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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 1202425
管理番号 1359740 
審判番号 取消2017-300495 
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-07-07 
確定日 2020-02-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第2353908号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2353908号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成1年(1989年)1月24日に登録出願、第17類「被服,布製身回品,寝具類」を指定商品として、同3年(1991年)11月29日に設定登録、同16年(1994年)1月21日に指定商品を第25類「被服」を含む、第5類、第9類、第10類、第16類、第17類、第20類、第21類、第22類及び第24類に属する商標登録原簿に記載の商品とする書換登録がなされている。
その後、指定商品は、平成23年(2011年)7月19日の存続期間の更新登録で、第20類、第24類及び第25類のみとなっている。
そして、本件審判請求の登録は、平成29年(2017年)7月25日にされたものであり、この登録前3年以内の期間を以下「本件要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、平成29年(2017年)10月6日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年11月1日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁1」という。)、同月20日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁2」という。)、同月27日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁3」という。)、同年12月5日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁4」という。)、同月7日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁5」という。)、同30年(2018年)4月16日付け口頭審理陳述要領書(以下「請求人陳述書」という。)、同月27日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁6」という。)、同年6月20日付け上申書(以下「請求人上申書」という。)及び令和1年(2019年)6月6日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁7」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第43号証(枝番を含む。枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)(以下、証拠を表示する際は、「甲1」等と表記する。)を提出した。
1 請求の要旨
本件商標は、商標権者により、少なくとも過去3年以内に日本国内でその指定商品には使用されていないから、本件商標は取り消されるべきものである。
2 弁駁1の要旨
(1)被請求人による本件商標の使用は、「商標使用」ではなく、「デザイン使用」といえる。その使用実態も明確ではなく、被請求人自らが商品を製造、販売した企業であれば、写真撮影等のための見本製作等は簡単にできるものであり、これをもって全国津々浦々の小売店に販売するために「本件商標」及び商品を製造、販売したとはいえない。
(2)被請求人は、第三者「株式会社トランス・ファー」(以下「トランス・ファー社」という。)との商標使用許諾契約書(乙3)を提出するが、それらの使用商標は本件商標ではなく「登録番号第4805259号」であり全く別の商標である。
(3)被請求人は、請求人の50年間程の努力、膨大な費やした時間、それと共に投入した数億円の資金によって作られた「スマイル」の良いイメージや、過去の伝統、歴史、話題性の全てに便乗して金儲けをする目的で、平成3年(1991年)11月29日に本件商標を商標登録したものであり、それ以前に日本では「スマイル」が有名であったことを知りながら、その人気と有名さを剽窃して商標登録したとしか考えられない。
3 弁駁2の要旨
(1)商標使用許諾契約書(乙3)は、「第3条」の(使用料)及び「第4条」の(使用料の報告及び記録)が黒い墨で隠されている。
(2)本件商標と全く同一のデザインを選んで、契約先トランス・ファー社が商品を製造するのは大変不自然である。
(3)トランス・ファー社から取引先「ファッションリンク株式会社」(以下「ファッションリンク社」という。)宛の納品書(乙5)を見ると合計がわずか2点の商品の納品であり、それでは、日本津々浦々の市場(商店)で本件登録商品が販売されたとはいえない。その上、「商品説明」や相手方ファッションリンク社の住所も墨で消されており、大変不自然である。
(4)被請求人は、本件商標を「自ら使わず商売をするわけでもなく、商標権の維持を目的として他人に対応すること」を繰り返している。しかも、被請求人は日本を代表する「下着メーカー」として多くの消費者に知られた「商標」(ブランド)を所有し、問題なく事業を展開しており、本件商標を必要とする余地は全くない。
(5)請求人は、被請求人の代表者、役員に対し、商標使用に関する一部商標権利の譲渡、一部商標使用の許可要請、共同事業の提案をしたが、回答なく放置されている(甲6及び甲7)。
4 弁駁3の要旨
(1)請求人は、1963年末に米国マサチューセッツ州ウスター市で「スマイリー・フェイス」(略称スマイル)を創作、著作した「ハーベイ・ボール」の死後、彼の遺志を尊重し、彼の息子でマサチューセッツ州の弁護士である「チャールズ・ボール」を会長として設立された「ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団」である。上記財団は、「スマイルを世界平和の礎にする」という目的で活動を行っている。その大きなイベントとして、毎年10月の第1金曜に行われる「ワールド・スマイル・デイ」は、20回(20年間)継続しており、全世界に発信され、1億人の支持者がいる。請求人は、そのための「財団設立費用」、「財団運営費」や上記「イベント費用」の全てを、請求人関連の日本での「スマイル商品化事業」の収益を提供している。それらの事業を日本で問題なく遂行するために、「有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド」の名義で計1,000件以上の「スマイル登録商標」を所有している。
(2)請求人は、米国内で本件商標と類似のスマイル商標を登録している。しかし、本件商標が対象となり、過去20年間商標登録ができないことに請求人関連のアメリカ財団関係者は大変不満を持っている(甲9)。
