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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W29
管理番号 1362500 
審判番号 不服2019-6144 
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-13 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 商願2017-149605拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「端島軍鶏」の文字と「軍鶏」の文字の下部に「シャモ」の文字を配し,普通に用いられる方法をもって書した構成からなるものであって,第29類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成29年11月14日に登録出願され,その後,本願の指定商品については,原審において,平成30年9月19日付け手続補正書により,第29類「軍鶏の鶏肉,軍鶏と他品種の交配種または軍鶏と他品種の雑種の鶏肉,軍鶏の鶏肉を原料とする肉製品,軍鶏と他品種の交配種または軍鶏と他品種の雑種の鶏肉を原料とする肉製品」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は,「『端島』が長崎県の著名な観光地の一つとして知られている現在,本願商標をその指定商品に使用した場合には,これに接する取引者,需要者は,当該商品が『端島及びその周辺地域で生産又は販売された商品』程の意味合いを認識するにすぎず,単に商品の産地,販売地,品質を普通に用いられる方法で表したものと認識するにとどまるから,本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し,さらに,上記意味合いに照応する商品以外の商品に使用するときは,商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから,本願商標は商標法第4条第1項第16号にも該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審における審尋及びこれに対する意見
1 審判長は,令和2年1月8日付けで別掲1?3に係る証拠を示した上で,本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する旨の審尋をし,期間を指定して,これに対する意見を求めた。
2 上記1の審尋に対し,請求人は,令和2年1月21日付け意見書を提出し,要旨以下のとおり意見を述べた。
「端島」を認識している人々すなわち「端島」を周知している人々は,「端島」が無人島であることをしっかりと理解しているはずであり,したがって,「端島」で「軍鶏」を生産できないことや「端島」に売店等が存在しないことを常識として理解するはずである。別掲1に示された証拠からは,「端島」が現在無人島であるということが理解され,これらは,「端島」を認識する人々が,「端島」が「軍鶏」を生産し,あるいは販売している島ではないことを理解していることの証左となる。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)本願商標は,上記第1のとおり,「端島軍鶏」の文字と「軍鶏」の文字の下部に「シャモ」の文字を配し,普通に用いられる方法をもって書した構成からなるものであって,「端島」の文字と「軍鶏」及びその読みを表したものと理解される「シャモ」の文字とを組み合わせた構成からなるものと看取,把握されるものである。
また,本願商標の構成中の「端島」の文字について,広辞苑第7版によれば,「端島」の項には「長崎県南部,長崎半島西岸沖にある島。・・・軍艦島。世界遺産。」と,「軍艦島」の項には「端島の通称。」と記載されている。
さらに,本願商標の構成中,「軍鶏」及び「シャモ」の文字は,本願の指定商品との関係において,商品の名称又は原材料を表すものである。
(2)そして,「端島」は,2015年(平成27年)7月に世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の構成資産のひとつであって,現在では,その通称である「軍艦島」とともに,広く一般に知られる観光地となっている(別掲1)。
また一般に,観光地(その所在地又は周辺地域を含む。)においては,観光名所などの名称やその地理的な名称を付した土産物の商品が多数販売されている実情にあることはよく知られているところであり,端島の周辺地域,すなわち,端島がある長崎市において,「端島」の通称である「軍艦島」の文字が表示された様々な商品が販売されている実情がある(別掲2)。
さらに,本願の指定商品に係る業界において,「シャモ」若しくは「しゃも」の文字に生産地である地名,地域名を組み合わせて「○○シャモ」のように表示している実情がある(別掲3)。
