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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W24
管理番号 1359631 
審判番号 取消2017-300720 
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-09-22 
確定日 2020-01-14 
事件の表示 上記当事者間の登録第5665720号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5665720号商標(以下「本件商標」という。)は,「スリープテック」の片仮名と「SLEEP TECH」の欧文字を上下二段に書してなり,平成25年10月18日に登録出願,第24類「かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」を指定商品として,同26年4月25日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成29年10月11日になされている(以下,本件審判の請求の登録前3年以内を「要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項により,本件商標の登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)名鉄百貨店本店による本件商標の使用について
ア 被請求人は,「売上データ(乙1)は商品「布団」(以下「本件商品」という。)のものであり,写真(乙6)は本件商標の使用の一態様を示すものである。」旨主張している。
しかしながら,売上データ(乙1)が本件商品のものであることを示す根拠が全くなく,その作成者や作成年月日についても説明がない。
また,写真(乙6)の作成日,作成場所,作成者について,全く開示されていないのであるから,少なくとも要証期間に当該一態様が使用されていたことを証明するものではない。
イ 被請求人は,売上データ(乙1)及び写真(乙6)を踏まえて「売上データにおける左上に記載の品番:ファーストクラスモデル『AFA4554003』の取引データの頁において,売上日2014年(平成26年)3月24日に,被請求人から,株式会社名鉄百貨店(以下『名鉄百貨店』という。)本店内寝具売場に,本件商品(乙6)が搬入され,販売された事実を示すものである。」旨主張している。
しかしながら,本件商品の売上データ(乙1)には,品番「AFA4554003」,得意先名,売上日,区分が羅列されているだけであって,本件商標を使用した態様の商品が得意先に搬入され,販売された事実を示すものでないことは明らかである。
ウ 被請求人は,「写真(乙2)は,名鉄百貨店本店8Fに存在する寝具売場において,上記売上搬入日から現在に到るまで,本件商品を陳列し,展示し,販売している事実を示すものである。」旨主張している。
しかしながら,写真(乙2)は,その撮影場所,撮影日時,撮影者の何れについても,全く示されていない。したがって,当該写真は名鉄百貨店の寝具売場において,本件商品が陳列され,あるいは販売されている事実を示している証拠とはならないものである。
ちなみに,被請求人が主張する名鉄百貨店本店8Fの寝具売場において,本件商標を使用した商品が現在展示,販売されているか否かについて,請求人が確認したところ,2017年(平成29年)12月21日現在,「スリープテック/SLEEPTECH」の文字を付した商品はおろか,「SLEEPTECH」の文字のみを付した商品でさえ販売されていなかった。
したがって,少なくともこの当該時点において,「名鉄百貨店本店8Fに存在する寝具売場において,本件商品を現在に到るまで陳列し,展示し,販売している」という被請求人の上記主張は,事実と異なっており,この点から,被請求人の主張には信ぴょう性がないといえる。
エ 被請求人は「売上データ(乙1)及び写真(乙2)によれば,少なくとも2014年(平成26年)3月24日(売上日)から現在に至るまで,名鉄百貨店本店8Fの寝具売場において,本件商品が搬入され,陳列され,展示され,販売されていることは明らかである。」と主張している。
しかしながら,写真(乙2)によっては,上述したとおり「名鉄百貨店本店8Fに存在する寝具売場において,本件商品を陳列し,展示し,販売している」事実自体が証明されていないのであるから,本件商品の売上データ(乙1)に本件商品の写真を結び付けたところで,上述したように,当該売上データに記載された2014年(平成26年)3月24日はもちろん現在に到るまで,本件商品を名鉄百貨店で陳列し,販売したことを立証できないことは明らかであり,上記被請求人の主張は全く当を得ていない。
