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審決分類 審判 一部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W3637
管理番号 1362510 
審判番号 無効2018-890001 
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-12-27 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5890540号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成30年8月31日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成30年(行ケ)第10143号,平成31年 2月27日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 登録第5890540号の指定役務中,第36類「建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介」及び第37類「建設工事,建築工事に関する助言」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5890540号商標(以下「本件商標」という。)は,「LOG」の欧文字を標準文字で表してなり,平成28年5月18日に登録出願,第36類「建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介」及び第37類「建設工事,建築工事に関する助言」(以下,併せて「本件役務」という。)を含む第36類及び第37類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として,同28年10月7日に登録査定され,同月21日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第297号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中,本件役務について商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号により,その登録は無効とされるべきである。
2 具体的な理由
(1)商標法第3条第1項第3号の趣旨
本号は,その役務の提供の用に供する物,その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録の要件を欠く旨規定している。商標法がこのように定めているのは,上記のような商標は,役務の提供の用に供する物その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人による独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによると解される。
そこで,この見地に立って本件商標について検討する。
(2)「LOG」の語意
本件商標は,標準文字で「LOG」と書してなるものであり,「log」を大文字で表したものであって,これより「ログ」の称呼を生ずる。
ア 辞書類の記載
各種の辞書類において,「log」及び「ログ」の語について,「丸太」「木を伐採する,丸太を切り出す。」「丸太で作った」「木を切って丸太にする」「丸木」「丸材」「ログキャビンを意味する。」などと記載されている(甲3?甲12)。また,「ログ キャビン(log cabin)」について「丸太小屋」,「ログ ビルディング(log building)」について「丸太を用いて家作りをすること」「丸太を組み立てて家を作ること。略してログビル。」,「ログハウス(log house)」について「丸太で作った家。」などと記載されている(甲9?甲11)。
イ 当業界における使用の実態
「log」の片仮名表記である「ログ」の文字及びその派生語は,例えば次のような雑誌の記事や広告媒体などにおいても広く使用されている。
平成2年(1990年)発行の雑誌臨時増刊号「夢の丸太小屋に暮らす」は「あなたのログハウスづくりを応援する雑誌」と題され,「私たちのログハウス選び」「そこが知りたいログハウス」などの文字が表紙に表示され,「ログハウス」が「丸太小屋」と同義で使用されている。また,記事や広告の中に「ログビルダー」「ログワーク」「ログサイト」「ログスクール」「ログビルディング」といった用語が,それぞれ「丸太を用いた建築家」「丸太を用いた加工又は工事」「丸太を加工して組立セットを作る場所」「丸太を用いて家を建設すること」といった意味合いで使用され,「ログ」の語が「丸太材」の意味で使われていることが明らかである(甲13)。
