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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 |
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管理番号 | 1360709 |
異議申立番号 | 異議2019-900213 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-08-02 |
確定日 | 2020-03-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6141976号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6141976号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6141976号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成30年6月22日に登録出願され、第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同31年3月7日に登録査定、令和元年5月10日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する標章 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、申立ての理由において、本件商標が商標法第4条第1項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当するとして、引用する標章は、次の1及び2のとおりである。 1 「GIANT KILLING」の欧文字からなる標章(以下「引用標章1」という。)。 2 別掲2に示すとおり、「GIANT」「KILLING」の欧文字及び「ジャイアント・キリング」の片仮名からなる標章(以下「引用標章2」という。)。 3 別掲3に示すとおり、「GIANT」「KILLING」の欧文字及び「ジャイアントキリング」の片仮名からなる標章(以下「引用標章3」という。)。 以下、上記の引用標章1ないし引用標章3をまとめていうときは、「引用標章」という。 第3 登録異議の申立ての理由 1 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同項19号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第15号について 本件商標は、「GIANT」及び「KILLING」を二段に横書きしたものを右方向に90度回転させ、その左に「ジャイアントキリング」の文字を縦書きしてなるものであるところ、同文字及び態様は、ツジトモ氏を作者、綱本将也氏を原案とし、申立人が発行する漫画作品(以下「本件漫画」という。)の表題を表すものとして、また、同漫画を原作とするアニメ作品(以下「本件アニメ」という。)の表題を表すものとして広く認識されている。 以下、ツジトモ氏、綱本将也氏及び申立人をまとめて「申立人ら」という場合がある。 そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合には商品の出所について混同を生ずるおそれがある。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第19号について 引用標章は、上記(1)のとおり、本件漫画及び、それに基づいて製作された本件アニメに係るものとして、日本国内において、需要者の間に広く認識されているものである。 そして、本件商標は、引用標章に酷似する構成をあえて採用するものであり、人気の高い漫画及びそのアニメの有する顧客誘引力を無償で利用するものといえるから、不正競争行為にあたる。 また、本件商標の使用時において、本件商標が登録された態様から90度回転させることにより標章を引用標章により接近させて略同一の態様によって使用していることから、不正競争行為の意図が強く推認される。 したがって、本件商標は、不正の目的をもって使用するものであると言えるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第7号について 本件商標は、本件漫画及び本件アニメのロゴタイプに酷似した標章を商品化権者である申立人に無断で出願、登録したものであるから、このような登録は、社会公共の利益に反する。 また、本件商標の指定商品は酒類であるところ、引用標章に酷似する本件商標を付した酒類が販売された場合、その取引者、需要者は、その酒類が、あたかも申立人らと経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品と誤認したり、その同意のもとで酒類が販売されていると信用するおそれがあり、本件商標を付した酒類の販売は、取引秩序に反し、一般的道徳観念に照らして不当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用標章の周知性について 申立人の提出に係る甲各号証及び申立人の主張によれば、以下のとおりである。 (1)本件漫画は、ツジトモ氏を作者、綱本将也氏を原案とする、プロサッカーチームの活躍をテーマとする漫画作品である(甲2?甲7)。 (2)本件漫画は、申立人が刊行する漫画誌「モーニング」に2007年(平成19年)1月25日号より連載が開始され(甲2の1)、2019年(平成31年)3月7日号に至るまで12年以上の長期にわたり継続して連載されている(甲2の2)。2007年(平成19年)4月23日に漫画単行本の第1巻が発行され(甲3の1)、2019年(令和元年)7月23日には、漫画単行本の第52巻が発行され(甲3の2)、電子書籍としても配信されている(甲4、甲5)。 (3)申立人は、同人の作成に係る「報告書」(令和元年8月28日付け)(以下「報告書」という。)