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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W35
審判 全部無効 外観類似 無効としない W35
審判 全部無効 観念類似 無効としない W35
管理番号 1358838 
審判番号 無効2018-890069 
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-09-06 
確定日 2020-01-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5940853号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5940853号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年8月18日に登録出願、第35類「トレーディングスタンプの発行,トレーディングスタンプ・クーポン券・ポイントカード又は割引付特典カードの発行・管理又は清算,商品の販売促進又は役務の提供促進のためのクーポン又はポイントの発行・管理又は清算,電子商取引の利用促進のためのポイントの蓄積・集計・管理又は清算,職業のあっせん,職業のあっせんに関する助言・相談又は情報の提供,人材紹介,人材募集,就職あっせん,介護に従事する者のあっせん・紹介又はこれらに関する助言・相談若しくは情報の提供,介護に関する職業のあっせん・紹介又はこれらに関する助言・相談若しくは情報の提供,ホームヘルパーのあっせん・紹介又はこれらに関する助言・相談若しくは情報の提供,デイサービス・老人ホーム・訪問介護・放課後等デイサービス・グループホーム等の介護関連事業に関する職業のあっせん・紹介又はこれら関する助言・相談若しくは情報の提供,介護職・ホームヘルパー・ケアマネージャー・児童発達支援管理責任者等の介護関連の職業のあっせん・紹介又はこれら関する助言・相談若しくは情報の提供,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,コンピュータシステムの操作に関する運行管理又はこれに関する助言・相談若しくは情報の提供,求人情報の提供,求人情報の提供に関する助言・相談又は情報の提供,就職・転職の相談,介護に従事する者の求人情報の提供又はこれに関する助言・相談若しくは情報の提供,ホームヘルパーの求人情報の提供又はこれに関する助言・相談若しくは情報の提供,介護に従事する者・ホームヘルパーの就職・転職に関する相談・指導又は助言,デイサービス・老人ホーム・訪問介護・放課後等デイサービス・グループホーム等の介護関連事業に関する求人情報の提供又はこれ関する助言・相談若しくは情報の提供,介護職・ホームヘルパー・ケアマネージャー・児童発達支援管理責任者等の介護関連の求人情報の提供又はこれ関する助言・相談若しくは情報の提供,新聞記事情報の提供,雑誌記事情報の提供,雑誌又は書籍の記事情報の提供,インターネット上のウェブサイト・ウェブログを通じて行う就職・転職・仕事・保育・介護・病気・政治・経済・環境・文化・人権・国際情勢・科学技術・ビジネス・スポーツ・芸能・その他の時事問題に関する記事情報の提供,インターネット上のウェブサイト・ウェブログを通じて行う就職・転職・仕事・保育・介護・病気・娯楽・趣味・地域情報・暮らしに関する記事情報の提供,新聞・雑誌に掲載された記事に関する情報の提供」を指定役務として、同29年3月30日に登録査定、同年4月14日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由について、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第5227242号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成20年7月1日に登録出願、第35類「広告,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,財務書類の作成,職業のあっせん,文書又は磁気テープのファイリング,広告用具の貸与,求人情報の提供」及び第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同21年5月1日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標について
本件商標は、橙色で表された「介護のお仕事」という横書きの文字と図形を組み合わせたものである。介護の「護」の文字の言偏の下端の口が塗りつぶされて円形化しているが、「護」の文字を構成すると十分認識できるものであり、図形部分としては語尾の字の右上に接するように太陽を模した図形が加わっている。この太陽を模した図形には、注視すれば、顔のごとき線があるが、その図形自体は1文字程度の大きさである。また、全体として、わずかに濃淡はあるものの、橙色の単色である。本件商標の指定役務は、第35類の役務であり、特に、類似群コードとして「35D01」を含んでいる。
(2)引用商標について
引用商標は、文字と図形を組み合わせた標章であり、文字としては「MC-介護のお仕事」という横書きの記載であり、先頭の「MC-」の部分はTime系のフォントで表記され、「介護のお仕事」の部分はゴシック系の日本語フォントで表記されている。
特に、「MC-」の部分と、それ以降の「介護のお仕事」は文字の色も異なっており、「MC-」の部分は薄い橙色で、「介護のお仕事」の部分は赤色の文字で、灰色のシャドウがあるために「介護のお仕事」の部分は赤い文字で浮き出るように把握される。
