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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W18242535
審判 全部申立て  登録を維持 W18242535
審判 全部申立て  登録を維持 W18242535
審判 全部申立て  登録を維持 W18242535
管理番号 1357036 
異議申立番号 異議2018-900393 
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-27 
確定日 2019-10-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第6088889号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6088889号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6088889号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成30年2月5日に登録出願、第18類「ハンドバッグ,スーツケース,手提げかばん,肩掛けかばん,旅行用小型手提げかばん,旅行用靴袋,旅行用帽子箱,旅行用衣服かばん,旅行かばん,旅行かばん用タグ,ボストンバッグ,革製かばん,皮革製キーケース,皮革製包装用容器,革製ケース,革製ポーチ,革ひも,化粧品,キー及び他の身の回り品を保持するためのポーチ,財布,キーケース,コインケース,カード入れ,名刺入れ,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,革及び擬革,原革,原皮,なめし革,毛皮,人工毛皮,ブリーフケース,リュックサック,愛玩動物用被服,動物用革製引きひも,動物用首輪,折り畳み式傘,日傘,皮革,かばん類,がま口,巾着,パス入れ,袋物」、第24類「家庭用リネン製品,織物,不織布,フェルト,敷布,掛け布団,羽毛掛け布団,まくらカバー,ベッド用毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,織物製壁掛け,織物製カーテン,シャワーカーテン,テーブルクロス(紙製のものを除く。),どん帳,生地,メリヤス生地,オイルクロス,ゴム引防水布,ラバークロス,ろ過布,織物製トイレットシートカバー,スリーピングバッグ,織物製又はプラスチック製の旗,レザークロス,ビニルクロス,布製身の回り品,風呂敷,かや,布団カバー,布団側,織物製椅子カバー」、第25類「ジャケット,コート,ダウンジャケット,ワンピーススーツ,ブラウス,スカート,ドレス,ドレスシャツ,ベスト,スカーフ,制服及びユニフォーム,ジャンパー,帽子,ズボン及びパンツ,半ズボン,ワイシャツ類及びシャツ,ティーシャツ,ポロシャツ,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,ドレス用ベルト,手袋,履物,ドレスシューズ,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,スリッパ,ブーツ及び運動用特殊ブーツ,雨着,レインコート,スーツ,セーター,プルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ,カーディガン,ドレッシングガウン,ナイトガウン,パジャマ,ネグリジェ,寝巻き類,水泳着,下着,タイツ及びタイツストッキング,キャミソール,スリップ,ストール,ショール,ソックス,レッグウォーマー,アイマスク,エプロン(被服),ゲートル,ネッカチーフ,バンダナ,マフラー,耳覆い(被服),ナイトキャップ,ネクタイ,蝶ネクタイ,被服,保温用サポーター」及び第35類「織物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品及び指定役務として、同年9月28日に登録査定され、同年10月12日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
1 登録異議の申立ての理由1について
登録異議申立人「ニナ リッチ ソシエテ ア レスポンサビリテ リミテー」(以下「申立人1」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきである旨申立て、その理由を、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第25号証を提出した(注:申立人1の提出に係る甲第1号証を「甲1(A)」と表し、以下、各号証を順次同様に表記する。)。
(1)申立人1が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下のとおりであり、現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめていうときは「引用商標A」という。)。
ア 登録第693340号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:NINA RICCI
指定商品:第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」
登録出願日:昭和39年4月2日
設定登録日:昭和40年12月21日
書換登録日:平成18年1月11日
最新更新登録日:平成27年9月29日
イ 登録第887831号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:NINA RICCI
指定商品:第14類「身飾品,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト」、第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」、第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」、第25類「ズボンつり,ベルト」及び第26類「衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,頭飾品,ボタン類,造花(「造花の花輪」を除く。)」
登録出願日:昭和44年4月9日
設定登録日:昭和46年1月27日
書換登録日:平成14年5月8日
最新更新登録日:平成23年1月4日
ウ 登録第5044082号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:NINA RICCI(標準文字)