平成14年(2002年)発行の「ログハウスメーカーズ最新ガイド」は「本物だけにこだわるログハウス専門誌」とうたった雑誌で,ログハウスの建設をする業者が「ログメーカー」と記述され,使用する断面が楕円の丸太材を「楕円口グ」と呼んでおり,裏表紙の広告においても「安くて安心のログで始めよう」とのコピーが見られる(甲14)。
その他,近年に至っても「ログ」の語は同様の意味,態様で,多くの文献において用いられている。
ウ 審決例
平成4年審判14421号の審決において,「ログ」の文字は,「丸太,丸木」を意味する外来語であり,その指定商品の建造物組立セットに使用するときは,その商品が「丸太作り」であることを認識させるとみるのが相当であるとして,「フリージアログホーム」からなる引用商標は「丸太作りのフリージアホーム」の意を観念させる旨の判断がなされている(甲15)。
エ 「log」及び「ログ」という語の認識についてのまとめ
このように,「log」及びその片仮名表記である「ログ」の語は,「丸太,丸木,丸太材」等を意味するものとして,古くから使用され認識されている。
(3)請求に係る指定役務との関係
本件請求に係る指定役務は,いずれも建物が役務提供の対象に含まれており,丸太ないし丸太材を用いてする建設工事,丸太材を用いる建築工事についての助言,そして,そのようにして建築された建物を貸与し売買する行為などが含まれる。
(4)小括
以上述べたところから,英語の「log」及びこれを片仮名で表してなる「ログ」の文字は,古くより,建設工事に携わる専門家はもとより,一般消費者においても,それ自体「丸太,丸木」を直観させるものであり,さらには「ログキャビン」(丸太小屋),「ログビルディング」(丸太を用いて家を建設すること)といったような派生語の一部としても広く用いられ,馴染まれているということができる。
「LOG」の文字は,これを大文字で表記したにすぎず,本件請求に係る指定役務との関係において,役務提供に際して用いられる材料,工法等が丸太材を用いてなされたものであること,又は,そのようにして作られた建物が丸太材を用いたものであること,さらには,そのような建物を売買,貸与等の取引の対象としていることなどを認識させるにすぎない。また,それら以外の役務については,役務の質について誤認を生じさせるおそれがあることは明らかである。
よって,本件商標は,その登録査定時には商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。
3 請求適格
請求人は,ログハウスなどの建設,販売に従事する法人であり,その役務提供に際して「LOG」やその片仮名表示である「ログ」の表示を使用する必要があるところ,本件商標の存在により不当な制約を受けるおそれがある。
したがって,本件請求により無効を求めることについて利害関係がある。
4 答弁に対する弁駁(平成30年6月11日付け)
(1)本件商標について
被請求人は,本件商標がアルファベットの大文字3字で表されることが一つの外観上の特徴であると述べ,本件商標とは異なる小文字の「log」から,その称呼,さらには観念を認定しているなどと主張している。
しかし,アルファベットは,一般に適宜大文字,小文字の間で変更して使用されるものであり,被請求人の自社ウェブページにおいても,「Log Series」,「Log Komagome」,「Logシリーズ」,「Log Ryogoku」といった「LOG」と「log」を併用した例が見られるし,逆に「CONTACT」,「ABOUT」,「BUSINESS」,「OWNER’S VOICE」,「GO TO SPECIAL SITE」などといったウェブページのリンクの記述に大文字が使われている(乙5)。このような事情からみても,本件商標がすべて大文字で表されていることに取引標識として格別の意義を見いだすことはできない。
また,被請求人は,請求人が,本件商標「LOG」は,あたかも一義的に「丸太」の意味しか生じないかのような主張を展開していると非難する。しかし,請求人はそのような主張をしているわけではなく,本件請求に係る指定役務との関係においては,なかんずく「丸太,丸太材」を認識させると懸念するものである。被請求人は「対数(logarithm)」とかIT用語を観念させるなどと述べるが,これらはいずれも本件指定役務とは関連がない。
さらに,被請求人は,本件商標のブランドコンセプトについて述べるところがあるが,被請求人の主観的事情にすぎず,商標が有する取引上の評価は客観的になされるべきものである。
(2)本件請求に係る指定役務における取引事情について
被請求人は,情報データベースでの検索結果において,ヒット件数がごく僅かであったなどと述べている。
しかしながら,このような調査及びその結果自体,請求に係る指定役務に関して,何ら具体的な取引事情に言及したものではない。
