ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W3541 審判 全部申立て 登録を維持 W3541 審判 全部申立て 登録を維持 W3541 審判 全部申立て 登録を維持 W3541 審判 全部申立て 登録を維持 W3541 |
---|---|
管理番号 | 1363323 |
異議申立番号 | 異議2019-900296 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-10-15 |
確定日 | 2020-06-22 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6163208号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6163208号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6163208商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成30年6月15日に登録出願、第35類「事務用のりの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,事務用テープ刻字機の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,広告業」及び第41類「セミナーの企画・運営又は開催,技芸・スポーツ又は知識の教授,音楽の演奏,演芸の上演,演劇の演出又は上演,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を指定役務として、令和元年6月3日に登録査定、同年7月19日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録異議の申立ての理由において引用する国際登録第1162454号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2012年10月17日にFranceにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2013年(平成25年)3月15日に国際商標登録出願、第35類「Advertising; business management; business administration; arranging newspaper subscriptions (for others); arranging of telecommunication service subscriptions for others; presentation of goods on all communication media for retail sale; business management and organization consultancy;computerized file management; organization of exhibitions for commercial oradvertising purposes; wholesale services or retail services of beers, mineraland carbonated waters, fruit drinks and fruit juices, syrups and otherpreparations for making beverages, lemonades, fruit juices, soda water,non-alcoholic aperitifs, alcoholic beverages (exceptbeers), ciders, digestives (liqueurs and spirits), wines, spirits.」のほか、第14類、第32類、第33類及び第43類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務とし、平成26年9月12日に設定登録されたものである 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号に該当するから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号該当性について 本件商標と引用商標は、5本の矢印と矢羽をつなぐ直線が交差される態様からなる点で同一である。引用商標の構成中、5本の矢印と矢羽をつなぐ直線が交差される図形部分は、他の構成要素とは異なった色で目立つように表示されており、強く支配的な印象を与える部分である。したがって、たとえ、本件商標に「SAEKI JAPAN」の文字が配置されており、引用商標中央部には王冠状の図形が配置されているとしても、両商標の全体の構成と両商標から受ける印象は極めて類似しており、その類似性は相違点をはるかに凌駕する。 また、本件商標は、第35類「広告業」を指定役務とするところ、引用商標も第35類「Advertising」(広告)を指定役務としており、指定役務も類似する。 (2)商標第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の著名性 引用商標は、申立人の3つの「Chateaux」(前から3文字目の「a」には、アクサンシルコンフレックスが付されている。)シリーズのワインを除く全てのワインボトルに、単独で、かつ、目立つように付されている。その結果、引用商標を付したワインボトルに接した需要者・取引者は、引用商標が独立して出所標識となっていることを一見して理解し、感得することとなる。 引用商標が付されたワインボトルの写真は、例えば、雑誌(甲9、甲10)、新聞(甲11)、ブログ(甲12、甲13)、オンラインショップ(甲14、甲15)等に多数掲載されている。 引用商標が付されたワインの過去3年間の日本における売上高は、毎年、合計5億円以上である。引用商標が付されたワインが日本国内で販売されていることを示す請求書においても、引用商標は、申立人を示すものとして、単独で付されている(甲16)。 引用商標が付されたワインの中でも、とりわけ、日本で商標登録されている「ムートン・カデ」(MOUTON CADET)(甲17)は、外国ブランド権利者名簿にも掲載されている著名な商標である(甲18?甲20)。 引用商標は、申立人の直接の事業分野であるワインに関してのみならず、ワインと関わりのない一般の購読者を対象とした新聞やブログ等を通じて、一般の需要者に広く認識されている。引用商標が付されているワインは、日本における販売量の多さも考え合わせると、著名である。 