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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W09
管理番号 1361756 
異議申立番号 異議2016-900228 
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-08 
確定日 2020-04-03 
異議申立件数
事件の表示 登録第5845963号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5845963号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5845963号商標(以下「本件商標」という。)は,「FLOUREON」の文字を標準文字で表してなり,平成27年11月30日に登録出願,第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,理化学機械器具,電池,配電用または制御用の機械器具」を指定商品として,同28年3月17日に登録査定され,同年4月28日に設定登録されたものである。

第2 使用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する標章は,別掲のとおりの構成よりなり,申立人の製造販売する商品「防犯用監視カメラ,防犯用映像記録装置等の防犯用機械器具,GPSナビゲーション装置,バッテリー,充電器」(以下「使用商品」という。)に使用している商標である(以下「使用商標」という。)。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標について,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第49号証を提出した。
1 具体的理由
(1)申立人及び申立人の使用商標について
申立人は,2007年(平成19年)5月6日に設立された中国法人である(甲5,甲6)。
申立人は,2011年(平成23年)から使用商標を使用し,日本をはじめとする世界中において,使用商品を販売している(甲7,甲8)。
使用商標を付した商品は,既にインターネット販売で流通しており,広く販売されている(甲9?甲12)。
(2)使用商標とその周知性・著名性について
申立人は,遅くとも2011年(平成23年)から,欧米,日本を中心に,電子商取引を行う消費者をターゲットとするEC事業を展開し,使用商標は,使用商品について,内外における高い周知・著名性を獲得している(甲20?甲34)。
申立人は,「繁栄する」を意味する「Flourish」と「永劫」を意味する「Eon」を結合させ,「FLOUREON」との造語を考案し,商標として採択したものである。「FLOUREON」を辞書で調べても,特定の意味は有さないことから,客観的にも顕著性が極めて高い造語であることは明白である(甲7,甲14)。
申立人は,「FLOUREON」ブランドを中国外でも保護すべく世界各国で商標権を取得している(甲2?甲4)。
(3)本件商標登録における不正の目的について
ア 本件商標と使用商標の類似性
本件商標は,その構成文字に相応して「フローレオン」の称呼を生じるものであり,特定の意味を有する成語として辞書等に掲載の見受けられないことから,特定の意味を有しない一種の造語と認識されるものである(甲14)。
他方,申立人が日本において2013年(平成25年)から使用している使用商標は,別掲のとおり,デザイン化されているものの,「FLOUREON」の欧文字を表したものと容易に認識でき,その構成文字全体で「フローレオン」の称呼を生じるものであり,本件商標と同じく一種の造語と認識されるものである。
そうすると,本件商標と使用商標とは,つづりを同じくするものであって,両商標から生ずる称呼と同一であるから,類似の商標である。
本件商標の指定商品と使用商品とは,その用途,需要者の範囲が一致することから, 同一又は類似する商品である。
以上を総合して考察すると,本件商標と使用商標とは,類似の商標であり,かつ,本件商標の指定商品と使用商品は同一又は類似するものである。
イ 本件商標権者について
本件商標権者である「深セン市餐特思科技有限公司」は,2013年(平成25年)9月30日に設立され,申立人と同じく中国の深セン市に住所を有する中国法人であり,「Amazon」や「eBay」などのオンライン通販サイトにてタッチパネル,スマートフォンなどの電子製品を販売する会社である(甲36?甲38)。
本件商標権者と申立人とは,同業の関係であり,同じ中国法人であることからすると,本件商標権者は申立人の存在と認知度の高い使用商標の存在を知った上で,使用商標と同一のつづりの欧文字から成る商標「FLOUREON」を,2015年(平成27年)11月30日付けで商標登録出願を行ったものと推認することができる。
ウ 本件商標権者の一貫的悪意
申立人が調べるところでは,本件商標権者は,常習的に申立人以外の他人のブランドを先駆けて出願しており,かかる行為からも不正の目的が明白である(甲39?甲49)。
しかるに,本件商標は,本件商標権者において全く使用されていない。
商標のネーミングや指定商品の共通性からみても,本件商標権者において偶然の一致をもって採択され,創作されたことはあり得えず,本件商標権者のかかる行為からは,申立人の商品を市場から排除する等の何らかの不正な意図をもっていたことが容易に推認でき,本件商標が本件商標権者によって剽窃的に出願登録されたものであることは明らかである。
(4)商標法第4条1項各号への該当性
ア 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,使用商標とつづりを完全に一致しているものであり,本件商標権者が使用商標を知り得ることなく,両者が偶然に一致したとは想定し難く,むしろ,本件商標権者は,使用商標の存在を知った上で,これが商標登録されていないことを奇貨として,不正な目的をもって剽窃的に出願したものと推認できるものである。
このような商標権者の行為は,申立人の正当な利益を害するものであって,ひいては,公正な競業秩序を害するものであるから,公序良俗に反することは明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
