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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W12 審判 全部申立て 登録を維持 W12 審判 全部申立て 登録を維持 W12 審判 全部申立て 登録を維持 W12 審判 全部申立て 登録を維持 W12 |
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管理番号 | 1357064 |
異議申立番号 | 異議2018-900134 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-06-01 |
確定日 | 2019-11-07 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6025819号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6025819号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6025819号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成29年6月19日に登録出願,第12類「電動自転車,原動機付き自転車,原動機付きのスクーター,自転車,自転車用スタンド,自転車のタイヤ用空気ポンプ,電動式自動車及び二輪自動車,自転車用リム,自転車用フレーム,自転車用サドルカバー,オートバイ用サドルカバー,自転車用サドル,オートバイ用サドル,自転車用補助電動機,自転車用チェーン,自転車用車輪,電動式乗物,自転車用ペダル,自転車用ブレーキ,自転車用方向指示器,自転車用かご」を指定商品として,同30年2月22日に登録査定,同年3月9日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第2700543号商標(以下「引用商標」という。)は,「SCOTT」の欧文字を横書きしてなり,平成2年6月5日に登録出願,第12類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同6年11月30日に設定登録,その後,同16年12月15日に指定商品を第12類「自転車並びにその部品及び附属品,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片,自動車並びにその部品及び附属品」とする指定商品の書換登録がされたものであり,現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第8号,同項第11号及び同項第19号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。 (1)申立人について 申立人は,1958年(昭和33年)にスキーのストックメーカーとして誕生し,1986年(昭和61年)にマウンテンバイクの製作に乗り出し,1989年(平成元年)のツール・ド・フランスで勝利したことから,一躍ヨーロッパのロードレース市場においてその名が知れ渡ることとなった。そして,現在では,マウンテンバイク等のスポーツバイク市場でトップシェアを確保している(甲3,甲4)。 我が国においては,2013年(平成25年)に子会社である株式会社スコットジャパン(以下「スコットジャパン」という。)を設立し(甲5),以降,試乗会等の展示会を毎年複数個所で開催し,佐渡ロングライド等の大規模なイベントのスポンサーとなり,日本における市場開拓を進めてきた(甲6,甲7)。 スコットジャパンが費やした宣伝広告費は,2014年(平成26年)2,521万円ないし2016年(平成28年)2,086万円と毎年2,000万円以上に上っている(甲8)。 こうした宣伝努力の結果,数多くのウェブサイトで,スコットジャパンが開催した試乗会,展示会,及びスコットモデルの新製品の紹介等がなされている(甲9?甲15)。 以上のとおり,「SCOTT」又は「スコット」は,申立人の著名な略称及び商標として,マウンテンバイクに代表されるスポーツタイプの自転車の分野においては,広く知られているものである。 (2)本件商標について 本件商標「PRESCOTT」の冒頭の「PRE」の文字部分は,「あらかじめ」,「…以前の」等の意味を有する英語の接頭語「pre-」に相当する語である(甲16)。そして,この語は,本格的にオープンする前に試験的に営業することを意味する「プレオープン」,本番となる大会の前哨戦となる大会を意味する「プレ大会」,オリンピック大会の前年,競技施設や運営などをテストする意味で行われる国際競技大会を意味する「プレオリンピック」等のように用いられている。 したがって,本件商標「PRESCOTT」は,前記接頭語である「Pre」と申立人の著名な略称であり商標名である「SCOTT」を組み合わせてなるものであることは明白であるから,商標法第4条第1項第8号にいう「他人の著名な略称を含む商標」に該当し,また,申立人の承諾を得ていないものである。 (3)引用商標について 上記(1)のとおり,引用商標は,申立人が,マウンテンバイク等のスポーツタイプの自転車につき長年にわたり使用し,世界的に周知となっている商標であって,我が国においても広く知られているものである。 商標審査基準には,「指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は,その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め,原則として,その他人の登録商標と類似するものとする。」