指定商品:第20類「うちわ,せんす,家具,額縁,クッション,座布団,まくら,マットレス,ベッド用クッション」及び第24類「ハンカチ,毛布,キルトを用いたベッドカバー,ベッドパッド,敷布,ベッドカバー,旅行用ひざ掛け,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,こたつカバー,タオルケット,タオルシーツ,バスタオル,ハンドタオル,ゲストタオル,ヘアタオル,フェイスタオル」
登録出願日:平成18年4月13日
設定登録日:平成19年4月27日
更新登録日:平成29年4月11日
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、申立人1の商標として世界各国の需要者に広く認識され著名である引用商標Aにおける「NINA RICCI」の英文字の著名な略称である「RICCI」の英文字をその構成中に含んでいる。また、本件商標に係る指定商品は、引用商標Aに係る指定商品と類似のものを有している。
したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生じるおそれがある。
2 登録異議の申立ての理由2について
登録異議申立人「ステファノ リッチ エス ピー エイ」(以下「申立人2」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきである旨申立て、その理由を、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出した(注:申立人2の提出に係る甲第1号証を「甲1(B)」と表し、以下、各号証を順次同様に表記する。)。
(1)申立人2が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する商標は、以下のとおりである。
ア 国際登録第1192240号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:STEFANO RICCI
指定商品及び指定役務:第3類「Soaps, shaving soaps, after-shave lotions, cosmetic preparations for baths, shampoos, perfumery, eau de toilette, essential oils, aromatics [essential oil], hair lotions, balms other than for medical purposes, dentifrices, cosmetics (all for men).」のほか第8類、第9類、第11類、第12類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類ないし第26類、第33類ないし第35類、第37類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
登録出願日:2013年(平成25年)年8月5日
設定登録日:平成27年11月27日
イ 国際登録第1402542号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:STEFANO RICCI
指定商品及び指定役務:第25類「Golf clothing; tennis clothing; riding coats; riding and polo clothing; riding clothing [other than hats]; horse-riding jackets; Jodhpurs (riding pants); motorcycle jackets; cycling shirts; golf shirts; golf pants; golf trousers; golf caps; ski clothing; ski hats; ski jackets; ski gloves; ski pants; ski boots; ski scarves; ski suits; ski suits for competition; (all the aforementioned clothing for men); shoes and boots for male kids; clothing for male kids; headgear for male kids; cloth bibs for male babies and male kids; trousers for male infants; shoes for male babies; one-piece coveralls for male babies; layettes [clothing] for male babies.」、第26類「Buckles.」、第28類「Cricket bags; golf bag carts; bags adapted for snow-skis; golf bags, with or without wheels; toy gliders; tennis ball throwing apparatus; apparatus for games; hunting bows; bows for archery; dartboard cases; fencing weapons; cases for play accessories; dart cases; cases for tennis balls; snowboard bindings; snow ski bindings; bindings for alpine skis; manually operated exercise equipment; billiard equipment; archery implements; machines for physical exercises; divot repair tools [golf accessories]; golf flags [sports articles]; golf clubs; hockey sticks; field hockey sticks; targets; firearm targets; dartboards; targets for archery; skittles for billiards; bowling pins; bocce balls; bowling balls; playing balls; bags adapted for bowling balls; pool cue bridges; golf club shafts; hunting stands [sports articles]; golf bag carts; playing cards; tennis ball retrievers; shaped covers for golf clubs; shaped covers for