このような文字部分に加えて、「MC」の「M」文字に重なる配置で橙色の縁を有する白丸が重なり、その背後に比較的に大きな橙色のハート形状が位置し、白丸の橙色の縁は「MC-」の文字部分で切れた図形を有する。
「介護のお仕事」の文字の最後の「事」の文字の斜め右上には、緑色の小さな四葉のクローバーが配置されている。「MC」は権利者「株式会社メディカルコンシェルジュ」のメディカルコンシェルジュ(Medical Concierge)部分の略号である。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 称呼の同一性
本件商標は、その構成文字に相応して「カイゴノオシゴト」の称呼を生じ、引用商標は、「エムシーカイゴノオシゴト」の称呼が生じるが、「MC」と「介護のお仕事」の間には「-」が配されており、「MC-」の部分が略され、「カイゴノオシゴト」の称呼が生じる。
引用商標における「MC-」の部分は、直後の「介護のお仕事」の文字と分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではなく、一部分の「介護のお仕事」の文字が類似している場合は類似と考えられ、特に称呼としては全く同じ文字列であることから、その部分は同一であると判断されるべきものであり、全体として類似の称呼である。
イ 外観及び観念の同一若しくは類似性
本件商標からは「介護のお仕事」の文字に起因する観念が生ずるものであり、介護とは、「病人や老人を日常生活の身体的困難などに対して補助したり看護したりすること」であり、「お仕事」とは、「仕事」すなわち「業務や職業」を指し、「お」は丁寧に表現した尊敬語であって、「職業のあっせん」という役務においては、利用者に向けた丁寧さを表現したものである。
引用商標の「MC」の部分からも、社名の略語としての観念は生じ、ハート形状や小さなクローバーの図形部分からも、観念は多少生ずると考えられるが、全体としては、それらが「介護のお仕事」の部分から生ずる「人の世話をする業務」のごとき明らかな観念を何ら妨げるものではなく、このような分離観察は、判決でも肯定されるべき解釈である。
次に、外観について、引用商標では、「MC」の文字が先頭部分のハート及び白丸の重ねた形状に色合いも同様であることから融合するように描かれており、本件商標とは異なる部分も存在するが、「『介護のお仕事』の文字が要部である」、「『介護のお仕事』の文字のフォントが共にゴシック体である」、「両商標の図形は、ほぼ橙色の図形である」、「引用商標の文字の色が橙色『MC-』と暖色系の赤色の『介護のお仕事』の文字からなるのに対し、本件商標では暖色系で橙色の『介護のお仕事』の文字からなる」、「引用商標がクローバーを最終文字の右斜め上に配置してアクセントを加えているが、本件商標は、同じ位置に対称を模したアクセントを加えている」というような類似点があることから、役務の使用に際しては取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察した場合に、出所についての混同が生じるものであり、外観についても類似している。
ウ 指定役務の範囲
本件商標は、第35類の「職業のあっせん」とこれに類似する役務を指定役務としており、引用商標も第35類の「職業のあっせん」を指定役務としている。
したがって、指定役務の範囲は競合している。
エ 取引の実情
請求人は、介護関連の職種への求職者に対する求人情報をインターネットのウェブサイトを通じて表示させ、開設(平成20年6月28日)以来、今日まで情報提供を続けている。10年間での利用者数は、ネット上での登録を行ったネット会員だけで、延べ10,240名、来店して面談の登録をした会員数は、4,448名というデータがある。
一方、本件商標は、平成26年12月20日に商標の使用を開始していたと記録され(甲4)、同年1月13日には使用がない(甲5)。これは、請求人の使用実績より約6年もの期間が過ぎており、被請求人の役務は、請求人の役務と同じで「介護のお仕事」を支配的な要部とする商標を使用し、かつ、後発である。これは、請求人の業務上の信用を横取りするがごとき行為でもあり、商標法が保護する適切な商習慣から逸脱しているといわざるを得ない。
最近のネットを利用した就職情報を提供する社会環境を踏まえると、「介護のお仕事」という一連の文字には確かな出所表示機能があり、請求人の約10年間の実績から他のサイトに対する識別力が顕著な文字列である。
甲第6号証は、請求日付近における、検索サイトにキーワード「介護のお仕事」を入力して結果を示す印刷物であり、サーチエンジンでの検索にキーワードを用いたテキスト検索がよく利用されていることは説明するまでもない事実である。
被請求人は、「介護のお仕事」の文字は、独立して自他役務識別標識として機能しない旨を述べているが、現実には、サーチエンジンで検索することでサイトへの流入が喚起されるのであり、そこには、ページタイトルが見出しとして表示されているから、「介護のお仕事」が少なからず自他役務識別標識として使用されていることは確かである。
本件商標及び引用商標を利用する需要者は、介護関連の職業のあっせんを求める者であり、例えば、本件商標の使用開始以前に請求人サイトを利用した者が再び利用しようと思い、そのサイトにアクセスするために、検索サイトで「介護のお仕事」の文字を入力した場合には、本件商標のサイトに気づかずに被請求人サイトに誘導されてしまうおそれがある。
特に、被請求人サイトでは、ページタイトルに「[介護のお仕事](公式)」の文字列が表示されるように操作されている。この「(公式)」の文字の追加は、非公式のサイトへの識別若しくは差別表示として機能すると思われ、単に「介護のお仕事」という検索では、出所の混同を生じるおそれがあると被請求人自身が認識している行為と推測される。