オ 被請求人は「要証期間に日本国内において,被請求人(商標権者)は,・・・本件商標を使用していることが明らかに認められる」旨主張しているが,既に述べたように,「スリープテック/SLEEPTECH」の文字を付した商品が要証期間において販売等されていた事実が証明されておらず,少なくとも商標登録の取消しを免れるための登録商標の使用証明が果たされたことにはならない。
したがって,本件商標が要証期間において使用されていた事実を明確に示す証拠が被請求人から提示されない限り,本件商標の取消しを免れることはできない。
(2)国内百貨店及び寝具専門店による本件商標の使用について
ア (ア)被請求人は,「企画書(乙3)は,本件商品が全日本運空輸株式会社(以下「ANA」という。)に採用された航空機内用品と同一の生地,素材を使用した一般消費者向けの商品として販売するために作成したものである。」旨述べている。
しかしながら,当該企画書には作成者,作成年月日,更にはこれが企画書である旨等を示す記載が全くなく,被請求人の主張には信ぴょう性が全くない。
(イ)被請求人は「口紙原本(乙4)は,企画書(乙3)に伴って,一般販売のために作成したものである。」旨述べている。
しかしながら,口紙原本(乙4)には,企画書(乙3)との関係をうかがわせる記載は全く存在しない。
まして,口紙原本(乙4)には,その作成者,作成日が記載されておらず,被請求人の主張にはやはり信ぴょう性がない。
(ウ)被請求人は,「入稿依頼書(乙5)は,企画書(乙3)に伴い,本件商品を一般販売するための販売用パッケージ2種類の作成を株式会社原商会(以下「原商会」という。)へ依頼したものである。」旨述べている。
しかしながら,当該入稿依頼書には,当該企画書との関係をうかがわせる記載は全く存在しない。しかも,入稿依頼書(乙5)は,口紙を2013年(平成25年)11月29日に入稿したことを示しているにすぎず,本件商標を使用したことを示すものでないことは明らかである。
(エ)被請求人は「企画書(乙3)では,・・・被請求人からANAに対して,商品「布団」等について,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」を使用して,納品したことが理解される。」旨述べている。
しかし,当該企画書に記載されているのは,商品コード「AFA4554003」と商品名「ボディラインコンフォーターNano」との関係,及び商品コード「AFA2554004」と商品名「ボディラインコンフォーター」との関係が記載されているにすぎず,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」を使用して,納品することを示すものでないことは明らかである。
(オ)上述したとおり,企画書(乙3)と口紙原本(乙4),入稿依頼書(乙5)との間には,双方の関係を示唆する記載,既述は全くないのであって,「口紙原本(乙4),入稿依頼書(乙5)が,企画書(乙3)に伴って,一般販売するため2013年(平成25年)11月29日に原商会へ販売用布団ケ-スに挿入する本件商標を記した口紙を印刷するべく入稿依頼書において依頼したものである」との被請求人の主張は到底理解できない。
(カ)被請求人は,「口紙の中央に,本件商標『スリープテック/SLEEPTECH』が記載され,口紙の下には,『ANA国際線ビジネスクラスの就寝用掛ふとんとして採用』の他に,品名・品番(AFA2554004)等が記載してある(乙4)。」と述べている。
しかしながら,口紙原本(乙4)の中央には,「SLEEPTECH」が記載されているだけで,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」が記載されているわけではない。被請求人の主張は,この点において誤りがある。
(キ)被請求人は,「口紙原本(乙4)及び入稿依頼書(乙5)のとおり,少なくとも2013年(平成25年)11月29日から,当該口紙の作成依頼がなされ,その後,原商会から,被請求人へ当該口紙及び印刷物が複数搬入された。」旨述べている。
しかしながら,入稿依頼書(乙5)は,単なる依頼書であって「原商会から,被請求人へ当該口紙及び印刷物が複数搬入された。」ことを証明する事実は全くないのであって,上記被請求人の主張は信ぴょう性がない。
(ク)さらに,被請求人は,「原商会から搬入された口紙及び印刷物が,・・・本件商標『スリープテック/SLEEPTECH』を使用するためのものであることは明らかである。」旨述べているが,全く失当である。
