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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20195778 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W16
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W16
管理番号 1357021 
審判番号 不服2019-5777 
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-01 
確定日 2019-11-05 
事件の表示 商願2017-126831拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,別掲のとおりの構成よりなり,第16類「事務用ラベル作成機用テープカートリッジ,電子計算機又は携帯情報端末用ラベルプリンター用テープカートリッジ,ラベルプリンター用テープカートリッジ」を指定商品として,平成29年9月22日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)
(1)本願商標は,別掲のとおりの構成よりなるところ,その指定商品との関係においては,その商品の形状の一形態を表した立体的形状からなるから,これをその指定商品に使用するときは,単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)提出された証拠によっては,本願商標が使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるものになったとはいえない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 本願商標は,別掲のとおり,正面の覆いを半透明にしたカートリッジケースの内部に,大きなロール状の輪(ロール部分は薄い青緑色)と,それに接するように円形の2つの輪(1つの輪の芯には連続した小さな突起がある。)並びに比較的大きな長方形の空間及び小さな円形の空間を配置してなる立体的形状よりなるものである。
イ 本願商標の指定商品であるテープカートリッジは,機器のはめこみ式の交換部品であって,交換用のテープを入れた着脱式容器(参照:「広辞苑 第6版」岩波書店)であるところ,その機能を果たすため,機器のはめこみ部分の形状に応じた一定の部品配置が必要とされるものであり,その内部構造としては,テープをロール状にして収納する部品や,それを巻き取り,送り出しをするような輪状の部品を有している。
また,商品のケースやカバーを半透明のものとすることは,その内部構造を視認するという機能的な理由や,美感上の理由から,デザイン手法の一として広く採択されている。
ウ 以上を踏まえると,本願商標は,青緑色のテープを備えた,ケースの一部を半透明とするテープカートリッジの形状と容易に認識できるもので,いずれの特徴も,商品の機能若しくは美感に資することを目的とした,又はそれらの目的からの形状の選択と予測し得る範囲の形状にすぎないものであり,特定の図形や形状をモチーフにしたような印象を与えるものではないから,自他商品の識別標識として印象に残るような特徴に乏しい。
なお,請求人も,本願商標はその指定商品の立体的形状を表してなるもので,商標法第3条第1項第3号に該当することは否定しない旨を述べている(原審において提出した平成30年8月30日付けの意見書)。
以上のとおり,本願商標は,その指定商品との関係において,単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項該当性について
ア 本願商標の使用実績
請求人の提出する証拠及び主張によれば,以下の事実が認められる。
(ア)請求人は,1988年から販売されているラベルワープロ「テプラ」シリーズの一つとして,カートリッジを従来のものとは違う新しいタイプのものとするなど,経済性や機能を向上させた「テプラ・プロ」(SR606)及びそのオプション品「PROテープカートリッジ」(以下,このカートリッジを「請求人商品」という。)を,1992年に発売した(甲6の1,甲8の1,7,18)。
(イ)請求人商品の形状は,上記(1)アに掲げる本願商標の立体的形状の特徴を概ね備えているが,いずれもロール状に収納されたテープを横切るように帯状のラベルが付されており,ロール状の輪の厚みや色彩は収納するテープの種類によって変わるものである(甲3の20)。
