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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W01
審判 査定不服 商3条1項5号 簡単でありふれたもの 登録しない W01
管理番号 1357880 
審判番号 不服2017-650089 
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-21 
確定日 2019-10-23 
事件の表示 国際登録第609122号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「S 500」の文字を横書きにしてなり、第1類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2016年(平成28年)7月4日に事後指定されたものである。
その後、指定商品については、原審における平成29年5月2日付けの手続補正書により、第1類「Quality-enhancing products for use with bakery goods for industrial and craft use,namely chemical preparations for use in the bakery industry,chemical preparations and compositions for preserving,emulsifying and stabilizing bakery goods,chemical preservatives for use in bread making,bacterial preparations for the bakery industry,enzymes for use in the bakery industry,enzymes for use in flavoring of bakery goods,flavor improvers and enhancers for bakery goods,dough conditioners,dough stabilizers and flour improvers.」に補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
本願商標は、欧文字「S」と数字「500」とを、その間に若干のスペースが空けられているものの、全体として普通に用いられる方法で横書きしてなるものであり、このような表示は、本願指定商品を取り扱う製パン業界を含む食品業界においても、商品の品番等を表すものとして使用されている実情がインターネット情報から認められる。
本願指定商品は、製パン業者がその主たる使用者であるとしても、広く一般の需要者がパンを製造する場合にも容易に購入することが可能であり使用されるであろうことは否定できないし、出願に係る商標が商標法第3条第1項第5号で規定する「ありふれた標章」に該当するか否かは、特定の商品との関係ではなく世間一般における認識に基づき判断されるものであって指定商品とは係わりのないことも併せて検討すると、本願商標は自他商品識別機能を具備しないものとするのが相当である。
また、出願人から提出された証拠をもってしても、本願商標は、単に商品の品番や型番等を表す記号・符号であるとの理解を超えて、出願人の業務に係る商品について自他商品識別機能を十分に発揮していると認めることはできない。
よって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。
第3 当審における審尋及び請求人の回答
本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、平成30年10月1日付け審尋で証拠調べの結果を通知し意見を求めた。併せて、(1)本願商標に係る商標法第3条第2項の主張を裏付ける証拠として提出された甲7の1?14について、それぞれ、本願商標と同一の構成態様と認められる使用商標がどこに使用されているのか、また、その使用商標が需要者に特に着目されているといえる理由について説明(2)1985年から現在までの、本願商標を付した商品についての我が国における市場シェアが確認できる書面などの提出(3)甲14における「S500プラス」の文字列の記載は、それをもって、なにゆえに、請求人が本願商標を使用してきたものといい得るのかの説明(4)甲7の各資料に関する不明点を明らかにした上で、これらについての説明、及び(5)甲8?10の発行部数及び頒布先、及び甲11?13の発行年月日、発行部数及び頒布先についての説明を求めるとともに、当該説明の内容を確認できる書面の提出を求めた。
上記審尋(証拠調べ結果を含む。)に対し、請求人からは、何ら回答(意見)がなかった。
第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第5号該当性について
本願商標は、前記第1のとおり、欧文字1字「S」と数字「500」とを、その間に若干のスペースが空けられているものの、全体として普通に用いられる方法で横書きしてなるものである。
そして、一般に、欧文字と数字の組合せからなる表示は、様々な商品分野において、自己の製造、販売に係る各種商品について、その商品の管理又は取引の便宜性等の事情から、商品の型番、品番等を表示するための記号、符号として、取引上普通に採択、使用されているのが実情であり、本願の指定商品の分野においても同様であることは、別掲1及び2の事実からも裏付けられるところである。
そうすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品の型番、品番等を表示するための記号又は符号の一類型を表したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識しないとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認められる。