golf putters; shaped covers for squash rackets; shaped covers for tennis rackets; shaped covers for golf bags; shaped covers for golf club heads; dice; quivers for archery; golf irons; chip markers for bingo; poker chips [gaming equipment]; foils for fencing; hunting game calls; toy arrows; arrows for archery; darts; toys; soft sculpture plush toys; soft sculpture toys; board games; tabletop basketball games; building games; dice games; checkers [games]; dominoes; dart games; chess games; parlor games; target games; pinball games; golf ball retrievers; cricket bats; ice hockey sticks; scale model vehicles; scooters [toys]; monoskis; table tennis net posts; tennis uprights; grip tapes for golf clubs; grip tapes for rackets; teddy bears; stuffed toy bears; billiard balls; cricket balls; balls for games; golf balls; tennis balls; balls for racket sports; table tennis balls; soccer balls; play balloons; basketballs; roller skates; in-line roller skates; ice skates; stuffed toys; plush toys; chest protectors for sports use; throat protectors for sports use; leg guards [sports articles]; shoulder pads for sports use; golf putters; rackets; snowshoes; table tennis rackets; ski poles; tennis rackets; squash rackets; billiard cue bridges; sole coverings for snow skis; chessboards; cases for playing cards; snow-skis; snow sleds for recreational use; snowboards; epees for fencing; billiard cues; holders for pool cue chalk; putting practice mats [golf articles]; billiard tables; tables for table tennis; foosball tables; golf tees; hunting blinds [sports articles]; golf club heads; cases for archery bows; cases for pool cues; toy vehicles.」及び第35類「Organization of exhibitions and events for commercial or advertising purposes; arranging and conducting of fairs and exhibitions for business and advertising purposes; organization of events, exhibitions, fairs and shows for commercial, promotional and advertising purposes; advertising; promotion of goods and services through sponsorship of international sports events; online retail store services relating to clothing for men; on-line retail store services of cosmetic for men and beauty products for men.」
登録出願日:2017年(平成29年)年9月7日
設定登録日:未登録(2019年(令和元年)8月5日登録査定)
ウ 登録第2074550号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
指定商品:第24類「身布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,防暑用ヘルメット,帽子」
登録出願日:昭和49年4月5日
設定登録日:昭和63年8月29日
書換登録日:平成20年12月17日
最新更新登録日:平成30年3月27日
エ 登録第4075520号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
指定商品:第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
登録出願日:平成7年12月11日
設定登録日:平成9年10月31日
最新更新登録日:平成29年7月11日
オ 登録第4095296号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
指定商品:第3類「せっけん類,香料類,化粧品,かつら装着用接着剤,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」
登録出願日:平成7年12月11日
設定登録日:平成9年12月19日
最新更新登録日:平成29年11月21日
カ 登録第4203697号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口・靴飾り・コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ,記念たて」
登録出願日:平成7年12月11日
設定登録日:平成10年10月23日
