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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W0914 審判 全部申立て 登録を維持 W0914 審判 全部申立て 登録を維持 W0914 審判 全部申立て 登録を維持 W0914 |
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管理番号 | 1354327 |
異議申立番号 | 異議2018-900312 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-30 |
確定日 | 2019-07-25 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6074158号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6074158号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6074158号商標(以下「本件商標」という。)は,「iWatch」の文字を標準文字で表してなり,平成29年10月3日に登録出願,第9類「コンピュータ,コンピュータ周辺機器,コンピュータ端末装置,コンピュータハードウェア,マイクロプロセッサ,コンピュータ用メモリーボード,コンピュータ用モニター,コンピュータ用ディスプレイ,コンピュータ用キーボード,コンピュータ用プリンタ,コンピュータ用ディスクドライブ,コンピュータ用の未記録の記録媒体,未記録の磁気記録媒体,デバイスドライバソフトウェア,全地球位置測位装置(GPS)用コンピュータソフトウェア,電子出版事業に使用されるコンピュータソフトウェア,電子出版物の作成又は閲覧用コンピュータソフトウェア,電子出版物リーダー用コンピュータソフトウェア,個人情報管理用コンピュータソフトウェア,データベース管理用コンピュータソフトウェア,文字認識用コンピュータソフトウェア,電子掲示板を利用するためのコンピュータソフトウェア,電子掲示板通信用コンピュータソフトウェア,電子掲示板の閲覧又は書込み用コンピュータソフトウェア,電光掲示板,データ同期化用コンピュータソフトウェア,アプリケーション開発用コンピュータソフトウェア,データの転送処理用コンピュータプログラム,コンピュータオペレーティングソフトウェア,データ管理用コンピュータソフトウェア,音声認識用コンピュータソフトウェア,口述録音用コンピュータソフトウェア,コンピュータソフトウェア,携帯電話用ソフトウェア,コンピュータファームウェア,コンピュータゲームソフトウェア,記録済みコンピュータプログラム,手持ち型コンピュータ,タブレット型コンピュータ,携帯情報端末装置,電子手帳,電子ノートパッド,電子書籍リーダー,インターネットへの接続の提供又は電話の呼出・ファックス・電子メール及びその他のデータを送受信するための携帯型電子応用機械器具,データ及びメッセージの無線受信・保存又は送信のための手持ち式電子応用機械器具並びにユーザーの個人情報の記録及び管理を可能とする電子応用機械器具,コンピュータ用フォント・タイプフェイス・タイプデザイン・記号の電子データを記憶させた記録媒体,コンピュータプログラム及びソフトウェアを搭載又は記録するためのICチップ・ディスク及びテープ,ウェハー(シリコンスライス),集積回路,ランダムアクセスメモリー,電子計算機用メモリー,ソリッドステートドライブ,コンピュータ用データ記憶用装置,ハードディスクドライブ,コンピュータハードドライブ,マウスパッド,コンピュータ用スピーカー,未記録のコンパクトディスク,未記録のオーディオディスク・ビデオディスク又はDVD,ICカード(スマートカード),商品用電子タグ,工業用の放射線装置,電子応用機械器具及びその部品,電子応用機械器具及びその部品用のカバー・バッグ及びケース,モデム,MP3プレーヤー,デジタルオーディオプレーヤー,デジタルオーディオレコーダー,全地球位置測位装置(GPS),ナビゲーション装置,音声・データ又は画像の送信用無線通信機械器具,電話機,コードレス電話機,携帯電話,携帯電話の部品及び附属品,スマートフォン,ファクシミリ機,留守番電話機,テレビ電話,デジタルカメラ,デジタルビデオカメラ,ヘッドフォン,ステレオ式ヘッドフォン,イヤホン,スピーカー,ラジオ,ラジオ送受信機,アンプリファイヤー,音声受信機,オーディオデコーダー,音声及び映像の記録及び再生用機械器具,ボイスレコーダー,電気蓄音機,レコードプレーヤー,ステレオ装置,テープレコーダー,拡声器,マイクロフォン,オーディオコンポーネント及びその附属品,デジタルビデオレコーダー及びプレーヤー,オーディオレコーダー及びプレーヤー,オーディオカセットレコーダー及びプレーヤー,ビデオカセットレコーダー及びプレーヤー,コンパクトディスクレコーダー及びプレーヤー,DVDレコーダー及びプレーヤー,デジタルオーディオテープレコーダー及びプレーヤー,ビデオカメラ,サウンドミキサー及びビデオミキサー,テレビジョン送受信機,テレビジョン受信機,テレビジョン受像モニター,カーオーディオ機器,データ処理装置,遠隔制御装置,電気的遠隔制御装置,セットトップボックス,口述録音機,電気通信機械器具,電気通信機械器具の部品及び附属品,電気通信機械器具用のカバー・バッグ及びケース,教育用視聴覚機械器具,ダウンロード可能な雑誌・書籍・新聞・地図・写真及び図面の画像・文字情報,カメラ,蛍光スクリーン,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,データ処理装置用カプラー,磁気ワイヤー,ノートブック型パーソナルコンピュータの機能