請求人サイトの再利用を願う検索者は、表示されたページタイトルからのハイパーリンクをたどるように誘発され得る。その結果、表示された本件商標が、引用商標と支配的な要部「介護のお仕事」が同一であり、外観上もいくつもの類似点を含み、印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察することで、引用商標とは出所の混同が生ずること明らかである。
(4)むすび
上述のように、本件商標と引用商標は、「介護のお仕事」という文字が共通して出所識別標識として強く支配的な要部でもある商標である。よって、本件商標は引用商標と類似であって、その指定役務も競合することから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、同法第46条第1項の規定により無効にすべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)結合商標の分離
引用商標の分離の可否が争点の1つと思われるが、引用商標を「MC」と「介護のお仕事」に分離して観察することは取引上不自然ではなく、これらに分離して観察することがむしろ自然な観察である。
引用商標は、「MC」と「介護のお仕事」の間が「-」で区切られている。また、「MC-」は文字の色合いが薄い橙色で文字列の先頭側に位置するハート形状と円形の重なり合う図形の色合いと同じ色を呈しており、これに対して「介護のお仕事」の文字は濃い橙色であって、「MC」と「介護のお仕事」の聞には色の濃淡による違いが明らかに存在する。さらに、「介護のお仕事」の文字列側だけには、各文字に視覚的に薄い灰色シャドウエフェクトが入っており、「介護のお仕事」の文字列側だけは見た目で立体化して浮き出た印象を与えるように構成されており、このような効果は「MC」の側には全く存在せず、むしろ背景側のハートと円形の図形部分に「MC」の側はその色合いから一体化する構成を有する。加えて、引用商標は、英文字2字、ハイフン、漢字と平仮名の組み合わせの6文字のごとく異種の文字の組み合わせであり、英文字だけの構成にハイフンが介在する構成よりは「MC」と「介護のお仕事」の間の結合度は浅い。
「-」(ハイフン)の存在により分離されるとした知的財産高等裁判所の判決例が存在し、引用商標は、複数の言葉の連結又は1語内の形態素の区切りの明確化というハイフンのなす役割自体からして、「MC」と「介護のお仕事」の各文字部分とを分離して看取することができると考えるのが自然な観察である。さらに、引用商標では、「MC」と「介護のお仕事」の間には色の濃淡により違いが明らかに存在し、「MC」と「介護のお仕事」のそれぞれと背景とのコントラストの違いを見た者は感じることができ、それは「MC」と「介護のお仕事」の間の結合度が浅いことを示すものに他ならない。また、「介護のお仕事」の文字列側だけに存在する視覚的に薄い灰色シャドウエフェクトも、「介護のお仕事」側だけ浮き出た印象を与えることから、「MC」と「介護のお仕事」の間の結合度が浅いことを示すものである。
被請求人は、「つつみのおひなっこや事件」を挙げるが、この裁判例で争点となったのは、「つつみのおひなっこや」という平仮名を連ねた商標の「つつみ」の部分の分離可否を判断した際の基準であり、引用商標のように英文字2字、ハイフン、漢字と平仮名の組み合わせの6文字のような異種の文字を組み合わせた構成についての判断ではない。
「つつみのおひなっこや事件」の判例を、文字の色が異なり、ハイフンが間に配置され、英文字2字、ハイフン、漢字と平仮名の組み合わせ6文字のような異種の文字を組み合わせた構成にまで、拡大して適用することには無理があり、引用商標の構成部分である「MC-」の文字部分と「介護のお仕事」の文字部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものということはできない。
(2)「介護のお仕事」の部分の自他役務の識別力
引用商標を「MC-」と「介護のお仕事」に分離して観察した場合であっても、「介護のお仕事」には自他役務の識別力があり、「介護のお仕事」の文字列は識別力がないとする請求人の認識には無理がある。
仮に、引用商標の「介護のお仕事」の部分に識別力が欠如するならば、本件商標も同一の「介護のお仕事」の文字列を有する商標であるので、無効理由にある商標法第3条の規定から、本件商標が無効となることを自ずと証明している。
本件商標は、その標章部分から「介護のお仕事」の橙色の文字を読み取ることができ、「カイゴノオシゴト」という称呼を生ずることが容易に理解できる。そして、「カイゴノオシゴト」という称呼については、引用商標も「介護のお仕事」の部分から「カイゴノオシゴト」という称呼が発生し、これは称呼として同一である。
被請求人は、本件商標の登録前の意見書においても、引用商標の「介護のお仕事」には識別力がない旨を主張している(甲7)が、その際に全く同じ文字列を有する本件商標の識別性には言及せずに、登録査定を得て登録されている。しかし、その意見書で述べた論理からすると、引用商標中の「介護のお仕事」には識別力がないとするなら、本件商標中の「介護のお仕事」にも同じく識別力がないはずであり、そのような前提に立つならば、識別力のある要部として認識されるのは、本件商標については「事」の文字の斜め右上に配列された顔を模した太陽のごとき比較的に小さな図形部分だけということになる。
しかしながら、「介護のお仕事」には識別力がないという誤った判断は、取引の実情にかんがみた場合に、実際と異なる誤った結論を導くものとなる。