(ケ)被請求人は,「売上データ(乙1)が,少なくとも2014年(平成26年)2月19日から2016年(平成28年)8月25日までの間において,被請求人の販売部課から,国内百貨店及び寝具専門店に,本件商品(乙6)が搬入され,販売された事実を示すものである。」旨述べ,さらに,「・・・売上データ(乙1),企画書(乙3),口紙原本(乙4),入稿依頼書(乙5)及び写真(乙6)によれば,少なくとも2013年(平成25年)11月29日から2016年(平成28年)8月25日に至るまで,本件商品を準備し,かつ,国内百貨店及び寝具専門店に搬入され,陳列され,販売されていることは明らかである。」旨主張しているが,被請求人が提出したこれらの証拠には,上記のとおり要証期間に本件商標が使用されている事実を示すものは皆無であって,上記被請求人の主張は全く根拠のないものである。
イ 被請求人は,「被請求人はこの後も,本件商品を当該国内百貨店及び寝具専門店へ搬入し,販売を続けている。」旨述べているので,請求人は現在における本件商標の使用状況を次のとおり確認した。
(ア)2017年(平成29年)12月21日現在における被請求人のウェブサイトにおいても「スリープテック/SLEEPTECH」商標を付した商品や「スリープテック/SLEEPTECH」に係るブランド名の記載が見当たらない(甲1)。
(イ)阪急うめだ本店(大阪府大阪市北区角田町)の寝具売場担当者に確認したところ,同店において被請求人の「SLEEPTECH」の文字を付した商品を販売したことは無い旨の回答を得た。
(ウ)被請求人の直営店と見られる日本橋西川(東京都中央区日本橋)に確認したところ,同店において被請求人の「SLEEPTECH」の文字を付した商品を置いていない旨の回答を得た。
(エ)上記のとおり,少なくとも当該時点において,「本件商品を当該国内百貨店及び寝具専門店へ搬入し,販売を続けている。」という事実は確認できないのであるから,この点においても,上記被請求人の主張に信ぴょう性が無いことは明らかである。
ウ 以上のとおり,「スリープテック/SLEEPTECH」の文字を付した商品が要証期間において販売等されていた事実が証明されておらず,少なくとも商標登録の取消しを免れるための登録商標の使用証明が果たされたことにはならない(乙1,乙3?乙6)。
(3)口紙(乙4)の使用について
ア 被請求人は,口紙の入稿日2013年11月29日を2013年12月3日に訂正しているが,その日が要証期間外であることに変わりは無く,口紙(乙4),仕入伝票(事務課用)(乙17),及び請求書(乙18)の作成日も要証期間外である。
被請求人は,当該口紙を入れた商品「布団」(品番【AFA2554004】:乙6)が販売された事実を説明する。」旨述べるが(乙1,乙7?乙16),品番を訂正したとしても,口紙(乙4),仕入伝票(事務課用)(乙17),及び請求書(乙18)の作成日が要証期間外にあることに変わりがない。
イ 口紙(乙4)が要証期間内において,(品番)「AFA2554004」の商品に使われていたかについて
(ア)口紙(乙4)の印刷は,入稿依頼書(乙5)によれば2013年(平成25年)11月29日(訂正によれば同年12月3日)であって,要証期間の1年も前であり,口紙(乙4)が要証期間内に(品番)「AFA2554004」の商品に使われていることが証拠もなしに確認できない。
(イ)被請求人の入稿依頼書(乙5),仕入伝票(乙17)及び請求書(乙18)によれば,(品番)「AFA2554004」に対応する口紙(乙4)の印刷数は高々100である。このような少量数では,関係販売箇所に配布すれば,直ぐに無くなってしまい,印刷から1年後になる要証期間まで当該口紙を使用していることなどあり得ない。
(4)宣誓書の信ぴょう性について
ア 宣誓書(乙11?乙14,乙16)は,各宣誓書の宣誓者が売上データ(乙1)に記載の販売日には,本件商標を付した態様で販売したことを宣誓しているものだが,各宣誓者がその職務についた日時が前記販売日より後の日付であって,その日時が逆であり,そのような宣誓は不可解である。例えば,乙11の場合,宣誓者が現職務に就いた2014年(平成26年)9月より以前の同年3月24日における販売の商品態様を宣誓している。他の宣誓書も同様である。
イ 株式会社高島屋(以下「高島屋」という。)洛西店販売員による宣誓書(乙21)の信ぴょう性について
宣誓者は2人とも被請求人の従業員であり,その宣誓に信ぴょう性がないことは明らかである。また,その宣誓内容は5年以上前のことであり,宣誓の詳細な内容を,根拠となる資料が無いままに説明していることも,その信ぴょう性が疑われる。
