• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2018890085 審決 商標
無効2018890005 審決 商標
無効2020890039 審決 商標
無効2019890004 審決 商標
無効2018890038 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W25
管理番号 1364151 
審判番号 無効2019-890038 
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-07-10 
確定日 2020-06-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第6110359号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第6110359号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6110359号商標(以下「本件商標」という。)は、「Zarbleu」の欧文字を書してなり、平成30年1月24日に登録出願、第25類「プルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ,ワイシャツ類及びシャツ,ズボン,外衣,スカート,ドレス,ティーシャツ,スコート,下着,ズボン下,ジャージー製運動用衣服及びジャージー製運動用特殊衣服,セーター,水泳着,帽子,メリヤス下着,メリヤス靴下,手袋(被服),コート,オーバーコート,ニット製被服,スカーフ」を指定商品として、同年10月2日に登録査定、同年12月28日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、以下の登録商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第2467891号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「ザラ」の片仮名と「ZARA」の欧文字を2段に書してなる
登録出願日:平成2年6月1日
設定登録日:平成4年10月30日
指定商品 :第25類「被服」のほか、第16類、第20類ないし第22類及び第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
2 登録第4108998号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「ZARA」の欧文字
登録出願日:平成5年3月31日
設定登録日:平成10年1月30日
指定商品 :第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
3 登録第5215666号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「ZARA」の欧文字(標準文字)
登録出願日:平成19年7月2日
設定登録日:平成21年3月19日
指定役務 :「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」のほか、第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
4 国際登録第752502号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「ZARA」の欧文字
国際商標登録出願日:2001年(平成13年)2月1日(優先権主張:2000年8月1日)
設定登録日:平成14年4月12日
指定商品・役務:第25類「Ready-made clothing for women, men and children, footwear (except orthopaedic footwear) and headgear; clothing for motorists and cyclists; bibs, not of paper; head bands (clothing); bathrobes; swimming costumes; bathing caps and sandals; boas (to wear around the neck); underwear; babies' pants; scarves; hoods; shawls; belts; wet suits for waterskiing; ties; corsets; scarves; fur stoles; headscarves; woolly hats; gloves; underwear; mantillas; stockings; socks; neckscarves; textile nappies; furs (clothing); pyjamas; soles; heels; veils (clothing); braces; paper clothing; gym and sportswear; baby clothes; collars (clothing); insoles; bow ties; pareos.」のほか、第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの役務

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第28号証(以下、証拠を表示する際は、「甲1」のように表記する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標の登録は、以下の理由により、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
2 請求の利益について
本件商標と請求人所有の引用商標は類似し、かつ、同一又は類似の商品に係るものであるから、請求人は本件審判を請求することについて、法律上の利害関係を有する。
3 具体的理由
(1)引用商標の周知・著名性について
カジュアルウェアブランド「ZARA」は、1975年にスペインにおいて1号店がオープンして以来(甲8)、現在では、世界で約2,100店舗が展開されており、「ZARA」(「ZARA HOME」を含む。)の2019年1月期の世界全体の売上高は180億2,100万ユーロ(約2兆2,346億400万円)に達している(甲9)。日本においても1997年に日本法人が設立され、翌年に1号店を開店した後、現時点(令和元年7月)で国内に約100の店舗が存在し(甲10)、インターネットによる通信販売も強化しているところである(甲11)。
米Interbrand社が公表するブランド価値評価ランキングにおいて、「ZARA」は2016年度版27位、2017年度版24位、2018年度版25位と、ここ数年をとってみても毎年上位にランクされており、世界で最も成功しているブランドの一つとして認識されている(甲12)。
以上のように、引用商標は、世界最大の売上高を誇るアパレル企業である請求人の基幹ブランドとして広く知られ、本件商標の登録出願時には、特に「被服」の分野において我が国の取引者、需要者の間で広く認識され、強い顧客吸引力を持つ周知、著名な商標といえる。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、「Zarbleu」の欧文字を普通書体により表してなるところ、当該語は辞書等に掲載されていない造語であり、親しまれた英語にもないつづりであることから、我が国の取引者、需要者は容易に称呼することはできず、ローマ字表記に従って、「Zar(ザラ)/bleu(ブレウ又はブルー)」と分けて認識するものである。
また、後半に位置する「bleu」の文字は、フランス語で青色を意味する語であるところ(甲14)、対応する英語の「blue」の語の関係では、「u」と「e」の文字が入れ替わっているにすぎず、有名な映画「グランブルー(Le GRAND BLEU)」と表記されて使用されている例もあることから(甲15)、たとえフランス語であっても、一般には「青色」という意味で容易に認識される。その場合、「被服」の分野に属する指定商品との関係では、商品の品質(色彩)を示すにすぎないことから、その自他商品識別力の極めて弱い部分であるといえる。