最新更新登録日:平成30年6月19日
キ 登録第4206392号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,型紙,紙製テーブルクロス,紙製タオル,紙製手ふき,紙製のぼり,紙製旗,紙製ハンカチ,紙製ブラインド,紙製幼児用おしめ,裁縫用チャコ,荷札,印刷物,書画,写真,写真立て,遊戯用カード,文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,青写真複写機,あて名印刷機,印刷用インテル,印字用インクリボン,活字,こんにゃく版複写機,自動印紙はり付け機,事務用電動式ホッチキス,事務用封かん機,消印機,製図用具,装飾塗工用ブラシ,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,封ろう,マーキング用孔開型板,郵便料金計器,輪転謄写機,観賞魚用水槽及びその附属品」
登録出願日:平成7年12月11日
設定登録日:平成10年10月30日
最新更新登録日:平成30年6月19日
ク 登録第4206393号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品:第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」
登録出願日:平成7年12月11日
設定登録日:平成10年10月30日
最新更新登録日:平成30年6月19日
なお、上記引用商標4、引用商標6ないし引用商標11に係る商標権は現に有効に存続しているものであり、引用商標5に係る登録出願は特許庁に係属しているものである。以下、引用商標4ないし引用商標11を、まとめて「引用商標B」という場合がある。
また、引用商標Aと引用商標Bをまとめて「引用商標」という。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標Bの比較
本件商標は、青色の円形図形の内側全体にイヤリングを付けた女性の顔を模した図形を配置すると共に、円形図形の下方に円形図形の外周に沿って比較的大きな青色の欧文字「RICCI」を配置し、「RICCI」の下側に、当該「RICCI」の文字に沿って、各文字が「RICCI」の各文字の4分の1程度の大きさの青色の欧文字「EVERYDAY」を配置してなる文字と図形の結合商標からなるところ、その構成中、「RICCI」の文字が「EVERYDAY」の文字に比べて、大きく、かつ、太いことからみて、本件商標からは、「リッチ」の称呼が生じる。
また、小さく表示された「EVERYDAY」は「毎日」を意味する英単語であることは、需要者・取引者はすぐに理解するものであるから、「毎日、RICCIの商品又は役務を使用又は購入しよう」という観念を需要者・取引者に想起させるものである。
これに対して、引用商標Bは、いずれも「STEFANO RICCI」の文字からなる文字商標であり、「STEFANO」の語と「RICCI」の語とを間隔を開けて表示しており、全体として称呼する場合、「ステファノリッチ」という比較的冗長な称呼が生じるものであって、需要者・取引者が、これを「STEFANO」又は「RICCI」の部分に略して「ステファノ」又は「リッチ」と称呼することも十分にあることから、引用商標Bからは「ステファノリッチ」に加えて、「ステファノ」及び「リッチ」の称呼が生じることは明らかである。
本件商標と引用商標Bとを比較すると、両者はいずれも「リッチ」の称呼が生じるものであるから、両者は同一の称呼が生じる類似商標である。
そして、本件商標の指定商品及び指定役務は、いずれも、引用商標Bの指定商品及び指定役務と同一又は類似しているから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「STEFANO RICCI」が世界的に著名な商標であることについて
「STEFANO RICCI」は、イタリア人デザイナー、ステファノ・リッチによって、1972年にフィレンツェで創業したブランドの名称であり、ステファノ・リッチは、1987年からクラシコイタリア協会の初代会長を努め、イタリアファッション界の発展に貢献し、それらの活躍により「STEFANO RICCI」は、アメリカ・ヨーロッパを中心に、世界中で高級ブランドとして地位を確立している。
また、申立人2は、現在では、世界24か国(トルコ3店舗、フランス2店舗、ドイツ、イタリア5店舗、スイス3店舗、イギリス、モナコ、チェコ、オーストリア、カザフスタン、アゼルバイジャン2店舗、ロシア8店舗、ウクライナ、ジョージア、アルメニア、アメリカ5店舗、カナダ、中国15店舗、インドネシア、インド2店舗、カンボジア、韓国、シンガポール、UAE店舗)まで販売店を展開しており(甲20(B))、フィレンツェのメンズラグジュアリーを管理している会社だけでも、2018年度に売上高が1億5000万ユーロを超えるまで成長している。
さらに、申立人2は、自社のホームページで公開しているように「STEFANO RICCI」のブランドを、衣料品だけでなく、食器、家具、寝具に加えて、ジュエリー、レザー製品、インテリア製品、ワインまで広げ、今後も様々な商品及び役務に「STEFANO RICCI」のブランドを拡大していく計画を持っており、これに連動して、「STEFANO RICCI」のブランド広告を積極的に行っている。
「STEFANO RICCI」のブランド広告費は、2015年度が225万ユーロ、2016年度が283万ユーロ、2017年度が320万ユーロと年々増加してきており、この広告費の増加に比例して、「STEFANO RICCI」の世界での著名度が上がり、様々な雑誌等で取り上げられるようになってきている(甲11(B)?甲19(B))。
イ 誤認混同が生じる理由
「STEFANO RICCI」は、世界的に著名なブランドの名称であり、「RICCI」はその略称である。
これに対して、本件商標は、「RICCI」の部分のみを他の文字に比べて大きく強調して表示するものであり、これが本件商標の指定商品や指定役務に使用されると、需要者・取引者は、その商品及び役務があたかも「STEFANO RICCI」に関連する企業等の商品又は役務であると誤認する可能性が極めて高い。
また、本件商標に含まれている「EVERYDAY」は「毎日」を意味する英単語であることは需要者・取引者はすぐに理解するものであるから、「毎日、RICCIの商品又は役務を使用又は購入しよう」という観念を需要者・取引者に想起させるものであり、「STEFANO RICCI」の商品や役務を毎日使用又は購入しようと需要者取引者に訴えかけていると誤認される可能性が極めて高い。
本件商標は、世界的に極めて著名となっているブランド「STEFANO RICCI」と誤認混同を生じさせる可能性が高い商標であり、国際取引の観点からみても、かかる商標は早期に取り消されるべきである。

第3 当審の判断