(3)本件商標(別掲1)と登録第4805259号商標(別掲3)を比較すると大変異なっており、実際に使用したとはいえない。
(4)被請求人は、本件商標を実際に自社の商品として使用する考えはなく、商標権の延命のために使用実績を作る目的で下請会社に貸し出して、使用証拠を作っているにすぎない。
4 弁駁4の要旨
(1)現在、請求人は「スマイル商標」を所有しており、唯一「第25分類」だけを被請求人が登録商標している(甲11)。それについて、譲渡、共同使用、請求人に必要な分の登録を認める、共同事業等の提案や交渉を十数回行っているが一度も返事も回答もしてこない。
(2)被請求人は、一営利企業としても、ア 大企業である、イ 上場企業である、ウ 明治に始まった名門企業である、エ 下着等を販売し、消費者に身近な存在である等を考えると最近の「企業の社会的責任」(CSR)を真摯に検討するべきだと思料する。
(3)1963年末に「故ハーベイ・ボール」によって創作、著作された「スマイル基本マーク」は、出願人(審決注:請求人の誤記と思われる。)に「著作権」が譲渡されており、米国で公的に認識されている(甲13)。
(4)出願人(審決注:請求人の誤記と思われる。)は、日本国内で文化庁に「著作権登録」を行っている(甲14)。
(5)出願人(審決注:請求人の誤記と思われる。)は、中国政府「著作権局」に著作権登録を行っている(甲15)。
5 弁駁5の要旨
(1)請求人は、日本国内で登録商標を所有している(甲16)。
(2)請求人は、米国国内で登録商標を所有している(甲17)。
6 請求人陳述書の要旨
(1)乙1について
本件商標と類似した商標らしきマークを使用しているが、その使用は、あくまで、「デザイン」としてのみの使用で「商標」としての使用ではない。被請求人は、第三者からの「3年間不使用」による「取消審判請求」を回避するために使用したにすぎない。
(2)乙2について
「納品書」(乙2)を見ると「キリンド」(庄内店)にブリーフ(男性用下着)1点だけを納品したことになるが、地方の小売店の支店がそのような発注をすることは考えられない。この伝票はあまりにも不自然であり、その「使用証拠」自体がねつ造された可能性がある。そもそも被請求人は、有名な下着類の独占的企業であり日本中の多くの用品店で下着類(ブリーフを含む)を販売している。そうであれば、他の大きな小売店舗の納品書が提出されるべきであり、消費者にほとんど知られていない企業の納品書が提出されたこと自体が不自然である(甲18及び甲19)。キリンドの親会社は繊維商社の「河錦」で、被請求人が主要取引先である(甲20及び甲21)。
(3)乙3について
「ライセンス契約」においては年間最低補償額-ミニマムギャランティが設定されることが一般的であるが、提出された契約書(乙3)には、年間最低補償額-ミニマムギャランティの設定がない。そのような「ライセンス契約」は存在しない。本証拠は、被請求人が第三者からの「3年間不使用」による「取消審判請求」を回避するために、特別な「下請取引企業」に契約実績作りのために作成させた「契約資料」にすぎない。また、契約先であるトランス・ファー社のホームページに企業活動を「オリジナルブランドの企画・生産・販売・卸」及び「カシミヤアイテムのOEM」と書かれており、到底「スマイル商品」を一般消費者向けに販売しているとは考えられない。
(4)乙4について
提出写真の「スマイル商品」には大きく「LOVE EARTH」がデザインされているが、そのような文字をトランス・ファー社が強調することも不思議である。カシミヤの38,000円の高級商品にあえて付けること自体考えられない。
(5)乙5について
トランス・ファー社の取引先であるファッションリンク社宛の納品書(乙5)が提出されているが、これも、第三者からの「3年間不使用」による「取消審判請求」を回避するために、被請求人の特別な「下請取引企業」に契約実績作りのために作成させた資料にすぎない。本証拠は、「乙4」の「商品写真」の特別注文を裏付けるように発注数が「2着」となっていることから、2着のみを写真撮影用に見本制作(審決注:見本製作の誤記と思われる。)させたにすぎない。また、ファッションリンク社の事業内容等から、被請求人の商品を販売することに適切な会社とは思えない(甲24及び甲25)。
(6)被請求人の目的について
本件商標について、被請求人は、自社の主力商品を使用するのではなく、単に「アメリカ人の誇りを傷付け」、「日米友好を台無しにする」目的で本件商標の登録維持をしているとしかアメリカ国民は思っていない。被請求人は、多数の有名な「登録商標(ブランド)」、「SABRINA」、「BODY WILD」、「YG」、「GUNZE」等を所有しており、それにより多くの日本の消費者から強い支持を得て、被請求人の企業も円満に拡大し続けているものである。あえて本件商標を維持し、請求人自身の「原型スマイル」の使用を妨害し、それにより「日米関係を台無し」にして米国人の反感を持たれるような行為を行い続けることは、請求人関係者は理解できない。
(7)被請求人との交渉
請求人は、被請求人に対し、商標使用に関する一部商標権利の譲渡等を申し出たが、被請求人は、これに応じていない。
7 弁駁6の要旨
(1)請求人は、長年、商標登録制度の「先願主義」の弊害を主張し続けてきた。本件事件もその典型的な弊害の一例にすぎない。
(2)日本の消費者の100%が偽物商品をPOLO関係商品と誤認している(甲28)。
(3)「ピコ太郎」も「そだねー」等も「早い者勝ち」(先願主義)の不法行為に遭遇している(甲29)。
(4)日本では「先願主義」によって、一攫千金を夢見る企業や個人が続出している(甲30)。
8 請求人上申書の要旨
(1)被請求人の証拠について
乙1は、デザインの一部としての使用であり、「商標使用」ではない。乙2は、ほとんどがマーキングされ主要部分が隠されている。乙3ないし乙5は、本件商標の使用を他社に貸与したものである。そもそも被請求人は、「メーカー」の立場でありながら、自ら商品を製造、販売せずに、消費者が誰も知らないような、地方限定のほとんど「見本製作」をしているとしか考えられない会社や、地方限定の「小売店」が、本件商標を使用した商品を製造、販売したとする証拠を提出しているが、これらの会社が、販売を目的として、本件商標を使用した商品を製造して販売するとは思えない。以上の証拠を見る限り、「本件事件」の証拠を提出するために準備されたものであるとしか考えられない。
(2)被請求人の対応
長年、請求人は、被請求人に対して、「ア 本件商標の買収」、「イ 本件商標の共同使用」、「ウ 請求人希望の商標を『商標登録』後の譲渡」等を提案しているが、1度も返事はなく、無視され続けている。そのような対応は「上場会社」として、「大企業」として、好ましいとは思えない。
(3)特許庁の対応
請求人は、「被請求人」及び「特許庁」の対応に対して大変疑問を持ち不満であることを申し伝えたい。「特許庁」は、「早い者勝ち」、「先願主義」を固執することなく、最近の「グローバル化」、「国際化」の観点を踏まえて、もう少し広い視野で「審判」を解釈し判断されることを要請する。
9 弁駁7の要旨
