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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W09
管理番号 1356093 
審判番号 取消2018-300653 
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-08-21 
確定日 2019-09-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5560964号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5560964号商標(以下「本件商標」という。)は,「ARNEL」の文字を横書きしてなり, 平成24年8月11日に登録出願,第9類「眼鏡,光学ガラス,光学用眼鏡,サングラス,コンタクトレンズ,矯正レンズ,眼鏡用枠,眼鏡ケース,眼鏡用ひも,鼻眼鏡用ひも,その他の眼鏡」を指定商品として,同25年3月1日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成30年9月5日である(以下,当該登録前3年以内を「要証期間」という。)。
なお,本件商標権は,「中國普天股▲ふん▼有限公司」(以下「旧商標権者」という。)を権利者として設定登録されたものであるが,平成29年10月19日受付で特定承継による本件商標権の移転登録がされ,被請求人が権利者(以下「現商標権者」という。)となった。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,登録第5560964号商標の指定商品についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は,被請求人の答弁に対して弁駁していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第28号証を提出した。
1 被請求人のホームページにおける使用
(1)乙第1号証は,TVR OPT CO.,LTD..のホームページである。乙第1号証には被請求人の住所の英語表記及び被請求人の名称「TVR@OPT CO.Ltd.」が記載されている。
(2)乙第2号証は,現商標権者の公的資料(中国語)である。乙第2号証には現商標権者の英文名はTVR OPT CO.,LTD..である旨が記載されている。
(3)乙第3号証は,現商標権者の公的資料(英語)である。乙第3号証には現商標権者の英文名はTVR OPT CO.,LTD.である旨が記載されている。
(4)乙第4号証は,中華民国経済部国際貿易局が発行する製造業者基本資料である(乙5)。乙第4号証には現商標権者(TVR OPT CO.,LTD..)の住所の英語表記が記載されている。この住所表記は,乙第1号証に記載されている住所と同一である。
(5)乙第1号証には,「TVRARNEL」という名称の眼鏡が紹介されている。「TVR」は,被請求人の名称の略称であり,製造販売者が被請求人であることを表示するにすぎないと認識できるため,「TVR」の部分は,商標の同一性という観点からは重要性を持たない部分である。
よって,使用商標「TVRARNEL」は登録第5560964号に係る商標「ARNEL」と社会通念上同一の商標である。「眼鏡」は,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商標である。乙第1号証には,日本本社の住所,日本における問い合わせ先メールアドレスが記載されている。
2 使用権者による使用
(1)乙第6号証は,現商標権者とイアラマーケティングスペシャリティズ株式会社(以下「イアラ社」という。)との間で結ばれた覚書である。当該覚書には,「ARNEL」は「TVR」モデルの一つであり,イアラ社が,現商標権者の有する本件商標「ARNEL」を使用する権利を有することが記載されている。したがって,イアラ社が本件商標に係る通常使用権者に該当することは明らかである。
(2)乙第7号証は,本件商標の旧商標権者とイアラ社との間で結ばれた覚書である。本件商標については,平成29(2017)年10月17日付けにて旧商標権者から現商標権者に対する譲渡による移転登録申請書が提出され,同年11月1日付けにて,移転が登録されている。乙第7号証には,「ARNEL」は「TVR」モデルの一つであり,イアラ社が,旧商標権者の有する本件商標「ARNEL」を使用する権利を有することが記載されている。これにより移転前においても,イアラ社が本件商標に係る通常使用権者に該当していたことは明らかである。
ア 乙第7号証に記載されている旧商標権者の住所は,本件商標の商標権者として特許庁に登録されていた住所とは異なるが,台湾では,会社法第18条で「会社の名称は,他の会社の名称と同一であってはならない。」と規定されていることより(乙8),乙第7号証に記載の社が旧商標権者と同一法人であるという事実に疑義は生じない。さらに,台湾では同一の法人には同一の法人番号が付されるところ,両方の住所の旧商標権者に同じ番号「28815815」が付されていることからも乙第7号証に記載の社が旧商標権者と同一法人であるという事実は立証される。