ウ 名鉄百貨店販売責任者による宣誓書(乙22)の信ぴょう性について
宣誓者は被請求人の従業員であり,その宣誓に信ぴょう性がないことは明らかである。また,その宣誓内容はその根拠がないものである上,2014年3月24日の商品搬入,販売を証明するにも拘わらず2014年3月下旬と曖昧な宣誓を行っており,この点でも信ぴょう性がない。また,その宣誓内容は5年以上前のことであり,宣誓の詳細な内容を根拠となる資料が無いままに説明することも,その信ぴょう性が疑われる。
(5)本件商標を指定商品「布団」に使用していたかについて
ア 売上実績表(乙1の2)は,売上データ(乙1の2葉目)にはない新たな記載が多く含まれている。例えば,年月日「2015/01/06」の項の得意先には「催事場 消化」,年月日「2015/8/22」の項の得意先には「タオル」など多数の新たな情報が入っている。
したがって,当該売上実績表は当該売上データの内容と同一とはいえず,又当該売上実績表は本件商標権者の作成に係るもので,商品番号「AFA2554004」に係る商品の売上げを客観的に証明するとはいえないものであり,本件における証拠としては信ぴょう性に欠ける。
イ 大丸札幌店による本件商標の使用について
被請求人は,「商品スリ一プテック(品名「AFA2554004」)が数量1とし,所定の金額を以て,平成27年8月22日(訂正25日)に納品されたことが記載されている。」と説明するが,納品伝票(買取)(乙23)には商品スリープテックの記載がなく,品名は「BLC NH4001SL」とされており,前記請求人の説明と一致しておらず,また,当該納品書には訂正印のない訂正が手書きで記入されており,これらの点を踏まえると前記説明には信ぴょう性が無いことは明らかである。
ウ 有限会社ドントン(以下「ドントン」という。)による本件商標の使用について
被請求人は,請求書等(乙24)をもって,ドントンの注文に応じて被請求人が本件商標を付した布団を譲渡したことを説明するが,請求明細書(乙24のウ)の中にある伝票番号が売上台帳(乙7の6)の伝票番号の一つと一致するからといって,商品「布団」に本件商標を付したものをドントン譲渡したとは直ちに認められない。
(6)本件商標の使用態様について
ア 被請求人は,「商品『クッション,座布団』等に対して,本件商標『スリープテック/SLEEPTECH』が使用されている。」旨主張し,その使用態様が「スリープテック」と「SLEEPTECH」とを2段階に表記する形態であることを自認している(乙2)。
イ これに対して,口紙原本(乙4),入稿依頼書(乙5)及び写真(乙6)に示された表記は,いずれも,単に「SLEEPTECH」の文字が印刷されたものにすぎない。
この表記の場合,「SLEEPTECH」の「TECH」の部分は,通常「TECHNOLOGY」(テクノロジー)の略称として認識され「テク」と称呼されるものであり,「SLEEPTECH」の文字のみでは「スリープテク」とも称呼され得るものであるが,本件商標は片仮名表記「スリープテック」を併記していることから,「テク」の部分を半強制的に「テック」と称呼させるものである。
すなわち,片仮名表記「スリープテック」と英文字表記「SLEEPTECH」を上下二段表記とした本件商標と,片仮名表記「スリープテック」を設けていない当該口紙原本等に示された表記とを比較すると,外観が全く異なる上に,称呼が同一ではないことも明白である。
したがって,本件商標の場合,「SLEEPTECH」を表記しただけでは本件商標を使用したことにならないことは明らかである。
ウ このように,当該口紙原本等に示された表記は,本件商標と社会通念上同一とは認められず,仮に当該口紙原本等に示された表記が要証期間に使用されていたとしても,これは本件商標の使用には該当しないものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第24号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 名鉄百貨店本店による本件商標の使用について
被請求人と,名鉄百貨店本店との間には,本件商標「SLEEPTECH」が表示された口紙を伴った商品「布団」(品番「AFA2554004」)について取引契約がなされている。
2014年(平成26年)3月下旬に,名鉄百貨店本店8階寝具売場の被請求人のブースに,本件商標が表示された口紙を伴った商品「布団」が搬入された。その後,当該梱包された商品「布団」をそのまま展示している。
