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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y33 |
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管理番号 | 1362425 |
審判番号 | 取消2017-300774 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2017-10-13 |
確定日 | 2020-04-20 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4621480号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4621480号商標の指定商品中、第33類「洋酒,果実酒」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4621480号商標(以下「本件商標」という。)は、「オブセッション」の文字を標準文字で表してなり、平成14年3月20日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年11月15日に設定登録されたものである。 そして、本件審判の請求の登録日は、平成29年10月30日である。 なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成26年(2014年)10月30日ないし同29年(2017年)10月29日である(以下「要証期間」という場合がある。)。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、第33類「洋酒,果実酒」について継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 弁駁の理由 答弁書における被請求人の主張によると、被請求人は本件商標を本件審判請求の登録前3年以内に、第33類「ワイン」について使用しており、これを証する書面として、乙第2号証ないし乙第8号証を提出した。 第一に、乙第2号証及び乙第2号証の2は、2017年3月5日付けで、請求人が小布施ワイナリー株式会社に対して、商品名「オブセッション」の「ワイン」を10本製造依頼(発注)したことを証するのみであり、本件商標を使用した商品「ワイン」が実際に製造され、被請求人に納品され、被請求人又はその使用権者により取引市場に供されたか否かは明らかでない。 第二に、乙第3号証は、2017年12月25日付けで小布施ワイナリー株式会社が商品「オブセッション」10本を被請求人に出荷したことを示すが、上記出荷日は本件審判請求の予告登録日である2017年10月30日より後となり、本件審判の請求の登録前3年以内の使用を証するものではない。 なお、念のために申し添えるなら、乙第3号証は出荷されたワインを被請求人が確かに受領した事実までをも示すものではない。仮に、当該商品が実際に納品されたことが事実であるとしても、その後、被請求人又はその使用権者を販売者として我が国取引市場に実際に供されたことは何ら明らかにされていない。また、乙第2号証並びに乙第3号証によれば、発注、出荷にかかる「ワイン」の数は10本とあるが、これは通常の取引概念に照らせば、極めて少数であり、本格的な本件商標の使用として評価するにはあまりにも足らないものである。 第三に、被請求人は乙第4号証を、「ワイン醸造元『小布施ワイナリー株式会社』にて醸造された商品『ワイン』に付された『商品ラベル』」であり、当該ラベルには、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「OBUSESSION」が付されている旨主張する。この点、「OBUSESSION」が本件商標と社会通念上同一である点については争わないが、当該ラベルが「ワイン醸造元『小布施ワイナリー株式会社』にて醸造された商品『ワイン』に付された『商品ラベル』」については、被請求人が「商品ラベル」と主張する乙第4号証が実際の商品に付されたことを示す証拠が一切提出されていないため、これを「商品ラベル」と認めることはできない。また、乙第4号証には被請求人の名称は一切表れておらず、これが被請求人又はその使用権者の使用にかかるものであるか否かが明らかでない。 第四に、乙第5号証ないし乙第8号証については、被請求人が「本件商標を商品『ワイン』について使用するという、被請求人の構想を具現化するに至った事実を示す」と主張するとおりであり、本件商標の使用の事実を何ら証するものではない。 以上より、被請求人の主張は正当な理由がなく、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品についての登録商標の使用をしていない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標は、商標権者によって「ワイン」について使用されている。 (1)乙第1号証は、本件商標の商標登録原簿である。 これによれば、本件審判請求は、平成29年10月13日に審判請求され、同月30日に登録されたことがわかる。 (2)乙第2号証は、被請求人「株式会社桝一市村酒造場」発行の「発注依頼書」の原本であり、乙第2号証の2は、「小布施ワイナリー株式会社」の「証明書」である。 これによれば、「株式会社桝一市村酒造場」は、商標「オブセッション」を付する商品「ワイン」を、平成29年3月5日ワイン醸造元「小布施ワイナリー株式会社」に発注したこと、ならびに、「小布施ワイナリー株式会社」では発注依頼書に沿って商品「ワイン」の製造を依頼されたことがわかる。 