(1)請求人は、日本国内で「スマイル・ブランド」(商標)のライセンス契約による「商品化」を国内メーカーに許諾している。このたび、国内契約企業のファッションメーカー多数に「スマイル商標」の商品の製造、販売を許可した。それぞれのメーカーは現在、中国国内での下請け制作(審決注:下請け製作の誤記と思われる。)を行っており、3ヶ月以内での輸入販売を企画している。「スマイル」類似商標を所有している被請求人と請求人関係の米国慈善団体(ハーベイ・ボール・ワールド・スマイル財団)との紛争が生じ、その結果、被請求人が所有する登録商標の「スマイル」類似商標に基づく販売差止等の対抗手段に出る可能性がある。
(2)20年間継続している「ワールド・スマイル・デー」イベントは全世界で1億人の支持者が「スマイルを世界平和の礎にする」目的で活動している(甲31)。
(3)請求人は、被請求人に対して20年間数十回の社長、役員に対しての交渉や呼びかけを行ったが、それに応えようとしない(甲32及び甲33)。
(4)請求人は、直近1年半で1億円の広告費を投入して小売店やメーカーの理解を得て、日本での「スマイル」の価値を高めている(甲36)。
(5)被請求人は、アメリカのデザイナーの象徴である「ラルフ・ローレン」の「POLO」商品の「偽物商品」を販売し大きな利益を得ていることもアメリカ人の反感を買う大きな要因となっている(甲37)。
(6)請求人の20数回の「取消審判」は全て否決された(甲38)。
(7)「本件事件」で提供された「使用証明」の資料に疑問があるため、請求人は、被請求人が提出した証拠のそれぞれの提出人にその疑問について問い合わせたが、一切回答することなく放置されている(甲39)。
(8)被請求人程の大企業であれば使用しない商標を保有する理由がない。
(9)「使用実績」重視のアメリカ人は日本の「先願主義」を理解しない。
(10)日本の特許庁は「大企業優先」、「被請求人保護」と決めているとの誤解が米国内ではある。
(11)解決方法は「社会問題化」や「政治問題化」しかない(甲40)。
(12)既に、請求人は、日本の主要小売店への接触を求めている(甲41)。
(13)被請求人の「スマイルは自分達のもの」の主張にアメリカ人達の怒りは収まらず被請求人商品の「不買運動」が世界的に計画されている(甲42)。
(14)日本国特許庁に対する不満もある(甲43)。
(15)以上の説明のとおり、被請求人は、自ら「本件商標」を使用する意思はなく、数十回の全ての「取消審判」、「無効審判」等には自社の下請け企業等に商標権の延命のためのずさんな「使用証明」を提出しているにすぎない。「本件商標」の取消や無効は被請求人にとって全く損害が無いのであるから、取消や無効にすべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書、平成30年(2018年)4月5日付け口頭審理陳述要領書(以下「被請求人陳述書」という。)、同年4月26日付け上申書(以下「被請求人上申1」という。)及び同年6月11日付け上申書(以下「被請求人上申2」という。)において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙14(枝番を含む。)(枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 答弁書の要旨
被請求人は、本件商標と社会通念上同一の構成からなる図形商標を指定商品のうち「第25類 被服」(以下「本件商品」という。)について、本件審判請求の登録前3年の間に使用しているほか、本件商標に係る通常使用権者であるトランス・ファー社(住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷4丁目8番7号)も本件商標と社会通念上同一の商標を本件商品について、本件要証期間に使用している。よって、本件審判の請求は成り立たない。
(1)本件商標の構成
本件商標は、円図形内の上部に、目と思しき小さい黒塗りの縦長楕円形を2つ並べ、この2つの黒塗りの縦長楕円形の下に口と思しき両端上がりの弧線を描いた図形(以下「スマイルマークの図形」という。)を表してなる商標である(別掲1)。
(2)被請求人自身による本件商標の使用
ア 被請求人の商品における使用態様
被請求人は、本件商標と社会通念上同一の構成からなる標章(以下「本件使用標章1」という。)を、被請求人が製造する「下着」に対して、販売している。被請求人が製造、販売している品番「BW041G」(審決注:品番「BWG040G」の誤記と思われる。)の下着(以下「対象商品1」という。)(別掲2)の表面には本件商標と社会通念上同一の構成からなる本件使用標章1が表されている(乙1)。
なお、本件使用標章1と本件商標は、共に、円図形内の上部に、目と思しき小さい黒塗りの縦長楕円形を2つ並べ、この2つの黒塗りの縦長楕円形の下に口と思しき両端上がりの弧線を描いたスマイルマークの図形からなるものであり、本件使用標章1は、本件商標と社会通念上同一の商標にあたる。
イ 対象商品1(別掲2)の販売時期
被請求人は、対象商品1(別掲2)を本件審判請求の登録日である平成29年(2017年)7月21日(審決注:「7月25日」の誤記と思われる。)の前3年の間に販売している。この事実は、乙2の納品書によって明確に立証できる。
乙2の納品書は、被請求人が、平成29年(2017年)6月1日に、キリン堂(庄内店)[審決注:キリンド(庄内店)の誤記と思われる。]に対し、対象商品1(別掲2)を販売した際の納品書であり、品名の欄の「BW041G ボクサーブリーフ」(審決注:品番「BWG040G」の誤記と思われる。)は対象商品1(別掲2)の品名である。
(3)通常使用権者による本件商標の使用
通常使用権者の許諾
被請求人は、トランス・ファー社(住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷4丁目8番7号)に対し、平成28年(2016年)9月1日付けで、商標登録第4805259号(別掲3)に係る通常使用権の許諾をしている(乙3)。
乙3の商標使用許諾契約書は、平成28年(2016年)9月1日に締結され、有効期間を平成29年(2017年)3月31日までとする契約であるが、双方から変更解約の申し入れがない場合には、更に1年間自動更新されることになっており(契約書第6条但書)、本契約は現在も効力を有している。
商標登録第4805259号商標(別掲3)は、「LOVE EARTH」の文字とスマイルマークの図形の結合からなる商標であるが、かかる商標を使用すると、必然的にスマイルマークの図形部分のみも使用することになる。
また、商標登録第4805259号商標(別掲3)の構成中のスマイルマークの図形と本件商標の図形は社会通念上同一の構成からなるものである。そのため、商標登録第4805259号商標(別掲3)に関する上記の使用許諾は、本件商標の使用許諾を含むものであるといえ、トランス・ファー社は、商標登録第4805259号商標(別掲3)の通常使用権者であると同時に、本件商標の通常使用権者にもあたるものである。
通常使用権者の商品における使用態様
本件商標の通常使用権者であるトランス・ファー社は、本件商標と社会通念上同一の構成からなる標章(以下「本件使用標章2」という。)を「被服」に付し、これを販売している。
トランス・ファー社が製造、販売している「品番CC-62021」のセーター(以下「対象商品2」という。)(別掲4)の表面には本件商標と社会通念上同一の構成からなる本件使用標章2が表されている(乙4)。
