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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W09354142 審判 全部申立て 登録を維持 W09354142 審判 全部申立て 登録を維持 W09354142 審判 全部申立て 登録を維持 W09354142 審判 全部申立て 登録を維持 W09354142 |
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管理番号 | 1361741 |
異議申立番号 | 異議2019-900196 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-07-16 |
確定日 | 2020-03-26 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6138001号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6138001号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6138001号商標(以下「本件商標」という。)は,「バイタリティデザイン」の片仮名を標準文字で表してなり,平成30年6月19日に登録出願,第9類「電子応用機械器具及びその部品,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」,第35類「広告業,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,マーケティング,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,広告用具の貸与」,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,映画・演芸又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音響・映像・静止画及び動画の制作並びに演奏又は上映,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),娯楽施設の提供,娯楽の提供」及び第42類「電子計算機用プログラムの提供,電子計算機の貸与,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を指定商品及び指定役務として,同31年3月19日に登録査定,同年4月12日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立てに引用する商標は,以下の18件であり,いずれも,登録商標として現に有効に存続しているものである(以下,これら18件の商標をまとめていうときは「引用商標」という。)。 (1)登録第4997419号(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 登録出願日:平成18年1月20日 設定登録日:平成18年10月20日 指定役務:第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 (2)登録第5604104号(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:平成24年5月25日 設定登録日:平成25年8月2日 指定役務:第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 (3)登録第6001061号(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:VITALITY(標準文字) 登録出願日:平成27年11月11日 設定登録日:平成29年12月1日 指定商品・役務:第9類,第35類及び第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (4)登録第5873772号(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:平成27年11月12日 設定登録日:平成28年8月12日 指定役務:第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 (5)登録第5877188号(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:平成27年11月12日 設定登録日:平成28年8月26日 指定役務:第35類及び第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 (6)登録第5911449号(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:VITALITY AGE 登録出願日:平成28年1月26日 設定登録日:平成29年1月6日 指定役務:第35類,第36類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 (7)登録第5902420号(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:VITALITY(標準文字) 登録出願日:平成28年5月16日 設定登録日:平成28年12月2日 指定役務:第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 (8)登録第5921363号(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:VitalityDrive 登録出願日:平成28年8月1日 設定登録日:平成29年2月10日 指定商品・役務:第9類,第35類及び第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (9)登録第5929047号(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:Vitality Shared-Value Insurance 登録出願日:平成28年9月23日 設定登録日:平成29年3月3日 指定役務:第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 (10)登録第5964359号(以下「引用商標10」という。) 