拡張用接続器,携帯型音楽プレーヤーの機能拡張用接続器,コンピュータ用インターフェース,電力線通信用インターフェース,コネクタ,電気通信機械器具用コネクタ,コンピュータ用コネクタ,カプラ,音響用カプラー,コンピュータネットワークアダプター,電気通信機械器具用アダプタ,電子応用機械器具用アダプタ,電池,充電池,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,録音済みのコンパクトディスク,ダウンロード可能な音声又は音楽,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,録画済みのコンパクトディスク,ダウンロード可能な画像・映像又は映画,アニメーションを内容とする記録済み媒体及び動画ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,クロノグラフ,ヘムマーカー,計量器,測定装置,計量用機器,測定機械器具,腕時計型携帯情報端末」及び第14類「測時器及び計時用具,腕時計,置き時計及び掛け時計,時計,時計の部品及び附属品,ストップウォッチ,クロノメーター,時計用ストラップ,時計用バンド,腕時計・時計・測時器及び計時用具用のケース,腕時計・時計・測時器及び計時用具用の部品,デジタル時計,電子時計,宝飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,身飾品,キーホルダー,宝石箱,記念カップ,記念たて,貴金属製靴飾り」を指定商品として,同30年7月12日に登録査定,同年8月24日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標の登録無効の理由において,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は,以下の5件であり,いずれも登録商標として現に有効に存続しているものである(以下,これらをまとめていうときは,「引用商標」という。)。 1 国際登録第962366号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲1に示すとおりの構成よりなり,2007年(平成19年)11月28日,Switzerlandにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して,2008年(平成20年)4月7日に国際商標登録出願,第14類「Jewellery, precious stones; horological and chronometric instruments.」,第35類「Retail services for clocks and watches of all kinds and jewellery; retail services via global networks of computers (Internet) of clocks and watches of all kinds and jewellery.」,及び第37類「Repair and maintenance of horological products and jewellery.」を指定商品及び指定役務として,平成21年10月2日に設定登録されたものである。 2 国際登録第1134259号商標(以下「引用商標2」という。)は,「SWATCH」の文字を横書きしてなり,2015年(平成27年)6月11日に国際商標登録出願(事後指定),第6類「Common metals and their alloys; building materials of metal; transportable buildings of metal; metal materials for railway tracks; non-electric cables and wires of common metal; bolts of metal; buckles of common metal [hardware]; chests of metal; pipes of metal; safes; ores.」,第9類「Nautical, surveying and weighing apparatus and instruments; measuring apparatus; electric monitoring apparatus; teaching apparatus; apparatus and instruments for conducting, switching, transforming, accumulating, regulating or controlling electricity; apparatus for recording, transmission or reproduction of sound or images; magnetic recording media, sound recording disks; compact disks, DVDs and other digital recording media; mechanisms for coin-operated apparatus; cash registers, calculating machines, data processing equipment, computers; computer software, fire - extinguishing apparatus.」,第16類「Paper; boxes of paper; cardboard and cardboard articles; printed matter; bookbinding