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審決分類 審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W32
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W32
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W32
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W32
管理番号 1359677 
審判番号 無効2018-890071 
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-09-15 
確定日 2020-01-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第5954613号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5954613号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5954613号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成25年2月22日に登録出願、第32類「飲料水,その他の清涼飲料」を指定商品として同29年4月17日に登録審決、同年6月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する登録第5042733号商標(以下「引用商標」という。)は別掲2のとおりの構成からなり、平成18年7月21日に登録出願、第32類「飲料水,その他の清涼飲料」を指定商品として、同19年4月20日に設定登録、その後、同28年11月22日に商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証?甲第21号証を提出した。なお、甲各号証の表記にあたっては、「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第3条第1項柱書違反に該当し、同法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきである。
2 具体的な理由
(1)商標法第3条第1項柱書について
出願に係る商標が商標登録を受けるためには、当該商標が「自己(出願人)の業務に係る商品について使用する商標」であることが必要である(商標法第3条第1項柱書)。
東京地方裁判所平成22年(ワ)第11604号判決(甲2)及び特許庁の商標審査基準によれば、本件商標が上記登録要件を満たすためには、本件商標の出願人である株式会社センカ(本件登録商標の商標権者と同一人。以下「本件商標権者」という。)が、1.本件商標に係る商標登録出願(以下「本件出願」という。)の際、現に、本件指定商品「飲料水、その他の清涼飲料」について本件商標を使用していたこと、又は2.本件出願後3?4年以内(平成25年2月22日(出願日)?同29年2月22日まで)に、本件商標の使用を開始する予定であったことが客観的に認められることが必要である。
しかしながら、本件商標権者のホームページの会社概要(甲3)によれば、本件商標権者は、各種カードの販促業務の請負、イベント請負などの企画・営業のソリューションの提供と、インターネットでのコンテンツ事業を行う会社である。また、同ホームページにおける業務内容によれば、本件指定商品である「飲料水、その他の清涼飲料」に係る業務を行っている旨の記載は一切ない(甲4)。
さらに、甲3に記載のとおり、本件商標権者のホームページは出願日から約4年後の2017年(平成29年)2月14日にリニューアルされたものである。当該ホームページのリニューアル当時、本件商標権者が、本件指定商品「飲料水、その他の清涼飲料」に係る業務を自己の業務として行っていたのであれば、ホームページの業務内容にその記載があってしかるべきであるところ、甲3及び甲4では一切言及されていない。
また、本件商標権者の履歴事項全部証明書(甲5)の「目的」の欄には、本件指定商品「飲料水、その他の清涼飲料」に係る業務はもちろんのこと、これに関連する飲食物等に関する業務の記載は無い。
以上より、本件商標は、出願の際、出願人が自己の業務に現に使用していた商標でもなく、又、近い将来において自己の業務に使用する意思があった商標でもなかったものと考えざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア これまでの審査及び審理
本件商標と引用商標の類否については、特許庁においてこれまでに計3回、本件出願における審査(以下「本件審査」という。)、拒絶査定不服審判(不服2014ー6324 以下「本件不服審判」という。)、そして商標登録異議申立(異議2017-900256 以下「本件異議申立」という。)において判断がなされているが、外観・称呼・観念において、本件審査・本件不服審判・本件異議申立を通して一貫した判断がなされたものは一つもない。