そもそも,この検索はキーワード「LOG」をAND条件の一つとしたもので,本件商標が,一般に英語の「log」を大文字で表したものと認識され,特に請求に係る指定役務との関係で「丸太,丸材」を直観させる「ログ」と同一性あるものと認識させることを無視したもので,前提が誤っているというべきである。
(3)むすび
その他,被請求人は縷々述べるが,本件商標が,本件請求に係る指定役務における取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人による独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることを否定するものではない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,答弁の理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標について
(1)本件商標の外観・称呼
商標法第2条第5項及び同法第27条第1項によれば,登録商標は,願書に記載された商標により判断されることが前提となるところ,本件商標は,アルファベットの大文字「L」と「O」と「G」の3文字からなる商標であり,アルファベットの大文字3文字で表されることが一つの外観上の特徴である。また,「LOG」から生じる自然の称呼は,「ログ」若しくは「エルオオジイ」であると理解されるべきである。
この点,請求人は,本件商標の称呼を「ログ」のみに限定して解釈しているが,アルファベットの大文字3文字からなる商標は,いわゆる「三文字頭字語」(乙1)として認識されることも多く,その場合の称呼は,アルファベットの大文字3文字を一字ずつそのまま読むことが通例であるから,本件商標は,「ログ」若しくは「エルオオジイ」と称呼されると考えるのが自然である。
また,本件商標は,アルファベット大文字「LOG」に対し,登録の可否判断がなされ商標権が付与されたのであって,本件商標の認定において,登録商標とは異なる小文字の「log」から,その称呼,さらには観念を認定し,本件商標の無効理由の存否を主張する請求人の主張自体がそもそも失当である。
(2)本件商標の観念
ア 本件商標の自然発生称呼は「ログ」若しくは「エルオオジイ」であるが,「エルオオジイ」と称呼される場合,本件商標は特段の意味観念が生じるものではない。
一方,「ログ」と称呼された場合であっても,後述のとおり「ログ」と称される語は,複数の意味を有する多義語であり,その観念を「丸太」に限定すべき特段の事情はない。
実際,請求人提出の証拠(甲3?甲12)においても,「log」は,「丸太」以外に「記録」「航海記録」「対数」「測程器」等の意味を有する語として必ず「丸太」以外の意味が併記されており,多義語であることは疑いない事実である。
また,「コンサイスABC略語辞典」(乙2)において,「log」の語は,「対数(logarithm)」を指し示す略語と記載されている。そして,「過去ログ」「データログ」「ログをみる」「ログイン」「ログアウト」などの用語に代表されるように,近年,「ログ」という称呼から生じる観念は,「丸太」よりも,むしろ「起こった出来事についての情報などを一定の形式で時系列に記録・蓄積したデータ」を指し示すIT用語(乙3)を観念させる言葉として認識されるものであり,少なくとも「ログ」の称呼から,一義的に「丸太,丸木」の観念のみが生じるとの請求人の主張は失当といわざるを得ない。
イ 被請求人は,不動産コンサルティング(不動産投資・建築企画等),リスクマネジメント(プロパティマネジメント)等をその事業の中核とする企業であり,本件商標は,その不動産事業の一つにおいて使用されるものである(乙4)。
本件商標のブランドコンセプトは,「大航海時代の船の航海における計測器」を語源として選定されたのであって,決して「丸太」を意識してネーミングされたものではなく,都会的かつスタイリッシュな「コンパクトマンション」に使用されるものであって,建築材料としての「丸太」や工法としての「ログハウス」を想起するようなデザインコンセプトを有していないことは明らかである(乙5)。
したがって,本件商標「LOG」はその材料・工法を想起させるものであるとの請求人の主張には,到底承服することはできない。
2 本件請求に係る指定役務における取引実情について
工業所有権法逐条解説によると,商標法第3条第1項第3号に該当する商標は,「通常,商品又は役務を流通過程又は取引過程に置く場合に必要な表示であるから何人も使用をする必要があり,かつ,何人もその使用を欲するものだから一私人に独占を認めるのは妥当ではなく,また,多くの場合にすでに一般的に使用がされあるいは将来必ず一般的に使用がされるものであるから,これらのものに自他商品又は自他役務の識別力を認めることはできないという理由による。」と説明されている。
そこで,被請求人は,我が国最大級の情報データベース「日経テレコン21」において,本件請求に係る指定役務と密接不可分のキーワード「建設」「建物」「ハウス」と本件商標「LOG」を掛け合わせて検索し,請求人が主張するように,本件商標が本件請求に係る指定役務との関係において,自他役務の識別力を欠くものであるか,その取引の実情を調査した。