material; photographs; stationery; adhesives (glues)for stationery or household purposes; artists' materials; paintbrushes; typewriters and office requisites (except furniture); instructional or teaching material (except apparatus); plastic materials for packaging (included in this class).」,第21類「Household or kitchen utensils and containers; combs and sponges; brushes (except paintbrushes); brush-making materials; articles for cleaning purposes; steel wool; unworked or semi-worked glass (except building glass); glassware, porcelain and earthenware, not included in other classes.」,第25類「Clothing, footwear, headgear.」及び第35類「Retail and wholesale sale services in stores and via computer networks, by catalog, by mail, by telephone, by radio and television and by other electronic means for horological instruments and jewelry; presentation of horological and jewelry goods on communication media for retail sale; advertising services, marketing and public relations; advertising services for the purchase and sale of horological and jewelry goods; business management; business administration; office functions; business organizational and management consulting in the field of horological and jewelry goods.」を含む,第3類,第12類,第18類,第28類及び第37類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成28年7月15日に設定登録されたものである。 3 登録第2184860号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲2に示すとおりの構成よりなり,昭和60年8月30日に登録出願,第23類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成元年10月31日に設定登録されたものであり,その後,同21年7月29日に指定商品を第14類「時計,時計の部品及び附属品」とする指定商品の書換登録がされたものである。 4 登録第4730932号商標(以下「引用商標4」という。)は,別掲2に示すとおりの構成よりなり,平成15年3月4日に登録出願,第14類「時計,時計の部品及び附属品,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,キーホルダー,貴金属製宝石箱,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト」を指定商品として,同年12月5日に設定登録されたものである。 5 登録第4400665号商標(以下「引用商標5」という。)は,別掲3に示すとおりの構成よりなり,平成11年9月6日に登録出願,第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振り出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口,靴飾り,コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ,記念たて」を指定商品として,同12年7月14日に設定登録されたものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第76号証を提出した。 1 本件商標について 本件商標は,欧文字「iWatch」を横一列に配してなるものである。 2 商標法第4条第1項第11号の該当性について (1)本件商標と引用商標1について 本件商標と引用商標1とは,本件商標の構成文字6文字は全て,引用商標1の構成文字中に同じ文字順で含まれており,中間の「s」の文字1文字の有無においてのみ相違する。また,本件商標より生じる称呼「アイウォッチ」と,引用商標1より生じる称呼「アイスウォッチ」とは,中間音の弱音である「ス」の音の有無においてのみ相違する。 よって,本件商標と引用商標1は,外観及び称呼において類似し,全体として相紛れるおそれのある商標である。 また,本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品は,同一又は類似する。 (2)本件商標と引用商標2について 本件商標と引用商標2とは,語頭に位置する1文字「i」と「S」で相違するものの,6文字構成中,5文字で共通する。