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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W20
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W20
管理番号 1362447 
審判番号 不服2018-4789 
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-09 
確定日 2020-04-21 
事件の表示 商願2015-55105拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成からなり,第20類「家具」を指定商品として,平成27年6月10日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)
(1)本願商標は,別掲1のとおりの構成からなる立体商標であるところ,その指定商品との関係において,家具を容易に認識させる立体的形状からなるものであり,その立体的形状は,家具の機能又は美感を発揮させるための商品の一形態を表示するにすぎず,同種商品が一般的に採用し得る範囲内にとどまる。
そうすると,本願商標は,その指定商品に使用しても,取引者,需要者は,単に商品の一形態を表示するにすぎないものと理解するにとどまる。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本願商標に関する使用による識別性については,出願人の提出した証拠によっては,本願商標について,出願人がその指定商品に使用した結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。

3 当審においてした証拠調べ
当審において,本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,テーブルの天板を,不均等な長さの辺を組み合わせて構成する事例(別掲2),及びテーブルの天板の下部に,板を組みあわせた脚板を配置する事例,及びそれら脚板を利用しつつ収納スペースを設ける事例(別掲3)を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項に基づき,請求人に対して,その結果を通知し(令和元年6月24日付け証拠調べ通知書),意見を求めた。

4 証拠調べに対する請求人の意見の要点
(1)別掲2及び別掲3に掲げる事例の中に,本願商標の特徴(天板の非対称な形状,3枚の脚板,脚板の穴,地板の凹五角形の形状,透明な中間板)を有するテーブルは存在しないもので,これら事例を考慮しても,本願商標は一見してテーブルと分かる形状をしておらず,テーブルの形状として予測し得る範囲を超えた,極めて特異な形状をしている。
(2)請求人が製造,販売するダイニングテーブルは,日本において継続的に販売され,ウェブサイトや雑誌等に取り上げられたことにより,その極めて特異な形状が取引者,需要者に認知されるに至ったものである。