被請求人のウェブサイトのよくある質問では、「Q.介護のお仕事はどんなサービスですか?」の記載や、「Q.介護のお仕事を利用するメリットは何ですか?」の記載があり(甲8)、サイトの名前として「介護のお仕事」の文字が使用されていることが分かり、介護求人に関する情報サイトとして他人のサイトと区別するために「介護のお仕事」の文字が使用されている。すなわち、インターネットのウェブサイトのような求人情報提供サービスを提供する場合には、「介護のお仕事」という、その分野で識別力がやや弱い文字をいくつか組み合わせた場合であっても、自他役務の識別力が全くない訳ではなく、顔を模した太陽のごとき図形部分だけが要部なので利用者の混乱は生じないとするような誤った論理とはならない。ネットで検索する場合であって、そのサービスを他人に紹介したりする場合には称呼が使われることにもなり、同じ称呼となる場合には類似の範囲を出ないことは明白である。
「そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである」(氷山印事件)ものであり、本件商標は、被請求人が「介護のお仕事」には識別力がないと主張して商標登録を得たものであるが、実際の取引状況では被請求人自身そのような取り扱いをしていないところに被請求人の矛盾がある。
請求人は、介護関連の職種への求職者に対する求人情報に係るインターネットのウェブサイト(http://mc-kaigo.net)を約11年前の平成20年の6月から使用しており、介護関連の職種への求職者を支援すべく必要な情報提供を続けている。請求人の会員数は、確かに新規求職者から比べれば少ないという考え方があるものの、会員中には反復して利用する者も存在する。数が少なければ混乱する者がいても良いという論理が被請求人の商標選択の根本にあると推測され、そのような混乱を防ぐ意味でも、本件商標は、その登録が無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第16号証を提出した。
1 被請求人の反論の要旨
引用商標は、図案化された「MC-介護のお仕事」の文字からなり、その構成全体が一体不可分に認識されるものである。
特に、引用商標の構成中、「介護のお仕事」の文字部分が、本件商標の登録査定時、請求人の業務に係る役務を表示するものとして周知であり、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとか、「MC-」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと解すべき理由はない。さらに、請求人の主張によれば、「MC」は、請求人の名称の略称とのことであるから、請求人の代表的出所表示標識であり、むしろ、取引上、捨象されることはあり得ない。
したがって、引用商標の構成から「介護のお仕事」の文字部分のみを分離抽出して、本件商標と引用商標とを類似と述べる請求人の主張は失当である。
すなわち、本件商標は、引用商標とは非類似であり、商標法第4条第1項第11号には該当しない。
2 指定役務の類似性
本件商標の指定役務のうち、引用商標の指定役務と類似と扱われている役務は、「職業のあっせん,職業のあっせんに関する助言・相談又は情報の提供,人材紹介,人材募集,就職あっせん,介護に従事する者のあっせん・紹介又はこれらに関する助言・相談若しくは情報の提供,介護に関する職業のあっせん・紹介又はこれらに関する助言・相談若しくは情報の提供,ホームヘルパーのあっせん・紹介又はこれらに関する助言・相談若しくは情報の提供,デイサービス・老人ホーム・訪問介護・放課後等デイサービス・グループホーム等の介護関連事業に関する職業のあっせん・紹介又はこれら関する助言・相談若しくは情報の提供,介護職・ホームヘルパー・ケアマネージャー・児童発達支援管理責任者等の介護関連の職業のあっせん・紹介又はこれら関する助言・相談若しくは情報の提供,求人情報の提供,求人情報の提供に関する助言・相談又は情報の提供,就職・転職の相談,介護に従事する者の求人情報の提供又はこれに関する助言・相談若しくは情報の提供,ホームヘルパーの求人情報の提供又はこれに関する助言・相談若しくは情報の提供,介護に従事する者・ホームヘルパーの就職・転職に関する相談・指導又は助言、デイサービス・老人ホーム・訪問介護・放課後等デイサービス・グループホーム等の介護関連事業に関する求人情報の提供又はこれ関する助言・相談若しくは情報の提供,介護職・ホームヘルパー・ケアマネージャー・児童発達支援管理責任者等の介護関連の求人情報の提供又はこれ関する助言・相談若しくは情報の提供」(類似群コードが「35D01」、「42G02」の役務:以下「抵触役務」という。)である。
3 「介護のお仕事」の文字について
(1)「介護のお仕事」の語義
「介護」(乙1)も「仕事」(乙2)も、極めて平易な言葉であるから、我が国の需要者は、十分にその意味を理解していると解される。また、構成中、「お」の文字は、「御」を意味し、「広く事物に冠して、聞き手に対する丁寧の気持ちを表す」(乙3)ものであるから、「お仕事」の文字は、「仕事」を丁寧に表現したものにすぎない。
したがって、「介護のお仕事」が、「介護の仕事」ないし「介護に関する仕事」を意味することは明らかである。
特に、抵触役務は、「職業のあっせん」や「求人情報の提供」等に係るものであるから、「仕事」は、抵触役務と密接に関連する一般的な言葉であり、また、職業や求人情報の中には、介護関連の職業、業務も存在するものであるから、抵触役務の分野における取引者、需要者が「介護のお仕事」の文字に接した場合、それを「介護の仕事」や「介護に関する仕事」の意味と認識し、役務の内容が「介護に関する仕事を行う職業のあっせん」であることや「介護業務に関する求人情報の提供」等であると認識することは明らかである。
なお、請求人は、「介護」及び「仕事」の文字の識別性が薄弱であることを自認している(請求書6頁8?10行目)。