において、単行本の累計発行部数は、紙媒体の書籍について1,695万3,000部(第52巻まで)、電子書籍について209万78部(2019年(令和元年)6月末日まで 単行本換算)、合計1,904万3,078部に達する旨、述べている(甲8)。 (4)本件漫画は、申立人が主催する「平成22年度第34回講談社漫画賞」を受賞している(甲10)ほか、第2回とらのあなコミック&ノベル大賞を受賞し、宝島社「このマンガがすごい!2008」オトコ編6位、「このマンガがすごい!2009」オトコ編3位となった(甲11)。 (5)本件漫画は、2010年(平成22年)には、NHKの制作によりアニメ化され、NHKBS2にて同年4月から9月まで全国でテレビ放送された(甲8、甲11)。本件アニメのテレビ放送後、本件アニメのDVDが9巻(26話分)発行されている(甲6、甲7)。 (6)申立人は、同人の作成する「報告書」において、本件アニメのDVDの累計販売数は3万1,157本に達しており(2019年(令和元年)8月19日まで・セルDVD及びレンタル用DVD合計)。また、本件アニメをAbemaTV、U-NEXT、Hulu、JCOMオンデマンドなどの動画配信サイト15業者にて鑑賞することができる旨、述べた(甲8)。 (7)本件漫画の表記は、欧文字「GIANT KILLING」を横書きしたものをはじめいくつかのパターンがあり、特にアニメ化以降、欧文字の太字サンセリフ体で「GIANT」と5字を横書きし、その下段に「KILLING」7字を「GIANT」と同幅になるように横書きし、その下に「ジャイアント・キリング」あるいは「ジャイアントキリング」と片仮名を添えた、独特の構成態様の引用標章2又は引用標章3が、DVD、Jリーグサッカーチームとのコラボレーション商品(ハンドタオル、マフラータオル、クッション、ポストカード)等にしばしば採用されている(甲4?甲7、甲12、甲15、甲17)。 (8)上記(1)ないし(7)において認定した事実によれば、本件漫画は、ツジトモ氏を作者、綱本将也氏を原案とする、プロサッカーチームの活躍をテーマとする漫画作品であり、これは、2007年(平成19年)1月頃から2019年(令和元年)に至るまで、申立人が刊行する漫画誌「モーニング」において継続して連載されていること、そして、本件漫画は、2010年(平成22年)にNHKの制作によりアニメ化され、BS2にてテレビ放送されたこと、そのテレビ放送後に、本件アニメのDVDが発行されたこと及び本件アニメを複数の動画配信サイトで鑑賞できることがうかがえる。 また、引用標章は、本件漫画の表題として使用され、欧文字「GIANT KILLING」を横書きしたものをはじめいくつかのパターンがあり、引用標章2又は引用標章3が、アニメ「GIANT KILLING」の電子書籍、DVDやJリーグサッカーチームとのコラボレーション商品等で使用されていることがうかがえる。 しかしながら、我が国及び外国において、引用標章の周知性の程度を客観的に判断するための資料、すなわち、申立人の引用標章の使用に係る商品(漫画本、DVD、コラボグッズ等)の広告宣伝の費用、回数及び期間等の広告宣伝の規模、あるいは、申立人の主張する本件漫画の単行本及び電子書籍に関する発行部数や本件アニメのDVDに関する累計販売数等の販売実績を客観的に裏付ける具体的な証拠の提出もないから、申立人提出の上記証拠によっては、引用標章の周知性の程度を推し量ることができない。 そして、本件漫画が、講談社漫画賞(甲10)や第2回とらのあなコミック&ノベル大賞などの賞を受賞(甲11)していたとしても、それらの受賞が、引用標章の周知性を判断する上で、どのような関連性を有するのかは明らかでない。 その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の取引者、需要者の間で、申立人らの業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたと認めるに足る事実は見いだせない。 以上のことを総合勘案すると、申立人から提出された証拠からは、引用標章が、漫画やアニメに関心を抱く者の間ではある程度知られているといい得るとしても、一般の需要者の間にまで広く認識されているものと認めることはできないから、引用標章が我が国及び外国において、申立人らの業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)本件商標と引用標章との類似性の程度について ア 本件商標について 本件商標は、別掲1に示すとおり、「GIANT」及び「KILLING」の文字を90度右に傾けて二段に書してなり、その左横に小さく縦書きで「ジャイアントキリング」と書してなる構成からなるところ、欧文字部分の「GIANT」と「KILLING」は、まとまりよく一体に表されていることから、「GIANT KILLING」と看取されるところ、この語は、「(スポーツで)大物食いの」といった意味を有する英語(「ジーニアス英和辞典 第5版」(第3刷)、2016年4月1日 株式会社大修館書店発行)ではあるものの、我が国において、慣れ親しまれたものとはいい難く、これに接する者をして、一種の造語として認識されるとみるのが相当である。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「ジャイアントキリング」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 イ 引用標章について 引用標章1は、「GIANT KILLING」の欧文字を横書きした構成からなり、上記アと同様に、「ジャイアントキリング」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 引用標章2は、別掲2に示すとおり、「G」の文字をやや大きくあらわした「GIANT」の文字の下段に該「GIANT」の文字と両端をそろえて「KILLING」の欧文字を書し、その下に小さく「ジャイアント・キリング」の片仮名を書してなる構成からなるところ、上記アと同様に、「ジャイアントキリング」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 引用標章3は、別掲3に示すとおり、「G」の文字をやや大きくあらわした「GIANT」の文字の下段に該「GIANT」の文字と両端をそろえて「KILLING」の欧文字を書し、その下に小さく「ジャイアントキリング」の片仮名のを書してなる構成からなるところ、上記アと同様に、「ジャイアントキリング」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用標章との類似性の程度について 本件商標と引用標章とを比較すると、両者は、欧文字部分において、縦二列併記と一段又は二段の横書きの構成の相違はあるものの、「GIANT KILLING」の綴りを同じくするものであるから、外観において酷似し、また、両者は、「ジャイアントキリング」の同一の称呼を生じるものであり、観念において異なるところはないというべきである。 