請求人商品には,テープ幅(6・9・12・18・24mmなど)や色彩(白,黒など)などにバリエーションがあり,請求人商品の帯状ラベルや包装箱には,「TEPRA」,「白」,「18mm」等の文字として表示されている(甲3の20)。
(ウ)請求人の主張(甲1)によれば,請求人商品の販売実績は,約25年間(1992年12月?2017年8月)の本数換算で,約4億7百万個である。
(エ)請求人商品は,請求人のカタログやチラシにおいて,商品外観を示す写真(不鮮明であったり,角度,配置又は小ささによって全体の形状及び形状の子細が確認できないものも多数ある。)とともに,掲載又は紹介されている(甲5の1?59,甲6の1?87)。
また,請求人商品は,新聞や雑誌(1993年から2014年の間に発行,掲載)等においても,商品外観を示す写真(不鮮明であったり,角度,配置又は小ささによって,全体の形状及び形状の子細が確認できないものも多数ある。)とともに,掲載又は紹介されている(甲8の1?383)。
そして,上記カタログ,チラシ,記事情報等における商品紹介は,請求人商品が適合する機器(ラベルワープロ等)の商品紹介の記事等において,それら機器の写真と並べて小さく請求人商品の写真を掲載するもので,また,請求人商品に着目する記事であっても,例えば「『PROテープカートリッジ』はラベル幅自由自在」(甲5の1),「新開発PRO印刷技術で,優れた経済性と美しく強力な印刷を実現」(甲6の1),「経済的なカートリッジ」(甲8の108),「布に張れるラベル『アイロンラベル』」(甲8の199),「『熱収縮チューブ』が新登場/『強粘着ラベル』『ヘッド・クリーニングテープ』も同時発売」(甲8の227),「再使用可能な仕様に改良」(甲8の235),「テプラにケーブル専用ラベルが登場」(甲8の254),「白テープだけじゃない!豊富な機能性ラベルが意外なシーンでも大活躍」(甲8の380)などのように,主としてテープの素材や幅,色彩,経済性などを紹介するものであって,請求人商品の形状の外形上の特徴や印象を紹介するものではない。
(オ)「文具・事務用品マーケティング総覧?2016年版?」(甲22)によれば,請求人(テプラ関連の売上げが約9割を占める。)の売上は,電子文具市場(ラベルライター関連が8割以上を占める。)においてトップシェア(約6割)を占めているとされる。
イ 検討判断
(ア)請求人は,電子文具市場におけるトップ企業であり,本願商標の形状の特徴を概ね備える請求人商品を,1992年の発売以降,長期間(約27年間)にわたり製造,販売し,約25年間(1992年12月?2017年8月)の本数換算で約4億7百万個という継続的な販売実績があるもので,請求人商品は,新聞や雑誌等においても継続的に掲載,紹介されてはいる。
(イ)しかしながら,これら販売実績や広告実績が,請求人に係る商品「テプラ」の知名度の向上に寄与しているといえても,その附属品(オプション品)である請求人商品,しかもその形状に係る知名度の向上に直接寄与したものとは考えにくい。すなわち,請求人商品の写真を掲載するカタログ,チラシ,新聞や雑誌の記事情報等は,主に請求人商品が適合する機器の商品紹介をするものであり,当該機器と並べてついでに附属品である請求人商品の写真も掲載しているとの印象を与える構成,構図のものも多いばかりか,請求人商品に着目する記事であっても,主としてテープの素材や幅,色彩,経済性などを紹介するものであって,その形状の外形上の特徴や印象を紹介するものではない。また,掲載されている請求人商品の写真にしても,不鮮明であったり,角度,配置などによって全体の形状や形状の子細は確認できないものも多数あることから,その形状の特徴を印象付ける効果に乏しいものである。
さらに,請求人商品の形状は,上記(1)ウのとおり,特定の図形や形状をモチーフにしたような印象を与えるものではないから,独創性に乏しく,自他商品の識別標識として需要者に記憶されにくい形状である。
(ウ)そうすると,請求人商品は,これを装着する機器「テプラ」としての知名度や広告実績を勘案しても,その形状をして,我が国の一般需要者の間において,自他商品の識別標識として浸透し,記憶され,全国的に周知,著名となるに至ったものとは考え難い。
ウ 請求人の主張
(ア)請求人は,株式会社インテージに委託して実施した「テープカートリッジの周知性 インターネット調査 調査報告書」(甲23)によれば,本願商標と同様の写真を示して,この製品を見たことがあるとした回答者のうち,請求人又はその商品との関連を想起する者の割合は,約77%であるから,本願商標の指定商品に係る需要者は,その立体的形状のみから,請求人又はそのブランドを想起できるに至っている旨を主張する。