また,2014年(平成26年)下旬から現在に至るまで,被請求人によって,先ず,当該梱包された商品「布団」それ自体と,他の寝具,例えば,マットレス,まくら,クッション,座布団,毛布,敷布,ベッド等の一又は二以上と組み合わせて,本件商標に「セット」という文字を付した値札を作成して付して販売している(乙2),または,当該梱包された商品「布団」から布団のみを取り出したもの自体と,上記他の寝具の一又は二以上と組み合わせて,本件商標に「セット」という文字を付した値札を作成して付して,度々,販売している(乙2)。
売上データ(乙1)は,本件商品の売上を示したものであり,当該売上データにおいて,要証期間内における使用の事実を示したものを鮮明に記載した売上実績表(乙1の2)である。当該売上データ表示画面は,2016年(平成28年)2月1日において新たな売上データシステムのものであり,当該売上実績表は,新旧の売上データシステムの基礎となるデータであって,その内容は同一のものである。
当該売上データにおける左上に記載の品番:ファーストクラスモデル「AFA4554003」の取引データの頁において,売上日2014年(平成26年)3月24日に,被請求人から,名鉄百貨店本店内の寝具売場に,本件商品(乙6)が搬入され,販売されている事実を示すものである。
名鉄百貨店本店8Fの寝具売場においては,通年,各種セール(初売りセール,年度初め(新入生)セール,お中元・ボーナスセール,在庫一斉セール,歳末セール等)を行っている。
写真(乙2)は,この各種セールの一態様である「寝具年末フェスティバル」(2015年又は2016年の12月頃)において,本件商標が使用された商品「布団」の展示,並びに,指定商品「敷布,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」,商品「クッション,座布団,まくら,マットレス」,及び「これらのセット」に対して,本件商標の商品表示(定価入り)を使用して,展示され,販売された事実を撮影したものである。名鉄百貨店本店担当である被請求人従業員が撮影した。また,商品の展示,セット商品の組み合わせ,本件商標の商品表示(定価入り)等は,被請求人従業員が,名鉄百貨店本店寝具売場従業員とともに,被請求人の要請及び助言の下に,行ったものであり,写真(乙6)は,本件商標の使用の一態様を示すものである。
以上のことから,売上データ(乙1)及び写真(乙2)によれば,少なくとも2014年(平成26年)3月24日(売上日)から名鉄百貨店本店8Fの寝具売場において本件商品(乙6)が搬入され,陳列され,販売されていることは明らかである。
2 国内百貨店及び寝具専門店による本件商標の使用について
売上データ(乙1)は,本件商品の売上を示したものである。
企画書(乙3)は,本件商品が,ANAに採用された航空機内用品と同一の生地,素材を使用した,一般消費者向けの商品として販売するために作成したものである。当該企画書は,商品コード「AFA4554003」は「ファーストクラスモデル」として,商品コード「AFA2554004」は「ビジネスクラスモデル」として採用された商品であり,被請求人からANAに対して,商品「布団,掛布団,布団側,クッション,まくら」について,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」を使用して,納品したことを示している。
口紙原本(乙4)は,企画書(乙3)に伴って,一般販売のために作成したものであり,口紙の中央に,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」が記載され,口紙の下には「ANA国際ビジネスクラスの就寝用掛ふとんとして採用」の他に,品名・品番(AFA2554004)等が記載してある。
入稿依頼書(乙5)は,企画書(乙3)に伴い,本件商品を一般販売するための,販売用パッケージ2種類の作成を原商会へ依頼した際のものである。
少なくとも2013年(平成25年)11月29日から,当該口紙及び2種類(ファーストクラスモデル/ビジネスクラスモデル)印刷するための依頼がなされ,その後,原商会から,本件商標権者へ当該口紙及び印刷物が複数搬入された。
したがって,当該口紙及び印刷物が,商品「敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,クッション,座布団,まくら,マットレス,及びこれらのセット」に対して,本件商標「スリープテック/SLEEPTECH」を使用するためのものであることは明らかである。
