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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W30
管理番号 1364092 
審判番号 不服2018-16711 
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-14 
確定日 2020-06-20 
事件の表示 商願2017-79415拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第30類「みそ」を指定商品として、平成29年6月15日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、『天地返し仕込』の文字を普通に用いられる方法の域を脱しない方法で縦書きしてなるところ、その構成中の『天地返し』の文字は、味噌作りの製造工程において、熟成中の味噌を上下入れ替えるなどひっくり返して生産する一方法を認識させる語であって、『混ぜることによって、熟成を均等にする方法』などの意味を表示するものとして、実際に使用されている実情があり、また、『仕込』の文字は、『酒や味噌・醤油などの醸造で、原料を混ぜて桶などにつめること。』の意味(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を有する語であるから、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、『味噌作りの製造工程において、熟成中の味噌を上下入れ替えるなどひっくり返す方法で仕込み(原料を混ぜて桶などにつめた)をされた味噌』であることを認識するにとどまり、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、別掲1のとおり、「天地返し仕込」の文字を同書、同大、等間隔で縦書きしてなるところ、これは普通に用いられる方法の域をでない方法で書してなるものである。
そして、本願商標の構成中、「天地返し」の文字は、本願の指定商品である味噌を取り扱う業界において、「上下を入れ替える、ひっくり返す」ほどの意味合いで、味噌の製造工程中の一工程を示すものとして使用されており、また、上記工程を行ったことを表示した味噌が販売されている実情がある(別掲2、別掲3)。
さらに、本願商標の構成中、「仕込」の文字は、「酒や味噌・醤油などの醸造で、原料を混ぜて桶などにつめること。」(「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店))などを意味する親しまれた語であるから、これらを結合してなる本願商標は、その構成文字全体から「上下を入れ替える、ひっくり返すなどの天地返しをして仕込んだ」ほどの意味合いを理解させるものである。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして、その商品が「天地返しをして仕込んだ商品」であること、すなわち、商品の品質を表したものと認識されるとみるのが相当であるから、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標は、その指定商品「みそ」との関係では「天地返しをして仕込んだ味噌」という意味合いになるが、天地返しは味噌の仕込作業工程を終えた後の熟成中の味噌に対して行われる作業工程であって、天地返しをして仕込むという工程は存在しないから、本願商標は、味噌の製造方法を表したものということはできず、商標法第3条第1項第3号に該当するものではないし、味噌の業界、あるいは一般取引者、需要者は、本願商標をみても、この言葉どおり天地返しをして仕込んだ味噌、即ち、それが味噌の製法と認識しないことは明らかである旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品の需要者は一般の消費者であり、これらの者は、必ずしも味噌の製造工程を詳細に理解しているとはいえないから、仮に、請求人の主張するように、味噌の製造工程に天地返しをして仕込むという工程は存在しないとしても、上記(1)のとおり、「天地返し」及び「仕込み」の文字から、それぞれの意味を理解し、本願商標全体として「天地返しをして、原料を混ぜて桶などにつめた」ほどの意味合いで、商品の品質を表したものと認識するというべきである。