しかし,膨大な情報量であるにもかかわらず,次のとおり,そのヒット件数はごく僅かであった(乙6?乙8)。
ア 「LOG」及び「建設」:13件(重複記事は除く。乙6)
イ 「LOG」及び「建物」:16件(重複記事は除く。乙7)
ウ 「LOG」及び「ハウス」:8件(重複記事は除く。乙8)
特に,上記ウは,請求人が殊更に主張する「ログハウス」の上位概念「ハウス」と本件商標「LOG」を掛け合わせた検出結果であるが,ヒット件数はたった8件(重複記事は除く)である。
しかも,その8件でさえも,本件請求に係る指定役務との関係において,自他役務の識別力を欠く態様で使用されているものではなく,例えば,ソフトウェアデータとの関係で使用される事例や,そもそも全く無関係のものが大半であり,請求人が主張する当業界における使用実態とは相反する調査結果であり,取引の実情において,本件商標が本件請求に係る指定役務との関係で識別力を欠く情況であるとはとてもいい難い(乙9)。
さらに,請求人は,「『ログ・キャビン(log cabin)』について『丸太小屋。ログは『丸太』の意。』,『ログハウス(log house)』につき『丸太で作った家。』などと記載されている」旨主張するが,これらの記載が意味するところは「ログ・キャビン(log cabin)」,「ログハウス(log house)」として使用する場合において,「ログは『丸太』の意。」と解されることを説明しているにすぎず,「log」が一義的に「丸太」を意味することを指し示すものではない。
まして,本件商標は,小文字の「log」ではなく,大文字の「LOG」であることを鑑みれば,本件商標が本件請求に係る指定役務との関係において,自他役務の識別力を有さない商標であるとの主張はあまりに偏った見識による結論といわざるを得ない。
なお,本件請求に係る指定役務は「建物の売買,建設工事」等であり,役務の提供に係る対象物について需要者が普通に払う注意力は総じて高くなるといった取引実情が存在する。そのため,本件商標に接した需要者がその役務の質を誤認するおそれはない。
3 審決例「平成4年審判14421号」について
当該審決は,旧第7類の指定商品「建造物組立セット」に関する審決であり,また,審判請求に係る商標の構成文字中に「ログハウス(log house)」の同義語である「ログホーム(log home)」が含まれることから,「ログ」の文字を「丸太,丸木」の意と解したとしても,特段不自然さはなく,本件商標とは明らかに事案を異にするものである。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標は,本件請求に係る指定役務との関係において,独占適応性に欠く商標ではなく,本件請求に係る指定役務以外の指定役務に使用したとしても,その役務の質について誤認を生じさせるおそれはない。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものではない。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)商標法第3条第1項第3号について
商標登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号にいう「役務の・・・質,提供の用に供する物・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには,需要者又は取引者によって,当該商標が,当該指定役務の質又は提供の用に供する物を表示するものであろうと一般に認識され得ることをもって足りるというべきである。
そこで,本件商標の査定時において,本件商標が,本件役務の需要者又は取引者によって,本件役務の質又は提供の用に供する物を表示するものであろうと一般に認識され得るか否かについて検討する。
(2)「LOG」の使用状況
ア 役務の主体を表示するものとしての使用
証拠(各項末尾掲載のもの)によれば,本件商標の査定日以前において,次のとおり,役務を提供する主体の名称の一部に,「LOG」が使用されていたことが認められる。
(ア)ログハウス,ログキャビンなどの丸太で構成される建物ないし丸太風の壁材で構成される建物(以下「丸太で構成される建物等」ということがある。)の設計をする会社が,自社を紹介するために,「LOG HEART’S KURODA」,「NAGANO LOG HOUSE」との表示を使用している(甲26,甲186)。
(イ)丸太で構成される建物等の建築会社が,自社を紹介するために,「MUTSUMI LOG CABIN」,「LOGRAF」,「LOGK10」,「ANA-LOG」,「LOG TRUST」との表示を使用している(甲32,甲42,甲55,甲58,甲186,甲243の6,甲249)。
