,ガラスアクセサリーは「草津ガラス蔵3号館」で販売している。グラート社から購入した商品「スマッピー」は,乙第16号証に示すように,スマ-トフォンや携帯電話のイヤホンジャックに挿入可能なアクセサリーの製作に用いられている。
そして,乙第16号証について,口頭審理において指摘された写真(7/8)のみ再度印刷し直したが,価格プレート部分の状態は同じであった。該当部分を別アングルから撮影した写真を追加した(8/8)。この写真(8/8)を見ればわかるとおり,四角い皿の縁部で影となる価格プレートの部分は光が反射せず,四角い皿の縁部以外のところは光で反射して価格プレートの文字が読めなくなっている。写真(7/8)はこれと同様の現象が現れている。
したがって,通常使用権者であるグラート社は,本件商標を要証期間において使用していた。
(9)グラート社による本件商標の使用(「草津ガラス蔵」への納品)について
グラート社は,本件商標の通常使用権者である。グラート社は,カワダ社が運営する「草津ガラス蔵」に商品「スマッピー」及びその他の商品を販売した際の納品書(乙11)に本件商標を明示している。
したがって,本件商標の通常使用権者であるグラート社は,要証期間において,本件商標を使用(商標法第2条第3項第2号及び同項第8号)している。
請求人は,「乙第11号証が単一の取引先によるものにすぎず,・・・信ぴょう性が不十分である」と主張しているが,商標が不使用により取り消される要件は「継続して三年以上」商標を使用していないこととされていることから(商標法第50条第1項),一度でも商標の使用があれば足り,単一の取引先の証拠であるか否かは関係のないことであり,また,カワダ社の代表取締役による陳述(乙11),及びヤマトフィナンシャル社の精算書(乙15の1ないし3),「草津ガラス蔵」におけるアクセサリーの販売の事実(乙13,乙16)等を鑑みれば,いずれも整合性が取れるものであり,いずれも高い信ぴょう性を有する証拠である。
(10)本件商標権者の使用について
上記のとおり,グラート社は要証期間において商品「スマッピー」を販売している。グラート社は,本件商標権者(ナイス企画社)の同族会社であり,ナイス企画社の商品を販売する役割を担っていた。要証期間にグラート社が商品「スマッピー」を販売していたことは,乙第1号証,乙第8号証,乙第11号証ないし乙第17号証によって証明される。
したがって,ナイス企画社からグラート社ヘの納品書(乙2)についても高い信ぴょう性を有することから,本件商標権者であるナイス企画社は,要証期間において商標「スマッピー」を使用(商標法第2条第3項第1号,同項第2号及び同項第8号)していた。
2 むすび
以上のとおり,本件商標は,本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標権者により指定商品について本件商標を使用(商標法第2条第3項第1号,同項第2号及び同項第8号)していることが明らかである。

第4 当審の判断
1 証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は,商品「スマッピー」のカタログとされるところ,右上部に「株式会社グラート」と記載され,その下に,商品の一覧表があり,「商品画像」の欄には,8種類に着色された商品の写真が掲載され,「弊社品番」の欄には「KA-740」ないし「KA-747」の記載,「商品名」の欄には「スマッピー スマホ用イヤホンジャック」の記載,「カラー展開」の欄には「ホワイト」,「ブラック」,「イエロー」,「ピンク」,「ダークピンク」,「レッド」,「パープル」,「ブルー」の記載がある。
(2)乙第4号証について
乙第4号証は,商品「スマッピー」が店内において陳列されている様子を写した2枚の写真である。このうち「写真2」には白色のイヤホンジャックとおぼしき商品が入った透明な袋の上部に「KA-740 スマッピー」の記載がある。
(3)乙第5号証について
乙第5号証は,「ストロベリーナイス/Strawberry Nice」のウェブサイトとされるところ,「〔イヤホンジャック〕イヤホンジャック(スマッピー)丸カンタイプ 10個入(カラー8色)KA-740?747」の記載があり,イヤホンジャックとおぼしき商品の写真が8個掲載されており,それぞれ写真の下に「ホワイト」,「ブラック」,「イエロー」,「ピンク」,「ダークピンク」,「レッド」,「パープル」及び「ブルー」の記載がある。
(4)乙第16号証について
乙第16号証は,アクセサリーを写した写真であり,3葉目には,ガラスの皿の中にトンボ玉とイヤホンジャックとおぼしきものが連結された状態で商品として写っており,ガラスの皿の縁には価格表が付され,当該価格表には「草津ガラス蔵/花柄イヤホンジャック/¥1300+税」の記載がある。
また,5葉目には,同様にガラスの器の中にトンボ玉とイヤホンジャックとおぼしきものが連結された状態で商品として写っており,そのすぐそばには価格表が置かれ,当該価格表には「スマートフォン用アクセサリー」及び「草津ガラス蔵/スマホ用イヤホンジャック/¥1000+税」の記載がある。