本件商標より生じる称呼「アイウォッチ」と,引用商標2より生じる称呼「スウォッチ」とは,アクセントを伴って明瞭に発音される「ウォッチ」部分を共通にし,比較的弱く発音され明瞭に聴別し難い「アイ」と「ス」に相違音がある。 よって,本件商標と引用商標2は,外観及び称呼において類似し,全体として相紛れるおそれのある商標である。 また,本件商標の指定商品と引用商標2の指定商品は,同一又は類似する。 (3)本件商標と引用商標3について 本件商標と引用商標3とは,語頭に位置する1文字「i」と「s」で相違するものの,6文字構成中,5文字で共通する。本件商標より生じる称呼「アイウォッチ」と,引用商標3より生じる称呼「スウォッチ」とは,アクセントを伴って明瞭に発音される「ウォッチ」部分を共通にし,比較的弱く発音され明瞭に聴別し難い「アイ」と「ス」に相違音がある。 よって,本件商標と引用商標3は,外観及び称呼において類似し,全体として相紛れるおそれのある商標である。 また,本件商標の指定商品と引用商標3の指定商品は,同一又は類似する。 (4)本件商標と引用商標4について 本件商標と引用商標4とは,語頭に位置する1文字「i」と「s」で相違するものの,6文字構成中,5文字で共通する。本件商標より生じる称呼「アイウォッチ」と,引用商標4より生じる称呼「スウォッチ」とは,アクセントを伴って明瞭に発音される「ウォッチ」部分を共通にし,比較的弱く発音され明瞭に聴別し難い「アイ」と「ス」に相違音がある。 よって,本件商標と引用商標4は,外観及び称呼において類似し,全体として相紛れるおそれのある商標である。 また,本件商標の指定商品と引用商標4の指定商品は,同一又は類似する。 (5)本件商標と引用商標5について 本件商標と引用商標5とは,少なくとも,構成文字「i」,「w」,「a」,「c」,「h」を共通にすると考えられる。本件商標と引用商標5とは,「アイウォッチ」との称呼を共通にする。 よって,本件商標と引用商標5は,外観において類似し,称呼を同一にしており,全体として相紛れるおそれのある商標である。 また,本件商標の指定商品と引用商標5の指定商品は,同一又は類似する。 3 商標法第4条第1項第15号の該当性について 本件商標「iWatch」は,その指定商品に使用された場合,これに接する需要者・取引者に,申立人又はこれと緊密な関係にある主体の業務に係る商品であることを連想・想起させ,その商品の出所について誤認混同を生じさせるものであり(広義の混同のおそれ),ひいては,本件商標の登録が申立人の著名商標「swatch」の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招来するおそれがある。したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 第4 当審の判断 1 「swatch」の周知性について (1)証拠及び申立人の主張によれば,次の事実が認められる。 ア 申立人は,1983年(昭和58年)に創業されたスイスの時計メーカーであり,「swatch」は申立人を含む「ザ・スウォッチ・グループ」が持つ腕時計のブランドである(甲8,甲9,甲11,甲12,甲55)。 イ 申立人の属する「ザ・スウォッチ・グループ」は,スイス国に本拠地を置く世界最大の時計グループであり,日本を含む世界30カ国以上に100%出資の現地法人を統括している(甲9,甲11,甲12)。 ウ 申立人の業務に係る時計は,1996年(平成8年)(第26回),2000年(平成12年)(第27回)及び2004年(平成16年)(第28回)の夏季オリンピック三大会に公式計時として採用された(甲13)。 申立人は,1987年(昭和62年)から2013年(平成25年)にかけて,雑誌「流行通信」,「BRUTUS」,「INTERNATIONAL WRIST WATCH 日本版(部刷CG)」,「世界の腕時計」,「ELLE」及び「NYLON JAPAN」にややデザイン化した「Swatch」の文字(別掲2,以下「申立人使用商標」という。)とともに申立人の商品「腕時計」の画像を掲載(商品「腕時計」に申立人使用商標を付したものを含む。)した全面広告を掲載した(甲18?甲20,甲22,甲27?甲36)。 エ 「時計ブランド年鑑(2008年(平成20年)?2010年(平成22年))」によれば,「swatch」の文字の見出しの下,商品「腕時計」の画像とともに,「時代のメッセージを発信する,スウォッチという名のメディア」と題して,「スイス時計伝統のクオリティを損なうことなく,革新的な時計を創造すること・・・この命題に応えたスウォッチは瞬く間に世界を席巻し,スイス時計産業の復興に計り知れない貢献を果たしました。」と記載されている(甲37?甲39)。 オ 「時計ブランド年鑑(2017年)」によれば,「swatch」の文字の見出しの下,商品「腕時計」の画像とともに,「時計界の革命児は世界の常識を覆し続ける。革命を起こし続ける個性豊かなファッション・ウォッチ・ブランド」と題して,「スウォッチの創業者である,ニコラス・G・ハイエックは,斬新な発想力と革命的なアイデアを駆使し,スイスメイドの伝統とクオリティを維持しながらも,『プラスティック』という素材を用いて,51パーツで構成された腕時計,『スウォッチ』を開発。手頃な価格で,『ファッション・ウォッチ』という新しい概念で,1983年3月1日衝撃のデビューと同時に瞬く間に世界を席巻し,スイスの時計産業界の窮状を打開し,スイス時計界の復興に貢献しました。」と記載されている(甲40)。 (2)以上よりすれば,申立人は,1983年(昭和58年)に創業されたスイスの時計メーカーであり,日本を含む世界30カ国以上に現地法人を有し,そのブランドの一つとして,「swatch」の文字に係る商標を商品「腕時計」(以下「申立人使用商品」という。)