商標の構成:VITALITY ACTIVE REWARDS 登録出願日:平成28年9月23日 設定登録日:平成29年7月14日 指定商品・役務:第9類,第35類及び第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (11)登録第5964360号(以下「引用商標11」という。) 商標の構成:VITALITY ACTIVE 登録出願日:平成28年9月23日 設定登録日:平成29年7月14日 指定商品・役務:第9類,第35類及び第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (12)登録第5964361号(以下「引用商標12」という。) 商標の構成:Japan Vitality Project 登録出願日:平成28年9月28日 設定登録日:平成29年7月14日 指定商品・役務:第9類,第35類,第36類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (13)登録第5964362号(以下「引用商標13」という。) 商標の構成:Vitality-Know Your Health 登録出願日:平成28年9月29日 設定登録日:平成29年7月14日 指定商品・役務:第9類,第35類,第36類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (14)登録第5964363号(以下「引用商標14」という。) 商標の構成:Vitality-Making People Healthier 登録出願日:平成28年9月29日 設定登録日:平成29年7月14日 指定商品・役務:第9類,第35類,第36類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (15)登録第5984903号(以下「引用商標15」という。) 商標の構成:Vitality Reward Partner 登録出願日:平成28年10月7日 設定登録日:平成29年9月29日 指定商品・役務:第9類,第35類,第36類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (16)登録第5972922号(以下「引用商標16」という。) 商標の構成:VITALITY HEALTHIEST WORKPLACE 登録出願日:平成28年10月18日 設定登録日:平成29年8月18日 指定役務:第35類,第36類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務 (17)登録第6025808号(以下「引用商標17」という。) 商標の構成:Vitality 年齢 登録出願日:平成29年6月15日 設定登録日:平成30年3月9日 指定商品・役務:第9類,第35類,第36類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 (18)登録第6050077号(以下「引用商標18」という。) 商標の構成:Vitality コイン 登録出願日:平成29年10月3日 設定登録日:平成30年6月8日 指定商品・役務:第9類,第16類,第35類,第36類,第41類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第49号証を提出した。 (1)引用商標の周知性について 申立人は,1992年に設立された南アフリカに拠点を置く金融サービスグループであり,様々なブランドを通じて保険,資産管理,貯蓄,投資及び従業員給付に従事している。 グループには,南アフリカ,英国,米国,中国,シンガポール,オーストラリア等各国に子会社がある(甲20)。 引用商標である「VITALITY」は,現在,世界で約1,130万人が加入している健康増進プログラムの名称で,申立人が生み出したのが「健康増進型」と呼ばれる新しい保険のモデルである。 「VITALITY」は,欧米やシンガポール,オーストラリアなど世界21か国の保険会社等で採用されており,我が国では,2016年7月に「VITALITY」を発表し,マーケティング及びプロモーション活動を開始した。2018年には,住友生命保険相互会社が,“住友生命「VITALITY」”のサービスを開始し,開始から4か月で加入者は12万人を突破し(甲21?甲38),現在までに,保険証券の販売額は282億円に達している。 ちなみに,「VITALITY」商品については,日本の厚生労働省や経済産業省から賞を受賞している(甲39,甲40)。 申立人は,宣伝広告にも余念がなく,アップル社やアディダス社,スターバックス社などその分野において社会的影響力の強い企業と提携したり,TVコマーシャル,スポーツ界や芸能界の有名人とのタイアップ,スポーツイベントの実施,各種スポンサー活動,各種競技会の後援等の販売促進に力を入れており,これまで我が国では販促費に約6億円を投じている。 また,インターネットのGoogle検索で「VITALITY」の語を入力して検索すると,この語が辞書に掲載されている既成語であるにもかかわらず,検索結果100件中のほぼ半分である49件が,申立人(住友生命保険相互会社含む)の商品・役務に関する記述であり(甲41),このことから,引用商標は,我が国で相当程度の周知性を獲得している。 (2)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は,「バイタリティデザイン」の文字を書してなるところ,「デザイン」は,“企画立案を含んだ設計あるいは意匠”との意味を有するところ(甲42),本件商標後半部の「デザイン」の語自体は,本件指定商品・役務の内容を記述的に表すものである。すなわち,第9類「電子応用機械器具」の設計,第35類「広告」の立案,第41類「セミナーの企画」,第42類「電子計算機用プログラムの設計」など,それら商品・役務との関係では,極めて自他商品・役務識別力の弱い語である。 すると,本件商標中,需要者に対し出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分は,「バイタリティ」であるといえ,「バイタリティ」と「デザイン」それぞれの語をもって取引に資される場合もあることは経験則の教えるところであり,本件商標からは「バイタリティデザイン」のほか,「バイタリティ」や「デザイン」の称呼が生じ得る。 