(3)以上からすれば,「端島軍鶏」の文字と「軍鶏」の文字の下部にその読みを表したものと理解される「シャモ」の文字を書した構成からなる本願商標は,「端島」が著名な観光地として広く知られており,その通称である「軍艦島」の文字が表示された様々な商品が販売されていること及び生産地を冠したシャモが生産,販売されている実情を総合勘案すれば,これがその指定商品に使用されたときは,これに接する取引者,需要者は,本願商標全体から,「端島及びその周辺地域で生産又は販売された、軍鶏の鶏肉・軍鶏と他品種の交配種または軍鶏と他品種の雑種の鶏肉・軍鶏の鶏肉を原料とする肉製品・軍鶏と他品種の交配種または軍鶏と他品種の雑種の鶏肉を原料とする肉製品」であることを表したものと認識するにとどまるというのが相当である。
したがって,本願商標は,その指定商品の産地,販売地又は品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 請求人の主張について
上記第3の2のとおり,請求人は,「端島」を知る人々はそれが無人島であることを理解しているので,「端島」では軍鶏が生産できないことや「端島」に売店等が存在しないことを常識として理解するはずである旨主張する。
しかし,請求人の上記主張は,以下のとおり採用できない。
商標登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号にいう「商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというためには,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は販売されていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識されることをもって足りるというべきである(最高裁昭和60年(行ツ)第68号同61年1月23日第一小法廷判決・裁判集民事147号7ページ)。
そして,取引者,需要者は,本願商標の指定商品が端島及びその周辺地域において生産され又は販売されているであろうと認識するといえるのは上記1での判断のとおりであって,本願商標の指定商品が端島において現実に生産され又は販売されているか否かは,本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性の判断を左右するものではない。
なお,請求人は,端島を認識している人々は端島が無人島であることをしっかりと理解しているはずであると主張するものの,主張の根拠としては別掲1に係る証拠を援用するだけで,取引者,需要者がそのように理解することの根拠となる具体的証拠を何ら提出していない。
3 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
別掲1
(1)「るるぶ 九州ベスト’17」(JTBパブリッシング,2016年10月1日初版発行)の69ページに,見出しとして縦書きで,「世界遺産の軍艦島(端島)に上陸」との記載があり,また,「軍艦島上陸ツアー情報」として「軍艦島クルーズ」のほか,複数のツアー会社を紹介する記述がある。
(2)軍艦島クルーズ株式会社が運営する「軍艦島上陸クルーズ」と題するウェブページにおいて,「コース案内」の項目ページ(http://www.gunkanjima-cruise.jp/course.html )に,「2009年4月より,端島(通称:軍艦島)への上陸ができるようになりました。・・・軍艦島上陸クルーズ・見学をはじめ,・・・長崎ならではの歴史をまるごと体験してみませんか?」との記載がある。
(3)長崎市が運営する「長崎市公式観光サイト」と題するウェブページ(https://www.at-nagasaki.jp/world-heritage/nagasaki/hashima/ )において,「端島炭坑」の項目に「・・・雰囲気は,日本の近代化を象徴する遺構として注目を浴びており,映画のロケ地となったり,軍艦島クルーズが行われたりするなど,観光面でも人気が高まっています。」との,また「長崎市軍艦島資料館」の項目に「2015年7月に世界文化遺産に登録された端島炭坑(通称:軍艦島)の魅力を体感してもらうため,2016年7月16日にリニューアルオープンした資料館です。・・・」との記載がある。
(4)「西部読売新聞 朝刊」(掲載日2015年7月10日)の34ページに,「[世界遺産 近代日本の輝き](下)価値発信 地域連携カギ(連載)」の表題のもと,「『明治日本の産業革命遺産』の世界文化遺産への登録決定から一夜明けた6日。長崎港の南西約18キロ沖に浮かぶ構成資産『端島(はしま)炭坑』(軍艦島)の上陸ツアーには,多くの観光客が駆けつけた。この日だけで約1100人が上陸。ツアーの予約が年内はすでに満席となっている船会社もあるほどの人気ぶりだ。・・・独特の外観を誇る軍艦島は,廃虚ブームも相まって,2009年に上陸が許可されると,映画やドラマの撮影に関する問い合わせが島を所有する長崎市に相次いだ。」との記載がある。