本件商標と引用商標の類否判断はその程度に極めて高度なものであり、その登録の可否は極めて慎重な判断の下に行われるべきである。また、商標を使用する者の予見可能性を担保するためにも、商標の類否判断は一貫性をもって行われなければならない。
イ 本件商標が引用商標に類似する理由
(ア) 本件商標と引用商標の類否
a 称呼
本件商標からは「ドクターウォーター」の称呼が、引用商標からは「ドクターズウォーター」の称呼が生じる。
両称呼を比較すると、本件商標の称呼は全体で8音、引用商標の称呼は全体で9音といずれも冗長である中、両者の相違点は、中間音「ズ」1音の有無のみであり、残りの「ドクター」と「ウォーター」の8音全てが共通する。共通する「ドクター」と「ウォーター」は、いずれも我が国の国民にとっては親しみのある英単語「Doctor(医者)」と「Water(水)」を称呼したものであり、いずれの語も外来語として、普段の生活の中で自然に使用されるものであり、日常的に耳にする語である。
よって、これらの称呼は観念とも相まって極めて聴者の印象に残りやすいものである。
一方、差異音「ズ」の音は、摩擦音であるため強く発音されるものではなく、他の音に比して弱い。加えて、上述のとおり、両者の音構成は冗長な上、当該差異音「ズ」は称呼識別上印象の薄い中間に位置することから、当該音の有無による差異は聴者の耳に残り難い。
したがって、本件商標と引用商標は、一連に称呼するときは全体の語調・語感が相近似し、聴き誤るおそれがあることは明らかである。
また、両称呼は、いずれも2音節の組み合わせで、各音節の共通部分の称呼は、「ドクター」と「ウォーター」であるから、本件商標の称呼を耳にした需要者の印象に残るのも、「ドクター」と「ウォーター」の音であり、当該称呼が自他商品の称呼としての比較対象となり、本件商標と引用商標の称呼は聴者の記憶に残る称呼が共通し、聴き誤るおそれがある。
なお、称呼上の相違点を中間音「ズ」の有無のみとする商標に関する審決例が8件ある(甲11)。これら審決例8件中、類似と判断されたものは4件、非類似と判断されたものは4件で一見、両者は均衡しているようにもみえる。
しかしながら、著名な団体名の類否に関する特殊な事案を除き一般的な事案においては、圧倒的に類似と判断されている。上記審決例で類似と判断された4件では、主な理由として、「ズ」が弱音であること、「ズ」が称呼識別上印象の薄い中間に位置することから、「ズ」の有無が称呼全体に与える影響は小さく、全体の語調語感が近似し、聴き誤るおそれがあると判断されている。
これに対し、非類似と判断された審決例には、引用の称呼の著名性、音節の構成、差異音「ズ」の位置と商標の構成等、各事案特有の理由が存していた。
b 観念
名詞の形容詞的用法では、「○○の△△」といった観念が生じ、また、我が国においては、英単語2個をつないだ言葉は、和製英語としても日常的に用いられており、当該和製英語は、「○○の△△」というような観念を有する。そして、これらの観念を考慮すると、本件商標の「ドクターウォーター」からは、「ドクターの水」の観念に限らず、「の」の意義として「医者の有する水」「医者の飲む水」「医者の使用する水」「医者の推薦する水」「医者の選んだ水」が生ずる
これに対して、引用商標の「ドククーズウォーター」は、2音節の「ドクターズ」と「ウォーター」の組み合わせよりなり、上記した本件商標の2音節の観念に一致する。
以上より、本件商標「ドクターウォーター」と、引用商標「ドクターズウォーター」とは、「’s」「ズ」の有無によって、その観念が異なることにはならず、両商標の使用形態からは、前述したような「医者の水」や「医者の・・・水」といった統一した共通の観念が派生するといわねばならず、称呼と共に観念上も両商標は明らかに類似するものである。
本件審査、本件不服審判の判断において、引用商標からは「博士の水・医者の水」(審査)や「医者の水」(不服審判)の観念が、また、本件商標から「博士・医者(印)の水」の観念が生じるとした認定については異論ない。
しかしながら、本件不服審判で示された「本件商標からは特定の観念が生じない」、そして、本件異議申立で示された「本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じない」とした認定には到底承服できない。
本件商標は2つの英単語(名詞)を直列的に並べてなるものであり、英単語の名詞が重なるときは、前の名詞が後ろの名詞を修飾し「○○の△△」という観念が生じる。また、英単語2個をつないで成る和製英語は、上記例のとおり日常的に用いられているので、「Doctor」は「医者」を、「Water」は「水」を意味するのであるから、「Doctor Water」からは「医者の・・・水」の統一した観念が生じる。