(ウ)丸太で構成される建物等の販売会社が,自社を紹介するために,「LOG TRUST」,「LOG HEY」,「ScanD LOG」,「WHITE BIRD LOG HOUSE」との表示を使用している(甲27,甲39,甲170,甲183)。
イ 役務の客体を表示するものとしての使用
証拠(各項末尾掲載のもの)によれば,本件商標の査定日以前において,次のとおり,役務の提供の用に供する物の名称の一部に,「LOG」が使用されていたことが認められる。
(ア)丸太で構成される建物からなる宿泊施設名につき,「LOGHOTEL THE MAPLELODGE」,「LOG COTTAGE TOMATO」と表示され,丸太風の壁材で構成される賃貸物件の名称につき,「F-LOG エフログ 幹」と表示されている(甲67,甲111の1,甲269)。
(イ)丸太で構成される建物を紹介する書籍の名称につき,「LOG HOUSE MAGAZINE」と表示されている(甲170?甲172)。
(ウ)丸太で構成される建物のブランド名につき,「G-LOG」,「COUNTRY LOG HOUSE」,「FINECUT LOG HOUSE」,「WEEKEND LOG HOUSE」,「ECO・LOG」と表示されている(甲200,甲203,甲204,甲251,甲255,甲258)。
(エ)丸太で構成される建物からなる施設名につき,「LOG ROAD DAIKANYAMA」と表示されている(甲245の1,甲253)。
ウ 複合語としての使用
証拠(各項末尾掲載のもの)によれば,本件商標の査定日以前において,次のとおり,「LOG」が他の言語と組み合わさって,使用されていたことが認められる。
(ア)雑誌に,丸太で構成される建物について,「LOG HOUSE」と表示されている(甲186,甲188,甲192)。
(イ)雑誌に,丸太で構成される小さな建物について,「MINI LOG」,「LOGの小屋」と表示されている(甲180,甲183,甲185,甲202)。
(ウ)雑誌に,丸太で構成される外国に所在する古い建物について,「THIS OLD LOG」と表示されている(甲170)。
(エ)雑誌に,丸太で構成される建物の組立材料について,「LOG KIT」と表示されている(甲180)。
(オ)雑誌に,丸太で構成される建物における生活様式について,「LOG LIFE」と表示されている(甲186,甲200)。
(カ)雑誌に,丸太で構成される建物の画像及び「ゆっくりとした時間が流れます」の文字とともに,「SLOW LOG LIFE」と表示されている(甲195)。
エ 単独使用
証拠(甲179)によれば,本件役務に関する分野において,本件商標の査定日以前において,丸太風の壁材で構成される建物に関するものであることを表示するために,「LOG」のみが単独で使用されていたことが認められる。
オ 以上によれば,本件役務に関する分野では,本件商標の査定日以前において,役務の提供の用に供する物の内容について,それが丸太で構成される建物等であることを表示するために,その役務の主体や客体の名称の一部に,「LOG」が数多く使用されるとともに,丸太で構成される建物等に関するものであることを表示するために,「LOG」が他の単語と組み合わさって又は単独で,数多く使用されていたということができる。
(3)「Log」「log」の使用状況
ア 本件商標との相違
「LOG」と「Log」「log」とは,大文字の欧文字で表記されているか,小文字の欧文字で表記されているかの相違しかなく,同一の称呼及び観念を生じ,社会通念上同一の商標と認められる。
なお,「LOG」は大文字の欧文字であるから,被請求人が主張するように,単語の頭文字を並べる略語であると認識され得るものである。しかし,本件役務の需要者又は取引者において,「LOG」がどのような意味を示す略語であるかを示す証拠はない。したがって,本件役務の需要者又は取引者が,「LOG」をもって,「Log」「log」とは全く異なる意味を有すると認識することはないというべきである。
イ 役務の主体を表示するものとしての使用
証拠(各項末尾掲載のもの)によれば,本件商標の査定日以前において,次のとおり,役務を提供する主体の名称の一部に,「Log」「log」が使用されていたことが認められる。
(ア)丸太で構成される建物等の設計をする会社が,自社を紹介するために,「Deer Log Homes」との表示を使用している(甲18)。
(イ)丸太で構成される建物等の建築会社が,自社を紹介するために,「kitakaruizawa logkobo」,「YOUNG LEAVES Log Home」,「ISHINO Log-Craft CLUB」,「Log & Country」,「Boot Camp LogBase Yonehara」,「Highland Log Builders LTD.」,「Canadian Walden Log House」,「Log Cabin Homes社」との表示を使用している(甲33,甲37,甲48,甲170,甲172,甲187,甲193,甲252)。