売上台帳(乙7の1?6)は,被請求人が作成し,保管していたものであり,2014年10月9日付けで高島屋京都店,2014年12月3日付けで高島屋京都店,2015年1月6日付けで高島屋東京店,2015年8月22日付けで株式会社大丸松坂屋百貨店(以下「大丸松坂屋」という。)の大丸札幌店,2015年10月8日付けで大丸松坂屋の大丸札幌店,2015年12月24日付けでドントン,2016年8月25日付けで高島屋洛西店における商品コード「AFA2554004」に係る商品の取引が記載されている。
当該売上台帳に記載された品番の全てが,商品コード「AFA2554004」と一致していることを示しており(乙1,乙4,乙6),かつ,高島屋,大丸松坂屋,及びドントンにおいて,当該商品コードに係る商品が取引されていることを明らかに示している。
支払案内書及び普通仕入明細の一部(乙8の1・2)は,高島屋営業本部(関西)が作成し,被請求人へ送信されたものである。
宣誓書(乙11?乙16,乙21,乙22)は,名鉄百貨店本店リビングマネージャー及び販売責任者,高島屋京都店ストアバイヤー,高島屋日本橋店次長,高島屋洛西店次長及び販売員,大丸松坂屋の大丸札幌店マネージャー,ドントン代表取締役社長,被請求人の従業員によるものである。
納品代行送り状,納品伝票(買取)(乙23)は,本件商標が使用された商品として,配送伝票と共にアクロストランポート株式会社に荷物配送を委託し,平成27年8月22日に,「大丸札幌店」に配送したことを示すものである。
照合票及び請求書(乙24)は,本件商標が使用された商品として,平成27年12月24日に,「ドントン」に配送されたことを示すものである。
以上のことから,本件商標が使用された商品「布団」が,2014年(平成26年)3月24日ないし2016年(平成28年)8月25日の各々の時点で商取引されており,具体的には,高島屋,大丸松坂屋百貨店,及びドントンに納品され,かつ,展示,販売,対面商品説明,宣伝,広告されていたことは明らかである(乙1,乙4,乙6,乙7?乙16)。
また,少なくとも2013年(平成25年)11月29日から,当該口紙及び2種類(ファーストクラス用/ビジネスクラス用)印刷するための依頼がなされ,その後,原商会から,被請求人へ当該口紙及び印刷物が複数搬入され,本件商標が使用された商品「布団」を準備し,かつ,国内百貨店及び寝具専門店に搬入され,陳列され,販売されていたことが明らかである(乙1,乙3?乙6,乙17,乙18)。
3 結論
したがって,以上のことから,被請求人は,指定商品「布団」に,値札に記載した本件商標を付したこと(商標法第2条第3項第1号),及び本件商標を付した指定商品「布団」を譲渡したことは明らかである(商標法第2条第3項第2号)。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件使用商品について
口紙(乙4)及び口紙の入稿依頼書(乙19)によれば,品番を「AFA2554004」とする商品(以下「本件使用商品」という。)は,当該口紙に品名が「合繊肌掛けふとん」であること,サイズが「150cm×210cm」であること,組成が「ふとんがわ:ポリエステル100%/詰めもの:ポリエステル100%」であること,及び本件使用商品について「ANA国際線ビジネスクラスの就寝用掛けふとんとして採用」との記載があることからすると,上記特徴を有する商品「合成繊維製肌掛け布団」であると認められる。
そして,当該口紙の中央部には,「SLEEPTECH」の文字(以下「本件使用商標」という。)からなる標章が表示されている。
また,当該口紙は,実際に商品「布団」に付されている(乙6)。
以上よりすると,本件使用商品は,商品「合成繊維製肌掛け布団」であって,本件使用商標が付されていたといえる。
(2)本件商標権者と大丸松坂屋の大丸札幌店との取引について
本件商標権者に係る売上げデータ(乙1の2葉目)及び売上実績表(乙1の2)は,売上日を2015年(平成27年)8月22日,得意先を大丸札幌店とする商品の売上実績であって,当該売上実績には品番「AFA2554004」,及び数量1点とする記載があり,本件商標権者に係る売上台帳(乙7の4)には,売上日を同年8月22日,取引先を大丸松坂屋の大丸札幌店とする納伝番号「2580」,商品コード「AFA2554004」,商品名「BLC NH4001SL」及び売上数量「1」点とする記載があり,大丸松坂屋と本件商標権者との取引情報を提供する百貨店eマーケットプレイス(乙9)には,計上日を同年8月25日,取引先を大丸松坂屋,伝票番号「2580-00」について,納入した旨記載があり,また,同30年6月28日付けの大丸松坂屋の大丸札幌店のマネージャーによる「宣誓書」(乙15)には,宣誓者は同25年3月頃から現在に至るまでマネージャーとして,売場運営の職務を遂行し,同27年8月22日に,本件商標権者から本件商標が付された商品を購入し,展示していた旨の記載がある。