なお、本件使用標章2と本件商標は、共に、円図形内の上部に、目と思しき小さい黒塗りの縦長楕円形を2つ並べ、この2つの黒塗りの縦長楕円形の下に口と思しき両端上がりの弧線を描いたスマイルマークの図形からなるものであり、本件使用標章2は、本件商標と社会通念上同一の商標にあたる。
ウ 対象商品2(別掲4)の販売時期
トランス・ファー社は、対象商品2(別掲4)を本件審判請求の登録日である平成29年(2017年)7月21日(審決注:「7月25日」の誤記と思われる。)の前3年の間に販売している。この事実は、乙5の納品書によって明確に立証できる。
乙5の納品書は、トランス・ファー社が、平成28年(2016年)10月1日に、ファッションリンク社に対し、対象商品2(別掲4)を販売した際の納品書であり、品番、品名の欄の最下段の「CC-62021 LOVEアーススマイルPO」が対象商品2(別掲4)の品番である。
(4)結論
以上述べたとおり、被請求人及び被請求人の通常使用権者であるトランス・ファー社は、本件審判請求に係る指定商品「第25類 被服」について本件商標と社会通念上同一の商標を審判請求の登録日前3年間に使用しており、かかる事実は、被請求人が提出した証拠によって十分に立証されている。
よって、本件商標が不使用であるとする請求人の主張は失当であり、本件審判の請求は成り立たない。
2 被請求人陳述書の要旨
平成30年(2018年)3月6日付けの審理事項通知書(以下「通知書」という。)における合議体の暫定的見解に対し以下の通り回答する。
(1)乙2の契約書(審決注:納品書の誤記と思われる。)について
通知書において、「乙2の『納品書』に記載の商品番号が、乙1のウェブサイトに記載の商品番号と一致しない。」旨の指摘を受けたが、これは、乙2の「納品書」の黒塗り箇所に誤りがあったためであり、乙2の納品書が対象商品1(別掲2)の納品書であることに間違いはない。
この点を明らかにするため、乙2の納品書の黒塗り箇所を修正したもの(乙6)を提出する。
乙6を見ると、1行目及び2行目に「BWG040G ボクサーブリーフ」との記載があり、この品番は、乙1に記載の品番と一致する。
(2)乙3の契約書について
通知書において、「乙3の『商標使用許諾契約書』に記載の被請求人の住所が、本件商標権の登録上の住所と相違している。」旨の指摘を受けたが、かかる差異が生じたのは、契約書上の住所が大阪本社の住所になっていたためである。
乙3に記載の住所が、被請求人の大阪本社の住所であることは、乙7として提出の「四半期報告書(第122期第3四半期)」の冒頭の頁に「(大阪本社)大阪市北区梅田二丁目5番25号(ハービスOSAKAオフィスタワー)」との記載があることから明らかである。
また、乙3の商標使用許諾契約書は、「LOVE EARTH」の文字とスマイルマークの図形の結合からなる登録第4805259号商標(別掲3)を対象とした契約であるが、当該登録商標を使用すると必然的に登録第4805259号商標(別掲3)の図形部分の商標も使用することになることはその構成上明らかである。
そのため、本件使用許諾契約は、登録第4805259号商標(別掲3)の図形部分の商標の使用許諾を内在するものであり、トランス・ファー社が対象商品2(別掲4)を製造、販売する行為が本件商標の商標権侵害にあたることになるが、そのような帰結が両当事者の意思に合致しないことは明らかである。
(3)乙4の商品写真について
通知書において、「乙4の作成者、作成日などが不明である。」旨の指摘を受けた。乙4の資料は、被請求人の担当者が、トランス・ファー社からデータとしてもらっていたものであるが、作成日、作成者がより明確な証拠として、トランス・ファー社の商品一覧が掲載されたオーダーシート(Order Sheet CASHYAGE Ladies/2016 fall & Winter collection PART2)(乙8)が入手できたので提出する。このオーダーシートの3頁には、21番の商品として本件使用標章2が付された品番「CC-62021」のセーターが掲載されている。乙4は、乙8のオーダーシートの表の一部を切り取ったデータの写しである。このオーダーシートの作成者がトランス・ファー社であることは、乙8の1頁にトランス・ファー社の名称及び住所が記載されていることから確認できる。また、このオーダーシートは、1頁の「2016 fall & Winter collection」との記載があることから、平成28年(2016年)の秋・冬用の商品のオーダーシートであり、作成日は平成28年(2016年)の前半期頃である。
(4)乙5の納品書について
通知書において、納品書(乙5)に関し「当該書面には押印などもなく、実際に使用又は交付された書面であるのか不明である。」旨の指摘を受けた。
この点、納品書(乙5)は、売り主であるトランス・ファー社が保管していた控えであるため、捺印がなされていないが、現在、買主であるファッションリンク社が保管している納品書等の書類を借りることができないかを同社と交渉中であり、入手できた場合には追って提出する。
また、通知書において、「当該書面に記載された商品の品番は、乙4に記載された商品の品番と一致するとしても、その商品のサイズや色彩をどのように表記しているのか不明である。」旨の指摘を受けた。
この点、トランス・ファー社の担当者から「納品伝票には効率化を図るため、品番、数量管理のみでサイズ・色の明記はない。」との回答を得ている(乙9)。
さらに、平成28年(2016年)10月1日に納品された商品の詳細は、ファッションリンク社の担当者からトランス・ファー社の担当者宛の同年9月26日付け電子メール(乙10)の記載を見れば理解できる。かかる納品は、乙10に基づき行われたものであり、乙10の添付ファイルを見ると、品番「CC-62021」のセーターの発注内容がグレー1着、チャコール1着であることが分かる。なお、乙10にはサイズの記載はないが、それは、当該商品のサイズバリエーションが1サイズのみであるからである。
(5)請求人の主張に対する反論
請求人は、弁駁1の7(1)の項で「乙1における本件使用標章1の使用態様は、商標使用ではなく、デザイン使用といえるものである。」との主張をしている。
しかしながら、本件使用標章1の表示態様は、単なるデザインと認識されるだけではなく、商品の出所識別標識としても認識され得る表示態様であり、商標的な使用態様に当たるものである。
また、近時の知財高裁判決では、「商標法50条の主な趣旨は、登録された商標には、その使用の有無にかかわらず、排他的独占的な権利が発生することから、長期間にわたり全く使用されていない登録商標を存続させることは、当該商標に係る権利者以外の者の商標選択の余地を狭め、国民一般の利益を不当に侵害するという弊害を招くおそれがあるので、一定期間使用されていない登録商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求できるというものである。上記趣旨に鑑みれば、商標法50条所定の『使用』は、当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用(商標法2条3項各号)されていれば足り、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきである。」(知財高判平成28年9月14日 平成28年(行ケ)第10086号)と判示されているものもあり、不使用取消審判における商標の使用に当たるか否かを考えるにあたっては、商標的な使用態様であるか否かはそもそも問題にならないというべきである。