そうすると、これらを総合して勘案すれば、両者は、類似するものであるから、類似性の程度は高いといわざるを得ない。 (2)「GIANT KILLING」の語の創造性の程度について 「GIANT KILLING」の文字は、上記(1)アのとおり「(スポーツで)大物食いの」意味を有する英語として辞書等に載録されている語であり、引用標章の独創性の程度はさほど高いものとはいえない。 (3)本件商標の指定商品と引用標章が使用される商品との関連性並びに商品の取引者及び需要者の共通性について 本件商標の指定商品は、「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」であり、引用標章の使用に係る「漫画本、DVD、その他申立人が示すJリーグサッカーチームとのコラボレーション商品(ハンドタオル、マフラータオル、クッション、ポストカード)等」とは、その需要者の範囲が一部共通にする場合があるとしても、それらの商品を製造、販売する事業者やその用途は大きく異なるものであるから、両者の関連性並びに取引者及び需要者の共通性は低いものである。 (4)出所の混同を生ずるおそれについて 引用標章は、上記1(8)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。 また、上記(1)ウのとおり、本件商標と引用標章との類似性の程度は高いといわざるを得ないものの、上記(2)及び(3)のとおり、引用標章の独創性の程度や本件商標の指定商品と引用標章が使用される商品の関連性並びに取引者及び需要者の共通性は低いものである。 以上を踏まえて、これらを総合して勘案すれば、本件商標は、その商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても、需要者をして引用標章を連想又は想起させることはなく、その商品が、申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 また、その他に、本件商標が、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第19号該当性について 本件商標と引用標章とは、上記2(1)ウのとおり、類似するとしても、上記1(8)のとおり、引用標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたとは認められないことから、引用標章が需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標は不正の目的をもって使用するものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものである。 また、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもってひょう窃的に本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第7号該当性について 申立人は、引用標章の著名性を前提として、本件商標を付した酒類の販売は、あたかも申立人らの同意のもとで取引されるように見せかけるものであり、取引秩序に反し、一般的道徳観念に照らして不当である旨主張する。 しかしながら、上記1(8)のとおり、引用標章は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、本件商標は、これをその指定商品について使用をすることが、引用標章の周知性による信用及び顧客吸引力に便乗するものということはできない。 また、上記3のとおり、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、不正の目的をもってひょう窃的に本件商標を出願し、登録を受けたというような本件商標の出願の経緯に著しく社会的相当性を欠く事実は認められないものである。 その他、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないし、本件商標をその指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されている等の事情も見あたらないことから、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 本件商標(登録第6141976号) 別掲2 引用標章2 別掲3 引用標章3 |
異議決定日 | 2020-02-25 |
出願番号 | 商願2018-87823(T2018-87823) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W33)
T 1 651・ 222- Y (W33) T 1 651・ 22- Y (W33) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中島 光 |
特許庁審判長 |
金子 尚人 |
特許庁審判官 |
岩崎 安子 中束 としえ |
登録日 | 2019-05-10 |
登録番号 | 商標登録第6141976号(T6141976) |
権利者 | 株式会社やまぐち |
商標の称呼 | ジャイアントキリング、ジャイアント、キリング |
代理人 | 特許業務法人中川国際特許事務所 |