実際、引用商標は、申立人を示すものとして、例えば、申立人とは直接の関係がない第三者のウェブサイト上に表示されており、引用商標は申立人のハウスマークとして認識されている(甲21?甲23)。 イ 混同のおそれ 本件商標は、上を向いた5本の矢を交差させる構成からなる商標である。この5本の矢の部分は、その部分のみ金色で表示されており、とりわけ需要者の注目を引くような態様で表示されている。一方で、引用商標も上を向いた5本の矢を交差させる構成からなる商標であり、申立人にとってのハウスマークとしての重要性及び日本における著名性にかんがみると、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれが高い。 そして、引用商標は、申立人のワインを示すものとして使用されており、ワインに関する広告やセミナーを企画・実施することも考えられるため、本件商標の指定役務と引用商標が使用される商品とは密接な関連性を有しているといえる。 したがって、「広告業」や「セミナーの企画・運営又は開催」といった役務における取引者・需要者が本件商標に接した場合は、本件商標に係る役務が、あたかも本件商標の登録出願前から現在まで継続して周知著名である申立人のブランドのものであるかのごとく、役務の出所について混同するおそれがあるか、あるいは、申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者による役務であると誤認した結果、役務の出所について混同するおそれがあるといわざるを得ない。そして、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある本件商標の登録を認めることは、商標を使用する者の業務上の信用を維持し、需要者の利益を保護することを目的とする商標法の趣旨に反する。 (3)商標法第4条第1項第7号該当性について 引用商標は、本件商標の登録出願前から現在まで、本国フランスのみならず、我が国を含む世界各国において周知、著名な状態にあり、世界的な周知著名性に基づく顧客吸引力という財産的価値のある引用商標と同一関係にある本件商標を自己の商標として採択使用することは商道徳に反するといわざるを得ない。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標 本件商標は、別掲1のとおり、大きく表された「SAEKI JAPAN」の欧文字の下に小さく「SAEKI JAPAN CORPORATION CO.,LTD」の欧文字を配し、これらの文字を貫くように、金色の5本の矢をその下部で束ね、矢先を上に向けて扇状に広げた図形を組み合わせた構成からなるものである。 そして、本件商標の構成中、大きく顕著に表された「SAEKI JAPAN」の文字部分は、本件商標の全体構成からすれば、外観上、最も強く看者の注意を引くものといえ、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであるから、本件商標から「SAEKI JAPAN」の文字部分を要部として抽出し、引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというのが相当である。 そこで、「SAEKI JAPAN」の文字部分についてみると、その構成文字に相応して、「サエキジャパン」の称呼を生じるものであるが、当該文字は辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないことからすれば、特定の観念を生じないものである。 また、その他に、本件商標を構成する図形部分が、特定の意味合いを有するものとして認識されているような事情は見いだせないものであるから、これより特定の称呼及び観念は生じないものである。 そうすると、本件商標は、その要部である「SAEKI JAPAN」の文字に相応して、「サエキジャパン」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 イ 引用商標 引用商標は、別掲2のとおり、王冠状の図形を中央に配し、上向きの5本の矢が当該王冠状の図形の中央部を中心として均等に交差した図形よりなるものである。 そして、引用商標は、その構成全体が一体的にまとまりよく表されており、いずれかの部分が看者の注意を強く引くというような事情も見いだせないことから、その構成全体をもって一体の図形を表したものとして認識されるというべきである。 また、引用商標は、その構成全体をもって、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情は見いだせないものであるから、特定の称呼、観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標は、上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ、本件商標は、その構成中に「SAEKI JAPAN」の文字を大きく顕著に表しているのに対し、引用商標は、王冠状の図形の上下に矢の図形を配した一体の図形のみよりなる構成であって、中央部分における明らかな差異を有するものであり、また、矢の色、矢の広げ方が相違していることに加え、矢の上部と下部の長さの比率において明らかな差異が生じ、印象の異なる商標として看取されるものである。 してみれば、両者は、外観において、明らかに区別できるものである。 そして、本件商標からは、「サエキジャパン」の称呼が生じるのに対し、引用商標からは、特定の称呼が生じないものであるから、称呼において、紛れるおそれはない。 さらに、本件商標及び引用商標は、特定の観念を生じないものであるから、観念において、比較することはできない。 そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、称呼において紛れるおそれはなく、外観において明らかに区別できるものであるから、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標とみるのが相当である。 エ 本件商標の指定役務と引用商標の指定役務との類否 引用商標の指定役務中には、本件商標の指定役務と同一又は類似の役務が包含されている。 オ 小括 以上のとおり、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が同一又は類似の役務であるとしても、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について 申立人の主張及び提出した証拠によれば、以下のとおりである。 ア 引用商標の周知著名性について (ア)申立人は、引用商標を、申立人の3つの「Chateaux」(前から3文字目の「a」には、アクサンシルコンフレックスが付されている。)