イ 商標法第4条第1項第19号について
使用商標は,バッテリーなどの商品について,取引者・需要者の間で周知となっている。本件商標権者は,通販サイトを通して米国,日本に市場を展開し(甲38),使用商品と同一又は類似するバッテリーや充電器などの商品を販売している。そうすると,本件商標権者は,バッテリーや充電器などの商品について,国内外の業界動向に相当程度の関心を持っていたはずであり,それを調査・把握していたものと思われる。加えて,本件商標権者の所在地は申立人と同じく,中国の深セン市である。
以上によれば,本件商標権者は,日本及び諸外国における使用商品の製造事業者・取引者及び需要者の間において,広く認識されていた使用商標を知ったうえで,使用商標が日本において登録出願・登録されていないことを奇貨として,これを我が国で独占使用することで不当な利益を得るため,かつ,申立人の我が国への参入を阻止するために登録出願し,権利を得たというのが相当であり,本件商標は不正の目的をもって使用をするものというべきである。そして,本件商標権者によって本件商標が使用された場合には,使用商標が有する信用や名声,顧客吸引力を毀損するおそれがあることも明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。
ウ 商標法第4条第1項第10号について
本件商標と使用商標とは,上記(3)アのとおり,類似する商標である。
次に,本件商標の指定商品と使用商品とは,用途,需要者の範囲が一致する。
したがって,本件商標の指定商品は,申立人の使用に係る商品と同一又は類似するものである。
よって,本件商標は,周知の使用商標と同一又は類似する商標であって,その指定商品も申立人の業務に係る商品と同一又は類似するものであるから,商標法第4条第1項第10号に該当する。
エ 商標法第4条第1項第15号について
使用商標は,使用商品について高い著名性を獲得しているのであって,使用商品の分野の取引者・需要者において広く知られるに至っている。
本件商標の指定商品のうち,とりわけ「電池,配電用または制御用の機械器具」は,申立人に係るバッテリーや充電器などの主要商品とは,同じオンライン通販サイトで販売されることが一般的に行われており,需要者の範囲が一致し得るものであり,非常に関連性が高いものである。
そうすると,使用商標の周知性や本件商標と使用商標との類似性は高く,本件商標権者によって本件商標が使用された場合には,その商品に接する需要者が,その商品が申立人の商品であるとか,申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し,商品の出所について混同を生ずる可能性は十分に予想され,需要者がその出所について混同を生じることは明らかである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)結び
以上述べたとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同項第10号,同項第15条及び同項第19号に該当する。

第4 取消理由の通知(要旨)
当審において,平成30年10月1日付けで,本件商標権者に対し,本件商標の登録出願の経緯には,申立人の使用商標を剽窃するという不正な目的をもって登録出願されたものとして,社会的妥当性を欠くものがあり,その登録を認めることは,健全な商取引の遂行を阻害し,公正な競業秩序を害するものであるから,公序良俗に反するものであるとして,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認められるから,商標法第4条第1項第7号に該当する旨の取消理由を通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第5 本件商標権者の意見
上記第4の取消理由に対し,本件商標権者は,何ら意見を述べるところがない。

第6 当審の判断
1 使用商標
申立人は,本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして引用する使用商標は,別掲のとおりの構成よりなり,2011年(平成23年)より使用商品「防犯用監視カメラ,防犯用映像記録装置等の防犯用機械器具,GPSナビゲーション装置,バッテリー,充電器」に使用している(甲7,甲8)。
なお,申立人は使用商標と同じ態様の商標を,中国商標登録第10659416号,2012年(平成24年)3月22日に登録出願,第9類「電気用ケーブル,電線,送電専用材料,電池用充電器,電池,太陽電池,写真装置用スタンド,測量用機器,遠隔制御装置,電気制御用機械器具」を指定商品として,2013年(平成25年)5月21日に登録のほか(甲2),アメリカ合衆国商標登録第4267685号(甲3),EUTM登録第011966215号(甲4)を所有している。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)申立人と本件商標権者について
ア 申立人
2007年(平成19年)に設立された中国の深セン市所在の法人であり,工場直結型の流通基盤を有し,アパレル系や電気機器系のショッピングサイトも経営している(甲5,甲6)。使用商標を使用した使用商品は,インターネットにより,日本を始め,米国,欧州各国,アフリカ,マレーシアなどにおいて,インターネットを通じて販売されている(甲9?甲12)。
イ 本件商標権者
2013年(平成25年)に設立された中国の深セン市所在の法人であり,米国のCitus,LLCが中国で設立した現地法人であり(甲36,甲37),インターネットの通販サイトにより「バッテリー,充電器」などの商品を「CITUS」の商標を使用し販売している(甲38)。
(2)本件商標と使用商標との類否
本件商標は,「FLOUREON」の文字を標準文字で表してなるところ,当該文字は辞書等に掲載されていないものであって,一種の造語と認められるから,その構成文字に相応して,「フローリオン」又は「フローレオン」の称呼が生じ,特定の観念は生じないものである。