しかしながら,本願商標と同様の写真から請求人との関係を想起できる者が存在することは否定しないが,本願商標の使用による識別性の獲得の検討において考慮すべき需要者層は,本願商標の指定商品に係る一般の需要者層を基準とすべきであり,請求人商品に精通した需要者層を基準とすべきではない。請求人の主張する認知度(約77%)は,本願商標に係る製品を既に認知している者を母数にしているから,請求人商品を使用したことのない者や他社製品を使用している者を含む,本願商標の指定商品に係る一般の需要者層の認識を客観的に示すものとはいえない。
なお,調査対象者全体(5052件)を母数としても,請求人又は請求人商品との関連を回答(1818件)できた割合は,約36%にすぎないから,本願商標の形状をして,半数を超える回答者は,請求人又は請求人に係る商品との関係を想起できないことになる。
さらに,同調査は,本願商標と同様の写真から,その製品を見たことがあるか否かにより回答を区別しているものの,特定の事業者との関連を認識しているのか否かを区別していないため,正しい回答と憶測による回答が混在している可能性が極めて高い。加えて,請求人は電子文具市場におけるトップ企業であるから,回答者は憶測するとなれば,まずはそのトップ企業やトップシェアの製品との関連を挙げるのは当然である。そのため,そのような偏向した回答を惹起しかねない調査手法によっては,客観的に需要者の認識を抽出できているとはいい難く,その調査結果は客観的なものとして高く評価することはできない。
したがって,請求人の主張は採択できない。
(イ)請求人は,製品名を一切使わず,当該製品の形状のみで宣伝広告するのは一般的とはいえず,立体的形状だけで取引が完結していなければ,その立体的形状が識別力を獲得していることにならないとするのは合理性を欠くもので,請求人商品の構成中に「TEPRA」の文字があるとしても,その文字は小さく,それのみを頼りに製品を特定しているとは限らないから,その立体的形状の方が,需要者の記憶に残る程度は顕著である旨を主張する。
しかしながら,請求人商品の取引の実情としても,通常は包装箱に入れられ,請求人商品の形状は確認できない状態で流通すると考えられるから,これを購入する需要者及び取引者は,その包装箱に表示された情報に主として接するものであるし,請求人商品の本体を確認する機会があっても,付された帯状のラベルに表示された情報(「TEPRA」,「白」,「18mm」等の文字)によって出所や適合商品の確認をすれば足りるのだから,請求人商品の形状のみが,自他商品の識別標識として着目されることは一般的とはいい難い。
また,請求人商品は,上記イのとおり,その形状は独創性に乏しく,需要者の間において記憶されにくい形状であるばかりか,カタログ,チラシ,新聞,雑誌等においても,テープの素材や幅,色彩,経済性などが紹介されることはあっても,請求人商品の形状の外形上の特徴や印象は紹介されていないから,我が国の一般需要者の間において,請求人商品の形状が,自他商品の識別標識として浸透し,記憶され,全国的に広く認識されるに至っていることは考えにくい。
したがって,請求人の主張は採択できない。
エ 小括
以上のとおり,本願商標は,その形状の特徴を概ね備える請求人商品の使用実績を勘案しても,その指定商品について,請求人の業務に係る出所識別標識として,我が国における需要者の間において,広く認識されるに至ったものとはいえないから,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていたものとはいえない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(3)まとめ
本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当するものであって,かつ,同条第2項の要件を具備するものではないから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標。色彩は原本を参照。)


審理終結日 2019-09-05 
結審通知日 2019-09-06 
審決日 2019-09-19 
出願番号 商願2017-126831(T2017-126831) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W16)
T 1 8・ 17- Z (W16)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 純一小林 正和 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 阿曾 裕樹
山田 啓之
代理人 香原 修也 
代理人 古井 かや子 

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