と取り扱われている。 そして,上記(2)で述べたとおり,本件商標は,接頭語「pre」と申立人の著名な略称であり商標名である「SCOTT」を組み合わせてなるものであるから,引用商標に類似するものであることは明白である。 また,本件商標を構成する「PRE」の文字部分の意味合い及び引用商標「SCOTT」の周知性を勘案すれば,「SCOTT」のマウンテンバイクに本格的に挑戦する前に,リハーサルとしてお試し的に乗れるような商品ラインが開発され,兄弟ブランドとして「PRESCOTT」の商標が用いられているかのごとく,出所混同を生ずるおそれは十分に考えられる。 したがって,本件商標は,引用商標に類似するものであって,引用商標の指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。 (4)不正の目的について 上記(1)で述べたとおり,引用商標は,スポーツタイプの自転車の分野において我が国及び世界各国において周知著名であり,スコットジャパンの設立が1993年(平成5年)であることからすれば,本件商標の登録出願日のはるか以前より周知著名であったことは明白である。 こうした周知著名性からすれば,本件商標の採択時に,本件商標権者は当然に引用商標の存在を知らないはずはないものと考えられる。 また,引用商標の実際の使用態様は若干斜体がかったものであり(甲6),本件商標も斜体がかった態様が採択され,両者を比較すると文字の太さ等に若干の相違はあるものの,斜体の程度において酷似している。 そして,引用商標が自転車の車体フレームに表示された場合は,本件商標との文字の太さにおける相違は,ほとんど看取できない。 すなわち,本件商標権者が周知著名な引用商標と,かくも相紛らわしい字体で本件商標を採択したのは,引用商標の名声にただ乗りして不正な利益を得ることを目的としたからに他ならない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号にも該当する。 (5)むすび 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第8号,同項第11号及び同項第19号に該当するものである。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。 (ア)申立人は,1958年(昭和33年)にスキーのストックメーカーとして誕生,1986年(昭和61年)にマウンテンバイクの製作を開始し,現在はマウンテンバイク等のスポーツタイプの自転車(以下「申立人商品」という。)の製造販売を行っている(甲3,甲5 ほか)。 (イ)1989年(平成元年)のツール・ド・フランスにおいて,申立人の製品(エアロ・ロード・ハンドルバー)を使用したライダーが勝利した(甲3,甲5)。 (ウ)申立人は,我が国において,2013年(平成25年)に子会社「株式会社スコットジャパン」(スコットジャパン)を設立した(甲5)。 (エ)スコットジャパンは,設立後,現在まで我が国における試乗会,イベントなどに申立人商品を出展等すると共に,自己のウェブページにそれら試乗会等の案内やイベント情報を掲載している(甲6,甲7)。 (オ)スコットジャパンのウェブページ,及び申立人商品には,引用商標(外観上同一視できるものを含む。)が表示されている(甲5?甲7)。 (カ)申立人商品はいくつかのウェブページで紹介されている(甲9?甲13,甲15)。 (キ)試乗会やイベント会場において,引用商標が表示されていることが確認できるものがいくつか見受けられる(甲6,甲7)が,試乗会やイベントの規模(参加者数など),試乗会などにおける引用商標の具体的な使用状況は確認できない。 また,我が国における申立人商品の売上高,販売数など販売実績を示す主張はなく,その証左は見いだせない。 イ 上記アの事実からすれば,申立人(「スコットジャパン」を含む。)は我が国において,遅くとも平成25年頃から申立人商品を販売等していたことが推認できるものの,我が国における試乗会やイベントの規模,試乗会などにおける引用商標の具体的な使用状況は確認できず,また申立人商品の販売実績を示す証左は見いだせないから,引用商標「SCOTT」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできず,かつ,「SCOTT」の欧文字は申立人の著名な略称と認めることもできない。 なお,仮に,申立人が主張する広告宣伝費(甲8)が事実であるとしても,具体的な広告宣伝の内容は明らかでないし,その額は毎年2,000万円台であって,自転車の1ブランドの広告宣伝費としてその周知性を基礎付けるほど多額であるとはいえないことから,上記判断を覆し得ない。 