そして、「ドクター」と「ウォーター」が我が国において極めて親しまれている語であることからすれば、これを看取した需要者等が、「医者の水」や「医者の・・・水」といった共通の観念を想起することは明らかである。
よって、本件商標及び引用商標からは、「医者の水」や 「医者の・・・水」の共通の統一的な観念が生じるため、本件商標と引用商標は観念が共通する。
c 外観
本件商標と引用商標の構成は、二段書きと一段書き、及び欧文字部分「Doctor’s Water」の有無という差異がある。
しかしながら、片仮名部分を比較すると、本件商標は9文字、引用商標は10文字と文字数の多い中で、両者の相違点は看者の目に留まりにくい中間に位置する「ズ」の有無のみであり、明らかに相紛らわしいものである。
さらに、引用商標の片仮名部分「ドクターズウォーター」は上段の英文字「Doctor’s Water」の読みを表したものである。
したがって、引用商標の英文字部分と片仮名部分から生じる称呼及び観念は共通する。このような場合、英文字部分と片仮名部分の別は曖昧となり、引用商標を目にした需要者が、より我が国の国民に親しみのある片仮名部分だけを記憶したとしても不思議はない。そうとすると、時と所を異にした場合、需要者が、片仮名部分「ドクターズウォーター」を思い浮かべて商品を選択することは十分にあり得る。
本件商標と引用商標の片仮名部分とは、いずれも一般的な方法で書された片仮名から成るものであり、相違点は中間に位置する「ズ」の一文字の有無のみである。そして、上述のとおり、全体で本件商標が9文字、引用商標が10文字と文字数の多い中で、中間に位置する「ズ」の1文字の相違が外観に与える影響は極めて小さい。
よって、本件商標と本件引用商標とは外観上、需要者等に出所の混同を生じさせ得る相紛らわしいものである。
(イ) 指定商品について
本件商標と引用商標の指定商品は、いずれも第32類「飲料水,その他の清涼飲料」であるから、両者の指定商品は、同一又は類似のものである。
ウ 小括
本件商標と引用商標とは、商品の出所の混同を生じさせるおそれがある類似の商標であり、指定商品が同一又は類似する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(3) むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、及び、同法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1?乙4を提出した。
1 商標法第3条第1項柱書違反について
請求人は、平成30年9月15日付け審判請求書(以下「本件審判請求書」という。)において、被請求人のホームページ及び履歴事項証明書の記載を引用し、被請求人には本件商標を使用する意思がなかった等と主張している。
しかしながら、本件商標は、その登録審決日である平成29年4月17日時点において、被請求人の取引先が製造し、また被請求人が販売する飲料水に使用される予定になっていたので、商標法第3条第1項柱書の要件を満たすことは明らかである。
そもそも被請求人に本件商標を使用する意思がなければ、被請求人は、わざわざ本件不服審判を請求し(甲9)、また、本件商標の出願の拒絶理由の引用商標に対して不使用取消審判を請求する(乙1)等、多大な費用、労力及び時間をかけることはしない。
かかる不使用取消審判は、審判請求日から審決に至るまで審理が2年以上にわたっており、当該取消審判のみに着目した場合でも被請求人の費用負担は多額に上る。
また、本件商標の出願は、審査段階において引用商標に類似するという理由で拒絶査定を受け(甲8)、その後の拒絶査定不服審判において本件商標の登録が認められたという経緯があるので、そもそも本件商標は、その登録が認められるまで安心して使用し得る状況ではなかった。
そして、本件商標の登録後、被請求人が本件商標の使用を開始しようとしたところ、平成29年8月10日に本件審判の請求人から、本件商標は引用商標に類似するため商標法第4条第1項第11号に該当するという理由で異議申立を受けたため、当該異議申立事件において平成29年12月28日付け異議決定がなされるまで、本件商標を安心して使用することができない状況が続いた(甲10)。
他方、本件商標を使用する予定の商品は、シリカ等のミネラル成分を含む飲料水(以下「本件商品」という。)であり、本件商標の登録前の平成27年に本件商品の製造・販売を開始することになった。
そこで、被請求人は種々の事業上のリスクを検討した結果、被請求人の関連会社であるSTGイノベーション株式会社(以下「STG社」という。)にて本件商品を販売することとし、また、本件商品の名称については当面「SILICA PREMIUM WATER」(シリカプレミアムウォーター)という代替的な名称を採用することにした(乙2)。
なお、本件商品を販売するECサイトの公開日は平成27年12月1日であり、また、STG社は、被請求人の代表者であるA氏(甲5)が、同様に代表取締役を務める関連会社である(乙3)。