(ウ)丸太で構成される建物等の販売会社が,自社を紹介するために,「Canadian Log Building」,「herb&log Suomi」との表示を使用している(甲23,甲54)。
ウ 役務の客体を表示するものとしての使用
証拠(各項末尾掲載のもの)によれば,本件商標の査定日以前において,次のとおり,役務の提供の用に供する物の名称の一部に,「Log」「log」が使用されていたことが認められる。
(ア)丸太で構成される建物からなる宿泊施設名につき,「Rental Log Cottage West Village」と表示されている(甲124)。
(イ)丸太で構成される建物等を紹介する書籍の名称につき,「Log Home」,「Log&Living」と表示されている(甲167,甲257)。
(ウ)丸太で構成される建物のブランド名につき,「Finland Modern Log」,「e-log」,「e-Log」と表示されている(甲189,甲247,甲256)。
エ 複合語としての使用
証拠(甲195)によれば,本件商標の査定日以前において,雑誌に,丸太で構成される建物等における生活様式について,「Log&Living」と表示されていたことが認められる。
オ 以上によれば,本件役務に関する分野では,本件商標の査定日以前において,役務の提供の用に供する物の内容について,それが丸太で構成される建物等であることを表示するために,その役務の主体や客体の名称の一部に,「LOG」と社会通念上同一と認められる「Log」「log」が数多く使用されるとともに,丸太で構成される建物等に関するものであることを表示するために,「Log」が他の単語と組み合わさって使用されていたということができる。
(4)「ログ」の使用状況
ア 本件商標との相違
「LOG」は,通常の欧文字の読み方に基づけば,「エルオオジイ」,「ログ」と称呼されるものである。したがって,本件役務の需要者又は取引者は,「LOG」から比較的容易に「ログ」を想起するものというべきである。
イ 役務の主体を表示するものとしての使用
証拠(甲19,甲28?甲30,甲34,甲40,甲41,甲44?甲46,甲61?甲66,甲167,甲168,甲170,甲171,甲175,甲181,甲183,甲184,甲186?甲190,甲193,甲196,甲266,甲268)によれば,本件商標の査定日以前において,丸太で構成される建物等の設計・建築・販売をする会社が,自社を紹介するため,下記のとおり,その名称の一部に,「ログ」を使用していたことが認められる。

ノースランド・ログホームズ,MYログ工房,ウチダ・ログ・ビルディング,スクウェア ログ ホームズ,ノーザンライトログホームズ,ログ工房とっとの森株式会社,ログ飯綱,信州ログアーツ,アックスログホームズ,ログクラフト事業協同組合,小田森林ログハウジング,カントリーフィールドログホームズ,蜂の巣ログハウジング,ログ工房 EL CAMPO,ログキャビン劍,ハートランド・ログ,ディー・ファー・ログホーム三都建設,香取ログ,アイビーログ工房,大建ログハウス住宅事業部,ディア・ログホームズ,日田ログハウジング協同組合,長野ログハウス建築設計,ベスト・ログ研究所,ログラフ,ウエスタンログホーム,ケンジーログ工房,ログハウスK2,ログキャビン・ヨールマー,ハーブ&ログ スオミ,ログ・トラスト,ハンドメイドログワークス,グループログ,白川ログハウス,春野ログホーム,BCログホーム,ログ工房ノーム,パシフィックログホームズ,キートス ログハウス事業部,B・アラン・マッキー・スクール・オブ・ログビルディング,カモノセ ログ,ベストログ研究所,国際ログビルダーズ協会,ハルナログ工房,七山ログ研究会
ウ 役務の客体を表示するものとしての使用
証拠(甲69,甲98の1,甲109,甲115の2,甲121の2,甲123,甲165,甲170,甲189,甲243の4,甲244の1)によれば,本件商標の査定日以前において,下記のとおり,丸太で構成される建物等からなる宿泊施設・ブランド・施設の名称の一部に,「ログ」が使用されていたことが認められる。

ニセコ・フリージアログヴィレッジ,道のログ宿 木こりん,ペンション&ログコテージあるむ,ログコテージ エポック,コテージイン ログキャビン,ログペンション 秋岡屋,ログの宿たか木,ログ ベアー,信玄ログ,ログロード代官山
エ 複合語としての使用
証拠(甲13,甲14,甲156?甲196,甲198?甲200,甲202?甲206,甲209,甲211,甲213?甲216,甲222,甲233,甲261,甲263,甲265?甲267,甲275)によれば,本件商標の査定日以前において,下記のとおり,丸太で構成される建物等に関するものであることを表示するために,「ログ」が他の言語と組み合わさって,使用されていたことが認められる。