(2)「介護のお仕事」の語の使用例
本件商標の登録査定時の前後において、「介護のお仕事」は、「介護の仕事」ないし「介護に関する仕事」を意味する言葉として広く一般に使用されていた(乙4?乙13)。
(3)「介護のお仕事」の請求人商標としての非周知性
請求人の主張によれば、請求人のウェブサイトの会員数が10年で延べ10,240人とのことであるが、例えば、平成25年度の介護関係職種の新規求職者数が約31.6万人であるから(乙14)、請求人の会員数は需要者数に比して少なく、この点からも請求人の商標として周知とはいえない。
なお、請求人の会員数を立証する証拠は提出されていない。
(4)小括
以上のとおり、「介護のお仕事」の文字は、「介護の仕事」、「介護に関する仕事」を意味するものであり、抵触役務の分野において、一般に使用されている言葉であって、また、請求人の業務に係る役務を表示するものとして強い出所表示力があるとの事実はない。
すなわち、「介護のお仕事」の文字に接した取引者、需要者は、抵触役務の内容が「介護に関する仕事を行う職業のあっせん」であることや「介護業務に関する求人情報の提供」等であると認識することは明らかである。
よって、「介護のお仕事」の文字は、抵触役務の内容(質)を表すものであり、自他役務識別標識としての機能がないか、弱いものと解される。
4 商標の類否
(1)「介護のお仕事」の文字部分に基づく要部観察の当否
ア 引用商標は、「MC-介護のお仕事」の文字を含み、そのうち、「M」の文字はハート形の図形に取り込まれ、さらに「事」の文字の右上に四つ葉のクローバーの図形を配した構成である。ハート形の図形及び「MC-」の文字は薄い橙色で、「介護のお仕事」の文字は濃い橙色で、四つ葉のクローバーは緑色でそれぞれ表されている。
このように、四つ葉のクローバー以外の構成部分は、暖色系の色で統一されており、「MC-介護のお仕事」を構成する各文字は同一の大きさでスペースなく横一連に表され、特段「介護のお仕事」の文字部分が目立つような構成ではない。
また、「MC-介護のお仕事」の文字から生ずる「エムシーカイゴノオシゴト」の称呼は、冗長にすぎるということはなく、一気一連に発することができ、商標として適切な長さである。
上述のとおり、「介護のお仕事」の文字は、抵触役務との関係で、自他役務識別機能がないか、弱いものであることは明らかである。
すなわち、引用商標の構成において、「介護のお仕事」の文字部分が、取引者、需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると解する余地はない。
イ さらに、「MC-」の文字部分について、請求人の主張によれば、「『MC』は権利者『株式会社メディカルコンシェルジュ』のメディカルコンシェルジュ(Medical Concierge)部分の略号である。」とのことであるから、「MC」は、請求人の代表的出所表示標識であり、これが捨象され取引に供されることはあり得ず、「MC-」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと解する理由はない。
ウ 以上のとおり、引用商標の構成部分から「介護のお仕事」の文字部分のみを抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されない。
すなわち、引用商標は、その構成全体、又は、少なくとも「MC-介護のお仕事」の文字全体で一体不可分の商標と理解されるものであるから、本件商標との類否は、引用商標の構成全体に基づき判断されるべきことは明らかである。
(2)商標の類否の具体的検討
ア 外観
本件商標と引用商標とは、図形部分の形状においても顕著な相違があり、さらに、「MC-」の有無により構成文字も異なるから、外観上、別異のものと理解され、明瞭に区別されることは明らかである。
イ 称呼
本件商標は、その文字部分から「カイゴノオシゴト」の称呼が生ずる。
他方、引用商標は、その文字部分から「エムシーカイゴノオシゴト」の称呼が生ずる。
両称呼が、「エムシー」の有無により明瞭に聴別できることは明らかである。
ウ 観念
本件商標からは、その構成文字に照らし「介護の仕事」ないし「介護に関する仕事」の観念が生ずる。
これに対し、引用商標の構成文字である「MC-介護のお仕事」それ自体は辞書等に掲載されている言葉ではないから、引用商標からは特定の観念は生じない。
したがって、本件商標と引用商標とは、観念上、誤認混同されるおそれのない非類似の商標である。
なお、上述のとおり、「MC」は、請求人の略称とのことであるから、引用商標から「株式会社メディカルコンシェルジュの介護の仕事」等の観念が生ずる可能性があるが、仮にそうであっても、本件商標とは観念において相違し、明瞭に区別可能である。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても明瞭に区別可能であり、また、その他に両商標の間で出所の混同を生じるおそれがあると解する理由は全くないから、非類似の商標であることは明白である。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、「MC-」が略される旨主張するが、「-」(ハイフン)が配されているから、当然に省略されると解されるべき理由はないし、この点に関する立証をしていない。
むしろ、請求人の主張によれば、請求人の名称の略称なのであるから、代表的出所表示標識として、省略されることはあり得ない。もとより、引用商標は、一体的にデザイン化されたものであり、各文字がスペースなく横一連に同一の大きさで表されているから、外観構成上、「MC-」の文字部分が捨象される理由がないことは明らかである。