1 引用商標Aの周知性について
「NINA RICCI」は、1932年に、イタリア人デザイナー「ニナ リッチ」がメゾン「NINA RICCI」をパリで創業し、自身の名を冠した商標として用いたものである(甲9(A)、甲10(A))。
我が国においては、伊藤忠商事株式会社が、日本市場における「NINA RICCI」ブランドの独占輸入販売権とマスターライセンス権に関する独占契約を締結し、総合的なブランド展開を行ってきており(甲12(A))、我が国における「NINA RICCI」に係る商品の販売店舗は、百貨店等で250店舗以上、専門店等で1,000店舗以上であること(甲13(A)、甲14(A))がうかがえる。
また、2019年4月打ち出しのインターネット情報によれば、様々なインターネットの通販サイトでも「NINA RICCI」に係る商品が販売されている(甲15(A)?甲22(A))。
さらに、我が国における「NINA RICCI」に係る取扱商品は、例えば、かばん類、袋物、傘、革小物、寝具類、ハンカチ、タオル、被服、ネクタイ、ストール、マフラー、帽子、手袋、ベルト、眼鏡、サングラス、ジュエリー、食卓用食器類、香水等、ファッションの分野において幅広くカバーされている(甲12(A)?甲24(A))。
以上のことを総合勘案すれば、引用商標Aは、申立人1の業務に係るファッション関連商品に使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、相当程度広く認識されていたものということができる。
2 引用商標Bの周知性について
申立人2の主張によれば、引用商標Bを構成する「STEFANO RICCI」の文字は、イタリア人デザイナー、ステファノ・リッチによって、1972年にフィレンツェで創業されたブランドの名称であって、現在では、世界24か国まで販売店を展開しており(甲20(B)),フィレンツェのメンズラグジュアリーを管理している会社だけでも、2018年度に売上高が1億5000万ユーロを超える(甲11(B))。
また、様々な雑誌等で「STEFANO RICCI」に関する記事が取り上げられていること(甲10(B)?甲19(B))がうかがえる。
以上のことを総合勘案すれば、引用商標Bは、申立人2の業務に係るファッション関連商品に使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、イタリアを中心に一定程度知られていたといい得るものである。
3 「RICCI」の文字の周知性について
申立人1及び申立人2の提出に係る全証拠からは、「RICCI」の文字のみの使用状況を把握することはできず、引用商標A及び引用商標Bのいずれも「RICCI」又は「リッチ」の文字をもって略称されているとはいい難いことからすると、「RICCI」の文字が、申立人1又は申立人2の業務に係る商品を表示する商標として、需要者の間で広く認識されるに至っていたということはできない。
なお、申立人1は、「NINA RICCI」の略称ともいうべき「RICCI」についても同様に、我が国を含む世界各国の需要者の間で著名になっているというべきものである旨、また、申立人2は、「STEFANO RICCI」は、世界的に著名なブランドであり、「RICCI」はその略称である旨主張するが、上記したとおり、申立人1及び申立人2から提出された証拠中には、「RICCI」の文字のみを単独で使用している事例や引用商標A及び引用商標Bの略称として「RICCI」の文字を使用している事例は見当たらず、その他に申立人1及び申立人2に係る「RICCI」の文字のみの使用状況を見いだすこともできないことから、「RICCI」の文字のみで、申立人1及び申立人2の業務に係る商品を表すものとして広く知られていたとはいい難く、申立人1及び申立人2のかかる主張を採用することはできない。
4 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、青塗り円図形の中に抽象的に表された人の顔とおぼしき形状を表した図形と、その下に円図形の外周に沿って青色の「RICCI」及び「EVERYDAY」の欧文字を二段に配した、図形部分と文字部分の結合商標からなるところ、その構成は、図形部分と文字部分とを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。
そして、文字部分についてみるに、「RICCI」の文字は、「EVERYDAY」の文字に比べて、大きく表されているものの、両文字は、図形部分の輪郭に沿うように、円弧状に、構成文字の幅もそろえて、まとまりよく表されているものであるから、外観上、一体的に看取されるものであり、構成文字全体から生ずる「リッチエブリデー」の称呼も格別冗長なものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
また、構成中の「RICCI」の文字は、辞書等に採録のない語であり、「EVERYDAY」の文字は「毎日の」の意味を有する平易な英語(ジーニアス英和辞典)であるところ、いずれも、本件商標の指定商品・指定役務との関係において、自他商品・役務の識別標識としての機能を有さない語であるとはいい難いことに加え、「RICCI」の文字の周知性も認められないことからすれば、本件商標について、その構成中の「RICCI」の文字部分のみが独立して自他商品・役務の識別標識として機能するということはできない。
そうすると、本件商標からは、その文字部分に相応して「リッチエブリデー」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標Bについて
引用商標4及び引用商標6は、「STEFANO RICCI」の欧文字を横書きしてなり、引用商標7ないし引用商標11は、別掲3のとおり、「STEFANO RICCI」の文字を籠字風に表したものである。
そして、当該構成各文字は、同じ書体でまとまりよく表されており、その構成全体として、外国人の氏名を表したものとして理解されるというのが相当である。
そうすると、引用商標Bは、その構成文字に相応して「ステファノリッチ」の称呼を生じ、「『STEFANO RICCI』という外国人の氏名」という観念を生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標Bの類否について
本件商標と引用商標Bとは、その構成が著しく相違しており、両者から受ける印象は全く異なるものであるから、外観上相紛れるおそれはない。
なお、本件商標と引用商標Bは、いずれも「RICCI」の部分が殊更に強く印象付けられるとはいえないことは、上記(1)及び(2)のとおりであり、当該「RICCI」の文字部分をもって、本件商標と引用商標Bとが外観上相紛れるおそれがあるということはできない。