5 当審の判断
(1)本願商標の形状及び図形の識別性
ア 本願商標は,別掲1のとおり,(ア)相互に不均等な長さの4辺よりなる天板(木目調)を配し,(イ)その天板の下の脚部には,3枚の板を脚として立て(うち2枚の側面にはいずれも2つの大きな穴が開けられている。),その脚板の間にはガラス状の横板(透明)を,その脚板の下には脚板の配置に沿って5角を有する底板(いずれも木目調)を有してなる立体商標であるところ,構成全体としては,不均等な辺により構成される天板に目を引かれるもので,全体として,いびつな天板形状をした,脚部に収納スペースを設けたテーブルとの印象を与える。
イ 近年,テーブルの天板の形状としては,多様な形状(三角形,四角形,五角形,角を丸める)が採択されており,中には,別掲2のとおり,不均等な長さの辺によって,ゆがんだ又は変形した印象を与えるような形状とすることも,デザイン手法として一般的に採択されている。
また,テーブルの脚部に,別掲3のとおり,板を組み合わせた脚板を配置することや,それら脚板も利用しつつ横板等を設けて収納スペースを設けることも,商品ごとに形状や構成にバリエーションはあるとしても,取引上普通に採択されているデザイン手法である。
さらに,テーブルの材料として,デザインや機能に応じて,木目調の素材やガラス素材を用いることは,取引上極めて一般的に採択されている手法であることは明らかである。
ウ 上記イの取引の実情を踏まえると,本願商標の上記アに掲げる特徴は,同種商品の形状において,機能又は美感に資する目的から一般的に採択,採用されているデザイン手法の範ちゅうにあるというべきで,これら特徴を組みあわせた構成全体としても,特定の客体をモチーフにしたものとの印象も与えるものではなく,多様な形状及び特徴を備えるテーブルが広く流通している現状においては特に,需要者が予測し得ないような斬新な特徴を備えるものとはいえない。
そうすると,本願商標は,その形状の特徴はいずれも,単なる商品の美感又は機能に資することを目的として採用された形状,又はその目的からの形状の選択と予測し得る範囲のものにすぎないというべきであるから,その指定商品に係る需要者,取引者をして,単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章と認識,理解されるというべきである。
エ 請求人は,本願商標のような特徴(天板の非対称な形状,3枚の脚板,脚板の穴,地板の形状,透明な中間板)を備えるテーブルは他に存在しないため,本願商標は一見してテーブルであると分かる形状ではなく,テーブルの形状として予測し得る範囲を超えた,極めて特異な形状をしている旨を主張する。
しかしながら,本願商標は,天板や脚部の存在から,上記アのとおり,全体として,いびつな天板形状をした,脚部に収納スペースを設けたテーブルと容易に理解できるもので,上記イのとおり,本願商標とも共通するような特徴を備える,多様な形状及び特徴を備えるテーブルが広く流通している取引の実情があることをも鑑みると,需要者が予測し得ないとまで言えるような斬新な特徴を備えるものとはいえず,上記ウのとおり,商品の美感又は機能に資することを目的として採用された形状,又はその目的からの形状の選択と予測し得る範囲のものにすぎないというべきであるから,その主張は採択できない。
なお,本願商標の形状の特徴を備える請求人のダイニングテーブルと関連して,不定形な天板形状については,「座る人数を限定しない形状はさまざまなシーンに対応し,微妙な視線のズレで心地よい距離感をもたらす」ためのもので,脚部は「暖炉に着想を得」たもので,脚部の穴は「物理的にも見た目にも軽やかな」印象に寄与し,脚部のガラス板は他の棚から取り入れたものとされる(甲71)など,商品の美感又は機能に資することを目的とした形状であることが説明されている。
オ 以上を踏まえると,本願商標は,商品の形状を普通に用いられる方法で表してなる標章のみからなる商標であるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本願商標の使用による識別性
ア 請求人による本願商標の使用について
(ア)複数のデザイナーによる設計で,1990年に誕生したTECTA(テクタ)の「M21」ダイニングテーブル(以下「請求人商品」という。)は(甲71),請求人の主張によれば,我が国においては,平成9年(1997年)から代理店(株式会社アクタス)を通じて販売されているとされる。
(イ)請求人商品は,天板サイズにより2タイプ(「M21-1」及び「M21」)あるものの,いずれも本願商標とは,形状の特徴を共通にする(甲1)。
(ウ)請求人の主張によれば,請求人商品の販売実績は,10年間(平成18年?平成27年)で約4,730台,定価(約44万円から約74万円の間)による試算によると約28億円の売上高があったとされる。
(エ)請求人商品は,広告やチラシにおいて,他の家具などとともに,「TECTA」(テクタ)又は「M21」の文字を伴って,商品の全体又は一部形状が確認できる写真が掲載されている(甲64?甲70,甲72)。
また,請求人商品は,家具販売店,中古家具取扱店,ブログなどのウェブサイトにおいても,同様に,「TECTA」(テクタ)又は「M21」の文字を伴って,商品の全体又は一部形状が確認できる写真とともに掲載されている(甲15?甲63)。