したがって、請求人の上記主張は、本件使用標章1の使用が本件商標の使用にあたることを否定する根拠にはならないものである。
3 被請求人上申1の要旨
ファッションリンク社から、合計請求書(平成28年[2016年]10月31日受け)(乙11の1)、納品書(平成28年[2016年]10月1日付け)(乙11の2)及び納品書(平成28年[2016年]10月5日付け)(乙11の3)を借りることができたため、追加の証拠として提出する。乙11の1ないし乙11の3は、対象商品2(別掲4)の取引の際にトランス・ファー社からファッションリンク社に提供されたものであり、「納品書」(乙11の2及び乙11の3)には捺印されていないが、合計請求書の右上にトランス・ファー社の社判と担当者の印鑑が押されている。また、合計請求書(乙11の1)及び納品書(乙11の2及び乙11の3)には、品番、品名の欄に「CC-62021 LOVEアーススマイルPO」の記載があり、平成28年(2016年)10月1日及び同月5日に対象商品2(別掲4)が販売されたことが分かる。
よって、これらの証拠により、トランス・ファー社からファッションリンク社に対し、平成28年(2016年)10月1日及び同月5日に対象商品2(別掲4)が販売されたことは明らかであり、本件要証期間における本件使用標章2の使用の事実は十分に立証されている。
4 被請求人上申2の要旨
(1)乙1のウェブサイトの公開日
乙1は、対象商品1(別掲2)の写真が掲載されたウェブサイトの画面を社内で最終確認した際の資料であり、この資料をもとに各部署の責任者の承認を得た上でインターネットへの公開が行われた。インターネットへの公開後の日付が記載された資料(ウェブサイトを印刷したもの等)に関しては、被請求人の社内に残存していないが、ウェブサイトの内容に関する社内での承認手続及びその時期が分かる資料として「アパレルカンパニー【カタログネット】広告・宣伝内容確認依頼表」及びその添付文書が発見したため、乙12の1及び乙12の2として提出する。この資料を見ると、乙1のウェブサイト画面の内容に関し、平成29年(2017年)5月に各担当部署の責任者及び担当者が承認していることが分かる。
また、乙1のウェブサイトの公開時期に関しては、乙12の1の「掲載・実施時期」の欄に「5月25日?」との記載があり、平成29年(2017年)5月25日の前後の時期に公開されたものであることが分かる(実際には公開が1日早まり、同月24日に公開がなされている)。
さらに、乙1の1に「お父さんへのプレゼントにぴったりのユニークなボクサーパンツ」との記載があること、乙12の1に「父の日専用商材の販売 商品説明文」との記載があることからも分かるように、対象商品1(別掲2)は、父の日(平成29年[2017年]6月19日)用の商材であるため、乙1のウェブサイトが、同日よりも前の時期に公開されていたことは明らかである。
なお、乙1のウェブサイトに対象商品1(別掲2)を掲載してインターネットに公開する行為は、商標法2条3項2号又は8号の使用行為にあたる。
(2)対象商品1(別掲2)に関するその他の取引書類
対象商品1(別掲2)は、納品書(乙2及び乙6)を提出済みのキリンド庄内店のほか、複数の小売店に販売されたほか、乙1のウェブサイトを通じたインターネット通信販売の形態で顧客に対して直接販売されていたものである。インターネットを通じて、被請求人から顧客に対して、商品を直接販売する取引の場合、納品書等の書類は商品と一緒に顧客に郵送してしまうため、被請求人の手元に取引書類は残存していないが、本件要証期間に対象商品1(別掲2)を販売したことを示す社内管理システムの画面印刷(乙13及び乙14)を証拠として提出する。
被請求人の社内管理システムにおいて、対象商品1(別掲2)のインターネット販売の実績を検索した画面(写し)(乙13)の品番の欄に対象商品1(別掲2)の品番(BWG040G)が記載されている。また、顧客への納品日は「納品日」の欄に記載されており、これらの日付を見ると、平成29年(2017年)5月25日から同年7月11日までの間、対象商品1(別掲2)が販売された事実が分かる。
被請求人の社内システムにおいて、平成29年(2017年)5月24日付けの注文に関する受注伝票の詳細を検索した画面(写し)(乙14)の注文情報の欄に対象商品1(別掲2)の品番(BWG040G)が記載されている。また、乙14を見ると、対象商品1(別掲2)に関し、同日に顧客からの注文が入り、翌日に発送が完了し、同月26日に顧客への配達が完了していることが分かる。
対象商品1(別掲2)が本件要証期間に販売された事実は提出済みの乙6によって明らかであるが、乙13及び乙14もあわせて考えると、対象商品1(別掲2)が本件要証期間に販売された事実はより一層明らかになると思料する。
(3)乙8のオーダーシートの配布方法
トランス・ファー社が顧客に配布したオーダーシート(乙8)の配布方法としては、トランス・ファー社が開催する展示会に来た顧客に紙で渡す方法と、郵送で渡す方法の2つのパターンがある。このオーダーシートには、出展商品の型番等の情報を全て記載されており、展示会の来場者はオーダーシートと実物を見ながら商品購入を検討することになるが、購入商品を記載したオーダーシートをトランス・ファー社に提出した時点で注文がなされたことになる。また、展示会後のオーダーに関しては、FAX、郵便、電子メール等での連絡が来る場合が多く、平成28年(2016年)10月1日付けのファッションリンク社への納品(乙11の2)は、同年9月26日付けの電子メールによるオーダー(乙10)に基づくものである。
なお、オーダーシート(乙8)の掲載の平成28年(2016年)秋冬物の商品は、平成28年(2016年)2月、3月に東京及び大阪で開催された展示会のほか、同年8月、9月に開催された展示会にも出展されており、かかる展示会への商品の出展、及び、顧客に対するオーダーシートの配布は、商標法2条3項2号又は8号の使用行為にあたる。

第4 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、(1)本件要証期間に、(2)日本国内において、(3)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、(4)本件商品のいずれかについての、(5)本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 被請求人の提出した乙1ないし乙14(枝番を含む。)の証拠から以下の事実が認められる。
(1)乙1及び乙12について
乙1及び乙12の2は、被請求人の公式通販のウェブサイトの写しである。
乙1及び乙12の2の2頁には、対象商品1(別掲2)の画像とその画像の上に、「BODY WILD(ボディワイルド)」及び「ボクサーブリーフ(前とじ)(紳士)が二段に書されている。
また、画像の右側に「本体1,300円+税(104円)」の記載、「お父さんへのプレゼントにぴったりのユニークなボクサーパンツ(前閉じ)」の記載、「クールな色合いの星柄に、感謝や賞賛のメッセージがぎっしり詰まったプリントデザイン。普段はなかなか言えない言葉をこのパンツに託してみて♪ 吸汗速乾性があり、よく伸びる生地なのでお父さんも気に入ってくれるはず☆」の記載及び「商品番号:31BWG040G-0000300000002」の記載がある。