シリーズのワインを除く全てのワインボトルに付していると主張し、雑誌やブログ紹介記事(甲9?甲13)を挙げている。 また、申立人が日本の取引者宛ての請求書と主張する書面の上部には、引用商標が表示されているが(甲16)、当該書面の翻訳は提出されていない。 (イ)申立人は、引用商標が付されたワインの過去3年間の日本における売上高は、合計5億円以上である旨主張している。 しかしながら、その裏付けとなる証拠は提出されていない。 (ウ)財団法人対日貿易投資交流促進協会(ミプロ)発行の「外国ブランド権利者名簿」(2010年3月)には、「MOUTON CADET(ムートン・カデ)」についての記載は認められるものの(甲18)、引用商標の表示はない。 また、「日本経済新聞」において、「ムートン・カデ・ルージュの発売」に関するプレスリリース(2017年8月25日)が掲載されているものの(甲19)、引用商標は確認できない。 (エ)申立人は、引用商標が第三者のウェブサイト上に表示され、申立人のハウスマークとして認識されている旨主張し、その根拠として、甲第21号証ないし甲第23号証を挙げているが、わずか3件のオンラインショップにおいて、引用商標と似通った画像が確認できるにすぎないものであることに加え、本件商標の登録出願後のもの(甲21)や引用商標とは相違する商標が表示されているもの(甲23)であることからすれば、かかる証拠をもって、引用商標が申立人のハウスマークとして認識されているということはできない。 (オ)上記からすると、我が国において、引用商標が付されたワインが販売されていることは認められるものの、我が国における当該ワインの市場シェア、販売高、宣伝広告の方法・範囲・回数等の宣伝広告の実績について客観的に把握することはできない。 そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係るワインを表すものとして、需要者の間に広く知られているものということはできない。 イ 本件商標と引用商標との類似性の程度について 本件商標と引用商標とは、上記(1)のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、両者の類似性の程度は高いものとはいえない。 ウ 本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品の関連性、需要者の共通性について 本件商標の指定役務と申立人の業務に係るワインとは、一般的に役務の提供を行う者と商品の製造・販売を行う者は、同一事業者ではなく、役務の提供場所と商品の販売場所やそれらの用途は明らかに相違するものであるから、本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品の関連性は低く、需要者の範囲も異なるものである。 なお、申立人は、ワインの広告やセミナーを企画・実施することも考えられる旨主張しているが、申立人が行うワインに関する広告等は、自己の業務に係る商品の販売促進のために行うものであり、他人のために業として行う広告業等の役務とは、明らかに相違するものである。 エ 引用商標がハウスマークであるかについて 申立人は、引用商標が申立人のハウスマークである旨主張しているが、上述のとおり、提出された証拠からは、引用商標が申立人のハウスマークであると認めることはできない。 オ 小括 上記アないしエのとおり、引用商標は、申立人の業務に係るワインを表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとはいえないものであり、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が高いとはいえない上、本件商標の指定役務と申立人の業務に係るワインとの関連性は低く、需要者の範囲も異なるものであって、申立人のハウスマークであると認めることもできないものである。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第7号該当性について 申立人は、世界的な周知著名性に基づく顧客吸引力という財産的価値のある引用商標と同一関係にある本件商標を自己の商標として採択使用することは商道徳に反する旨主張している。 しかしながら、引用商標は、上記のとおり、申立人の業務に係るワインを表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとはいうことはできないものであるから、本件商標は引用商標の周知著名性に基づく顧客吸引力にフリーライドするものということはできない。 また、本件商標と引用商標は、明らかに非類似の商標であることからすれば、商標権者が本件商標を採択使用することが、社会一般の道徳観念に反し、公正な取引秩序を乱すものということもできない。 加えて、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものでないこと明らかであり、さらに、申立人の提出した証拠からは、具体的に商標権者が申立人の事業を妨害している等、不正の目的があることを裏付ける事実を見いだすことはできないし、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠く等の事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第7号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
【別掲1】 本件商標(色彩については原本参照。) 【別掲2】 引用商標 |
異議決定日 | 2020-06-11 |
出願番号 | 商願2018-79199(T2018-79199) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W3541)
T 1 651・ 262- Y (W3541) T 1 651・ 261- Y (W3541) T 1 651・ 263- Y (W3541) T 1 651・ 22- Y (W3541) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 守屋 友宏、澤藤 ことは |
特許庁審判長 |
山田 正樹 |
特許庁審判官 |
鈴木 雅也 冨澤 美加 |
登録日 | 2019-07-19 |
登録番号 | 商標登録第6163208号(T6163208) |
権利者 | 株式会社サエキジャパン |
商標の称呼 | サエキジャパンコーポレーションカンパニーリミテッド、サエキジャパンコーポレーション、サエキジャパン、サエキ |
代理人 | 外川 奈美 |
代理人 | 田島 壽 |
代理人 | 青木 篤 |