一方,引用商標は,欧文字「VITALITY」をはじめとして,これをややデザイン化したもの,他の語を付加して「VITALITY ○○」の構成からなるものがあるが,これら引用商標の要部は,一貫して「VITALITY」であり,引用商標からは,それぞれ「バイタリティ」の称呼が生じる。 本件商標中「デザイン」の称呼が引用商標と類似であるとはいえないとしても,本件商標の要部ともいえる「バイタリティ」の称呼が引用商標1ないし引用商標5,引用商標7のそれと同一であるため,両商標の称呼は類似する。また,「バイタリティ」の語は,“生命力,活力,活気”などの意味を有するところ(甲43),本件商標からは,需要者の最も目をひく語頭の「バイタリティ」の部分をもって取引される場合もあり,これは,引用商標1ないし引用商標5,引用商標7から生じる上記意味合いと同一である。 よって,両商標は観念上も紛らわしく,需要者,取引者に同様の印象を与えるものであり,さらに,本件商標と引用商標は,第9類,第35類及び第41類において,類似群コードを共通とする類似商品・役務を指定している。また,第42類では,本件商標の「電子計算機用プログラムの提供」が,引用商標の「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる「電子計算機用プログラム」と備考類似の関係にある。 以上より,本件商標と引用商標とは,「バイタリティ」の称呼・観念を共通とする類似の商標といわざるを得ない。 (3)商標法第4条第1項第15号について 申立人の「VITALITY」は,指定商品・役務の分野において十分周知となっているところ,本件商標は,申立人の周知商標を片仮名にしてそのまま含んでおり,引用商標とは関連付けて認識される可能性があるもので,両商標の類似性の程度は決して低いとはいえない。すると,引用商標と類似する本件商標がその指定商品に使用された場合,需要者が申立人の業務に係る商品と混同するおそれがある。 よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第19号について 申立人は1992年から保険業を生業とし,引用商標「VITALITY」は本件商標の登録出願日より前から申立人に係る商標として世界的に周知・著名性を獲得している。 そのような状況下,本件商標の語頭に「バイタリティ」の文字を付し,外観及び称呼上も紛らわしい商標を採択した本件商標の権利者には,引用商標の有する周知・著名性へのフリーライドの意図,出所表示機能の稀釈化の意図という不正の意図があったと考えざるを得ない。 そして,近年のインターネット等の通信網の普及及び申立人の販促活動などを通じて,本件商標の商標権者も引用商標の周知性は十分認識しうる立場にあったことは容易に推測できる。 よって,本件商標は,第4条第1項第19号に該当する。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 申立人は,前記2の引用商標を引用して,これらの商標を「VITALITY」と称し,世界で約1,130万人が加入している「健康増進プログラム」の名称として,周知性を獲得していると主張した上で,本件商標は,「バイタリティー」の称呼及び観念を共通とする類似の商標であるから,これを本件指定商品及び指定役務について使用するときは,商品及び役務の出所につき混同を生ずるおそれがある旨主張する。 しかし,商標法第4条第1項第15号は,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し,商標の自他識別機能を保護することによって,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,取引者,需要者の利益を保護することを目的とするものであるから,保護されるべき商標が周知著名であることを要すると解すべきである(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10106号 平成18年12月19日判決参照)ところ,申立人の提出した証拠によれば,我が国において,2012年(平成24年)5月8日に発売が開始された申立人の保険商品(健康増進プログラム)の名称は,「Vitality」の欧文字を横書きしてなる構成の商標(以下「使用商標」という。)であり,引用商標が全て使用されているというものではない(なお,使用商標は,別掲3のとおりの構成よりなる引用商標4及び引用商標5と実質的に同一の構成よりなるものである。)。 イ 引用商標の著名性 申立人の提出に係る甲各号証及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。 (ア)申立人は,1992年に設立され南アフリカに本社を置く保険サービスグループであり,「Vitality」と称する保険商品は,1997年に南アフリカで開始,世界10か国以上,約350万人の保険加入者に提供していることが「住友生命ニュースリリース」に記載されている(甲20)。 (イ)我が国においては,2016年7月21日に,申立人,ソフトバンク株式会社及び住友生命保険相互会社(以下「住友生命」という。)の三社が「Japan Vitality Project」を発表し,申立人が開発した保険商品(健康増進プログラム)「Vitality」を「住友生命『Vitality』」として発売した。そして,ソフトバンク株式会社と住友生命は,上記保険のパートナー契約を締結し,パートナー企業としてIoTなどを活用して,契約者の健康状態の把握に役立つ特典を提供することが新聞記事として記載されている(甲25,甲26)。 (ウ)申立人が開発した保険商品(健康増進プログラム)「Vitality」の保険加入者は,健康になればなるほど見返りが得られ,定期的にジムに行き,野菜を食べ,健康診断を受ける顧客に,保険料割引や提携企業のサービス特典といった「報酬」が与えられ,加入者は,健康的な行動を取ると保険料が安くなり,各社は顧客がより健康的でより長く生きることでそのお金を投資に回し,成長につなげることができること等が,新聞記事やインターネット情報で紹介されている(甲21?甲38)。また,2019年2月末現在,世界で1,010万人が加入し,我が国では,住友生命の発売開始(2018年7月)後の累計(2019年3月時点)が約20万件とされ(甲39),現在までに,保険証券の販売額は282億円に達していると主張しているが,これを裏付ける証拠の提出はない。 (エ)申立人は,アップル社やアディダス社,スターバックス社など社会的影響力の強い企業と提携したり,TVコマーシャル,スポーツ界や芸能界の有名人とのタイアップ,スポーツイベントの実施,各種スポンサー活動,各種競技会の後援等の販売促進に力を入れ,我が国では販促費に約6億円を投じていると主張している。 (オ)上記(ア)ないし(エ)において認定した事実によれば,使用商標は,申立人の業務に係る保険商品「健康増進プログラム」に使用する商標であり,該保険商品は,南アフリカにおいては1997年(平成9年:甲20)から,我が国においては住友生命により2018年(平成30年:甲25)から発売していることがうかがえるとしても,証拠として提出された資料は,住友生命作成による,申立人,ソフトバンク株式会社及び住友生命の三社による「Japan Vitality Project」と題する保険商品の説明書(甲20),住友生命が我が国で「住友生命『Vitality』」を発売している新聞記事等(甲21?甲38),住友生命作成による当該保険商品の受賞歴(甲39)であり,我が国及び外国においてその周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,申立人の業務に係る商品を広告・宣伝した期間,回数及びその方法,あるいは,販売時期,販売地域及び販売数等,その取引状況を具体的に示す証拠の提出はないから,申立人提出の上記証拠によっては,使用商標の使用状況を把握することができず,使用商標の周知性の程度を推し量ることができない。 また,2019年2月末現在,世界で1,010万人が加入し,我が国では発売開始後の累計が約20万件で,その販売額は282億円に達し,我が国の販促費に約6億円を投じていると主張しているが,当該内容が事実であることを裏付ける資料の提出はなく,その記載内容について客観性が認められず,我が国及び外国における販売(発売)数,売上高など販売実績を示す証拠は見いだせないことから,これらの証拠によっては,我が国における市場占有率(販売シェア)等の量的規模及び使用商標の使用状況を把握することができない。 その他,申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても,使用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国及び外国の取引者,需要者の間で,申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。 したがって,提出された証拠によっては,使用商標が,我が国及び外国において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識され,本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められないものである。 加えて,使用商標とその態様をほぼ同じくする引用商標4及び引用商標5以外の引用商標の周知性については,これを認めるに足りる証拠の提出はないから,その周知性は認められない。 ウ 出所の混同について 本件商標は「バイタリティデザイン」の片仮名からなるのに対し,使用商標は「Vitality」の欧文字からなるものであるから,両者は,その外観において全く別異のものであり,また,下記(2)において判断するとおり,本件商標から「バイタリティ」の文字のみを分離して他の商標と比較することは許されないというべきであるから,両者の類似性の程度は決して高いものではない。 そして,使用商標は,上記イのとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る役務を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものであり,さらに,使用商標は,「生命力,活力」の意味を有する比較的平易な英語であるから,その独創性の程度は高いとはいえないものである。 また,本件商標の指定商品・役務と使用商標に係る役務とは,その用途や目的が全く異なるものであり,需要者の範囲も異なるものであって,取引の実情も一致するというべき事情は見いだせないから,両者の関連性及び需要者の共通性は低いものである。 以上のことからすれば,本件商標をその指定商品・役務について使用した場合には,これに接する取引者,需要者が使用商標ないし申立人を連想,想起するようなことはないというべきである。 してみれば,本件商標をその指定商品・役務に使用しても,該商品・役務が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品・役務であるかのように,商品・役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。 その他,本件商標と引用商標が,取引者及び需要者において出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標について 本件商標は,上記1のとおり,「バイタリティデザイン」の文字からなるところ,その構成各文字は,同書及び同大であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであって,「バイタリティ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。 また,該文字から生じる「バイタリティデザイン」の称呼も,格別冗長というべきものでなく,無理なく一連に称呼し得るものである。 その他,本件商標について,その構成中の「バイタリティ」の文字部分を取り出して他の商標と比較することが許されるような事情を見いだすことはできない。 したがって,本件商標は,その構成文字全体に相応して「バイタリティデザイン」の称呼のみを生じ,また,該文字は辞書等に載録されていないものであるから,一種の造語と理解され,これより特定の観念を生じないものである。 イ 引用商標1ないし引用商標5及び引用商標7(以下,これらをまとめて「引用商標A」という。)について 引用商標1及び引用商標2は,図形と「Vitality」の欧文字の組み合わせからなるところ,該図形部分と文字部分とは,特別な関連性を有するものではないから,それぞれ独立して自他役務の識別標識として機能を果たす要部と認識され,該図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じないが,文字部分からは「バイタリティー」の称呼を生じ,「生命力,活力」の観念を生ずるものである。 