(オ)請求人商品は,雑誌(「Pen」,「MODERNLIVING」,「I’m home」,「SUMAI no SEKKEI」,「Sumai」,「Relife+」,「ELLE DECOR」,「HOUSING」,「LORO」,「北欧テイストで楽しむ100人の家づくり」,「北欧テイストの部屋づくり」,「Letter」,「都心に住む」等)やそこに掲載された広告に,商品の全体又は一部形状が確認できる写真とともに掲載されている(甲3?甲14,甲78?甲87)。
これら記事において,請求人商品の形状について,例えば「ユニークな形状の天板で,長辺や角度の異なるコーナーなど,使う目的によって居場所を変えたくなる。」(甲5),「不定形な天板は大人数で座れ,微妙な視線のずれが圧迫感を軽減する。」(甲78),「有機的なフォルムの天板と,独特の脚部が生む比類なきスタイル」(甲79),「オーガニックな形状の天板が,自由な座り方を促すテクタのデスク」(甲80),「有機的なフォルムの天板をもち,着座する人の数に制約を課さない。また,座る人同士の視線がズレるので心理的圧迫感を与えない。」(甲87)などのように形状に言及するものもあるが,そのような言及どころか,請求人商品の商品紹介もないままに,単に住宅や内装の紹介写真などに写り込むにすぎないものも多い。
(カ)請求人商品は,2017年の「TECTA BAR TOKYO」及び2018年の「バウハウス名作家具展」に出品されている(甲73?甲75)。
(キ)請求人又は代理店は,2017年及び2019年に放送されたテレビ番組において,請求人商品を含めて美術協力している(甲76,甲88?甲91)ものの,提出された証拠からは,請求人商品が,単なる美術道具としての使用以上に,その形状を含めて,特に宣伝,広告された事実は確認できない。
イ 検討
上記アのとおり,本願商標と社会通念上同一といえる形状をした請求人商品は,我が国において20年以上の販売実績があり,広告や雑誌,ウェブサイト等における商品紹介も継続的になされてはいる。
しかしながら,請求人商品の販売規模は必ずしも明らかではなく(請求人主張の販売台数も,単純な年平均で500台に満たない程度),広告宣伝の規模や頻度,広告宣伝費なども明らかではないため,事業規模及び広告宣伝の規模の把握が困難であり,雑誌等における掲載にしても,いわゆる一般紙ではなく住宅情報関係の雑誌が中心であり,掲載頻度や掲載媒体も必ずしも多くはない。
また,雑誌等における請求人商品の紹介記事にしても,単に住宅や内装の紹介写真などに写り込んだにすぎないものは,広告宣伝効果が極めて乏しいと考えられ,請求人商品の形状に言及する記事であっても,請求人商品の写真とともに,天板の形状(変形,不定形など)や脚部の特徴について,美感や機能(多人数が座れる,視線がずれる等)の側面について解説,強調するものだから,これら雑誌等の記事によって,請求人商品の形状が,単なる美感や機能を備える商品形状という印象以上に,請求人に係る出所識別標識であることを殊更印象づけたかどうかは明らかではない。
加えて,請求人商品が出展されたイベントも,わずか2回,年に1度ほどの開催で,展示内容も請求人商品のみに焦点を当てたものではない。そして,テレビ番組等における美術協力にしても,単にドラマの中の美術道具として使用された程度では,その番組の視聴者をして,登場したダイニングテーブルの形状と請求人との関係性を結びつけることは極めて難しい。
そうすると,請求人商品は,その指定商品に係る一般の需要者の間において,その形状をもって,請求人の製造,販売する商品として,広く知られ,周知,著名となるに至っているとはいえず,請求人の業務に係る自他商品の識別標識としての機能を獲得するに至ったものとはいえない。
ウ 請求人の主張
請求人は,請求人商品の継続的な使用により,その極めて特異な形状が,取引者,需要者に認知されるに至った旨を主張する。
しかしながら,請求人商品の天板と脚部の特徴にしても,別掲2のとおり,不均等な長さの辺によって,ゆがんだ又は変形した印象を与えるような形状を採択するテーブルが多数販売されており,また,別掲3のとおり,テーブルの脚部に収納スペースを工夫して設けるテーブルが多数販売されているから,請求人商品の天板及び脚部の特徴にしても,他社製品との比較において,そこまで大きな差別化が図られているものとはいえないから,独創性が高いとまでいえない。そして,請求人商品は,上記イのとおり,一般の需要者の間において,その形状をもって,請求人の業務に係る自他商品の識別標識として機能し得るほど,広く知られ,周知,著名となるに至っているとはいえないから,その主張は採用できない。
エ 小括
以上を踏まえると,本願商標は,請求人による使用実績によっても,自他商品の識別標識としての機能を獲得するに至ったものとはいえないから,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる商標ではなく,商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,同条第2項の要件を具備しないため,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標。色彩については原本参照。)
(1)第1/7図