よって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。
2 本願商標が自他商品識別機能を有する商標であるか否かについて
請求人は、本願商標を付した商品は、我が国おいて、製パン業界の市場で大きなシェアを獲得し需要者にも広く知られているものであり、この観点からすれば、本願商標は、記号・符号として認識されるものではなく、むしろ請求人に係る商品の出所を表す商標として自他識別機能を発揮しているというべきであると主張して、証拠方法として甲7?14(枝番号を含む。)を提出している(甲8?14の資料は、原審における平成29年5月2日付けの意見書の甲1?7と同じものである。)ので、本願商標が、請求人に係る商品の出所を表すものであるかについて、請求人の提出した証拠及び主張を検討する。
(1)本願商標の使用実績
証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、遅くとも、平成8年には、請求人の業務に係る商品「パンの原材料に添加する総合生地改良剤」(以下「請求人商品」という。)を発売していた(甲7の2及び甲8)。そして、平成23年には「S 500 Plus」の商標を付した改良製品を発売した(甲7の1の項番4)。
イ ピュラトスジャパン株式会社は、請求人の関連会社であり、請求人は、わが国における請求人商品の販売について、ピュラトスジャパン株式会社を介して行っている(甲15)。
ウ 請求人商品の製造、販売等について
請求人の作成した、「日本における2016年度の販売量」の表によれば、平成28年の「S 500 PLUS」の商標を付した請求人商品の販売量は、52,794Kgである(甲7の2)。
エ 製品カタログ等
ピュラトスジャパン株式会社は、請求人商品を掲載した製品パンフレット、平成8年、同11年及び同20年に発行した(甲7の2「S500シリーズ 製品パンフレット」の中の同8年のもの、甲8?10)。なお、これらと同じく請求人商品を掲載した製品パンフレットである甲12は、発行年が不明である。そして、上記製品カタログの発行部数及び頒布先は、いずれも不明である。
また、請求人は、英語による請求人商品が掲載された、カタログ、プレスリリース、商品説明、及びウェブサイト記事を作成した(甲7の5)。なお、上記プレスリリースの資料は、本願商標を付した商品の販売との関係において、資料の目的及び配付方法等が不明であり、また、上記のプレスリリースの資料、カタログ、商品説明及びウェブサイト記事については、翻訳文の提出がないことから、それらの内容はいずれも不明である。
(2)判断
ア 上記(1)の認定事実によれば、請求人は、遅くとも、平成8年には、請求人商品を発売し、平成8年、同11年及び同20年に請求人商品を掲載した製品パンレットを発行しているが、同23年には、使用商標を、「S 500」から「S 500 Plus」に変更の上、請求人商品を発売しているものと認められることから、本願商標の使用期間は少なくとも平成8年から同20年の約12年間であると推認できる。
イ 平成28年の「S 500 PLUS」の商標を付した請求人商品の販売量は、52,794Kgであることが認められるが、これは、本願商標に係る請求人商品の販売量ではないし、本願商標に係る請求人商品の販売数量又は販売シェア等の具体的な数値については、これを証明するような証拠の提出もなく不明であるから、本願商標を付した商品が、どの程度の需要者、取引者の目に触れたのかについても不明である。
ウ 我が国における宣伝広告の方法、期間、地域及び規模の事実については、これを証明するような証拠の提出もなく不明であるから、本願商標を付した商品が、どの程度の需要者、取引者の目に触れたのかについても不明である。
エ その他
上記アないしウにおいて述べたもののほか、請求人の提出に係る証拠を総合してみても、本願商標が、その使用の結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めるに足る事実は見いだせない。
オ 小括
上記アないしエによれば、本願商標は、その使用の結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであるとは認められない。
したがって、本願商標は、自他商品識別機能を有する商標とは認められない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、改良剤等の分野においては、製品の名称として欧文字と数字のみからなる表示又は欧文字や数字を含むものが多いことからすると、欧文字と数字のみからなる表示であっても、全体の表示をもって製品の名称であると容易に認識し得るため、本願商標についても、その構成全体を特定の製品の名称として認識され得るものであるから、自他商品識別機能を有している旨主張する。
しかしながら、欧文字と数字の組合せからなる表示は、様々な商品分野において、自己の製造、販売に係る各種商品について、その商品の管理又は取引の便宜性等の事情から、商品の型番、品番等を表示するための記号、符号として、取引上普通に採択、使用されているのが実情であって、本願の指定商品の分野における取引の実情においても同様であることを踏まえれば、本願商標は、商品の型番、品番等を表示する記号、符号として、取引上普通に採択、使用されている欧文字「S」と数字「500」とを若干のスペースを介しているものの、一般的な書体で表したにすぎないものであるから、自他商品の識別標識とは認識されないこと、上記1のとおりである。
(2)請求人は、本願商標と実質的に同一の商標につき、本国たるベネルクス(ベルギー)のみならず、アメリカ合衆国、オーストラリア、インド、フィリピン、欧州連合、ウルグアイ、台湾、南アフリカ、パラグアイなど世界の広範な国又は地域にて商標権を取得しているところ、いずれの国においても、自他商品識別機能を有する商標であると判断されており、本願商標については、諸外国での登録状況を踏まえて、自他商標品識別機能を発揮するものと判断するのが妥当である旨主張する。