引用商標3及び引用商標7は,「VITALITY」の文字を標準文字で表し,引用商標4及び引用商標5は,「Vitality」の欧文字を筆記体風に横書きしてなるから,その構成文字に相応して,それぞれ「バイタリティー」の称呼を生じ,「生命力,活力」の観念を生ずるものである。 ウ 本件商標と引用商標Aとの類否 (ア)本件商標と引用商標Aとの類否について検討すると,両者は,外観においては,それぞれ上記ア及びイのとおりの構成からなるものであって,その構成態様において,両者は明らかに相違するものであるから,見誤るおそれはなく,外観上,明確に区別し得るものである。 (イ)称呼においては,本件商標から生じる「バイタリティデザイン」の称呼と,引用商標Aから生じる「バイタリティー」の称呼とは,長音の有無及び語尾の「デザイン」の音の有無に差異があることから,これら差異音及び音数の相違により,明瞭に聴別できるものである。 (ウ)観念においては,本件商標は特定の観念を生じない造語であるから,「生命,活力」の観念を生じる引用商標Aとは観念において紛れるおそれはない。 (エ)以上よりすると,本件商標と引用商標Aとは,外観,称呼及び観念において相紛れるおそれのないものであるから,十分に区別することができる非類似の商標というべきである。 エ 引用商標6及び引用商標8ないし引用商標18(以下,これらをまとめて「引用商標B」という。)について 引用商標Bは,前記2のとおり「Vitality」又は「VITALITY」の文字をその構成中に含む構成からなるところ,その構成全体が1行でまとまりよく一体的に表されているものであって,その構成中の「Vitality」又は「VITALITY」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできないから,その構成文字全体に相応した称呼を生ずるものであり,特に,「バイタリティー」のみの称呼は生じないというべきである。 また,引用商標Bは,それぞれ特定の意味合いを表す語として知られているものともいえないことから,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として看取,理解されるとみるのが相当であって,特定の観念を生じることのないものである。 オ 本件商標と引用商標Bとの比較 (ア)本件商標と引用商標Bとの類否について検討すると,外観においては,それぞれ上記ア及びエのとおりの構成からなるものであって,その構成態様において,明らかに相違するものであるから見誤るおそれはなく,両者は,外観上,明確に区別し得るものである。 (イ)称呼においては,本件商標から生じる「バイタリティデザイン」の称呼と,引用商標Bから生じるそれぞれの称呼とは,明瞭に聴別できるものである。 (ウ)観念においては,本件商標と引用商標Bとは,それぞれ特定の観念を生じないから,比較することができない。 (エ)以上よりすると,本件商標と引用商標Bとは,観念において比較することができないものであるとしても,外観及び称呼において明らかに異なるものであるから,十分に区別することができる非類似の商標というべきである。 カ 小括 上記ウ及びオのとおり,本件商標は,引用商標とは非類似の商標であるから,本件商標の指定商品及び指定役務が,引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似であるとしても,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第19号該当性について 上記(2)において認定したとおり,本件商標は,引用商標と非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。 また,上記(1)のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る役務を表すものとして,我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたと認められないものであるから,引用商標が需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に,本件商標は不正の目的をもって使用するものであるとする申立人の主張は,その前提を欠くものであり、採用できない。 また,申立人が提出した証拠からは,本件商標権者が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的,その他の不正の目的を持って剽窃的に本件商標を出願し,登録を受けたと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (4)まとめ 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号,同第15号及び同第19号のいずれにも該当するものではなく,同法第4条第1項の規定に違反して登録されたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(引用商標1) 別掲2(引用商標2) 別掲3(引用商標4,引用商標5) |
異議決定日 | 2020-03-16 |
出願番号 | 商願2018-80341(T2018-80341) |
審決分類 |
T
1
651・
263-
Y
(W09354142)
T 1 651・ 271- Y (W09354142) T 1 651・ 222- Y (W09354142) T 1 651・ 261- Y (W09354142) T 1 651・ 262- Y (W09354142) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐藤 純也、竹之内 正隆 |
特許庁審判長 |
冨澤 美加 |
特許庁審判官 |
山田 正樹 鈴木 雅也 |
登録日 | 2019-04-12 |
登録番号 | 商標登録第6138001号(T6138001) |
権利者 | 株式会社電通 |
商標の称呼 | バイタリティデザイン、バイタリティ |
代理人 | 土生 真之 |
代理人 | 川本 真由美 |
代理人 | 佐々木 美紀 |
代理人 | 中村 仁 |
代理人 | 山尾 憲人 |