なお、対象商品1(別掲2)には、本件使用標章1が付されていることは確認できるが、これらの情報の掲載日は確認できない。
乙12の1は、「アパレルカンパニー【カタログネット】広告・宣伝内容確認依頼申請表」である。
乙12の1の1頁に、「受付No:1962」の記載、「作成日:2017/05/08」の記載、「審査部門責任者」の項目の下に「2017/05/24」及び「承認」の記載、「知的財産室長」の項目の下に、「2017/05/24」及び「承認」の記載、「審査希望期限」の欄に「2017/05/23」の記載、「申請内容」の欄に「7.その他」の記載、「目的及びキャンペーン名」の欄に「父の日専用商材の販売 商品説明文」の記載、「対象商品」の欄に「BODYWILD 父の日専用商材」の記載、「媒体」の欄に「8.ホームページ,14.その他」の記載、「媒体名」の欄に「グンゼストア・楽天・yahoo」の記載及び「掲載実施時期」の欄に「5月25日?」の記載がある。
これらから判断すると、乙1及び乙12の2の2頁において、これらの情報の掲載日が確認できないとしても、乙12の1から、乙1及び乙12の2の2頁の対象商品1(別掲2)の販売を目的とする情報は、被請求人の公式通販のウェブサイトに、平成29年(2017年)5月25日に掲載され、それ以降、インターネットを通じて広く、不特定多数の需要者に対して、対象商品1(別掲2)の広告が行われていたことが推認できる。
そうすると、本件使用標章1が付された、販売(譲渡)を目的とした対象商品1(別掲2)が、遅くとも、本件要証期間である平成29年(2017年)5月25日に存在していたこと、及び、平成29年(2017年)5月25日に被請求人の公式通販のウェブサイトにおいて、本件使用標章1が付された対象商品1(別掲2)の電磁的媒体による広告が行われたことが認められる。
なお、乙12の2の1頁は、商品「ボクサーブリーフ」の画像等が掲載されているが、本件使用標章1の使用とは認められない。
(2)乙2及び乙6について
乙2及び乙6は、平成29年(2017年)6月1日付けで被請求人が作成した商品「ボクサーブリーフ」の「キリンドショウナイテン」宛ての納品書の写しである。
乙2の品名の欄の上二段は、マスキング(黒塗り)されているが、乙6の品名の欄の上二段には、それぞれ「BWG040G」及び「ボクサーブリーフ」の記載があり、上段の右側に、サイズ「M」、数量「1」の記載、下段の右側に、サイズ「L」、数量「1」の記載があることから、「品番:BWG040G」の商品「ボクサーブリーフ」のMサイズ及びLサイズの各1点が、平成29年(2017年)6月1日に「キリンドショウナイテン」に納品されたことが推認できる。
ただし、「品番:BWG040G」の商品「ボクサーブリーフ」のMサイズ及びLサイズの各1点が、被請求人から「キリンドショウナイテン」に納品された際には、通常、「キリンドショウナイテン」が商品受領書等を発行すると考えられるが、「キリンドショウナイテン」が発行した商品受領書等の提出は認められないため、乙2及び乙6によっては、本件使用標章1が付された対象商品1(別掲2)の販売(譲渡)等の商取引が実施に行われたことは確認できない。
なお、被請求人は、答弁書において、納付先(キリンドショウナイテン)を「キリン堂(庄内店)」と記載しているが、「キリンド(庄内店)」の誤記と思われる。
(3)乙3について
乙3は、平成28年(2016年)9月1日作成の被請求人とトランス・ファー社の商標使用許諾契約書である。該契約書の1頁に「グンゼ株式会社(以下『甲』という)及び株式会社トランス・ファー(以下『乙』という)は、甲から乙に対する商標の使用許諾に関し、以下の通り契約する。」の記載、第1条(定義)の(1)に「『許諾商標』とは、甲の有する下記登録商標を意味する。」の記載、下記として「登録番号:第4805259号」の記載と「登録商標:」として、別掲4のとおりの登録第4805259号の登録商標が掲載されている。また、該契約書の最終頁の甲として「大阪市北区梅田2丁目5番25号 ハービスOSAKAオフィスタワー22階」及び「グンゼ株式会社」の記載、乙として「東京都渋谷区千駄ヶ谷4丁目8番7号 アツミビル」及び「株式会社トランス・ファー」の記載がある。
ただし、乙3の第3条(使用料)及び第4条(使用料の報告及び記録)は、マスキング(黒塗り)されているため、その内容を確認することはできない。
また、本件商標の商標登録原簿における商標権者の住所は、「京都府綾部市青野町膳所1番地」であり、該契約書の甲として記載されている「大阪市北区梅田2丁目5番25号 ハービスOSAKAオフィスタワー22階」とは相違する。
さらに、本商標使用許諾契約書の対象となる商標権は、登録第4805259号に係るものであり、本審判請求の対象である登録第2353908号とは相違するため、本商標使用許諾契約書をもって、トランス・ファー社が本件商標の通常使用権者であるとは認められない。
(4)乙4について
乙4は、対象商品2(別掲4)の画像が掲載された資料である。
乙4には、商品「セーター」の画像が、上下に配置されており、上の画像は、対象商品2(別掲4)であり、対象商品2(別掲4)の上には「CC-62021」の記載、対象商品2(別掲4)の画像の下、「Price」の欄の横に「¥38,000」の記載、「Composition」の欄の横に「カシミヤ100%」の記載、「color/size」の欄の横に「36」、「color/size」の欄の下二段に「3 LTグレー」及び「31 チャコール」の記載がある。
また、下の商品「セーター」の画像の上には「カラー見本」の記載がある。
なお、乙4には、この資料の作成者、発行者、作成日等の記載はない。
(5)乙5及び乙11について
乙5及び乙11の2は、トランス・ファー社が、2016年(平成28年)10月1日に、ファッションリンク社に対し、対象商品2(別掲4)を販売した際の納品書である。
乙5及び乙11の2の左上に、「ファッションリンク株式会社 様」及び「お客様番号 0111」の記載、乙5及び乙11の2の右上に「納品書」の記載、その下に「No.C01497」の記載、その下に「2016年10月1日」の記載、その下に「株式会社トランス・ファー CASHYAGE事業部」の記載、「品番・品名」の欄の上から3段目に「CC-62021」及び「LOVEアーススマイルPO」の記載、その右の「数量」の欄に数字「2」の記載がある。
乙11の1は、トランス・ファー社が、ファッションリンク社に対し、2016年(平成28年)10月31日締切分の伝票について、同月1日及び5日に、対象商品2(別掲4)を販売したことを証明するための合計請求書である。
乙11の1の左上に、「ファッションリンク株式会社 様」及び「お客様番号 0111」の記載、乙11の1の右上に「合計請求書」の記載、その下に「No.G02834」の記載、その下に「2016年10月31日 締切分」の記載、その下に「株式会社トランス・ファー CASHYAGE事業部」の記載、「伝票日付」の「16/10/01」の欄の「品番・品名」の欄に「CC-62021」及び「LOVEアーススマイルPO」の記載、その「数量」の欄に数字「2」の記載、「伝票日付」の「16/10/05」の欄の「品番・品名」の欄に「CC-62021」及び「LOVEアーススマイルPO」の記載、その「数量」の欄に数字「4」の記載がある。