被請求人の代表者がSTG社の代表取締役を兼任する事実及びSTG社の事業目的に「1.ミネラルウォーター、飲料水、健康飲料水の企画、製造、販売及び輸出入」が含まれる事実については、同社の履歴事項証明書において確認することができる(乙4)。
以上のとおり、本件商標を使用する予定の飲料水は既に被請求人の関連会社にて販売を開始しており、また、被請求人が現在に至るまで本件商標の使用を開始することができない経緯は上記のとおりである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものではないことは明らかである。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
請求人は、本件審判請求書において、本件商標と引用商標が類似すると主張している。
しかしながら、本件商標と引用商標は、先の本件不服審判及び本件異議申立において、既に2度の判断が示されたとおり非類似の商標である。
ア 称呼の類否について
本件商標から生ずる「ドクターウォーター」の称呼と引用商標から生ずる「ドクターズウォーター」の称呼を比較すると、中間に位置する 「ズ」の音の有無において相違するところ、当該差異音が両称呼の全体に与える影響は決して小さいものではなく、両称呼は語調語感が異なるため、十分に聴別し得る。
この点に関しては、本件異議申立の異議決定の理由4(1)ウ(甲10)において既に判示されているとおり、「我が国の一般的な取引者・需要者は、片仮名を一音一音明瞭に発音することが多く、『ズ』の音も明瞭に発音し、聴取されるものである」ことが明らかだから、本件商標と引用商標の「ズ」の音の有無の差異が中間音の差異であるとしても、当該差異音が両称呼に与える影響は小さくないと解すべきである。
なお、請求人は、本件審判請求書において「本件商標の称呼は全体で8音、引用商標の称呼は全体で9音といずれも冗長である」と述べた上で、「引用商標の第1音節『ドクターズ』の『ズ』の有無は周知称呼の『ドクター』に埋没してしまい、その存在価値は殆ど顧慮されない」等と独自の理論に基づく主張をしているが、かかる請求人の主張には何ら客観的な裏付けが見当たらない。
一般的には、本件商標から生ずる「ドクターウォーター」及び引用商標から生ずる「ドクターズウォーター」の称呼は、上記異議決定の理由4(1)ア及びイ(甲10)において認定されているとおり、「格別冗長というべきものではなく、無理なく一連に称呼し得るもの」と解するのが自然である。
さらに、商標の称呼の類否判断において、特定の音が周知称呼に埋没するという理論、考え方が我が国で定着している等の事実は、請求人の独自の理論に基づく主張といわざるを得ない。
また、請求人は、本件審判請求書において計8件の審決を引用し云々述べているが、本件審判の判断は過去の審決例に拘束されるものではない。また、「ズ」の前後の音や称呼全体の音数によって当該差異音が称呼全体に与える影響は異なるため、引用された審決は全て本件審判とは事案を異にする。
そうすると、請求人が引用した審決の中で最も本件審判に近い事例は、8音構成の「イーズダイレクト」の称呼と7音構成の「イーダイレクト」の称呼を比較した審決例7ということになるが、かかる審決においては「本願商標より生ずる『イーズダイレクト』と引用商標A及びBより生ずる『イーダイレクト』の称呼を比較するに、両者は、『ズ』の音の有無に差異を有するものであり、該差異音は、たとえ、中間に位置するとしても、前音が長音であって明瞭に発音、聴取されるものであるから、この差異が、両称呼に与える影響は大きいものとなり、それぞれを一連に称呼した場合には、語調語感が異なるものとなって十分に聴別し得るものといわなければならない。」と認定されている(甲19)。
したがって、請求人が引用した審決例は、請求人の主張を裏付ける根拠にはなっておらず、むしろ本件商標から生ずる「ドクターウォーター」の称呼と引用商標から生ずる「ドクターズウォーター」の称呼が十分に聴別可能であることの証左である。
よって、本件商標と引用商標の称呼は十分に聴別し得るものと解するのが自然である。
イ 観念の類否について
請求人は、本件審判請求書において、和製英語について「本来、ネイティブの英語表現では使用しないが、日本人にわかりやすく創作した日本語的英語」であると述べ、また、本件商標から「医者の有する水」「医者の飲む水」といった観念が生ずる等、本件商標が和製英語であることを前提とした独自の主張をしている。
しかしながら、かかる和製英語についての考え方が、我が国の商標の類否判断において一般的な考え方として定着している実情は見当たらず、請求人の独自の理論にすぎない。さらに、本件商標を構成する「ドクターウォーター」という一種の造語は、我が国の国語辞典やカタカナ語の辞典等に特定の意味を有する語として掲載されておらず、我が国で親しまれている語であるとは到底いえないし、「ドクターウォーター」という一種の造語が、我が国の商取引において特定の意味を有する語として一般的又は慣用的に使用されているという実情も見当たらない。
