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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 |
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管理番号 | 1361742 |
異議申立番号 | 異議2019-900242 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-08-29 |
確定日 | 2020-03-26 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 登録第6155194号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6155194号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6155194号商標(以下「本件商標」という。)は、「まろやかな果実感」の文字を標準文字で表してなり、平成30年4月13日に登録出願、第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,にごり酒,濁酒,柳陰,マッコリ,ソジュ,発泡性清酒,発泡性焼酎,発泡性濁酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒,アルコール飲料(ビールを除く。)」を指定商品として、令和元年6月11日に登録査定され、同月21日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 1 登録異議申立人「小見拓美」(以下「申立人1」という。)の理由 申立人1は、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第59号証を提出した。 (1)「まろやかな」について 「まろやか」の文字は、「味などが、おだやかなさま。」を意味し(甲2)、酒類を取り扱う業界において、「まろやかな口当たり」「まろやかな味わい」などのように、「おだやかな味で」程の意味で普通に使用されている(甲3?甲21)。 また、特許庁の審査例、審決例などを見ると、酒類その他飲食料品を取り扱う業界で「まろやか」の文字は、ツンとくるような独特の激しさのかどがとれて柔らかくなった手頃な味を指称する語であり、品質表示として普通に使用されていると繰り返し判断されている(甲22?甲26)。 そうすると、本件商標の構成中「まろやかな」の文字部分は、その指定商品について、単に商品の品質を表示するものといえる。 (2)「果実感」について 「果実感」の文字は、「果実」と「感」を組み合わせたものであるが、その文字から「果実の感じ、果実を感じること」程の意味合いを容易に認識でき、かかる意味合いで一般に使用され、酒類を取り扱う業界において「果実感」をうたった各種の商品が製造・販売されている(甲20、甲21、甲27?甲45)。 また、特許庁の審査例を見ると、酒類その他飲食料品を取り扱う業界で「果実感」の文字は、果実の食感や味わいなどが感じられることを指称する語であり、品質表示として普通に使用されていると繰り返し判断されている(甲46?甲52)。 そうすると、本件商標の構成中「果実感」の文字部分は、その指定商品について、単に商品の品質を表示するものといえる。 (3)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について 上記のとおり、本件商標の構成中「まろやかな」の文字部分は、「おだやかな味で」程の意味合いを表し、酒類を含む飲食料品を取り扱う分野において「まろやかな味」のように、飲食料品の味を表すものとして使用されている。そして、本件商標の構成中「果実感」の文字部分からは、「果実の感じ、果実を感じること」程の意味合いを容易に認識でき、「果実感」をうたった各種の商品が製造・販売されている。 さらに、「まろやかな果実感」の文字も一般的に使用されているので、「まろやかな」と「果実感」とを組み合わせることが、特異であるともいえない(甲53?甲58)。 加えて、商標権者の子会社の宝酒造株式会社が「樽貯蔵熟成酒の芳醇でキレのある味わいと、沖縄産海水塩の塩レモンペーストが織りなす“まろやかな果実感”」「飲みごたえアップ!こだわりの塩でまろやかな果実感」と表示して商品紹介をしているとおり、本件商標は、自他商品識別標識として理解される態様で使用されていない(甲59)。その表示に接する需要者も、その表示中「まろやかな果実感」の文字を商品の特徴を表示しているにすぎないものと容易に認識できる。 そうすると、「まろやかな果実感」の文字をその指定商品中、例えば「果実酒」、「果実を加味した商品」、「果実風味の商品」に使用しても、これに接する需要者は、その商品が「おだやかな味で、果実の食感を有する商品」程の意味合いを認識するにとどまり、単に商品の品質を表示したものと理解する。また、本件商標は、「まろやかな果実感」の文字を標準文字で表してなるので、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標にすぎない。 したがって、本件商標は、商標法3条第第1項第3号に該当し、前記意味合いに照応する商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。 2 登録異議申立人「伊東邦子」(以下「申立人2」という。)の理由 申立人2は、本件商標は商標法第3条第1項第6号に該当し、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第42号証を提出した。 (1)本件商標の構成及び取引の実情などについて 本件商標の構成中「まろやか」の文字は、「口あたりが柔らかいさま。味がおだやかなさま。」を意味する語として広く親しまれており(甲2)、酒類業界において、「ウイスキー、ビール、葡萄酒等の醸造酒について、熟成という酸化作用によって、きつい、ツンとくるようなアルコール独特の激しさのかどがとれて柔らかくなった手頃な飲み味を指称するものとして普通に使用されている」ことは、周知の事実であり、特許庁においても顕著な事実とされている(甲3)。 そして、酒類その他の飲食料品を取り扱う業界において、「まろやか」の文字は、例えば「こくのあるまろやかな酒」(甲2)などのように、口あたりが柔らかい、あるいは味がおだやかなことを表示する場合に、「まろやかな○○」と普通に使用されている(甲4?甲7)。 また、「果実感」の文字は、「液果のうち、食用となるもの。くだもの。」の意味を有する「果実」と、「感じ。」の意味を有する「感」を組み合わせた語にすぎず(甲2)、果物を原材料とした商品あるいは果物風味の商品に関し、「果実の感じがする」ことを表すものとして普通に理解されている(甲8?