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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3945
管理番号 1357908 
異議申立番号 異議2019-900179 
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-21 
確定日 2019-12-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第6133161号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6133161号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6133161号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成30年3月16日に登録出願、第39類「インターネット経由での観光旅行に関する情報の提供,旅客輸送に関する情報の提供」及び第45類「インターネット等による地図情報の提供」を指定役務として、同31年2月8日に登録査定され、同年3月29日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、申立人がライブ配信・閲覧用アプリケーションソフトウェア及びその提供、オンラインによるソーシャルネットワーキングサービスの提供について使用し、我が国において広く知られるに至っている周知商標であると主張するものである。
(1)登録第5908229号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品及び指定役務:第9類、第35類、第38類、第41類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日:平成27年7月24日
優先権主張:域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠) 2015年(平成27年)3月27日
設定登録日:平成28年12月22日
(2)登録第5921463号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品及び指定役務:第9類、第41類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日:平成28年8月25日
優先権主張:域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠) 2016年(平成28年)2月25日
設定登録日:平成29年2月10日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の周知性について
引用商標は、申立人がライブ配信・閲覧用アプリケーションソフトウェア及びその提供や、オンラインによるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の提供について使用してきた結果、本件商標の出登録願日までに我が国において広く知られるに至っていた周知商標である。
ア 申立人及び引用商標に係る商品・役務について
申立人は、米国カリフォルニア州に本社を置き、「Twitter」(ツイッター)等のSNSを提供する企業である(甲3)。
ツイッターの月間アクティブユーザー数は、2018年10月時点で、約3億2,600万人に達し、このうち、日本のユーザー数は、4,500万人以上と14%近くを占める(甲4)。
日本における2018年第3四半期(7月?9月)の売上高は、1億3,000万ドル(約140億円)であり、これは米国に次ぎ世界2位の売上高となっている(甲4)。さらに、日本における売上高成長率は、前年同期比44%増であり、世界の中で最も成長率の高い国であることがわかる(甲4)。
申立人は、2015年3月にライブストリーミング配信サービス「Periscope」(ペリスコープ)の提供を開始し、わずか4か月で登録ユーザーが1,000万人を超えた(甲5、甲6)。
ペリスコープは、ユーザーが自分のスマートフォンのカメラで目の前の出来事を生中継したり、世界のあらゆる場所にいるユーザーからのライブ放送を閲覧したりすることのできるアプリケーションソフトウェア及びそのサービスの名称である。
ペリスコープは、ライブ放送でニュースの現場を見たり、視聴者が放送中のユーザーにコメントを送ってコミュニケーションをとることのできるアプリケーションとして、我が国をはじめとする世界中の需要者の間で高い人気を誇るものであり、我が国でも有名サッカー選手がペリスコープを通じてライブ配信を行ったりしている(甲7?甲10)。
イ 外国における商標登録例
申立人は、北米、南米、アジア、欧州、ロシア、中東、アフリカ、オセアニア等、世界各国・地域において、引用商標1と同一の商標について商標登録出願を行い、商標権の取得を行っている(甲11の1?甲11の153)。
このように、申立人は、世界各国・地域において、引用商標1の保護に努めており、その周知性は世界中で維持されている。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標は、水色の四角を丸めたやや縦長の長方形の内部に、しずく型の形状を上下反転させた白色の図形を配し、さらにその内部に水色の渦巻状の線模様が描かれ、その中心部に、左上部を略半円状に白く切り欠いた水色の円図形が描かれた構成よりなる商標である。
イ 引用商標1は、しずく型の形状を上下反転させた黒色の輪郭線図形の内部に、左上部を略半円状に白く切り欠いた黒色の円図形を配してなる商標である。
また、引用商標2は、左上部を略半円状に白く切り欠いた黒色の円図形からなる商標である。