(5)「日本経済新聞 朝刊」(掲載日2015年11月19日)の32ページに,「九州経済特集-観光資源裾野広がる,盛況世界遺産ツアー,軍艦島・旧集成館・・・16資産集中」の表題のもと,「九州の観光業が新たなステージに入った。域内に主要施設が固まる『明治日本の産業革命遺産』が7月,世界文化遺産に登録されたためだ。長崎市にある端島炭坑(通称・軍艦島)など目玉施設を中心に,各構成資産を巡るツアーを発売する旅行業者も相次ぐ。・・・長崎港の各所に設けられた遊覧船の発着所。100人を超す観光客が軍艦島観光から戻り,着岸した船から吐き出されてくる。複数の事業者が入れ代わり立ち代わり運航する『軍艦島クルーズ』の1コマだ。2009年に上陸が許可され観光スポットとなっていたが,世界遺産登録で人気が沸騰。運営事業者によっては週末は数カ月先まで予約でいっぱいの状況だ。・・・」との記載がある。
(6)「日本経済新聞 地方経済面 九州」(掲載日2015年12月23日)の13ページに,「九州・沖縄,今年のヒット回顧,そうせいで活気-せかい遺産,効果広がる。」の表題のもと,「『明治日本の産業革命遺産』が7月,世界文化遺産に登録された。・・・長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)では観光客が急増した。4?12月の島への上陸者数は20万人を超えたもよう。過去最高だった昨年度を上回った。・・・ご当地ではヒット商品も誕生。長崎市の軍艦島デジタルミュージアムで販売する石炭を使ったアクセサリー『軍艦島foreverコールストン』が人気に。・・・」との記載がある。
(7)「毎日新聞 地方版」(掲載日2016年4月6日)の23ページに,「観光客数:主要観光施設に932万人 昨年の県内,4年連続増 『世界遺産』登録寄与か /長崎」の表題のもと,「県内の主要観光施設を昨年1年間に訪れた観光客数は932万5000人で,前年比4・3%(38万5000人)増となったことが県のまとめで分かった。増加は4年連続。県は,端島炭坑(軍艦島)など長崎市内の8施設を含む『明治日本の産業革命遺産』が昨年7月に世界遺産に登録され,国内外から注目を集めたことで観光客が増加したとみている。・・・軍艦島にも前年比44・9%増の26万6620人が訪れた。・・・」との記載がある。

別掲2
(1)株式会社ながさきプレスが運営するウェブページにおいて,「<梅月堂>軍艦島チョコレートタルト」を紹介するページ(https://www.nagasaki-press.com/gourmet/gourmet-kihon/souvenir-gourmet-area1/post-86018/ )に,「洋菓子の老舗が贈るキュートな世界遺産スイーツ 軍艦島チョコレートタルト」との記載がある。
(2)文明堂総本店が運営するウェブページにおいて,「軍艦島もなか販売開始!」と題するページ(https://www.bunmeido.ne.jp/news/detail.php?id=23 )に,「長崎軍艦島(端島)を形どった最中の皮に小豆の風味豊かな餡をお客様ご自身の手で手軽に挟んでお楽しみ頂ける商品です。長崎の観光のお土産に是非!」との記載がある。
(3)ソーシャルワイヤー株式会社が運営する「@Press」と題するウェブページにおいて,「長崎軍艦島プリン」を紹介するページ(https://www.atpress.ne.jp/news/117030 )に,「社会福祉法人恵風会・・・は2016年12月6日(火)より,『長崎軍艦島プリン』を長崎市内のお土産屋にて販売いたします。」との記載がある。

別掲3
(1)福島県川俣町が運営する公式ウェブページにおいて,「川俣シャモ」を紹介するページ(https://www.town.kawamata.lg.jp/site/kanko-event/tokusanhin-shamo.html )に,「川俣シャモと呼べるのは,福島県川俣町で育てた地鶏だけです。」との記載がある。
(2)ヤマゼンコミュニケイションズ株式会社が運営する「栃ナビ!」と題するウェブページにおいて,「栃木しゃも加工組合」を紹介するページ(https://www.tochinavi.net/spot/home/?id=7686 )に,「栃木の地鶏『栃木しゃも』は今日も元気に育ってます!!」との記載がある。
(3)茨城県大子町観光協会が運営するウェブページにおいて,「奥久慈しゃも」を紹介するページ(https://www.daigo-kanko.jp/tokusan/shamo.html )に,「奥久慈しゃも・・・。奥久慈大子町の大自然の中,・・・,悠々と育つのです。」との記載がある。


審理終結日 2020-03-05 
結審通知日 2020-03-10 
審決日 2020-03-24 
出願番号 商願2017-149605(T2017-149605) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W29)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正和 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 中束 としえ
須藤 康洋
商標の称呼 ハシマシャモ 
代理人 杉谷 嘉昭 
代理人 杉谷 裕通 

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