イ 請求人は、引用商標における「MC-」の部分は、分離観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない旨主張するが、引用商標は、「MC-介護のお仕事」の文字を中心として、ハートやクローバーの図形を配するなど全体として一体的にデザイン化され、また、「介護のお仕事」が他の構成部分に比して大きく表されているわけでもなく、さらに、請求人のウェブサイトによれば、「MC-介護のお仕事」の文字が商標として一連に使用されている(乙15)から、具体的な取引状況に照らしても、分離して観察することが取引上不自然であることは明白である。
ウ 請求人は、引用商標を分離観察ができると仮定した上で、「介護のお仕事」の部分から生ずる「人の世話をする業務」のごとき観念を何ら妨げるものでない旨主張するが、引用商標は、全体で一体不可分の商標であり、該文字部分のみの観念は生じない。
また、請求人は、出所識別標識として強く支配的な要部である「介護のお仕事」などと主張するが、外観構成や観念に照らしても、当該文字部分が強く支配的な印象を与えると解する理由はなく、具体的な立証もない。
特に、「MC」の部分からも社名の略語の観念、ハート形状やクローバーの図形部分からも観念は多少生ずると考えられる旨、請求人は自認しており、「介護のお仕事」以外の部分から出所識別標識としての観念が生じないとはいえないから、引用商標の要部が「介護のお仕事」の文字部分にあるとはいえない。
エ 請求人は、本件商標と引用商標の外観上の類似点を主張するが、「介護のお仕事」の部分は、引用商標の要部とはならないし、極めてありふれた書体や色彩における共通性が、商標の外観形状、称呼及び観念の相違を凌駕して、需要者に対し、自他役務識別標識として特段の印象を与えるとは解すべき理由もなく、最終文字の右上に図形を配することが、他に類を見ない極めて顕著な特徴などとはいえない上に、図形の具体的形状は明瞭に区別可能である。
請求人の主張はいずれも失当であり、本件商標と引用商標とは外観上も非類似である。
オ 請求人は、請求人の使用実績により、「介護のお仕事」に蓄積された業務上の信用を横取りするがごとき行為を主張するが、請求人のウェブサイトの会員数は、ウェブサイト開設から約10年で、延べ、わずか10,240人とのことであり、我が国における平成25年度の介護関係職種の新規求職者数が31.6万人である(乙14)ことからすると、請求人の会員数は少なく、請求人が高い業務上の信用を獲得していたとは認められないし、被請求人が請求人の業務に関し何らかの横取り行為を行ったという事実はなく、また、この点について、具体的な主張、立証はない。
カ 請求人は、最近のネットを利用した就職情報を提供する社会環境を踏まえると、「介護のお仕事」には出所表示機能があり、自他役務識別標識として使用されていると主張するが、この主張は、「介護のお仕事」がインターネット検索され易いキーワードであることを述べるにすぎず、当該文字が出所識別機能を有するか否かとは無関係である。
キ 請求人は、請求人サイトを利用した者が被請求人サイトに誘導されるおそれとか出所の混同が生ずる等主張するが、両商標は非類似の商標であるし、出所の混同について、具体的な主張、立証はない。
ク 請求人は、被請求人のウェブサイトにおける「公式」の文字の存在を問題視しているが、被請求人は、アフィリエイター(広告サイト等の運営者)による単なる広告用サイトとの区別を行うために「公式」の文字を付加しているにすぎず、ページタイトルに「公式」の文字を付加することは、極めて一般的である(乙16)。
ケ 請求人は、「間違えて被請求人サイトを利用してしまうことにつながる。」等述べるが、その具体的な立証はなく、請求人の推測の域を出ないことは明らかである。
5 結語
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても明瞭に区別可能であり、また、その他に出所の混同を生じるおそれがあると解する理由は全くなく、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。
1 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「介護のお仕事」の文字を橙色で表し、「事」の字に一部重なるように、黄色と橙色で擬人化した太陽とおぼしき図形を配した構成よりなるものである。
2 引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、薄い橙色のハート形図形に略白丸を重ねたように表し、略白丸内から右側に薄い橙色の「MC-」の文字を書し、当該文字に続いて橙色で「介護のお仕事」の文字を横書きし、語尾の文字の右肩上にクローバーの図形を配した構成よりなるものである。
3 本件商標と引用商標の指定役務について
本件商標の指定役務は、前記第1のとおり、「職業のあっせん,職業のあっせんに関する助言・相談又は情報の提供,人材紹介,人材募集,就職あっせん,介護に従事する者のあっせん・紹介又はこれらに関する助言・相談若しくは情報の提供,介護に関する職業のあっせん・紹介又はこれらに関する助言・相談若しくは情報の提供,ホームヘルパーのあっせん・紹介又はこれらに関する助言・相談若しくは情報の提供,デイサービス・老人ホーム・訪問介護・放課後等デイサービス・グループホーム等の介護関連事業に関する職業のあっせん・紹介又はこれら関する助言・相談若しくは情報の提供,介護職・ホームヘルパー・ケアマネージャー・児童発達支援管理責任者等の介護関連の職業のあっせん・紹介又はこれら関する助言・相談若しくは情報の提供,求人情報の提供,求人情報の提供に関する助言・相談又は情報の提供,就職・転職の相談,介護に従事する者の求人情報の提供又はこれに関する助言・相談若しくは情報の提供,ホームヘルパーの求人情報の提供又はこれに関する助言・相談若しくは情報の提供,介護に従事する者・ホームヘルパーの就職・転職に関する相談・指導又は助言,デイサービス・老人ホーム・訪問介護・放課後等デイサービス・グループホーム等の介護関連事業に関する求人情報の提供又はこれ関する助言・相談若しくは情報の提供,介護職・ホームヘルパー・ケアマネージャー・児童発達支援管理責任者等の介護関連の求人情報の提供又はこれ関する助言・相談若しくは情報の提供」を含むものである。