ログホーム,ログハウス,ログ小屋,ログキャビン,ログコテージ,ログバンガロー,ログホテル,ログオフィス,ログ風ガレージ,テーマパーク風ログ,高床式ログ,ログメーカー,ログ施工会社,ログ会社,ログビルディング,ログビルダー,ログスクール,ログビルディングスクール,ログ業界,ログ事業,ログ原産国,輸入ログ,カナディアンログ,フィンランドログ,アメリカンログ,エストニアログ,中国ログ,ログ材,ログ形状,角ログ,角型ログ,スクエアログ,丸ログ,八角ログ,D型ログ,タイコ型ログ,楕円ログ,角集成ログ,板ログ,ログ面,フィラーログ,中空ログ,パワーログ,ログシェル,ログ壁,ログウォール,ログ壁量,ログ調パネル,土台ログ,ラミネートログ,ノンセントリングログ,ハンドカットログ,マシンカットログ,ハンドメイドログ,ファインカット・ログ,Fログ,ログサイズ,ログ組み,ログ積み,ログエンド,ログキット,BSログオイル,ログ間,断熱ログ,桧ログ,ログ風,ログ幅,ログ木口,ログカウンター,ログ手摺,ログ階段,ログ框,ログジョイント,ログワーク,シルログ,ハーフログ,キャップログ,コードログ,プレートログ,丸太ログ,トラスログ,ログワークテクニック,ログアート,ログ搬入,ログ工法,注文ログ,格安ログ,高級ログ,新築ログ,リゾート・ログ,低価格ログ,Newログ,オールドログ,ミニログ,ミニチュアログ,ログサイト,ログ専科,ログ建築,ダブデイル・ログ,ログヤード,ログ実績,ミニログ,住宅ログ,ログ住宅,ログ棟,総ログ,ログ建設,ログ造り,フルログ,ログ工場,ログ生活,ログライフ,ログプラン,ログファン,ログ通,ログオーナー,ログマガ,ログ暮らし,ログ日記,エコログ,海ログ,山ログ,ログ談義,ログ好き,アマチュア・ログ,自作派ログ,アンチログ,ログフリーク
オ 以上によれば,本件役務に関する分野では,本件商標の査定日以前において,役務の提供の用に供する物の内容について,それが丸太で構成される建物等であることを表示するために,その役務の主体や客体の名称の一部に,「LOG」から比較的容易に想起される「ログ」が数多く使用されるとともに,丸太で構成される建物等に関するものであることを表示するために,「ログ」が他の単語と組み合わさって数多く使用されていたということができる。
(5)需要者又は取引者の認識
以上のとおり,本件役務に関する分野では,本件商標の査定日以前において,役務の提供の用に供する物の内容について,それが丸太で構成される建物又は丸太風の壁材で構成される建物であることを表示するために,その役務の主体や客体の名称の一部に,「LOG」や,「LOG」と社会通念上同一と認められる「Log」及び「log」並びに「LOG」から比較的容易に想起される「ログ」が数多く使用されるとともに,丸太で構成される建物等に関するものであることを表示するために,「LOG」,「Log」,「log」及び「ログ」が他の単語と組み合わさって又は単独で,数多く使用されていたものである。
そうすると,本件商標の査定時において,「LOG」は,本件役務の提供の用に供する建物の種別について,ログハウス,ログキャビンなどの丸太で構成される建物又は丸太風の壁材で構成される建物という一定の内容であることを,本件役務の需要者又は取引者に明らかに認識させるものということができる。
したがって,本件商標は,その査定時において,本件役務の需要者又は取引者によって,本件役務の質又は提供の用に供する物を表示するものであろうと一般に認識され得るというべきである。
(6)被請求人の主張について
ア 使用時期
被請求人は,本件商標の使用状況を示すインターネットサイトや雑誌等(甲17?甲155,甲197,甲201,甲210,甲212,甲217?甲221,甲223,甲224,甲227?甲232,甲254,甲269?甲274)は,本件商標の査定日より後に作成等されたものである,又はその作成等の時期が明らかでない旨主張する。
しかし,上記(2)ないし(4)において認定に供した証拠(インターネットサイト,雑誌等)は,いずれも本件商標の査定日以前に作成されたもの又は本件商標の査定日以前の事実について記載されたものであり,これら証拠の記載によれば,上記(2)ないし(4)で認定した各事実を認めることができる。
イ 「LOG」の意義
(ア)被請求人は,一般に,また本件役務の分野においても,「LOG」は,造語ないし多義語として実際に使用されているなどと主張する。
(イ)まず,英単語の「LOG」の辞書的な意味は,「丸太」のほかにも,「記録」,「航海日誌」,「対数」,「計測器」,「コンピュータの利用状況や通信の記録」などがあると認められ(甲3?甲12,乙2,乙3),近年では「コンピュータの利用状況や通信の記録」に関連することを示す複合語として「ログイン」,「ログアウト」,「過去ログ」などの用語が一般的であるといえる。
しかし,本件役務とは無関係な分野における「LOG」の意義や使用状況は,「LOG」が,本件役務の需要者又は取引者に,本件役務によって提供される建物の種別について一定の内容を認識させるか否かという認定・判断に影響を与えるものではない。