そして,これらの記載における日付,納伝番号と伝票番号,品番及び数量における整合性に不自然な点が見られないことからすれば,本件商標権者は,平成27年8月22日に,大丸松坂屋の大丸札幌店に対し,品番「AFA2554004」に係る商品1点を販売したと認められる。
そうすると,上記(1)のとおり,品番「AFA2554004」は,本件使用商品であるから,本件商標権者は,平成27年8月22日に,大丸松坂屋の大丸札幌店に対し,本件使用商品に本件使用商標が付したものを販売したと認められる。
(3)本件商標権者とドントンとの取引について
本件商標権者に係る売上げデータ(乙1の2葉目)及び売上実績表(乙1の2)は,売上日を2015年(平成27年)12月24日,得意先をドントンとする商品の売上実績であって,当該売上実績には品番「AFA2554004」,及び数量5点とする記載があり,本件商標権者に係る売上台帳(乙7の6)には,売上日を同年12月24日,取引先をドントンとする伝票番号「1043062」,商品コード「AFA2554004」,商品名「BLC NH4001SL」及び売上数量「5」点とする記載があり,本件商標権者に係る請求明細書(乙24のウ)には,請求日を同年12月24日,取引先をドントンとする伝票番号「1043062」,商品コード「AFA2554004」,商品名「BLC NH4001SL」及び数量「5」点とする記載があり,また,同30年6月27日付けのドントンの代表取締役社長による「宣誓書」(乙16)には,宣誓者は同10年4月頃から従業員として,同29年10月から現在に至るまで,代表取締役社長として,寝具の仕入れ及び販売の職務を遂行し,同27年12月24日に,本件商標権者から本件商標が付された商品を購入し,同社の店舗において展示し販売していた旨の記載がある。
そして,これらの記載における日付,伝票番号,品番及び数量における整合性に不自然な点が見られないことからすれば,本件商標権者は平成27年12月24日に,をドントンに対し,品番「AFA2554004」に係る商品5点を販売したと認められる。
そうすると,上記(1)のとおり,品番「AFA2554004」は,本件使用商品であるから,本件商標権者は,平成27年12月24日に,ドントンに対し,本件使用商品に本件使用商標が付したものを販売したと認められる。
2 判断
上記1において認定した事実によれば,以下のように判断できる。
(1)使用商標について
ア 本件商標は,「スリープテック」の片仮名と「SLEEP TECH」の欧文字を上下二段に書してなるところ,「スリープテック」の片仮名は,欧文字部分の読みを特定するものと容易に認識されるものである。
また,「SLEEP TECH」の欧文字については,「SLEEP」の文字(語)が「眠り」の意味を有し,「TECH」の文字(語)が「科学技術」(ランダムハウス英和大辞典 株式会社小学館)の意味を有する語として一般に親しまれているとしても,「SLEEP TECH」の欧文字全体から一般に親しまれた特定の観念を生じるものではない。
そうすると,本件商標からは,その構成文字に相応して「スリープテック」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものの,「SLEEP」及び「TECH」の語が一般に親しまれた語であることから「眠り」及び「科学技術」の意味合いを想起させるものである。
イ 他方,本件使用商標は,「SLEEPTECH」の欧文字を横書きしてなるところ,その構成文字及び意味合いから,「SLEEP」の文字(語)と「TECH」の文字(語)とからなるものであると容易に認識されるものである。
そうすると,上記アと同様に「スリープテック」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものの,「SLEEP」及び「TECH」の語が一般に親しまれた語であることから「眠り」及び「科学技術」の意味合いを想起させるものである。
ウ そうすると,本件商標と本件使用商標とは,「SLEEPTECH(SLEEP TECH)」の欧文字部分を共通にし,同一の称呼及び観念(意味合い)が生じるものであるから,本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一と認められる。
(2)使用商品について