したがって、本件審判の請求人が主張するとおり、本件商標が創作された和製英語すなわち造語であるならば、本件商標から特定の明確な観念は生じない。
他方、請求人は、上述のとおり本件商標から「医者の有する水」「医者の飲む水」といった観念が生ずる等と述べており、本件商標が創作された和製英語すなわち造語であるという自身の主張と矛盾している。
本件商標中に「有する」「飲む」「使用する」「推薦する」又は「選ぶ」という意味を生ずる語はないので、本件商標から「医者の有する水」「医者の飲む水」等の観念が生ずるという請求人の主張は、あまりに強引であり、論理が飛躍し明らかに失当である。
なお、請求人は、引用商標と本件商標の観念が一致する理由について、本件商標と引用商標が「『ドクター』と『ウォーター』が連なった和製英語の点では全く符合するからである。」と説明している。
そうすると、引用商標を構成する「Doctor’s Water」及び「ドクターズウォーター」の語も創作された和製英語すなわち造語であると自認していることになる。そして、「Doctor’s Water」及び「ドクターズウォーター」という一種の造語は、我が国の国語辞典やカタカナ語の辞典に掲載されておらず、また、我が国の商取引において一般的又は慣用的に使用されているという実情も見当たらないので、本件商標と同様に我が国で親しまれている既成語ではないということは明らかであるから、請求人が自認しているとおり、引用商標が創作された和製英語であるならば、引用商標から特定の明確な観念は生じないと結論付けられる。
よって、本件商標及び引用商標から「医者の有する水」「医者の飲む水」等の共通の観念が生ずるため両商標は観念上類似するという請求人の主張は、明らかに失当であり、本件商標及び引用商標が共に創作された和製英語すなわち造語であるならば、両商標から特定の明確な観念は生じないという結論になる。
ウ 外観の類否について
請求人が本件審判請求書において述べているとおり、本件商標と引用商標の外観には、二段書きと一段書きの差異及び「Doctor’s Water」という欧文字の有無という顕著な差異がある。
また、引用商標の下段の「ドクターズウォーター」の仮名文字は、請求人も自認するとおり、一般的に上段の「Doctor’s Water」の欧文字の読み仮名であると解されるところ、読み仮名や振り仮名は、欧文字や漢字の読み、発音を表すにすぎない補助的な役割を担う文字であって、読み仮名や振り仮名の方がより重要な役割又は主たる役割を果たすという考え方が我が国で一般化している等の実情は存じない。
そうすると、読み仮名である引用商標の下段の「ドクターズウォーター」の仮名文字部分と本件商標の外観を比較して類似性を認定するのであれば、それと同時に引用商標の上段の「Doctor’s Water」の欧文字部分と本件商標の外観の著しい差異を認定すべきであり、また、読み仮名の役割を踏まえれば、引用商標の欧文字部分と本件商標の顕著な差異を重視するのが自然であるから、両商標の外観は非類似であると結論付けられる。
よって、本件商標と引用商標の外観は明らかに非類似である。
3 むすび
以上より、本件審判請求書における請求人の主張は、いずれも失当であり、本件商標の登録に商標法第3条第1項柱書違反又は同法第4条第1項第11号違反の無効理由がないことは明らかである。

第5 当審の判断
1 請求人適格について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、被請求人はこれについて争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
2 商標法第3条第1項柱書について
(1)商標法第3条第1項柱書の要件
商標法第3条第1項柱書における「自己の業務に係る商品・・・について使用をする商標」において、「自己の業務」であることを要求する趣旨は、使用意思のない商標について独占権を付与するのが相当ではないという考慮に基づくものであると解されるから、「自己」と一定の関係があって「自己」と同一視できる「他人」の生産、販売行為等が排除されるものと解するのは相当ではない。また、商標法は、商標の使用を通じて化体された商標に対する業務上の信用を確保することを目的とするものであるところ、一般的に、業務の開始には準備期間を要するし、新たな業務の開始時又は業務内容の変更時に、登録商標が確実に使用できるように確保させておく必要があることから、ここでいう「使用をする」には、当該商標を現在使用している場合だけではなく、将来使用する真摯な意思はあるが現在は使用していない場合も含まれると解すべきである。(知財高裁、平成27(行ケ)第10207号、同28年3月23日判決)。
(2)証拠及び当事者の主張並びに職権調査によれば、次のとおりである。
ア 本件商標は、株式会社センカを請求人(出願人)として平成29年4月17日に登録審決、同社を商標権者として同年6月16日に設定登録されたものであるところ、令和元年5月27日受付で、特定承継による本件商標権の移転登録がされた結果、本件商標権は、株式会社センカ(前商標権者)から霧島シリカ水源株式会社に権利移転された(商標登録原簿)。