(ウ)また,本件役務に関する分野において,建物のブランド名につき,計測器という意義で「LOG」と表示する例(乙5)が認められる。
もっとも,上記例について,本件商標の査定時にも当該表示がされていたかについて明らかではない。この点をおくとしても,本件役務に関する分野において,「LOG」などが,丸太で構成される建物等とは異なる内容であることを示すために使用されている事実はわずかにすぎないのに対し,上記(2)ないし(4)で認定したとおり,丸太で構成される建物等という一定の内容を示すために使用されている事実は極めて多数に及ぶ。そうすると,上記の事実は,「LOG」が,本件役務によって提供される建物の種別について,丸太で構成される建物等という一定の内容を示しているであろうという,需要者又は取引者の認識に異なる認識を与えるものではないというべきである。
(エ)したがって,一般に,また本件役務の分野において,「LOG」が造語ないし多義語として実際に使用されているとの被請求人の上記主張は,結論に影響するものではない。
ウ 「丸太」を想起する過程
被請求人は,「LOG」が「丸太」の意味を認識させるのは,「ハウス」といった特定の言葉と結合し,あるいは関連付けられた場合のみであり,「LOG」から「丸太」の意味が一義的に想起されるものではないなどと主張する。
しかし,本件役務の提供の用に供する物は建物それ自体であり,かつ,上記(2)ないし(4)で認定したとおり,本件役務の分野において,「LOG」,「ログ」などが,丸太で構成される建物等と関連付けられて使用されている事実は多数に及ぶものである。そうすると,「LOG」が建物に関する単語と結合し,又は建物に関連付けられているか否かにかかわらず,「LOG」自体が,本件役務によって提供される建物の種別について,丸太で構成される建物等という一定の内容を示しているであろうと需要者又は取引者に明らかに認識させるというべきである。たとえ,「LOG」が,建物に関する単語と結合し,又は建物に関連付けられることで,丸太で構成される建物等を想起させることがあったとしても,「LOG」のみからも,本件役務によって提供される建物の種別について,本件役務の需要者又は取引者に一定の内容を想起させるものである。
したがって,「LOG」から「丸太」の意味が一義的に想起されないなどの被請求人の上記主張は,結論に影響するものではない。
(7)小括
このように,本件商標の査定時において,「LOG」は,本件役務の提供の用に供する建物の種別について,ログハウス,ログキャビンなどの丸太で構成される建物又は丸太風の壁材で構成される建物という一定の内容であることを,本件役務の需要者又は取引者に明らかに認識させるものということができる。したがって,本件商標は,その査定時において,本件役務の需要者又は取引者によって,本件役務の質又は提供の用に供する物を表示するものであろうと一般に認識され得る。
よって,「LOG」は本件役務の質又は提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示するものというべきであるから,「LOG」のみからなる本件商標は,本件役務との関係において,商標法第3条第1項第3号に該当するものと認められる。
2 むすび
以上のとおり,本件商標は,その指定役務中の第36類「建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介」及び第37類「建設工事,建築工事に関する助言」についての登録は,商標法第3条第1項第3号に違反してされたものであるから,同法第46条第1項の規定により無効とすべきである。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2020-03-10 
結審通知日 2020-03-11 
審決日 2020-03-24 
出願番号 商願2016-53966(T2016-53966) 
審決分類 T 1 12・ 13- Z (W3637)
最終処分 成立  
前審関与審査官 堀内 真一 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 金子 尚人
石塚 利恵
登録日 2016-10-21 
登録番号 商標登録第5890540号(T5890540) 
商標の称呼 ログ、エルオオジイ 
代理人 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所 
代理人 森川 正仁 
代理人 神蔵 初夏子 
代理人 柳生 征男 
代理人 鈴木 薫 
代理人 中田 和博 
代理人 片山 礼介 
代理人 富所 英子 
代理人 青島 恵美 
代理人 青木 博通 

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