他方、引用商標の指定役務は、前記第2のとおり、「職業のあっせん,求人情報の提供」を含むものである。
そうすると、本件商標の指定役務中、上記指定役務は、「職業のあっせん,求人情報の提供」又はこれらに関連する役務といえるから、引用商標の指定役務「職業のあっせん,求人情報の提供」と同一又は類似の役務といえるものである。
4 「介護のお仕事」の文字について
本件商標及び引用商標は、上記1及び2のとおり、いずれもその構成中に「介護のお仕事」の文字を有するものである。
そして、「介護のお仕事」の文字からは、「介護の仕事」の意味合いを容易に認識するものといえ、「職業のあっせん,求人情報の提供」の分野においては、「介護のお仕事」の文字は、以下のように使用されている。
(1)本件商標の登録査定前における使用状況
ア 「介護のお仕事」のウェブサイトには、「2017/02/01 2月25日(土曜日)に介護のお仕事・第52回!札幌市内『介護施設無料見学会』を開催します。」の見出しの下、「介護のお仕事を探すなら」、「介護のお仕事を探している方や興味のある方、そして職場選びに困っている方、ぜひご参加ください!!」の記載がある(乙6)。
イ 「ベネッセスタイルケア」のウェブサイトには、「ベネッセの介護のお仕事見学セミナー 2017年1月13日」の記載がある(乙9)。
ウ 「ハートスイッチ」のウェブサイトには、「介護のお仕事相談会開催します/2017年03月17日」の見出しの下、「ハートスイッチ人財紹介では/介護のお仕事相談会を開催させて頂きます」の記載がある(乙12)。
エ 「氷見市」のウェブサイトには、「福祉・介護のお仕事相談コーナー」(更新日:2017年1月16日)の見出しの下、「富山県健康・福祉人材センターでは、福祉の資格や仕事の内容、福祉の職場について、興味、関心をお持ちの方を対象に、次のとおり、『福祉・介護のお仕事相談コーナー』を開設し・・・」の記載がある(乙13)。
(2)本件商標の登録査定後における使用状況
ア 「ジョブトル介護」のウェブサイトには、「介護のお仕事お役立ち情報」の見出しの下、「『介護のお仕事お役立ち情報』は、あなたの就職活動をサポートする情報を紹介します。」として、「2017/04/19」以降のバックナンバーの記載がある(乙4)。
イ 「にいがたかいごのお仕事」のウェブサイトには、「にいがたかいごのお仕事は、新潟県の介護を学び、就職を考えている方を応援するサイトです。」の記載があり、「お知らせ」の欄に「2018.11.13 介護のお仕事職場体験参加者募集」の記載がある(乙5)。
ウ 「湘南国際アカデミー」のウェブサイトには、「News」に「8月28日介護のお仕事『就職・転職最新情報無料セミナー』開催のお知らせ」(投稿日:2017年7月26日)の記載がある(乙7)。
エ 「あずみ苑」のウェブサイトには、「専門資格がなくてもチャレンジできる!介護のお仕事」の見出しの下、「2017/04/27」、「介護業界には様々な業種のお仕事があり、無資格からでも挑戦できるものがあります。」の記載がある(乙8)。
オ 「ソラスト」のウェブサイトには、「ニュース・トピックス」に「平成29年度 東京都トライアル雇用事業】無資格で介護のお仕事を始めたい方を募集中!」の見出しの下、「17年06月28日 ソラストは・・・受託事業者となりました。・・・介護のお仕事を始めるのに不安がある方もまずはお気軽にお問い合せください。」の記載がある(乙10)。
(3)以上からすると、職業紹介事業や雇用事業の業界においては、本件商標の登録査定前後において、複数の者が介護関連の職業を「介護のお仕事」と称して、介護の仕事の相談に応じたり、介護の仕事に関する紹介・情報の提供をしていると認められるものであり、当該役務の提供に際し、「介護のお仕事」の文字を一般に使用しているものといえる。
そうすると、「介護のお仕事」の文字は、職業紹介事業や雇用事業の業界において、「介護の仕事」を表すものとして、一般に使用されているものであって、本件商標の指定役務中、「職業のあっせん,求人情報の提供」との関係においては、役務の質(内容)を表すものと容易に認識されるものであるから、役務の出所識別標識としての機能を果たし得ないというのが相当である。
5 本件商標と引用商標の類似性について
(1)本件商標
本件商標は、前記1のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「介護のお仕事」の文字は、上記4のとおり、職業紹介事業や雇用事業の業界において、「介護の仕事」を表すものとして、一般に使用されているものであって、本件商標の指定役務中、「職業のあっせん,求人情報の提供」との関係においては、役務の質(内容)を表すものと容易に認識されるものであるから、役務の出所識別標識としての機能を果たし得ないものである。
そうすると、本件商標は、その構成中「介護のお仕事」の文字が要部として分離抽出されるものではなく、その構成全体をもって看取されるというべきものであるから、本件商標からは、出所識別標識としての称呼及び観念は生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、前記2のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「介護のお仕事」の文字は、上記4のとおり、職業紹介事業や雇用事業の業界において、「介護の仕事」を表すものとして、一般に使用されているものであって、引用商標の指定役務中、「職業のあっせん,求人情報の提供」との関係においては、役務の質(内容)を表すものと容易に認識されるものであるから、役務の出所識別標識としての機能を果たし得ないものである。