一方,使用商標は,別掲のとおり,その書体にデザインが施されているものの,一見して「FLOUREON」の欧文字からなるものと直ちに認識できるものであるから,本件商標と同様に,その構成文字に相応して,「フローリオン」又は「フローレオン」の称呼が生じ,特定の観念は生じないものである。
そうすると,本件商標と使用商標とは,外観上,共に「FLOUREON」のつづりを共通にし,近似するものであって,「フローリオン」又は「フローレオン」の称呼を共通にするから,互いに類似する商標といわざるを得ない。
また,本件商標の指定商品は,使用商品「防犯用監視カメラ,防犯用映像記録装置,GPSナビゲーション装置,バッテリー,充電器」と同一又は類似の商品を含むものである。
(3)本件商標権者によるその他の商標出願(日本)と,当該出願に係る商標と同一つづりからなる他人の登録商標(外国)について
ア 商標「AudioPipe」について
(ア)本件商標権者
商標の態様:「AudioPipe」
登録第5845960号商標
指定商品:第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日:平成27年11月30日
(イ)権利者:OKURA USA,INC.(米国)(甲39)
商標の態様:「AUDIOPIPE」
登録第3128489号商標
指定商品:第9類に属する商品
出願日:2005年(平成17年)4月6日
イ 商標「GlobalSat」について
(ア)本件商標権者
商標の態様:「GlobalSat」
登録第5845967号商標
指定商品:第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日:平成27年11月30日
(イ)権利者:USGLOBALSAT,INC.(米国)(甲41)
商標の態様:「GLOBALSAT」
登録第3148673号商標
指定商品:第9類に属する商品
出願日:2005年(平成17年)11月2日
ウ 商標「GreaCall」について
(ア)本件商標権者
商標の態様:「GreaCall」
登録第5845972号商標
指定商品:第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日:平成27年12月1日
(イ)権利者:USGLOBALSAT,INC.(米国)(甲43)
商標の態様:「GREATCALL」
登録第3357551号商標
指定商品:第9類,第38類に属する商品及び役務
出願日:2005年(平成17年)12月20日
エ 商標「ABLEGRID」について
(ア)本件商標権者
商標の態様:「ABLEGRID」
登録第5883824号商標
指定商品:第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日:平成27年11月30日
(イ)権利者:Linkednew Corp(米国)(甲45)
商標の態様:「ABLEGRID」
登録第4467705号商標
指定商品:第9類に属する商品
出願日:2013年(平成17年)1月2日
オ 商標「GlowBowl」について
(ア)本件商標権者
商標の態様:「GlowBowl」
登録第5887027号商標
指定商品:第11類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日:平成28年3月30日
(イ)権利者:Gloebowl(米国)(甲48)
商標の態様:「GlowBowl」
登録第4467705号商標
指定商品:第11類に属する商品
出願日:2015年(平成27年)6月10日
(4)むすび
以上からすれば,本件商標権者は,申立人と同じ中国の深セン市所在の法人であり,その取り扱いに係る商品も申立人の使用商品と同一又は類似の商品であって,インターネットの通販サイトを利用して商品の販売をしている販売形態において共通している。
そして,本件商標は,申立人による使用商標の使用開始及び中国における使用商標の商標登録の出願の日の後に我が国に登録出願したものであって,本件商標と使用商標は辞書等に掲載されていない造語であり,その独創性は高いものといえることから,本件商標権者が偶然に使用商標と同じつづりからなる商標を採択したとは想定できず,むしろ,本件商標の出願は,申立人の使用商標の存在を認識し,使用商標が日本において登録していないことを知った上で,申立人の事業を阻害することを目的に剽窃して採択したものと推認できる。
そして,本件商標権者は,上記(3)のとおり,他にも,先に存在する外国における他人の登録商標と,その構成文字のつづりを同じくする商標を,その後,我が国に複数登録出願し,登録していることからも,先の推認の蓋然性は高いものといえる。
してみれば,本件商標の登録出願の経緯には,申立人の使用商標を剽窃するという不正な目的をもって登録出願されたものとして,社会的妥当性を欠くものがあり,その登録を認めることは,健全な商取引の遂行を阻害し,公正な競業秩序を害するものであるから,公序良俗に反するものである。
したがって,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認められるから,商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号に該当し,同条第1項に違反してされたものと認められるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲(使用商標:原本については,甲第7号証を参照。)




異議決定日 2019-07-22 
出願番号 商願2015-117483(T2015-117483) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W09)
最終処分 取消  
前審関与審査官 海老名 友子 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 榎本 政実
平澤 芳行
登録日 2016-04-28 
登録番号 商標登録第5845963号(T5845963) 
権利者 深セン市賽特思科技有限公司
商標の称呼 フローリオン、フローレオン、フルーリオン、フルーレオン 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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