上記1(1)のとおり,本件使用商品は,品番を「AFA2554004」とする商品「合成繊維製肌掛け布団」であって,商品「布団」の一種であるといえるから,本件商標の指定商品中「布団」に含まれることは明らかである。
(3)使用者及び使用時期について
ア 本件使用商品を大丸松坂屋の大丸札幌店及びドントンに販売したのは,本件商標権者であるから,使用者は,本件商標権者である。
イ 上記1(2)及び(3)のとおり,本件商標権者は,要証期間内である平成27年8月22日に,大丸松坂屋の大丸札幌店に対し,また,要証期間内である平成27年12月24日に,ドントンに対し,それぞれ本件使用商品を販売した。
したがって,本件商標権者は,要証期間内である平成27年8月22日及び同年12月24日に本件使用商品を譲渡したといえる。
(4)小括
以上によれば,本件商標権者は,要証期間内に日本国内において,本件審判の請求に係る指定商品中「布団」に含まれる本件使用商品「合成繊維製肌掛け布団」に本件商標と社会通念上同一の本件使用商標を付したものを,大丸松坂屋の大丸札幌店及びドントンに譲渡したと認めることができる。
そして,本件商標権者による上記行為は,商標法第2条第3項第2号にいう「商品に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,口紙(乙4)が要証期間内に品番「AFA2554004」の商品に使われているか不明である。品番「AFA2554004」に対応する口紙(乙4)の印刷数は高々100であって,この数では,関係販売箇所に配布すれば,直ぐに無くなってしまい,印刷から1年後になる要証期間まで当該口紙を使用していることなどあり得ない旨主張する。
しかしながら,商品「布団」等の販売に当たっては,商品のサイズ,品番,組成(素材・成分)が表示された口紙を入れることは普通に行われていることであり,上記1(1)のとおり,口紙(乙4)が実際に「布団」に付されていたものである。
そして,本件使用商品の売上データ(乙1及び乙の2)における本件使用商品の売上数量が大量とはいえないことからすると,口紙が要証期間の1年前に作成されたものであるとしても,要証期間内に当該口紙が商品「布団」に付されていたと優に推認できるというべきである。
(2)請求人は,各宣誓者がその職務についた日時が売上データ(乙1)に記載の販売日より後の日付であって,その日時が逆であり,そのような宣誓は不可解である旨主張する。
しかしながら,大丸松坂屋の大丸札幌店のマネージャーが職務についたのは平成25年3月頃からであり,販売日は同27年8月22日である。また,ドントンの代表取締役社長が従業員として職務についたのは平成10年4月頃からであり,販売日は同27年12月24日であるから,その日時が逆であるとはいえない。
(3)請求人は,本件使用商標は,「スリープテク」とも称呼されるとし,本件商標とは,社会通念上同一とは認められない旨主張する。
しかしながら,例えば,「Fin Tech」を「フィンテック」と称し,「Ins Tech」を「インステック」と称するように(いずれも「現代用語の基礎知識2019」),「TECH」の文字(語)は,他の語の後ろに結合し,「○○テック」と称されることが多いことからすると,本件使用商標は,「スリープテック」の称呼を生じるとみるのが相当である。
(4)以上のとおり,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,本件商標権者が,その請求に係る指定商品中の第24類「布団」に含まれる商品「合成繊維製肌掛け布団」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしたことを証明したとものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-11-19 
結審通知日 2019-11-21 
審決日 2019-12-03 
出願番号 商願2013-81278(T2013-81278) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W24)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 椎名 実渡辺 悦子 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 山田 啓之
平澤 芳行
登録日 2014-04-25 
登録番号 商標登録第5665720号(T5665720) 
商標の称呼 スリープテック、テック 
代理人 TH弁護士法人 

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