そのため、本件商標に接する者は、その構成全体のみならず、識別力の弱い「bleu」を捨象した「Zar」を要部として認識する場合も少なくない。
本件商標と引用商標を対比すると、本件商標の要部である「Zar」と引用商標の欧文字部分「ZARA」は、語尾の1字「A」の有無において相違するにすぎず、外観及び称呼において類似する。
また、「ZARA」が周知、著名であることを考えれば、本件商標が特に「被服」の分野に属する指定商品に使用された場合には、周知、著名なブランド「ZARA」を想起、連想するため、互いに観念上の類似性も認められる。
したがって、本件商標は、商標法4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、語頭部分において、引用商標と、ローマ字のつづりの大半を共通にすることから、取引者、需要者は、両者から共通した印象やイメージを看取するものである。
加えて、引用商標を構成する「ZARA(ザラ)」は、独創性の高い商標であり、強い識別性が認められ、他人がその商標と類似する商標を使用した場合には、既成語から構成される商標よりも需要者に対する印象、連想作用等から出所の混同が生ずる幅は広いというべきである。このことは、実際にアパレル業界において、「ZAR」の文字において共通するブランドが存在しておらず、自然と棲み分けがされていることからも裏付けられる(甲17)。
さらに、本件商標の構成要素である「bleu」が色彩を意味し、かかる語は、特にファッションブランドにおいて、主ブランドの派生ブランドとして「○○BLEU(bleu)」や「BLUE LABEL(ブルーレーベル)」の態様で広く使用されている実情がある(甲18?23)。
また、請求人自身も「ZARA HOME」(甲24)、「ZARA WOMAN」(甲25)及び「ZARA BASIC」(甲27)のような派生ブランドを展開している事実がある。
そうすると、請求人の「ZARA」の著名性をも考慮すれば、本件商標が指定商品に使用された場合は、これに接した取引者、需要者は、請求人の「ZARA」の派生ブランドであると誤って理解する可能性があり、また、請求人と経済的又は組織的関係を有する者の取扱いに係る商品であると誤信することで商品の出所について混同を生じるおそれが高い。
したがって、本件商標は、商標法4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標が外国及び我が国で周知、著名な商標であること、本件商標が引用商標と類似すること上述のとおりである。
商標権者が、周知、著名な商標と類似する本件商標を採択することは、自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を著名商標に化体した信用にただ乗り(フリーライド)することによって得ようとするものであり、不正の目的が認められる。また、本件商標の使用は、引用商標に化体した出所表示機能の稀釈化を招くものであり、また、その名声を毀損させるものである。
なお、本件商標と同一商標は、米国においても出願されていたが、請求人の異議申立ての結果、出願拒絶となった(甲28)。
したがって、本件商標は、商標法4条第1項第19号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は、請求人の上記主張に対し、何ら答弁していない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
請求人の主張及びその提出した証拠(甲8?甲12等)によれば、以下のとおりである。
請求人は、スペインのアパレルメーカーであり、「ZARA」は、請求人が展開するカジュアルウェアブランドであって、1975年に「ZARA」を立ち上げ、スペインに1号店をオープンし、その後、ヨーロッパ、アメリカ、アジアと世界中に進出し、ザラ単独では、2013年4月末時点で87か国に1,991店舗、2019年1月期末には、2,131店舗を展開し、「被服」を販売するこれらの店舗には、「ZARA」の文字が表示されている。また、1997年には、日本法人である株式会社ザラ・ジャパンを設立し、1998年に第1号店舗として渋谷店をオープンし(甲8、9)、現在において、日本における「ZARA」の店舗は、各地に100店舗が存在し(甲10)、インターネットによる通信販売も行っている(甲11)。
そして、「ZARA」(「ZARA HOME」を含む。)の2019年1月期の世界全体の売上高は180億2,100万ユーロ(約2兆2,346億400万円)に達し(甲9)、米Interbrand社が公表するブランド価値評価ランキングにおいて、「ZARA」は、2016年度版27位、2017年度版24位、2018年度版25位と上位にランクされている(甲12)。
以上からすれば、引用商標1に含まれ、又は引用商標2ないし4を構成する「ZARA」の文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において請求人の業務に係る商品「被服」を表すものとして、相当程度知られていたといえる。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
上記第2のとおり、引用商標1は、「ザラ」の片仮名及び「ZARA」の欧文字を2段に書してなり、引用商標2ないし4は、「ZARA」の欧文字からなるところ、その構成文字である「ZARA」の文字は、上記(1)のとおり、請求人の業務に係る商品「被服」を表すものとして相当程度知られているものである。
そして、本件商標は、上記第1のとおり、「Zarbleu」の欧文字からなるところ、需要者の目に留まりやすい語頭部分には、その指定商品との関係において、請求人の業務に係る商品を表すものとして相当程度知られている「ZARA」の4文字中、語頭を含めた3文字のつづりを同一にする「Zar」の文字を含むものであることから、本件商標と引用商標とは、一定程度の類似性があるというべきである。
(3)引用商標の独創性の程度について
引用商標は、上記(2)のとおり、「ZARA」の欧文字を書してなる又は有してなるところ、該文字は辞書等に掲載がない、造語であることから、独創性が高いものといえる。
(4)商品の関連性及び、取引者、需要者の共通性について
本件商標に係る指定商品は、「被服」に関連する商品であって、請求人の業務に係る商品「被服」と同一又は類似する商品といえるから、両商品の関連性は高く、その需要者を共通にするものである。
(5)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(4)によれば、引用商標は、請求人の業務に係る商品「被服」を表すものとして相当程度知られており、本件商標と引用商標とは一定程度の類似性があり、引用商標の独創性及び本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品の関連性の高さ、需要者の共通性の程度を考慮すれば、被請求人が本件商標をその指定商品に使用した場合、その需要者において、これを請求人又は請求人と経済的若しくは組織的関係を有する者の業務に係る商品と混同するおそれがあるというべきである。
(6)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。なお、請求人は、上記理由のほか、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当する旨主張しているが、請求人の主張及び提出に係る証拠によっては、上記理由に該当するものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-01-28 
結審通知日 2020-01-31 
審決日 2020-02-13 
出願番号 商願2018-9819(T2018-9819) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大岩 優士藤平 良二 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 中束 としえ
山田 啓之
登録日 2018-12-28 
登録番号 商標登録第6110359号(T6110359) 
商標の称呼 ザーブルー、ザルブルー 
代理人 特許業務法人BORDERS IP 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