イ 「SILICA PREMIUM WATER」を販売するECサイトの写しには、飲料水の商品画像や説明などとともに、品名「ナチュラルミネラルウォーター」の記載が掲載され、「お支払い・お届け方法について」の表題の下、銀行振込先として「STGイノベーション株式会社」並びに社名「STGイノベーション株式会社」及び東京都港区の住所が記載されている(乙2)。
ウ STG社のホームページの写しには、お知らせの表題の下、「2015/12/01 シリカウォーターのECサイトを公開しました。」の記載とシリカプレミアムウォーターの商品画像が掲載されている。また、会社概要には、社名「STGイノベーション株式会社」、東京都港区の住所、代表取締役社長「A氏」、及び主要取引先として「株式会社センカ」の記載がある(乙3)。
エ STG社の履歴事項証明書の写しには、本店に東京都港区の住所、平成28年10月4日及び同29年12月20日登記された「目的」の項には「1.ミネラルウォーター、飲料水、健康飲料水の企画、製造、販売及び輸出入」がそれぞれ記載され、取締役の1人として「A氏」の記載がある。
オ 前商標権者である株式会社センカの履歴事項証明書の写しには、本店に東京都港区の住所、取締役の1人として「A氏」の記載があるが、「目的」の項に飲料水に係る業務の記載はない(甲5)。
カ 以上からすると、上記イ及びウに掲載された商品画像は、その外観が略同?と認められ、「SILICA PREMIUM WATER」の文字が一致することから、2015年(平成27年)12月1日に、STG社は、「シリカプレミアムウォーター」と称する飲料水の販売広告をしていたと推認できる。
また、上記飲料水を販売していたと推認されるSTG社と前商標権者である株式会社センカについては、両者の本社の住所が東京都港区在で一致し、STG社の代表取締役社長「A氏」が株式会社センカの取締役であることを考慮すると、両者は関連した会社であると見て差し支えない。そして前商標権者の関連会社であるSTG社は、本件登録審決時(平成29年4月17日)より前の2015年(同27年)12月1日に、「シリカプレミアムウォーター」と称する飲料水の販売広告をしていたことが認められる。
(3)上記(2)の認定事実によれば、STG社は、前商標権者と一定の関係があり、STG社の業務は前商標権者の業務とは同視することができるから、本件商標について「自己の業務」の要件に欠けるということはできない。
ほかに、本件商標の登録審決時に、前商標権者が本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用している又は使用をする予定があったことについて、合理的な疑義があったものとはいえず、また、使用している又は使用をする予定があったことを否定するに足る証拠の提出はない。
そうすると、前商標権者である株式会社センカは、本件商標の登録審決時において、本件商標の使用意思を有していなかった、又は、将来的に使用予定がなかったとまではいえない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないということはできない。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「ドクターウォーター」の片仮名を横書きしてなるところ、その構成文字は同書、同大、同間隔で、まとまりよく一体に表されているため、一体的に看取され得るものであって、構成全体から生じると認められる「ドクターウォーター」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、本件商標は、その構成全体から「ドクターウォーター」の称呼のみを生じるものである。
そして、「ドクターウォーター」の文字が、構成全体として特定の観念を生じるとまではいい難いものの、「ドクター」の文字は「博士、医者」及び「ウォーター」の文字は「水」の意味をそれぞれ有する語(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)として共に親しまれ、一般人にとって観念を容易に想起し得る単語であることからすれば、「博士、医者」及び「水」の 意味合いを想起させるものといい得る。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「ドクターウォーター」の称呼を生じ、「博士、医者」及び「水」の意味合いを想起させるものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、「Doctor’s Water」及び「ドクターズウォーター」の文字を二段に書してなるところ、下段の片仮名は上段の欧文字の読みを表記したものと無理なく理解できるものであり、構成全体から生じると認められる「ドクターズウォーター」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、引用商標は、その構成全体から「ドクターズウォーター」の称呼のみを生じるものである。