乙11の3は、トランス・ファー社が、2016年(平成28年)10月5日に、ファッションリンク社に対し、対象商品2(別掲4)を販売した際の納品書である。
乙11の3の左上に、「ファッションリンク株式会社 様」及び「お客様番号 0111」の記載、乙11の3の右上に「納品書」の記載、その下に「No.C01522」の記載、その下に「2016年10月5日」の記載、その下に「株式会社トランス・ファー CASHYAGE事業部」の記載、「品番・品名」の欄の上から4段目に「CC-62021」及び「LOVEアーススマイルPO」の記載、その「数量」の欄に数字「4」の記載がある。
ただし、本件使用標章2が付された品番「CC-62021」の商品「セーター」が、平成28年(2016年)10月1日及び同月5日に、トランス・ファー社からファッションリンク社に納品された際には、通常、ファッションリンク社が商品受領書等を発行すると考えられるところ、ファッションリンク社が発行した商品受領書等の提出は認められないため、乙5及び乙11によっては、本件使用標章2が付された対象商品2(別掲4)の販売(譲渡)等の商取引が実施に行われたことは確認できない。
(6)乙7について
乙7は、被請求人が平成30年(2018年)2月13日に関東財務局長に提出した「四半期報告書(第122期第3四半期)」であり、乙7の1頁の中央下に「京都府綾部市青野町膳所1番地」の記載、その下に「(大阪本社)大阪市北区梅田二丁目5番25号(ハービスOSAKAオフィスタワー)」の記載、その下に「グンゼ株式会社」の記載がある。
これにより、商標使用許諾契約書(乙3)に記載の住所(大阪市北区梅田2丁目5番25号 ハービスOSAKAオフィスタワー22階)は、被請求人の大阪本社の住所を表記したものと認められる。
(7)乙8について
乙8は、トランス・ファー社発行の「Order Sheet CASHYAGE Ladies/2016 fall & Winter collection PART2」である。
乙8の1頁の中央に「Order Sheet」の記載、その下に、「CASHYAGE」の記載、その下に「Ladies/2016 fall & Winter collection PART2」の記載、右下に「株式会社トランス・フアー」の記載、その下に「〒151-0053」の記載、その下に「東京都渋谷区代々木5-67-6 代々木松浦ビル2F」の記載がある。
また、乙8の4枚目(3頁)の右の上側に対象商品2(別掲4)の画像とその上に「21」及び「CC-62021」の記載、対象商品2(別掲4)の下、「Price」の欄の横はマスキング(黒塗り)され、「Composition」の欄の横に「カシミヤ100%」の記載、「color/size」の欄の横に「36」、「color/size」の欄の下二段に「3 LTグレー」及び「31 チャコール」の記載がある。
ただし、乙8には、トランス・ファー社の記載はあるものの、作成日の記載がないため、このオーダーシートがいつ作成されたものであるのか明らかではなく、また、このオーダーシートの発行数量、配布数や頒布先等に関する証拠は提出されていない。
(8)乙9について
乙9は、平成30年(2018年)3月19日付けのトランス・ファー社M氏からグンゼ株式会社経営戦略部知的財産室W氏あての送付状である。
乙9の中央上に「送付状」の記載、右上に「平成30年3月19日」の記載、「送付内容」の下、1段目に「カタログ資料(2016FW collectionsPART2)」及び「1通」の記載、2段目に「2016年10月度 請求書コピー 3件」及び「3通」の記載、3段目に「2016年10月度 納品書コピー 2件」及び「2通」の記載がある。
また、「備考」の欄に「請求書の原本は取引先に捺印して送っておりますが、弊社の控えは、捺印しておりません。納品伝票には、効率化を図るため、品番、数量管理のみでサイズ、色の明記はありません。」の記載がある。
なお、この送付状が発行された平成30年(2018年)3月19日は、本件要証期間外である。
(9)乙10について
乙10は、送信日時を「平成28年(2016年)9月26日月曜日19:59」とする電子メール及びその添付ファイル(写し)である。
乙10の左上に「M氏」の記載、「発信日時:」の欄に「平成28年(2016年)9月26日月曜日19:59」の記載、「宛て先:」の欄に「M氏」の記載、電子メールの本文中に「早速、少量ですがオ-ダーを添付で送りますのでご確認をお願いします。全部で3型6枚です。とりあえず各1枚ですが、バイヤーは毎週出てきますので反応がよければフォローが来ますので。入荷後、即出していただいて店頭には10/5頃のスケジュールを予定しています。」の記載があり、添付書面として、乙8の3頁のみ抜粋され、添付書面の右の対象商品2(別掲4)の画像の下、「3 LTグレー」の横に数字「1」が、「31 チャコール」の横に数字「1」が記載されている。
ただし、乙10の電子メールの差出人の記載の一部が、マスキング(墨消し)されているため、この電子メールの差出人は明確ではなく、かつ、その「宛先」も、「M氏」とのみ記載されているにすぎないため、この電子メールが、ファッションリンク社の担当者からトランス・ファー社の担当者に宛てに送信されたものであることが明らかではない。
また、電子メールの本文において、「全部で3型6枚です。とりあえず各1枚ですが、バイヤーは毎週出てきますので反応がよければフォローが来ますので。入荷後、即出していただいて店頭には10/5頃のスケジュールを予定しています。」との記載はあるが、具体的な商品の品番等の記載は見当たらない。
(10)乙13について
乙13は、「物流納品書データ」の写しであり、「物流納品書データ」の表の1列目の「処理日」の欄に「170524」の記載、「得意先コード」の欄に「G10000000」の記載、「納品日」の欄に「170525」の記載、業種の欄に「31」の記載、「品番」の欄に「BWG040G」の記載、「受注数量(デカ)」の欄に「1」の記載、「出荷数量(組枚)」の欄に「1」の記載、「仕切単価」の欄に「1300」の記載及び「売上金額」の欄に「1300」の記載がある。
そして、「業種」及び「品番」の欄に記載された「31」及び「BWG040G」は、乙1及び乙12の2の2頁の被請求人の公式通販のウェブサイトにおける本件使用標章1が付された対象商品1(別掲2)の商品番号「31BWG040G-0003000000002」の先頭から9文字と同一であることから、乙13により、品番「31BWG040G」の商品を、「G10000000」のコードを有する得意先に対し、平成29年(2017年)5月25日に数量「1」を納品したことは推認できる。
ただし、乙13には、作成者、作成日の記載がなく、また、「物流納品書データ」においては、得意先のコード「G10000000」のみが記載されているにすぎず、具体的な得意先、すなわち、本件使用標章1が付された対象商品1(別掲2)の納品先は不明である。
(11)乙14について
乙14は、「ECshared」が発行した受注伝票詳細であり、「受注基本情報」の項目の受注IDの欄に「587965」の記載、「出荷番号」の欄に「00003001」の記載、「注文日時」の欄に「2017年5月24日4時29分58秒」の記載、「対応状況」の欄に「配達完了」の記載、「支払状況」の欄に「入金済み」の記載、「発送完了日」の欄に「2017年5月25日」の記載及び「配達完了日」の欄に「2017年5月26日」の記載がある。