しかしながら、我が国において出願された商標が自他商品識別機能を有するか否かの判断は、我が国の登録査定時又は審決時において、取引の実情を勘案し、その指定商品の取引者、需要者の認識を基準として、商標ごとに個別具体的に判断されるものであるから、他の国又は地域において自他商品識別機能を認められ登録されていることをもって、本願商標が我が国において登録されなければならないとする根拠とはなり得ない。
(3)したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 平成30年10月1日付け審尋で開示した事実
1 欧文字と数字の組合せからなる表示が、本願指定商品を取り扱う製パン業界を含む食品業界において、商品の品番等を表すための記号・符号として使用されている実情に関する証拠調べ結果
(1)「製菓材料倶楽部」のウェブサイトにおいて、「【鳥越製粉】H-60 ホットケーキミックス 10kg<ミックス粉>」との記載がある。
https://item.rakuten.co.jp/seikapan/22958/?s-id=rk_shop_pc_rnkInShop
(2)「製菓材料倶楽部」のウェブサイトにおいて、「【サフ】RS190(不活性酵母) 1kg<生地改良剤>」の商品説明として、「酵母から生まれた改良剤。活性をなくした酵母の力で、生地の伸展性を向上します。冷凍生地やシーティング生地を傷めずに伸ばす事が可能。締まった生地の作業改良、機械耐性の向上に。」との記載がある。
https://item.rakuten.co.jp/seikapan/b4128/
(3)「業務用製菓材料のスイートキッチン」のウェブサイトにおいて、「蒸しパン 蒸し菓子用の品質改良剤 伊那食品 イナゲル V-5 1kg【常温】」との記載がある。
https://item.rakuten.co.jp/kashizairyo/yeast-54411/
(4)「製菓・洋菓子材料の通信販売サイト TFOODS.COM」のウェブサイトにおいて、「アイコク/ペクチンSS150(SLOW SET)2kg」の商品説明として、「リンゴが原料のHMタイプ(高メトキシルペクチン)のペクチン(食品添加物)。高糖度ジャムやパート・ド・フリュイ(ハードゼリー)に適しています。成分はペクチン100%の為、pHや糖度などの微調整が必要です。」との記載がある。
https://store.tfoods.com/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=14057
(5)「業務用製菓材料のスイートキッチン」のウェブサイトにおいて、「アメリカ 有機認定機関OTCO認定 ナチュラル バニラエキストラクト アリサン G22 香料 バニラエキストラクト 59ml【常温】」との記載がある。
https://item.rakuten.co.jp/kashizairyo/82001/
(6)「株式会社丸菱オンラインストア スイートキッチン」のウェブサイトにおいて、「ナリヅカ バニラ DW1001 1kg」の商品説明として、「バニラを強調しすぎず、バニラの甘さを表現したバニラ濃縮物たっぷりの耐熱性フレーバー。」との記載がある。
https://skweb.marubishi-group.co.jp/details/p0002738/
別掲2 拒絶査定で示した(参考1)
https://item.rakuten.co.jp/soukai/4902170693159/
日本製粉ホットケーキミックスS600(1kg)
https://www.the-torigoe.co.jp/syohin/g_tutm/itu-b03.html
鳥越製粉株式会社
TU-B-01 Vx-2
食パン、菓子パン、デ ニッシュ等に適した粉末のパン用品質改良剤製剤です。
TU-B-03 ゴールドマルツ
ハースブレッドに適した粉末のパン用品質改良剤製剤です。
http://www.shijoh.com/shopdetail/019007000001/019/007/X/page1/recommend/
パン用生地改良製剤 パンダイヤ C-100 1kg
http://www.akatazen.co.jp/product/sonota.html
赤田善株式会社
畜肉の歩留まり向上や野菜のアク抜きや食感改良、菓子の保湿に使用する製剤です。
ホワイトーンR-110 野菜用品質改良剤製剤
食品中の不快色成分である灰汁(アク)を分解し、素材本来が持つ色目を生かす。
http://www.taishotechnos.co.jp/products/improver.html
株式会社タイショーテクノス
品質改良剤アンチオールシリーズ アンチオールRF-3
加工食品の油脂酸化やミオグロビンの酸化による褐変を防止します。
https://store.tfoods.com/Contents/pickup/ina_c300/ina_c300.aspx
イナゲルC-300
様々な寒天を使った製品の中で、特にお菓子作りへ特化した商品アイテムとして「イナゲルC-300」が挙げられます。
審理終結日 2019-05-24 
結審通知日 2019-06-04 
審決日 2019-06-06 
国際登録番号 0609122 
審決分類 T 1 8・ 15- Z (W01)
T 1 8・ 17- Z (W01)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 雅也 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 庄司 美和
豊田 純一
商標の称呼 エスゴゼロゼロ、エスゴヒャク 
代理人 岡部 讓 

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