甲18)。 そうすると、本件商標を構成する「まろやかな」と「果実感」とは、商品の品質を表すものとして認識させるものであり、どちらも、商品の宜伝広告に一般に使用される語句といえる。しかも、本件商標は、全体として「まろやかで、果実感がある」ほどの意味合いを想起させるにすぎない。 さらに、本件商標の指定商品には「まろやかで、果実感のある商品」が含まれることが明らかであり、「まろやかな果実感」すなわち「まろやかで、果実感がある」ことは、当然商品の特性や優位性を表すものと認識されることである。 (2)商標法第3条第1項第6号該当性について 上記のとおり、本件商標からは「まろやかで、果実感がある」ほどの意味合いを看取でき、需要者は、本件商標を自他商品識別の標識と認識するというよりは、「まろやかで、果実感のある商品」であることを端的に表現した宜伝広告の一種と認識し理解することは明らかといえる。そして、本件商標は、その構成態様についても、標準文字で表してなるため、顕著な特徴もない。 そうすると、本件商標の指定商品との関係で、「まろやかな果実感」の文字は、人の注意をひくように工夫した宣伝文句、あるいは商品の特性や優位性を表すものと認識され得るものであり、その他に、商品の宣伝広告以外を認識させる事情も特にない。 したがって、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、需要者は顧客の吸引、販売促進等のための宣伝広告の一類型を表示したものと理解するにとどまり、何人かの業務に係る商品であることを認識できないものといえる。 (3)特許庁の拒絶例について 本件商標を構成する「まろやかな」及び「果実感」の各文字が商品の品質を表すものとして認識させるものであることは、特許庁の過去の拒絶例からも容易に理解できる(甲19?甲42)。 第3 当審の判断 1 商標法第3条第1項第3号及び同項第6号該当性について (1)申立人1及び申立人2提出の証拠によれば、本件商標に係る登録査定の日前のものと確認できないものも含むが、「まろやかな」の文字が「焼酎」「ワイン」「酎ハイ」「清酒」などの商品説明において「まろやかな口当たり」「まろやかな味わい」「まろやかな飲み口」などのように用いられていること(申立人1提出の甲3?甲20。申立人2提出の甲5?甲7。以下「申立人1甲3?甲20」、「申立人2甲5?甲7」のようにいう。)、及び「果実感」の文字が「ワイン」「リキュール」「酎ハイ」などの商品説明において「甘い果実感」「果実感たっぷり」「爽やかな果実感」「熟れた果実感」「みずみずしい果実感」「果実感あふれる」「レモン2個分の果実感」などのように用いられていること(申立人1甲20、甲21、甲27?甲45。申立人2甲8?甲18)が認められる。 しかしながら、「まろやかな果実感」の文字が用いられていると確認できる証拠(申立人1甲53?甲59)のうち、本件商標に係る登録査定の日前のものと認め得るのは3件(申立人1甲55?甲57)のみであって、1件はワインの説明に用いられているものの、他の2件は居酒屋で提供するメニュー(ドリンク)の説明に用いられているものである。 (2)上記(1)の事実からすれば、「まろやかな」及び「果実感」の各文字は、本件商標の指定商品に含まれる「ワイン(果実酒)」「酎ハイ」などについて、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないといえるとしても、「まろやかな果実感」の文字は、本件商標に係る登録査定時において、本件商標の指定商品中のいずれかの商品について、その商品の具体的な品質を表示するものとして一般に用いられているものとはいえず、また、本件商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の品質等を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。 さらに、「まろやかな果実感」の文字は、本件商標の指定商品の広告などにおいて一般に用いられているものとはいえず、その他、当該文字が何人もその使用を欲するもの、及び自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものというべき事情も発見できなかった。 (3)そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者をして商品の品質を表示したものと認識させることのないものであって、自他商品識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならない。 したがって、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同項第6号のいずれにも該当するものといえない。 2 商標法第4条第1項第16号該当性について、 本件商標は、上記1のとおり、本件商標の指定商品の品質を表示するものではないから、これをその指定商品に使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれのないものといわなければならない。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。 3 申立人の主張について 申立人1及び申立人2は,「まろやか」の文字及び「果実感」の文字を含む商標について、過去の審決例(申立人1甲22?甲24、申立人2甲3)及び商標法第3条第1項第3号、同項第6号又は同法第4条第1項第16号により拒絶された商標登録出願例(申立人1甲25、甲26、甲46?甲52、申立人2甲19?甲42)を挙げて、本件商標も同様に商標登録を受けることができない旨を主張している。 しかしながら、これらの審決例及び商標登録出願例は、本件商標とは、構成文字が異なり、事案を異にするものであり、かつ、個別の事案の登録性の有無の判断については、過去の審決例に拘束されることなく行われるべきであるから、これらの事例の存在が上記の判断を左右するものではない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2020-03-16 |
出願番号 | 商願2018-47607(T2018-47607) |
審決分類 |
T
1
651・
16-
Y
(W33)
T 1 651・ 13- Y (W33) T 1 651・ 272- Y (W33) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 堀内 真一、馬場 秀敏、上山 達也 |
特許庁審判長 |
金子 尚人 |
特許庁審判官 |
大森 友子 平澤 芳行 |
登録日 | 2019-06-21 |
登録番号 | 商標登録第6155194号(T6155194) |
権利者 | 宝ホールディングス株式会社 |
商標の称呼 | マロヤカナカジツカン |
代理人 | 特許業務法人みのり特許事務所 |