そして、「Doctor’s Water」又は「ドクターズウォーター」の文字が、構成全体として特定の観念を生じるとまではいい難いものの、「Doctor」及び「ドクター」並びに「Water」及び「ウォーター」の文字は、それぞれ「博士、医者」及び「水」の意味を有し(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)、共に親しまれ、我が国においては良く知られ、馴染みのある単語である。
また、欧文字の文字列中間に位置するアポストロフィ(ローマ字文や年号表記で字の肩につける「’」の符号。)は、英語の所有格を表す語として知られている(前掲書)。
そうすると、「Doctor’s Water」の文字は、「医者の水」の語義を生ずるといえるが、「医者の水」が具体的に示すものが明らかでなく、取引上自然に想起する意味又は意味合いとはいい難いから、「医者の水」の観念が生ずるとまではいえない。
しかしながら「Doctor」及び「ドクター」並びに「Water」及び「ウォーター」の文字は、我が国において馴染みのある単語であり、知覚が容易な語であるから、引用商標から「博士、医者」及び「水」の意味合いを想起させることは否定できない。
よって、引用商標は、その構成文字に相応して「ドクターズウォーター」の称呼を生じ、「博士、医者」及び「水」の意味合いを想起させるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標とを対比すると、まず、外観については、その構成は、それぞれ上記のとおりであり、両者は、その構成において一段と二段、アポストロフィを含む欧文字の有無において差異を有するものであるが、片仮名部分においては「ドクター」及び「ウォーター」の9文字を共通にし、相違するのは中間の「ズ」の有無にすぎないから、本願商標と引用商標とは、構成中の片仮名部分の外観において相紛らわしいといえる。
称呼については、本件商標から生ずる「ドクターウォーター」の称呼と引用商標から生ずる「ドクターズウォーター」の称呼は、「ドクターウォーター」の8音を共通にし、相違するのは明瞭に聴取され難い中間に位置する「ズ」の有無にすぎないから、この差異音が称呼全体に与える影響は大きいものとはいえず、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が近似し、相紛れるおそれがあるといわざるを得ない。
また、観念については、両商標は、上記(1)及び(2)のとおり、いずれも特定の観念を生ずるとまではいえないものの、「Doctor」及び「ドクター」並びに「Water」及び「ウォーター」の語が我が国では共に親しまれ、一般人にとって観念を容易に想起し易い単語であることを考慮すれば、両者は共に「博士、医者」及び「水」の意味合いを想起し得るといえるから、観念(意味合い)において相紛れるおそれがあるといわざるを得ない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのある類似の商標とみるのが相当である。
(4)本件商標と引用商標との指定商品の類否
本件商標と引用商標との指定商品は、上記第1及び上記第2のとおり、同一である。
(5)小括
したがって、本件商標は、引用商標と類似する商標であって、かつ、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品とは同一のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を満たすものの、同法第4条第1項第11号に該当し、その登録は同項の規定に違反してされたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



別掲1 本件商標



別掲2 引用商標


審理終結日 2019-11-25 
結審通知日 2019-11-28 
審決日 2019-12-13 
出願番号 商願2013-15939(T2013-15939) 
審決分類 T 1 11・ 262- Z (W32)
T 1 11・ 261- Z (W32)
T 1 11・ 18- Z (W32)
T 1 11・ 263- Z (W32)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福田 洋子 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 小出 浩子
山田 啓之
登録日 2017-06-16 
登録番号 商標登録第5954613号(T5954613) 
商標の称呼 ドクターウオーター、ドクター 
代理人 市川 泰央 
代理人 松尾 憲一郎 
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