(2)第2/7図



(3)第3/7図




(4)第4/7図




(5)第5/7図


(6)第6/7図


(7)第7/7図


別掲2 テーブルの天板を,不均等な長さの辺を組み合わせて構成する事例
(1)「Rigna」のウェブサイトにおいて,「変形ダイニングテーブル」の商品紹介の項に,以下の商品写真が,「・・・来客時にも大人数でテーブルを囲んで座れる『変形ダイニングテーブル』です。」の記載とともに掲載されている。
https://www.rigna.com/item/6529


(2)「キナル」のウェブサイトにおいて,「収納付 変形ダイニングテーブル SHUNO(シュノ)W180」の商品紹介の項に,以下の商品写真が,「・・・まるでも四角でもない,まさしく変形という言葉がぴったりのデザイン。」の記載とともに掲載されている。
https://www.kinaru.com/fs/sense/kr296


(3)「ROOM+1」のウェブサイトにおいて,「ダイニングテーブル」の商品紹介の項に,以下の商品写真が,「天板の形に特徴のあるダイニングテーブルです。」の記載とともに掲載されている。
http://www.roomplus1.com/products/dining/1050.html/


(4)「アクタス」のウェブサイトにおいて,「クラウム ダイニングテーブル」の商品紹介の項に,以下の商品写真が,「従来の四角や円形の座卓ではなく,変形の三角形にすることで,自由に対面し『会話が弾む』仕掛けになっています。」の記載とともに,掲載されている。
https://www.actus-interior.com/products/detail.php?idx=00000035


(5)「アクタス」のウェブサイトにおいて,「クラウム リビングテーブル」の商品紹介の項に,以下の商品写真が,「従来の四角や円形の座卓ではなく,変形の三角形にすることで,自由に対面し『会話が弾む』仕掛けになっています。」の記載とともに,掲載されている。
https://www.actus-interior.com/products/detail.php?idx=00000004


(6)「デザイナーズ家具のE-comfort」のウェブサイトにおいて,「ノグチテーブル」の商品紹介の項に,以下の商品写真が,「強化ガラスで作られた天板はオニギリ型をしていますが,3つ全ての丸みが異なるという凝ったデザインをしています。」の記載とともに掲載されている。
https://www.e-comfort.info/p_ct3001.html


(7)「LIVING DESIGN TAKEDA」のウェブサイトにおいて,「カリモク家具BASIC《ベーシック》 リビング センターテーブル」の商品紹介の項に,以下の商品写真が掲載されている。
https://ldt.co.jp/karimoku/living2/tu4653.html


(8)「kirario online shop」のウェブサイトにおいて,「リビングテーブル ALBO(アルボ)」の商品紹介の項に,以下の商品写真が掲載されている。
https://www.kirario.jp/SHOP/KRI3058.html


(9)「家具工房クラポ」のウェブサイトにおいて,「T-37 五角形の特注ダイニングテーブル」のオーダー事例の項に,以下の商品写真が掲載されている。
http://www.crapo.jp/saikin/saikin128/saikin_128.htm


別掲3 テーブルの天板の下部に,板を組みあわせた脚板を配置する事例,及びそれら脚板を利用しつつ収納スペースを設ける事例
(1)「飛騨産業株式会社」のウェブサイトにおいて,「侭」(テーブルの天板の形や脚などを指定できるオーダーシステム)の商品例として,以下の商品写真が掲載されている。
https://kitutuki.co.jp/products/jin_dining-table


(2)「アスクル」のウェブサイトにおいて,「関家具 リビングテーブル ロペLテーブル(台形)」の商品紹介の項に,以下の商品写真が掲載されている。
https://www.askul.co.jp/p/P271649/


(3)「マルゲリータ」のウェブサイトにおいて,「Tavolaダイニングテーブル」の商品紹介の項に,以下の商品写真が掲載されている。
https://www.margherita.jp/tavola/


(4)「Rigna」のウェブサイトにおいて,「ピアヌーラ ダイニングテーブル」の商品紹介の項に,以下の商品写真が,「天板下には棚板が装備されておりますので,ノートPCや雑誌などが収納できそうです。」の記載とともに掲載されている。
https://www.rigna.com/item/17923


(5)「Rigna」のウェブサイトにおいて,「ローダイニングテーブル」の商品紹介の項に,以下の商品写真が掲載されている。
https://www.rigna.com/item/16473


(6)「LOWYA」のウェブサイトにおいて,「ダイニングテーブルセット 4人掛け(5点)」の商品紹介の項に,以下の商品写真が掲載されている。
https://www.low-ya.com/category/DINING_SET/F703_G1294.html


(7)「LOWYA」のウェブサイトにおいて,「センターテーブル T字型 収納付き」の商品紹介の項に,以下の商品写真が掲載されている。
https://www.low-ya.com/category/TABLE_LIVING/F402_17003.html







審理終結日 2019-11-06 
結審通知日 2019-11-15 
審決日 2019-11-28 
出願番号 商願2015-55105(T2015-55105) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W20)
T 1 8・ 17- Z (W20)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 椎名 実 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 板谷 玲子
阿曾 裕樹
代理人 窪田 英一郎 

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