また、請求人は、味噌の業界、あるいは一般取引者、需要者は、本願商標の構成文字を厳密に味噌の製造工程に当てはめるから、本願商標を味噌の製法とは認識しないと主張するが、その主張を裏付ける証拠は見いだせない。
よって、請求人の主張はいずれも採用することができない。
イ 請求人は、過去の登録例及び審決例を挙げ、本件と同様なケースにおいて、様々な意味を有する言葉が結合したものと認識し得たとしても、特定の意味合いを理解、把握しないまま、実際には存在しない製造方法を表す一種の造語として取引に当たるとみるのがより自然といえると認定された例や、2以上の言葉が結合したと認識し得たとしても、その言葉の位置が前後することにより、生じる観念が異なると認定された例が存在する旨主張する。
しかしながら、請求人が引用する過去の登録例及び審決例の商標は、それぞれ、その構成態様を異にすることから事案を異にするばかりでなく、商標が自他商品識別標識としての機能を有するか否かは、査定時又は審決時における取引の実情を勘案して、その指定商品の取引者、需要者の認識を基準に判断すべきものであるから、他の登録例及び審決例に本件の判断が拘束されるものではない。また、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者をして、「天地返しをして仕込んだ商品」との意味合いで、商品の品質を表示するものと認識させるにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとはいえないことは、上記(1)で述べたとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標)


別掲2(原審において提示された例)
(1)信州・石井味噌ウェブサイト(http://ishiimiso.com/kengaku/visitor_kura.html)
◆仕込み蔵【一年蔵】 (ご見学可)
仕込みには大豆・糀・塩を混合し、ここ「仕込み蔵」の杉桶に仕込み熟成させます。
トンボが舞う季節になると「天地返し」が行われます。天地返しは味噌の外側と中心や上下で熟成にムラが出てしまうので、全体を均一に熟成させるためや、乳酸菌や酵母に酸素を送る等の効果があります。そして寒の入りの季節になると、二年蔵へ味噌は移されます。
(2)松尾商店(http://www.matuo.net/?pid=6028435)
木樽仕込み 天地返し味噌(粒) 1kg
国産大豆と、米麹を使い、2回天地返し(楷を入れる)をすべて手仕事で仕込んでおります。
(3)山吹味噌ウェブサイト(http://www.yamabukimiso.co.jp/what.html)
天地返し
また桶から桶へ、熟成中の味噌を丹念に移しかえる「天地返し」は味噌の発酵を促し、深い風味をひきだしながら、均一の味わいにするために欠かせない技です。
桶ごとに異なる熟成の度合いを見守り、育てる。これが伝統的な知恵と技を守り、大自然の営みに奉仕する山吹味噌の天然醸造。機械だけではどうしても解決できない深いコクとうま味の秘密が、ここにあります。
(4)信州三年味噌ウェブサイト(http://www.misogura.jp/SHOP/freepage.php?id=29)
蔵元六代目当主
味噌天地返し最終日
8月の終わりより約一か月続いた「天地返し」もいよいよ終了。最後の一桶となりました。最後の方は気温が下がりましたが、今年は暑くて大変でした。でもこの一仕事が美味しい味噌にするためには欠かせません。
(5)marukomeのウェブサイト(https://www.marukome.co.jp/miso/handmade/)
味噌を手作りしてみよう!
1週間?2週間後に「天地返し」を行います。清潔な手やヘラを使い、味噌をすくいながら、容器から容器へと味噌を移します(一度に全部を移すのではなく、小分けにして移します)。
最初に仕込んだ時と同様、空気が入らないように詰めて、重石とカバーをします。水分はよく混ぜ込んでください。
(6)みそを作る工程において「天地返し」する方法に関するウェブサイト情報
marukomeのウェブサイト(https://www.marukome.co.jp/miso/handmade/)
「味噌を手作りしてみよう!