また、「注文情報」の項目の「商品名」の欄の上から7列目に「BODY WILD(ボディワイルド)/ボクサーブリーフ)(前とじ)(紳士)/BWG040G/M?L」の記載、その右側の「商品SKU」の欄に「31BWG040G-0000300000002」の記載、その右側の「数量」の欄に「1」の記載及び「小計」の欄に「1,404円」の記載が確認できることから、乙14により、品番「31BWG040G-0000300000002」の本件使用標章1が付された対象商品1(別掲2)が、平成29年(2017年)5月24日に注文され、翌日に発送完了され、その翌日には発注先に配達が完了していることは推認できる。
ただし、乙14は、「注文者情報」及び「お届け先情報」がマスキング(黒塗り)されているため、本件使用標章1が付された対象商品1(別掲2)の発注者及び納品先は不明である。
3 上記2で認定した事実によれば、以下のとおりである。
(1)本件商標について
本件商標は、円図形内の上部に、目と思しき小さい黒塗りの縦長楕円形を2つ並べ、この2つの黒塗りの縦長楕円形の下に口と思しき両端上がりの弧線を描いた図形を表してなるものである(別掲1)。
(2)被請求人による本件使用標章1の使用
被請求人であり、本件商標の商標権者である「グンゼ株式会社」は、同社が製造、販売する対象商品1(別掲2)に、本件使用標章1を付している(乙1及び乙11)。
(3)対象商品1(別掲2)について
対象商品1(別掲2)は、その品番を「BWG040G」とする商品「ボクサーブリーフ」である。
そして、商品「ボクサーブリーフ(ボクサーパンツ)」は、本件商品である「被服」に含まれる商品である。
(4)本件使用標章1を付した対象商品1(別掲2)の使用時期について 乙1及び乙12から、本件使用標章1を付した対象商品1(別掲2)の販売を目的とする情報は、被請求人の公式通販のウェブサイトに、平成29年(2017年)5月25日に掲載され、それ以降、インターネットを通じて広く、不特定多数の需要者に対して、対象商品1(別掲2)の広告が行われていた。
そうすると、販売(譲渡)を目的とした本件使用標章1が付された対象商品1(別掲2)は、遅くとも、本件要証期間である平成29年(2017年)5月25日には存在していたこと、かつ、被請求人の公式通販のウェブサイトにおいて、対象商品1(別掲2)の販売(譲渡)を目的として、電磁的媒体による広告が行われたことは明らかである。
(6)本件商標と本件使用標章1との社会通念上の同一性について
本件商標は、前記(1)のとおり、円輪郭内の上部に目と思しき小さい黒塗りの縦長楕円を2つ並べ、その中には瞳を思わせる白抜きの点を配し、その下には口と思しき両端上がりの弧線を描いた、人の顔を簡潔に描いてなるものである。
他方、本件使用標章1は、円輪郭内の上部に目と思しき小さい黒塗りの縦長楕円形を2つ並べ、その下に口と思しき両端上がりの弧線を描いてなるものである。
そうすると、本件商標と本件使用標章1は、これらの構成要素(円輪郭、黒塗りの縦長楕円、及び弧線)を共通にし、また、これらの構成全体として、人の顔を簡潔に描いてなる点において、外観における印象を共通にすることから、これらの表示態様や色彩に多少の差異を有するとしても、これらは、ほぼ同視される図形からなるものである。
よって、本件商標と本件使用標章1は、社会通念上同一である。
(7)小括
上記(1)ないし(6)を総合すると、本件商標の商標権者(被請求人)は、本件要証期間である2017年(平成29年)5月25日には、日本国内において、本件商品「被服」に含まれる商品「ボクサーブリーフ(ボクサーパンツ)」に、販売(譲渡)等を目的として、本件商標と社会通念上同一と認められる本件使用標章1を付していたこと、及び本件商標と社会通念上同一と認められる本件使用標章1を付した商品「ボクサーブリーフ(ボクサーパンツ)」を被請求人の公式通販のウェブサイトで、その販売(譲渡)等を目的として電磁的方法による広告を行っていたことが認められ、これらの行為は、商標法第2条第3項第1号及び同項第8号に該当する。
4 請求人の主張について
請求人は、弁駁1、請求人陳述書及び請求人上申書において、「被請求人による本件商標の使用は、『商標使用』ではなく、『デザイン使用』といえる。」旨主張する。
しかしながら、本件使用標章1の表示態様は、単なるデザインと認識されるだけではなく、商品の出所識別標識としても認識され得る。
そして、平成28年(行ケ)第10086号(知財高裁平成28年9月14日判決)において、「商標法50条の主な趣旨は、登録された商標には、その使用の有無にかかわらず、排他的独占的な権利が発生することから、長期間にわたり全く使用されていない登録商標を存続させることは、当該商標に係る権利者以外の者の商標選択の余地を狭め、国民一般の利益を不当に侵害するという弊害を招くおそれがあるので、一定期間使用されていない登録商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求できるというものである。上記趣旨に鑑みれば、商標法50条所定の『使用』は、当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用(商標法2条3項各号)されていれば足り、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきである。」と判示されていることから、仮に、本件使用標章1が、対象商品1(別掲2)のデザインとして使用されているとしても、商標法50条所定の使用については、その使用が、商標的な使用態様であるか否かは問題ではない。
したがって、請求人の上記主張は採用することはできない。
5 まとめ
以上のとおり、本件審判の請求登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、本件取消請求に係る指定商品である「被服」に含まれる商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを、被請求人は証明した。
したがって、本件商標の指定商品中、取消請求に係る指定商品についての登録は、商標法第50条1項の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲1(本件商標)


別掲2(対象商品1)



別掲3(登録第4805259号商標)


別掲4(対象商品2)

別掲
審理終結日 2019-06-28 
結審通知日 2019-07-03 
審決日 2019-09-27 
出願番号 商願平1-6979 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (1202425)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 瀬戸 俊晶
豊田 純一
登録日 1991-11-29 
登録番号 商標登録第2353908号(T2353908) 
代理人 山田 威一郎 
代理人 有限会社ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド 

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