すなわち、乙第1号証の商標登録原簿に示される審判請求日より7か月以上前に、被請求人が、小布施ワイナリー株式会社に商標使用商品を発注したことを証明する証拠である。 被請求人が本件商標を付した商品を使用する意思決定は、審判請求されることを知る前に行われ、これに基づく具体的な準備が行われている。 本件審判請求人から被請求人に対して本件商標の譲渡の申し入れがあったことは事実であるが、被請求人は譲渡交渉される以前から、本件商標を使用する意思があったことは明らかで、実際乙第2号証の1及び乙第2号証の2は、本件請求登録日以前から、本件商標を付して販売するための準備を進めるために、商品発注が行われた事実を証明するものである。 (3)乙第3号証は、ワイン醸造元「小布施ワイナリー株式会社」発行の「出荷伝票」である。 これによれば、乙第2号証の商品「ワイン」発注の依頼を受けて、平成29年12月25日に醸造元「小布施ワイナリー株式会社」が商品を納品したことを証明する証拠である。 商品「ワイン」が商品として完成するまでには、ぶどう栽培の適正地の選定、冬季のぶどう畑の整備、雪解けの時期から始まる1年かけた果樹ぶどうの育成、春季から秋季に行う果実ぶどうの生育、年毎に異なる天候を見定めた収穫時期の見極め、秋季後半のぶどう収穫ならびに加工(ぶどう破砕、圧搾、醗酵及びオリ下げ)、年1?2回オリ引き過程を含む1?2年間の貯蔵、その後、少なくとも1年間の熟成(あるいは最終的なワインの品質を追及する場合には数年間の熟成)、テイスティング、という工程を経て、ようやく「ワイン」は商品として出荷の日を迎える。 したがって、被請求人の商品企画構想をもとにワイン醸造元に対し商品「ワイン」の発注を行ってから、実際に商品「ワイン」が納入されるまで大きな時間的な開きがあるのは、極めて穏当である。 (4)乙第4号証は、ワイン醸造元「小布施ワイナリー株式会社」にて醸造された商品「ワイン」に付された「商品ラベル」である。 この商品ラベルの中央には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「OBUSESSION」が付されている。 上述に示すように、商品「ワイン」の商品的特性に照らせば、乙第2号証ないし乙第4号証は、通常の取引の過程で作成された書面であると認められ、本件審判請求の登録以前より、本件商標を付して販売するための準備を進めていた使用の事実を証するもので、なんら不合理なところはない。 (5)乙第5号証ないし乙第8号証に、本件商標を商品「ワイン」について使用するという、被請求人の構想を具現化するに至った事実を示す。 (6)乙第5号証は、長野県酒類販売株式会社のホームページに掲載された被請求人の企業情報である。 (7)乙第6号証は、株式会社まちなみカントリープレス発行「KURA」の概要並びに発行元の企業情報である。 (8)乙第7号証は、雑誌オンライン書店「Fujisan.co.jp」公式ページより抜粋の、株式会社まちなみカントリープレス発行「『KURA』2016年3月号」掲載記事一覧である。 (9)乙第8号証は、「KURA」2016年3月号掲載の、ワイン醸造を牽引するT氏のコラムである「玉さんの信州ワインバレー構想レポート:信濃にやか編 後編」の全内容である。 これによれば、「長野県をワイン王国にするためにお知恵拝借」として、長野県で活躍する知識人が招かれ、長野県産「酒」の振興について対談した記録が掲載されている。 被請求人代表もこの対談に同席し、長野県が2017年に創設した「日本酒ワイン振興室」の理想のあり方を、過去から現在そして未来に向かって考察している。 (10)T氏は、被請求人代表の発言に対して、地域の産業(暮らし)を守り、信頼維持し、未来に向かって発展するため「ワイナリーと酒蔵が組」み連携して、長野県の暮らしの中の文化を紡ぎながら互いに産業を発展させてゆくことを提案し、対談に参加した全員が、大きく賛同した事実が判る。 したがって、被請求人は「ワイナリーと酒蔵が組」んで連携し、地域の文化を育てながらワイン醸造を産業として発展させることを具現化するために、本件商標を採択した。 本件商標は、本来「1 魔物や恐怖観念などに取りつかれていること。2 妄想。固定観念。強迫観念。」という意味をもつ英単語「obsession」に由来しているが、「オブセッション」の発音には「小布施」の地名が含まれるため「小布施(オブセ)ッション」と認識できる。ここから小布施の魅力に取りつかれていることを掛けて、ダブルミーニングで表現していると解され、小布施の魅力に嵌っている様子を暗示している。 つまり、本件商標は小布施が大好きであることを伝えるものであるから商品「ワイン」に付すと、「ワイナリーと酒蔵が組」み連携して、長野県の地域の産業を発展させる、という理念を現実にするシンボルとして相応しい。そこで、商品「ワイン」にこの商標を付して「小布施の魅力を、小布施から」世の中へ送り出そうという構想を広げた。 この理念を具現化するため、少なくとも2016年(平成28年)2月20日以降ていねいに、商品「ワイン」に対する検討を重ねた。これは本件商標のもつ暗示的意味合い「小布施が大好きで、小布施の魅力に嵌っている」様子を、味覚の上で感じられるように商品「ワイン」のもつ良質で繊細な味わいをもって表現するために考察を重ねていたことを意味する。 その結果、前述の乙第2号証の1「商品発注書」に示すように、2017年(平成29年)3月5日、商品「ワイン」を小布施ワイナリー株式会社へ発注するに至ったものである。 (11)したがって、本件審判請求されることを知る前に商品発注が行われ、これに基づく具体的な準備が行われていることは明白で、被請求人は譲渡交渉される以前から継続して本件商標を使用する意思があったことは明らかであり、本件商標が商標権者によって「ワイン」について本件審判請求前に使用されていることは事実である。 