ウ 本件商標は、しずく型の形状を上下反転させた図形及びその中央に左上部を略半円状に白く切り欠いた円図形からなる点で、引用商標1と近似した構成をとるものである。
また、本件商標の中心部に位置する左上部を略半円状に白く切り欠いた水色の円図形は、同じく左上部を略半円状に白く切り欠いた黒色の円図形である引用商標2と類似するものである。
したがって、需要者が時と所を異にして本件商標及び引用商標に接した場合、これらは全体の外観において近似した印象を与えるものである。
よって、本件商標は、引用商標と類似性の程度が高い商標というべきである。
(3)出所混同の生ずるおそれについて
ア 本号に係る最高裁判決(最高裁第三小法廷 平成10年(行ヒ)第85号)にかんがみ、本件について検討すると、まず、引用商標の周知性については、上述のとおり、申立人が、ライブ配信・閲覧用アプリケーションソフトウェア及びその提供やSNSの提供について使用してきた結果、我が国において周知性を有していることは疑いようのないことである。
そして、本件商標と引用商標の類似性についても、本件商標は、引用商標1と近似した構成からなり、またその構成中に引用商標2に類似する図形を含むことから、本件商標と引用商標の類似性は相当程度高いものである。
また、引用商標の独創性の程度については、引用商標は、申立人が独自に創造した図形であって、創造標章であることは明白である。
さらに、取引者及び需要者の共通性については、本件商標はインターネットによる情報の提供をその指定役務とするものであり、引用商標もライブ配信・閲覧用アプリケーションソフトウェア及びその提供やSNSの提供について使用するものであって、インターネット上における情報配信に係る役務について使用するものであるという点で共通するものであるから、役務の用途又は目的も同一であり、その取引者・需要者は共通であるというべきである。
以上より、本件商標の指定役務と引用商標が使用される商品及び役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準に、商品・役務間の関連性、商標自体の類似性の程度、引用商標の周知性の程度、引用商標の独創性の程度、取引者及び需要者の共通性を勘案すると、本件商標がその指定役務に使用された場合、取引者及び需要者は、その役務があたかも申立人若しくは申立人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
イ また、申立人の周知な引用商標と相紛れるおそれのある本件商標が、当該周知表示に化体した高い名声及び信用にフリーライドすることによって、当該周知表示に化体した名声、信用及び評判の希釈化か引き起こされる蓋然性は高いといえる。
よって、引用商標に対する希釈化を防止し、引用商標が有する自他商品・役務識別機能を保護すべき必然性は高いといえ、本条の趣旨から考えても、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、次の事実が認められる。
(ア)申立人は、米国カリフォルニア州に本社を置き、「Twitter」(ツイッター)等のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を提供する企業である(甲3、職権調査)。
(イ)2018年12月27日付けの日本経済新聞電子版によると、ツイッターの月間アクティブユーザー数は、2018年10月時点で、約3億2,600万人、このうち、日本のユーザー数は、4,500万人以上であり、日本における2018年第3四半期(7月?9月)の売上高は、1億3,000万ドル(約140億円)である(甲4)。
(ウ)申立人は、2015年(平成27年)3月に、ライブストリーミング配信サービス「Periscope」(ペリスコープ)の提供を開始し、4か月で登録ユーザーが1,000万人を超えた(甲5、甲6)。
(エ)ペリスコープは、スマートフォンでのライブ配信・閲覧が可能なアプリケーションであり、当該アプリケーションの設定時や閲覧の際の画面に引用商標1(色彩の異なるものを含む。以下同じ。)が表示される(甲6、甲7、甲10)。
(オ)我が国の有名サッカー選手が、2019年(令和元年)6月頃からペリスコープを通じて、ライブ配信を行っている(甲10)。
(カ)しかしながら、我が国におけるペリスコープの登録ユーザー数等、利用実績を示す主張、証左は見いだせない。
イ 上記アの事実からすれば、申立人は平成27年3月に提供を開始したライブストリーミング配信サービス「Periscope」(ペリスコープ)について、引用商標1を使用していたことが認められるものの、我が国におけるペリスコープの利用実績を示す証左は見いだせない。
してみれば、引用商標1は、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものということはできない。
なお、申立人は、引用商標1と同一の商標について世界各国において商標権を取得している旨主張し、その証左を提出している(甲11の1?甲11の153)が、それが事実であるとしても、外国における商標登録の状況は上記判断に影響しない。
また、引用商標2は、引用商標1の構成中に含まれているといえるとしても、引用商標1が需要者の間に広く認識されているものと認められないものであることは上記のとおりであって、何より引用商標2が単独で使用されている事実を確認できないことよりすれば、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものということはできない。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、水色の隅丸正方形の内部を、上下反転させたしずく型の形状に白抜きし、その中心部に水色で左上部が略半円状に欠けた円の上部から外側に左回りの渦巻状の線を描き、さらに当該円の中心に青色の小さな円を描いてなるものである。
そして、当該図形が特定の称呼及び観念をもって親しまれているというような事情も見いだせないことから、本件商標は、特定の観念及び称呼を生じないものである。