また、本件商標から生ずる「リッチエブリデー」の称呼と引用商標Bから生ずる「ステファノリッチ」の称呼とは、「エブリデー」及び「ステファノ」の音の有無という明確な差異を有するものであるから、本件商標と引用商標Bとは、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、本件商標からは、特定の観念は生じないものであるから、「『STEFANO RICCI』という外国人の氏名」という観念が生ずる引用商標Bとは、観念において紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標Bは、外観、称呼及び観念において、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
その他、本件商標と引用商標Bが類似するというべき特段の事情も見いだせない。
(4)小括
上記のとおり、本件商標と引用商標Bは、非類似の商標であるから、商品及び役務の類否について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
5 商標法第4条第1項15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
引用商標は、申立人1及び申立人2の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に知られていたものであるとしても、前記3のとおり、「RICCI」の文字のみで、申立人1及び申立人2の業務に係る商品を表すものとして広く知られていたとはいい難いものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
ア 本件商標と引用商標Aの類似性の程度について
本件商標は、前記4(1)において認定したとおり、その構成中の「RICCI」の文字部分のみが独立して自他商品・役務の識別標識として機能するということはできないから、本件商標からは、その文字部分に相応して「リッチエブリデー」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
他方、引用商標Aは、「NINA RICCI」の欧文字よりなるところ、その構成文字は、まとまりよく一体的に表されており、その構成全体として、「(申立人1に係る)ファッションブランドとしてのニナリッチ」という観念を生じ、「ニナリッチ」の称呼を生じるものである。
本件商標と引用商標Aとを比較すると、その構成が著しく相違しており、両者から受ける印象は全く異なるものであるから、外観上相紛れるおそれはない。
なお、本件商標と引用商標Aは、いずれも「RICCI」の部分が殊更に強く印象付けられるとはいえないものであり、当該「RICCI」の文字部分をもって、本件商標と引用商標Aとが外観上相紛れるおそれがあるということはできない。
また、本件商標から生ずる「リッチエブリデー」の称呼と引用商標Aから生ずる「ニナリッチ」の称呼とは、「エブリデー」及び「ニナ」の音の有無という明確な差異を有するものであるから、本件商標と引用商標Aとは、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、本件商標からは、特定の観念は生じないものであるから、「(申立人1に係る)ファッションブランドとしてのニナリッチ」という観念が生ずる引用商標Aとは、観念において紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標Aは、外観、称呼及び観念において、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当であるから、類似性の程度は高いものとはいえない。
イ 本件商標と引用商標Bの類似性の程度について
前記4において認定したとおり、本件商標と引用商標Bは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、類似性の程度は高いものとはいえない。
(3)本件商標の指定商品及び指定役務と申立人1及び申立人2の業務に係る商品との関連性及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品及び指定役務と申立人1及び申立人2の業務に係る商品は、ファッション関連商品・役務の範囲において関連性を有し、需要者を共通にする場合があるものである。
(4)出所の混同のおそれについて
本件商標の指定商品及び指定役務と申立人1及び申立人2の業務に係る商品は、ファッション関連商品・役務の範囲において関連性を有し、需要者を共通にする場合があるとしても、「RICCI」の文字のみで、申立人1及び申立人2の業務に係る商品を表すものとして広く知られていたとはいい難いものであって、本件商標と引用商標との類似性の程度が高くないことからすれば、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合に、これに接する取引者、需要者は引用商標を連想、想起することはなく、当該商品及び役務が申立人1及び申立人2又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。
また、その他に本件商標が他人の業務に係る商品及び役務と混同を生ずるおそれがある商標であるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。


【別掲1】
本件商標(色彩は原本参照)


【別掲2】
引用商標6


【別掲3】
引用商標7ないし引用商標11

異議決定日 2019-10-16 
出願番号 商願2018-14105(T2018-14105) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W18242535)
T 1 651・ 263- Y (W18242535)
T 1 651・ 261- Y (W18242535)
T 1 651・ 271- Y (W18242535)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中山 寛太馬場 秀敏 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 鈴木 雅也
冨澤 美加
登録日 2018-10-12 
登録番号 商標登録第6088889号(T6088889) 
権利者 株式会社RICCI EVERYDAY
商標の称呼 リッチエブリデー、リッシエブリデー、リッチ、リッシ、エブリデー 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 橋本 良樹 
代理人 八木田 智 
代理人 幡 茂良 
代理人 小出 俊實 
代理人 浜野 孝雄 

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