そうすると、引用商標は、その構成中「介護のお仕事」の文字が要部として分離抽出されるものではなく、「MC-介護のお仕事」の構成文字に相応して、「エムシーカイゴノオシゴト」の称呼のみを生じ、また、当該文字は辞書等に採録のない一種の造語というべきであるから、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標を比較すると、本件商標は、「介護のお仕事」の文字を橙色で表し、「事」の字に一部重なるように、黄色と橙色で擬人化した太陽とおぼしき図形を配した構成よりなるものであるのに対し、引用商標は、薄い橙色のハート形図形に略白丸を重ねたように表し、略白丸内から右側に薄い橙色の「MC-」の文字を書し、当該文字に続いて橙色で「介護のお仕事」の文字を横書きし、語尾の文字の右肩上にクローバーの図形を配した構成よりなるものであるから、それぞれの図形要素が明らかに異なること、「MC-」の文字の有無等から、外観上判然と区別し得るものである。
また、本件商標からは特定の称呼が生じないのに対し、引用商標からは「エムシーカイゴノオシゴト」の称呼が生じるものであるから、称呼上相紛れるおそれはない。
さらに、本件商標及び引用商標は、特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観において顕著に相異し、称呼において相紛れるおそれのないものであるから、これらの外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき特段の事情も見いだせない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標に係る指定役務中に、引用商標に係る指定役務と同一又は類似の役務が含まれているとしても、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
6 請求人の主張について
請求人は、インターネットのウェブサイトを通じて、介護関連の職種への求職者に対する求人情報を、平成20年6月28日以来、今日まで提供しており、また、最近のインターネットを利用した就職情報を提供する社会環境を踏まえると、「介護のお仕事」という一連の文字には確かな出所表示機能があり、請求人の約10年間の実績から他のウェブサイトに対する識別力が顕著な文字列であると主張している。
しかしながら、請求人の実績を裏付ける具体的な証拠は提出されておらず、かつ、前記4のとおり、職業紹介事業や雇用事業の業界においては、「介護のお仕事」と称した上で、複数の者によって、介護の仕事の相談に応じたり、介護の仕事に関する紹介・情報の提供がなされており、当該業界において、「介護のお仕事」の文字が一般に使用されているものといえることからしても、インターネットにおける「介護のお仕事」の文字の検索結果をもって、当該文字に出所表示機能があるとはいい難く、請求人の主張を採用することはできない。
また、請求人は、被請求人のウェブサイト中の「よくある質問」における「Q.介護のお仕事はどんなサービスですか?」の記載や、「Q.介護のお仕事を利用するメリットは何ですか?」の記載を挙げ、ウェブサイトの名前として「介護のお仕事」の文字が使用され、介護求人に関する情報サイトとして他人のウェブサイトと区別するために「介護のお仕事」の文字が使用されているとして、インターネットのウェブサイトのような求人情報提供サービスを提供する場合には、「介護のお仕事」という、その分野で識別力がやや弱い文字をいくつか組み合わせた場合であっても、自他役務の識別力が全くない訳ではないと主張している。
しかしながら、請求人が挙げる「よくある質問」の事例は、被請求人のウェブサイト内における掲載内容であり、たとえ、「介護のお仕事」の文字が、当該ウェブサイトを指称する文字として使用されている場合があるとしても、それは、当該ウェブサイトを利用する範囲にとどまるというべきであって、「介護のお仕事」の文字に接する「職業のあっせん,求人情報の提供」に係る需要者、取引者の一般的な認識は、前記4のとおり判断するのが相当であるから、請求人の係る主張は採用できない。
7 むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

【別掲1】
本件商標(色彩については、原本参照。)


【別掲2】
引用商標(色彩については、原本参照。)

審理終結日 2019-11-11 
結審通知日 2019-11-13 
審決日 2019-11-28 
出願番号 商願2016-90318(T2016-90318) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (W35)
T 1 11・ 262- Y (W35)
T 1 11・ 261- Y (W35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉本 克治 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2017-04-14 
登録番号 商標登録第5940853号(T5940853) 
商標の称呼 カイゴノオシゴト 
代理人 佐藤 勝 
代理人 高橋 孝仁 

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