(5)乙第6号証について
乙第6号証は,本件商標権者の現在事項全部証明書の写しであり,「商号」には「株式会社ナイス企画」,「本店」には「東京都台東区浅草橋一丁目18番9号」,「会社成立の年月日」には「平成5年2月8日」及び「役員に関する事項」には「取締役」としてA氏の氏名の記載がある。
(6)乙第9号証について
乙第9号証は,グラート社の閉鎖事項全部証明書の写しであり,「商号」には「株式会社グラート」(平成21年10月16日変更),「本店」には「東京都台東区浅草橋二丁目4番4号」,「会社成立の年月日」には「平成18年9月19日」及び「役員に関する事項」には「代表取締役」としてA氏の氏名の記載がある。
そして,「登記記録に関する事項」には「平成30年12月30日東京都台東区浅草橋一丁目18番9号株式会社ナイス企画に合併し解散」の記載がある。
(7)乙第11号証について
乙第11号証は,陳述書であり,カワダ社及び草津ガラス蔵の代表取締役がグラート社から商品「スマッピー」(スマホ用イヤホンジャック)をヤマト運輸の商品代引きにて購入したことに相違ない旨を令和元年9月24日に陳述している。
また,当該陳述書には「2016年6月10日付納品書」及び「2016年6月11日付納品書」とする2葉の添付書面があり,各添付書面の右上部には,それぞれ「2016.6.10」及び「2016.6.11」の記載がある。
そして,いずれの添付書面もグラート社(東京都台東区柳橋2-4-4)から「草津ガラス蔵」(群馬県吾妻郡草津町)に宛てたものであり,「ご注文明細」と記載された表,「請求金額合計」及び「ご注文誠にありがとうございました。」の記載がある。当該表中の「商品」の欄には「スマッピー」の記載があり,当該商品については,「色」の欄には「黒」,「白」,「青」,「ピンク」,「赤」,「紫」及び「濃いピンク」のいずれかの記載,「単価」の欄には100円又は900円の記載がある。
また,右上部に「2016.6.10」と記載されている添付書面には,「請求金額合計¥14,515」の記載,また,「2016.6.11」と記載されている添付書面には,「請求金額合計¥13,251」の記載がある。
(8)乙第15号証について
乙第15号証の1は,ヤマトフィナンシャル社からグラート社宛ての振込日を「16年7月8日」とする精算書である。当該精算書には,グラート社への精算額,振り込み口座等の記載とともに取引明細表が記載されている。当該明細表には,「発送日」,「商品代金」,「配達店」の欄があり,これらの欄には,順に「0610」,「14515」,「群馬草津」,その下に「0611」,「13251」,「群馬草津」の記載がある。
そうすると,上記「発送日」欄の「0610」及び「0611」は,それぞれ,「16年6月10日」及び「16年6月11日」であり,「商品代金」である「14515」及び「13251」の数字の記載は,それぞれ,「14,515円」及び「13,251円」である。
2 上記1によれば,以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
本件商標は,別掲のとおり黄色に茶色の縁取りをした丸みを帯びた片仮名で「スマッピー」と書してなるところ,カタログ(乙1)及びウェブサイト(乙5)には「スマッピー」の片仮名(以下「使用商標」という。)が表示されている。
そして,使用商標は,本件商標と色彩が異なり,レタリングの有無の差異を有するものの,文字のつづりが同一であるから,本件商標と社会通念上同一の商標といえる。
(2)使用商標の使用商品について
カタログ(乙1)の「商品名」として「スマッピー スマホ用イヤホンジャック」と「弊社品番」として「KA-740」の記載と,商品の陳列状況を示す写真(乙4)の「KA-740 スマッピー」の記載とは,品番と商品名が一致している。
そして,カタログ(乙1)の「商品画像」の商品形状と商品の陳列状況を示す写真(乙4)の透明の袋に入っている商品の形状が同じである。
また,アクセサリー写真(乙16)には,カタログ(乙1)の商品画像や商品の陳列状況を示す写真(乙4)の商品の形状と同じ形状の商品が「花柄イヤホンジャック」,「スマホ用イヤホンジャック」と称して価格表とともに陳列されていることからすれば,当該商品は「スマートフォン用のイヤホンジャック」(以下「使用商品」という。)であり,これは取消請求商品中の「携帯電話機用イヤホンジャック,電気通信機械器具用イヤホンジャック」の範ちゅうに含まれるものである。
(3)使用商標の使用時期について
陳述書(乙11)に添付された納品書(以下「納品書」という。)の右上部の「2016.6.10」及び「2016.6.11」の記載は,陳述書(乙11)に「2016年6月10日付納品書」及び「2016年6月11日付納品書」と記載された日付と同じであり,またその記載内容もあわせみれば,これら納品書は「2016年6月10日」及び「2016年6月11日」に作成された納品書とみるのが自然である。