2 まとめ 上述のように、本件商標と社会通念上同一の商標が、商標権者によって本件審判請求前3年以内にその指定商品中「ワイン」について使用の準備がなされている事実に、いささかも疑いの余地がないので、請求人の主張には全く根拠がないというべきである。 第4 手続の経緯 1 譲渡交渉について 被請求人及び請求人は、それぞれ平成31年1月23日付け及び同月24日付け上申書並びに同年2月25日付け及び同月26日付け回答書において、本件商標の譲渡についての交渉を理由に本件審理の猶予を申し出ていたところ、その後、被請求人は、令和元年10月21日付けで上記交渉が不成立となった旨の回答書を提出した。 2 当審における審尋 当審において、令和元年12月20日付け審尋により、被請求人(商標権者)は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者がその請求に係る指定商品中の「ワイン」に本件商標を使用していると主張し、その証拠として乙第1号証ないし乙第8号証を提出しているが、提出された証拠によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する証明をしたものということはできない旨の暫定的見解を示したうえで、請求人提出の審判事件弁駁書の主張に対し、意見があれば具体的な証拠とともに提出するよう回答を求めた。 しかしながら、被請求人は、何らの応答もしていない。 第5 当審の判断 1 被請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。 (1)乙第2号証は、発行日を2017年3月5日とする商標権者(株式会社枡一市村酒造場)が作成した「小布施ワイナリー」宛の「発注依頼書」である。当該依頼書の「希望納品日」の欄には、「出来次第」の記載、及び「品目」欄に「オブセッション」の記載、「数量」の欄には、「10本」の記載があるが、この依頼書に係る商品が「ワイン」であるか否かは確認できない。 (2)乙第3号証は、2017年12月25日付けの小布施ワイナリー株式会社が作成した「小布施町上町」「枡一市村酒造株式会社」宛の「出荷伝票」である。当該伝票の「商品名」の欄には、「オブセッション」の記載、欄外に「ワイン」の記載があるが、当該伝票の日付は要証期間より後のものであって、宛先が商標権者の住所名称とは異なる。 (3)乙第4号証は、被請求人の主張によれば、「小布施ワイナリー」納品の商品に付されたワインのラベルであるところ、約10cm四方の正方形の白紙に「obusession」「小布施ッション」「OBUSESSION」「小布施で毎月一回、ゾロ目の日に開催された小布施ッションにちなんだ限定ワイン」「750ml」「小布施ワイナリー」の記載があるが、このラベルの作成時期、作成者、作成数等は不明であり、実際に商品「ワイン」に付されたものであるかも不明である。 2 上記1によれば、当審の判断は、以下のとおりである。 (1)乙第2号証及び乙第3号証について 2017年3月5日発行の発注依頼書(乙2の1)により、被請求人(商標権者)は、ワイン醸造元(小布施ワイナリー)宛てに「オブセッション」と称する商品を10本発注したこと、また、2017年12月25日付けの出荷伝票(乙3)により、ワイン醸造元(小布施ワイナリー)は、商品名「オブセッション」とするワインを10本出荷したことがうかがえるが、該商品にラベル(乙4)が付されているか否かは確認できない。 また、2017年12月25日付けの出荷伝票(乙3)に記載された宛先は、被請求人(商標権者)の名称及び住所と異なることから、2017年3月5日発行の発注依頼書(乙2の1)とこの出荷伝票(乙3)との関係が確認できない。 (2)乙第4号証について 被請求人は、乙第4号証はワイン醸造元「小布施ワイナリー株式会社」において醸造された商品「ワイン」に付された「商品ラベル」である旨主張しているが、このラベルについての作成時期、作成者、作成数などは不明であり、その使用の事実も確認できないことから、要証期間に被請求人がこのラベルを商品「ワイン」に付したということはできない。 3 小活 上記のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、要証期間に、本件商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の商標法第2条第3項各号にいう使用があったことを認めるに足る事実を見いだせない。 4 むすび 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者、通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが、その請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明したということはできない。 また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、第33類「洋酒,果実酒」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-02-19 |
結審通知日 | 2020-02-26 |
審決日 | 2020-03-11 |
出願番号 | 商願2002-22222(T2002-22222) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(Y33)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高橋 幸志 |
特許庁審判長 |
金子 尚人 |
特許庁審判官 |
小田 昌子 小松 里美 |
登録日 | 2002-11-15 |
登録番号 | 商標登録第4621480号(T4621480) |
商標の称呼 | オブセッション |
代理人 | 堀米 和春 |
代理人 | きさらぎ国際特許業務法人 |