イ 乙第7号証に記載されているイアラ社の住所は,乙第6号証及び乙第11号証に記載の住所とは異なるが,乙第6号証及び乙第7号証の署名者名並びに乙第11号証に記載されている販売責任者名が同一であることにより,乙第6号証及び乙第11号証に記載のイアラ社と乙第7号証に記載のイアラ社は同一法人であるといえる。また,乙第6号証及び乙第7号証の署名の筆跡より,第6号証及び乙第7号証の署名者は明らかに同一人物である。
(3)乙第11号証は,京都市左京区一乗寺野田町,大阪市西区北堀江及び東京都中央区銀座に店舗を構える眼鏡販売店OBJオブジェのホームページである。特定商取引法に基づく表示のページに,眼鏡販売店OBJオブジェで販売されている商品の販売者が本件商標の通常使用権者であるイアラ社であることが記載されている。当該ホームページにおいては取扱いブランドとして「TRUE VINTAGE REVIVAL」が挙げられている。「TRUE VINTAGE REVIVAL」は,現商標権者のハウスマークである(乙1)。なお,現商標権者のホームページにおいても日本の販売店としてOBJオブジェの3店舗が掲載されている(乙1)。
(4)乙第12号証は,京都府内の関係機関の協力のもと,京都府及び京都市が運営する府内の就職活動に関する総合情報発信サイト「京都ジョブナビ」のOBJオブジェを紹介するウェブページである。当該ウェブページにはOBJオブジェの法人名がイアラ社である旨が記載されている。
(5)乙第13号証及び乙第14号証は,OBJオブジェ京都店における,2016年10月22日付け及び2016年10月24日付けのTRUEVINTAGE REVIVALによる「ARNEL」の商標が用いられている眼鏡の入荷を告知するインスタグラムの情報である。
(6)乙第15号証は,OBJオブジェ大阪店における,2016年10月24日付けのTRUEVINTAGE REVIVALによる「ARNEL」の商標が用いられている眼鏡の入荷を告知するブログ記事である。当該ブログ記事には,眼鏡のフレームに「ARNEL」の文字が刻印されている写真が掲載されている。
(7)乙第16号証ないし乙第19号証は,OBJオブジェ京都店における,2016年(平成28年)11月13日付け,同月19日付け及び同月23日付けのTRUEVINTAGE REVIVALによる「ARNEL」の商標が用いられている眼鏡を紹介するインスタグラムの情報である。当該情報には,眼鏡のフレームに「ARNEL」の文字が刻印されている写真が掲載されている。
(8)乙第20号証ないし乙第22号証は,OBJオブジェ大阪店における,2017年(平成29年)4月26日付け及び同年10月10日付けのTRUEVINTAGE REVIVALによる「ARNEL」の商標が用いられている眼鏡を紹介するブログ記事及びツイッターの情報である。
(9)乙第23号証は,OBJオブジェ東京店における,2016年(平成28年)11月11日付けのTRUEVINTAGE REVIVALによる「ARNEL」の商標が用いられている眼鏡を紹介するブログ記事である。
3 他者を介しての使用
(1)乙第24号証は,東京都目黒区自由が丘の眼鏡販売店BeauxYeux自由が丘店のホームページである。取扱いブランドにTRUEVINTAGE RIVIVALが挙げられており,TRUEVINTAGE REVIVALの文字の下には被請求人の名称TVR OPT CO LTDの文字が記載されている。
(2)乙第25号証は,BeauxYeux自由が丘店における,2016年(平成28年)12月27日付けのTRUEVINTAGE REVIVALによる「ARNEL」の商標が用いられている眼鏡が紹介されている。TRUEVINTAGE REVIVALの文字の下には被請求人の名称TVR OPT CO LTDの文字が記載されている。
(3)乙第26号証は,眼鏡・サングラスの通販サイトD-Eyeのホームページである。TRUEVINTAGE REVIVALによる「ARNEL」の商標が用いられている眼鏡が紹介されており,本サイトより購入可能である。
4 まとめ
以上によれば,要証期間に,日本国内において,その指定商品中「眼鏡」について,旧商標権者及び通常使用権者が,登録商標及びこれと社会通念上同一の商標を使用していることが明らかである。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及びその提出に係る乙各号証によれば,以下の事実が認められる。
(1)イアラ社は,京都市左京区一乗寺野田町に所在する眼鏡の販売事業を行う会社であり,「OBJオブジェ」の名称で京都,大阪及び東京に合計3店舗を有する(乙11)。
(2)2016年(平成28年)10月24日付けのOBJオブジェ京都店のインスタグラム(インターンネット上の写真共有プログラム)において,「“ARNEL”モデル新登場!!?TVR ARNEL?/JUGEMテーマ:メガネ」,「ARNEL-アーネル-タイプのアイウェアが新登場いたしましたので,早速ご紹介します!!」及び「ARNELの名前を冠した最新作。」等の見出しの下,商品の材質,色彩及び特徴の説明並びに連絡先及び営業時間等の記載とともに,商品「眼鏡」(以下「本件使用商品」という。)の画像が掲載されている(乙14)。
(3)現商標権者とイアラ社とが2017年(平成29年)11月21日に締結した協力の覚書(乙6)には,「1)商標」の項に「(B)ARNELはTVR商品の一モデルであり,当事者B(審決注:イアラ社)は日本において商標ARNEL(商標登録第5560964号)(審決注:本件商標)について使用する権利を有する。」の記載,「2)マーケティング戦略」の項に「(A)両当事者(審決注:現商標権者及びイアラ社)は,当事者Bが日本においてTVR商品のマーケティングを排他的に行い,日本における全ての利益を受けることに同意する。」の記載がある。