また,「SCOTT」ブランドを紹介するウェブページ(甲4)には,申立人商品がヨーロッパを中心に2010シーズン42万台販売された旨,ドイツ,ノルウェー,スウェーデンなど10か国においてハイエンドスポーツバイク市場でトップシェアを確保している旨の記載があるが,それを裏付ける具体的な証左は見いだせないから,かかる記載によって引用商標がヨーロッパにおけるマウンテンバイク等のスポーツタイプの自転車の需要者の間にある程度知られていることがうかがえるとしても,ヨーロッパの何れかの国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第8号該当性について 上記(1)のとおり,引用商標「SCOTT」が,申立人の著名な略称と認められないものであるから,本件商標は,他人(申立人)の著名な略称を含む商標ということはできない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標について 本件商標は,別掲のとおり,「PRESCOTT」の欧文字を斜体で表してなるところ,該文字は,同書,同大でまとまりよく一体に表されており,その構成文字に相応して生じる「プレスコット」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るもので,その構成中の「PRE」の文字が「あらかじめ」,「…以前の」を表す英語における接頭語であるとしても,かかる構成においては,該文字が接頭語として認識されるというよりは,むしろ本件商標は,その構成文字全体をもって特定の意味合いを有しない一種の造語として把握されるものというのが相当であり,そして,その構成中の「SCOTT」の文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足る事情は見いだせない。 したがって,本件商標は,その構成全体をもって一体不可分の造語として認識されるものであって,特定の観念は生じないものである。 イ 引用商標について 引用商標は,上記2のとおり,「SCOTT」の欧文字からなるものであるから,その構成文字に相応して「スコット」の称呼を生じ,該文字は,「男性名」を意味する英語であるとしても,我が国で一般的に知られている単語とはいえないことから,特定の意味合いを有しない一種の造語として認識され,特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標との類否を検討すると,両者は,外観において,語頭の「PRE」の文字の有無における明らかな相違により,外観上,相紛れるおそれはない。 次に,本件商標より生じる「プレスコット」と引用商標より生じる「スコット」の称呼とは,語頭における「プレ」の音の有無という顕著な差異を有するものであるから,それぞれを称呼するときは,語調,語感が異なり,称呼上,明瞭に聴別し得るものである。 さらに,観念においては,両商標は共に特定の観念を生じないものであるから,観念上,比較できないものである。 そうすると,本件商標と引用商標とは,観念において比較できないものであるとしても,外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから,両商標が需要者に与える印象,記憶,連想等を総合してみれば,両商標は,非類似の商標というのが相当である。 したがって,本件商標は,その指定商品中に引用商標の指定商品と同一又は類似する商品が含まれているものの,引用商標とは非類似の商標であるから,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標は,上記(1)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,また,上記(3)のとおり,本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似の商標であり,別異の商標と認識されるものである。 そうすると,本件商標は,引用商標の名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 なお,申立人は,引用商標の使用態様と本件商標の態様はいずれも斜体がかったものであり,両者は文字の太さ等に若干の相違はあるものの,その斜体の程度において酷似している,商標が自転車の車体フレームに表示された場合は文字の太さの相違はほとんど看取できない,本件商標権者が周知著名な引用商標と,かくも相紛らわしい字体で本件商標を採択したのは,引用商標の名声にただ乗りして不正な利益を得ることを目的としたからに他ならない旨主張するが,商標を斜体で表すことは一般的に行われており,本件商標及び引用商標のいずれも顕著な特徴を有する態様で表されているものとはいえず,また,引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして,我が国及び外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないことは,上記(1)のとおりであるから,申立人のかかる主張は採用できない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (5)むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号,同項第11号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 本件商標 |
異議決定日 | 2019-03-18 |
出願番号 | 商願2017-80802(T2017-80802) |
審決分類 |
T
1
651・
262-
Y
(W12)
T 1 651・ 23- Y (W12) T 1 651・ 261- Y (W12) T 1 651・ 263- Y (W12) T 1 651・ 222- Y (W12) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 森山 啓 |
特許庁審判長 |
榎本 政実 |
特許庁審判官 |
薩摩 純一 平澤 芳行 |
登録日 | 2018-03-09 |
登録番号 | 商標登録第6025819号(T6025819) |
権利者 | 王 貝貝 |
商標の称呼 | プレスコット |
代理人 | 神林 恵美子 |
代理人 | 村田 実 |