イ 引用商標について
(ア)引用商標1は、別掲2のとおり、上下反転させたしずく型の輪郭線の内部に左上部が略半円状に欠けた円図形を黒色で描いてなるものである。
また、申立人は、引用商標1の周知性を主張しているが、上記(1)のとおり、引用商標1の周知性について客観的に把握することができる証拠は見いだせず、その他に、引用商標1から、特定の称呼及び観念が生じるというような事情も見いだせない。
そうすると、引用商標1は、特定の称呼及び観念を生じないものである。
(イ)引用商標2は、別掲3のとおり、左上部が略半円状に欠けた円図形を黒色で描いてなるものであるところ、上記(1)のとおり、引用商標2の周知性について客観的に把握することができる証拠は見いだせず、その他に、引用商標2から、特定の称呼及び観念が生じるというような事情も見いだせない。
そうすると、引用商標2は、特定の称呼及び観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標の類似性について
(ア)本件商標と引用商標1を比較すると、両者は、外観において、上下反転させたしずく型の形状を含む点において共通するといい得るとしても、渦巻状の線の有無、隅丸正方形の有無という明らかな差異を有するから、これらの差異により両者の外観全体の視覚的印象は大きく異なり、離隔的に観察しても、外観上相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
また、両者は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから、これらの点において比較できないものである。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、称呼及び観念において比較することができないとしても、外観において明らかに異なるものであり、これらを総合して判断すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(イ)本件商標と引用商標2を比較すると、両者の上記のとおりの外観は、全く異なり、相紛れるおそれのないことは明らかである。
また、両者は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから、これらの点において比較できないものである。
そうすると、本件商標と引用商標2とは、称呼及び観念において比較することができないとしても、外観において明らかに異なるものであり、これらを総合して判断すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
エ 申立人の主張について
申立人は、本件商標は引用商標1と、しずく型の形状を上下反転させた図形及びその中央に左上部を略半円状に白く切り欠いた円図形からなる点で近似した構成をとるものであり、また、本件商標の中心部に位置する左上部を略半円状に白く切り欠いた円図形が引用商標2と類似するものであるから、本件商標と引用商標は、これらに需要者が時と所を異にして接した場合、全体の外観において近似した印象を与えるものであって、類似性の程度が高い商標である旨主張している。
しかしながら、本件商標は、上記アのとおりの構成からなり、その構成はまとまりよく一体に表されているものであって、看者をして全体が一体不可分のものとして認識されるとみるのが自然であるし、その構成中のいずれかの部分を分離抽出し他の商標と比較検討することが許されるというべき事情は見いだせないから、申立人のかかる主張は、その前提において採用することはできない。
オ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は低いものである。
(3)出所混同を生ずるおそれについて
引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであって、かつ、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標と類似性の程度が低いものであることからすれば、本件商標の指定役務と申立人の取扱いに係る商品・役務が同一又は類似するものであり、その需要者の範囲を共通にするものであったとしても、本件商標に接する取引者、需要者が、申立人に係る引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
また、本件商標は、上記のとおり、引用商標を連想又は想起するものといえないから、引用商標へのただ乗りや引用商標を希釈化するおそれもないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に該当するものでなく、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

【別掲1】
本件商標(色彩については原本参照。)


【別掲2】
引用商標1


【別掲3】
引用商標2

異議決定日 2019-12-02 
出願番号 商願2018-40166(T2018-40166) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W3945)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大島 康浩 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 鈴木 雅也
冨澤 美加
登録日 2019-03-29 
登録番号 商標登録第6133161号(T6133161) 
権利者 pamz.株式会社
代理人 廣中 健 
代理人 田中 克郎 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 小林 奈央 

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