(4)旧商標権者とイアラ社とが2015年(平成27年)5月9日に締結した協力の覚書(乙7)には,「1)商標」の項に「(B)ARNELはTVR商品の一モデルであり,当事者B(審決注:イアラ社)は日本において商標ARNEL(商標登録第5560964号)(審決注:本件商標)について使用する権利を有する。」の記載,「2)マーケティング戦略」に「(A)両当事者(審決注:旧商標権者及びイアラ社)は,当事者Bが日本においてTVR商品のマーケティングを排他的に行い,日本における全ての利益を受けることに同意する。」の記載がある。
なお,上記覚書(乙7)に係る被請求人が旧商標権者とする会社は,本件商標の商標登録原簿に係る旧商標権者と名称は同一であるものの住所が異なるが,台湾の会社法においては,その第18条に「会社の名称は,他の会社の名称と同一であってはならない。」と規定されていること(乙8),台湾においては,同一の法人には同一の法人番号が付されるところ,台湾における両者の登録簿(乙9,乙10)において,同一名称の両者の異なる2つの住所について同一の法人番号が付されていることよりすると,上記覚書(乙7)に係る被請求人が旧商標権者とする会社は,本件商標の商標登録原簿に係る旧商標権者と同一の法人であると認められる。
また,上記覚書(乙7)に係る被請求人がイアラ社とする会社は,上記(1)のイアラ社と名称は同一であるものの住所と異なるが,両者の名称が同一であること,上記覚書に係る被請求人がイアラ社とする代表者の氏名が,上記(1)のイアラ社の販売責任者の氏名とそれぞれ一致することよりすると,同一の法人であると認められる。
2 判断
(1)使用商標及び使用時期について
上記1(1)及び(2)によれば,イアラ社は平成29年10月24日付けで,その店舗OBJオブジェ京都店に係るインスタグラム(インターンネット上の写真共有プログラム)において,「“ARNEL”モデル新登場!!?TVR ARNEL?」等の見出しの下,商品の材質,色彩及び特徴並びに連絡先及び営業時間等とともに,本件使用商品の画像を掲載したのであるから,イアラ社は,本件使用商品に関する広告を電磁的な方法により提供したといえる。
そして,当該広告に記載された「“ARNEL”モデル新登場!!?TVR ARNEL?」の文字部分は,「ARNEL」の文字部分(以下「本件使用商標」という。)が引用符「“”」で強調されていることからすると,これに接する需要者をして,「ARNEL」の文字部分が本件使用商品の出所識別標識と認識されるというべきである。
したがって,イアラ社は,平成29年10月24日に,本件使用商品に関する広告に,本件使用商標を付して電磁的な方法により提供したといえる。
(2)本件商標と本件使用商標の社会通念上の同一性について
本件商標は「ARNEL」の文字を横書きしてなるものであり,他方,本件使用商標は上記(1)のとおり,「ARNEL」の文字を横書きしてなるから,本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(3)使用商品について
本件使用商品は,上記1(2)のとおり,商品「眼鏡」であるから,本件審判の請求に係る指定商品と同一の商品である。
(4)使用者について
上記1(3)及び(4)によれば,旧商標権者は,2015年(平成27年)5月9日付けでイアラ社との間で本件商標について商標使用許諾の覚書を締結していること,現商標権者は,2017年(平成29年)11月21日付けでイアラ社との間で本件商標について商標使用許諾の覚書を締結していることから,イアラ社は,本件商標の通常使用権者と認められる。
(5)小括
以上によれば,本件商標の通常使用権者であるイアラ社は,要証期間内に,本件審判の請求に係る指定商品中の第9類「眼鏡」に関する広告に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して電磁的な方法により提供したといえる。
そして,本件商標の通常使用権者による上記行為は,商標法第2条第3項第8号に該当する。
3 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に,日本国内において,本件商標の通常使用権者が,本件審判の請求に係る指定商品中の第9類「眼鏡」について,本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしたことを証明したということができる。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定商品について,商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2019-04-17 
結審通知日 2019-04-22 
審決日 2019-05-09 
出願番号 商願2012-65603(T2012-65603) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 渡邉 あおい
平澤 芳行
登録日 2013-03-01 
登録番号 商標登録第5560964号(T5560964) 
商標の称呼 アーネル、アルネル 
代理人 山田 強 
代理人 特許業務法人筒井国際特許事務所 
代理人 廣田 美穂 

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