1週間?2週間後に「天地返し」を行います。清潔な手やヘラを使い、味噌をすくいながら、容器から容器へと味噌を移します(一度に全部を移すのではなく、小分けにして移します)。最初に仕込んだ時と同様、空気が入らないように詰めて、重石とカバーをします。水分はよく混ぜ込んでください。」
(7)生協の宅配パルシステム「だいどこログ」のウェブサイト(https://daidokolog.pal-system.co.jp/recipe/2404)
「手作りみその天地返し【米こうじ(生こうじ)で作る場合】
1?2月に仕込んだ「手作りみそ」は、梅雨の前後に、みそに空気をふれさせる「天地返し」をしましょう。」の記載があります。
(8)マルカワみそウェブサイト(https://marukawamiso.com/make-miso/85.html)「味噌屋が教える失敗しない手作りみその作り方
※熟成途中で『天地かえし』をする蔵元さんもありますが、マルカワみそでは天地返しをしてもしなくても良いと考えております。『天地かえし』とは味噌を1度別の容器にひっくり返して上下部分の熟成具合や水分を均一にさせる事ですが、蔵元さんのような、大きい桶でトン単位で味噌を作っている場合は上下部分に差が出やすいですが、ご家庭で仕込む量程度ではほとんど差がでないため、必要ありません。」の記載があります。
(9)有限会社小堀産業のウェブサイト(http://www.koborisanngyou.com/hintmisotukuri/htenntigaesi.htm)
「天地返しのヒント
天地返しは、混ぜることによって、熟成を均等にします。熟成の途中に炭酸ガスも発生しますので、それを抜いて酸素を入れることもします。また、天地返しをしない方もいらっしゃいます。それでもおいしいお味噌が出来るといいます。また、1か月に1回ぐらいずつ天地返しするお客様もいます。全国には、いろいろなお味噌の作り方があります。どれが、一番だと言うわけではありません。お味噌がおいしくできているなら今までのお客様の作り方が一番だと思います。やり方を変えない方がいいと思います。ただし、はじめて作られる方は、たまりがあがってきた頃に1度ぐらいは、天地返しをやったらどうでしょうかとすすめています。冬にお味噌を作った方は、梅雨に前か後ぐらいかと思います。天地返しのやり方ですが、一度、他の容器にだして、また入れ替えてもいいし、他の容器に移してもいいです。家庭で作る量でしたら、しゃもじかスプーンでかきわますだけでもいいです。お味噌を作ったとき同様に、きれいに拭いて、ラップをしてください。重石をのせている方は、半分くらいの重石に変えます。」の記載があります。

別掲3(当審において提示する例)
(1)2014年8月19日付けの大阪読売新聞(朝刊 32ページ)において、「[定番巡り]府中味噌 浅野味噌 伝統の味 フリーズドライ=広島」の見出しの下、「仕込み後は、空気を入れて酵母を活性化させるため、『天地返し』というみその上下の入れ替えを一度だけ行う。」の記載がある。
(2)2011年4月22日付けの東京読売新聞(朝刊 32ページ)において、「[ほのぼの@タウン]4月22日=岩手」の見出しの下、「発酵が均一になるよう、夏の土用に1回だけ、上下を混ぜ合わせる『天地返し』を施す。」の記載がある。
(3)「作っておくと安心、便利 うちの常備菜と保存食」(どいちなつ著、PHP研究所、2019年)において、「味噌作り」の項に、「1カ月後 天地返し/1カ月ほど過ぎたら、みその上下を入れ替えるように混ぜる『天地返し』をします。」の記載がある。
(4)「手づくり手帳 vol.15 初冬号」(株式会社日本ヴォーグ社 2017年)において、「19 みそ」の項に、「仕込みが1?2月頭だった場合は、・・・きれいな手でみそをまぜて上下を入れ替える(天地返し)。」の記載がある。
(5)「仙台味噌醤油株式会社」のウェブサイトにおいて、「みそのちから」の見出しの下、「天地返し/タンクをひっくり返して中身を撹拌し、全体の品質を均一に、発酵熟成を促進させます。」の記載がある。
(http://www.sendaimiso.co.jp/power/wasabi/#wmapArea)
(6)「自然の恵みから、おいしさと健康を。MARUSAN」のウェブサイトにおいて、「カップタイプ(米みそ・こうじみそ)/信州筑北村醸造 匠 500g」の見出しの下、「二度の天地返しと低温熟成で香り高く仕上げています。」の記載がある。
(https://www.marusanai.co.jp/lineup/detail-12921/)
(7)「金元醸造」のウェブサイトにおいて、「杉樽仕込味噌 [750g]」の見出しの下、「商品詳細」の項に、「100年の杉樽で熟成させ天地返しをする事により味噌全体の発酵を促進させたお味噌です。」の記載がある。
(https://www.kanemoto.co.jp/product/6)

審理終結日 2019-08-20 
結審通知日 2019-08-23 
審決日 2019-09-03 
出願番号 商願2017-79415(T2017-79415) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 駒井 芳子 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 有水 玲子
小松 里美
商標の称呼 テンチガエシジコミ、テンチガエシ、シコミ 
代理人 伊藤 捷雄 

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