そして,精算書(乙15の1)は,ヤマトフィナンシャル社が,グラートに宛てた精算書であり,この精算書の「発送日」は,納品書の日付と一致しており,精算書の「商品代金」と納品書の請求金額合計も一致している。
さらに,精算書の「配達店」が「群馬草津」と記載されており,納品書の宛先である草津ガラス蔵の住所は,「群馬県吾妻郡草津町」であることから,地域も一致している。
そうすると,納品書の日付,金額及び配達先と精算書の日付,金額及び配達地域が一致するといえることから,納品書の請求金額の合計についてヤマトフィナンシャル社がグラート社に代わって代金を徴収し,グラート社の銀行口座に振り込んだことが認められる。
したがって,納品書の内容は,精算書(乙15)によって裏付けられたことから,納品書は要証期間に作成されたものといえる。
そして,納品書に商品「スマッピー」の記載があることから,実際にこの時期に商品「スマッピー」の納品及び代金の支払い,すなわち譲渡が行われ,その商品は,上記(2)のとおり,透明の袋に使用商品を入れて,その袋の上に使用商標が記載された状態で譲渡されていたものと推認することができる。
したがって,要証期間に上記のような透明の袋に使用商品を入れてその袋の上に使用商標を記載して譲渡されていることから,要証期間に,使用商標が,使用商品に使用されたものいうことができる。
(4)使用商標の使用者について
納品書は,作成日が2016年(平成28年)6月10日及び同月11日で,グラート社が草津ガラス蔵に宛てたものであるから,上記(3)の使用商標の使用者は,グラート社であると認められる。
そして,上記1(5)及び(6)のとおり,グラート社は,本件商標権者の取締役であるA氏が代表取締役に就任していることから,グラート社は,本件商標権者の関連会社(子会社)の関係にあって,本件商標権の黙示の承諾があったものとみるのが相当であり,グラート社は,本件商標権の通常使用権者と認められる。
その後,グラート社は,グラート社の閉鎖事項全部証明書(乙9)によれば,平成30年12月30日にナイス企画社に合併し解散と記載されていることから,当該日付以降は,ナイス企画社が業務を引き継いだものとみるのが相当であり,使用商標の使用者は,現在,本件商標権者である。
(5)小括
以上によれば,本件商標権者であるナイス企画社は,要証期間に,取消請求商品に含まれる商品「スマートフォン用イヤホンジャック」に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して譲渡したものと認められる。
そして,上記行為は,商標法第2条第3項第2号にいう「・・・商品の包装に標章を付したものを譲渡・・・する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
請求人は,「乙第11号証が単一の取引先によるものにすぎず,その記載の形式・態様からも,被請求人側で,自己の主張に沿った陳述内容を作成したことが容易に推測されるものであって信ぴょう性が不十分である」と主張している。
しかしながら,上記2のとおり,本件商標権者の納品書の記載は,通常,商品を納入した特定の顧客に対して交付されるものであり,この納入を裏付ける証拠として精算書(乙15)が存在することから,現実に商品を納入した顧客に対して交付され,代金が支払われている以上,これに記載された商品を譲渡したということができるものである。
よって,請求人の主張は採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間に,日本国内において,本件商標権者が,本件審判の請求に係る指定商品,第9類「全指定商品」に含まれる商品「スマートフォン用イヤホンジャック」について,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしたことを証明したということができる。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定商品について,商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲
別掲(本件商標:色彩については,原本参照。)



審理終結日 2020-04-10 
結審通知日 2020-04-17 
審決日 2020-06-01 
出願番号 商願2011-92710(T2011-92710) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 裕紀子 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 小松 里美
榎本 政実
登録日 2012-05-25 
登録番号 商標登録第5495504号(T5495504) 
商標の称呼 スマッピー 
代理人 特許業務法人コスモ国際特許事務所 
代理人 中山 俊彦 

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