に使用していること,申立人使用商品は,我が国においては,1987年(昭和62年)に雑誌「流行通信」に,申立人使用商品の広告が掲載されていることから,遅くとも同年には,我が国に輸入されていたものと推認できること,そして,申立人は,1987年(昭和62年)から2013年(平成25年)まで,長年において継続して,申立人使用商標とともに申立人使用商品を雑誌に全面広告又は記事として掲載していたこと,「時計ブランド年鑑」において,スイスを代表する腕時計として紹介されていること,我が国においても多くの者が視聴したといえる夏季オリンピック三大会に公式計時として採用されたことを踏まえると,本件商標の登録出願時(平成25年(2013年)6月3日)及び登録査定時において,申立人使用商標は,申立人使用商品「腕時計」を表示するものとして,我が国の需要者及び取引者の間に広く認識されていたものと認めることができる。 4 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は,上記第1のとおり,「iWatch」の文字からなるところ,これよりは欧文字の「i」と「Watch」の文字からなるものと看取され得るとしても,当該文字は,同じ書体,等間隔で外観上まとまりよく一体のものとして把握されるものであり,その構成文字全体に相応して生じる「アイウォッチ」の称呼も,格別冗長とはいえないものであって,よどみなく一気に称呼し得るものである。 そうすると,本件商標は,構成文字全体に相応して,「アイウォッチ」の称呼を生じ,一体不可分の一種の造語を表したものとみるのが自然であるから,特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 ア 引用商標1は,上記第2の1のとおり,ややデザイン化された「iswatch」の欧文字を横書きした構成からなるところ,その構成中,後半部は「swatch」の文字を表したものと容易に把握されるから,語頭の文字は,アルファベットの「i」の文字をモチーフにしたものと理解され,それに続く「swatch」の文字とは,書体,文字の太さが異なるところから,外観上は,「i」と「swatch」とに分離して看取,把握され得る場合もあるといえる。 してみると,引用商標1は,その構成中「swatch」の文字部分に相応して「スウォッチ」の称呼を生じるものである。そして,「swatch」の文字は,上記3のとおり,ややデザイン化した申立人使用商標が我が国の需要者及び取引者の間に広く認識されていたものと認めることができ,引用商標1は,申立人使用商標と同一のつづりからなるものであるから,「申立人の業務に係る商品(腕時計)」の観念を生じるものと認められる。 また,引用商標1は,その構成全体を一体のものとしてみた場合には,特定の語義を有する成語とは認められないから,一種の造語として認識されるとみるのが相当であって,当該構成文字に相応して,「アイスウォッチ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。 イ 引用商標2は,「SWATCH」の文字を横書きしてなり,上記アと同様に,その構成文字に相応して「スウォッチ」の称呼を生じ,「申立人の業務に係る商品(腕時計)」の観念を生じるものと認められる。 ウ 引用商標3及び4は,別掲2に示すとおり,申立人使用商標と同一の書体よりなるものであって,「swatch」の文字をややデザイン化したしたものと認められるから,上記アと同様に,その構成文字に相応して「スウォッチ」の称呼を生じ,「申立人の業務に係る商品(腕時計)」の観念を生じるものと認められる。 エ 引用商標5は,別掲3のとおり,ややデザイン化された「iw」と「ch」の欧文字の間に「@」の記号を一連に「iw@ch」と横書きした構成からなるところ,その構成中,中間の記号は,商品の単価を表し,また,電子メールのアドレスに使用され(株式会社岩波書店 広辞苑第六版),一般に「アットマーク」と指称される英字記号「@」の記号をモチーフにしたものと理解され,外観上は,「iw」と「ch」とに分離して看取,把握され得る場合もあるといえるが,構成各文字は,同じ書体,同じ大きさ,等間隔で外観上まとまりよく一体のものとして把握し得るものであり,かかる構成態様からすれば,「iw」の文字と「@」及び「ch」の文字に分離して認識される構成上の必然性があるとは認めることができず,引用商標5に接する取引者,需要者は,構成文字全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識し把握するものとみるのが自然である。 そうとすると,引用商標5は,その構成文字に相応して「アイダブリュアットマークシーエイチ」の称呼を生ずるものであり,かつ,特定の観念を生じないものとみるのが相当である。 また,引用商標5は,「@」を欧文字の「a」としてみた場合には,特定の語義を有する成語とは認められないから,一種の造語として認識されるとみるのが相当であって,我が国で親しまれた外国語である英語読み又はローマ字読みにならって,当該構成文字に相応して,「アイワッチ」「イワッチ」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 ア 本件商標と引用商標1との類否 (ア)外観 本件商標と引用商標1の外観について比較すると,本件商標と引用商標1とは,6文字及び7文字という少ない文字構成にあって,語頭の「i」(引用商標1語頭の文字は「i」の文字をモチーフにしたもの)及び「Watch(watch)」の文字を共通にするものの,「s」の文字の有無において相違するものであるから,我が国における英語教育及び英語の普及度を考慮すれば,通常の知識を有する者は,欧文字における各文字の字形・形象の相違並びに各文字から生ずる相違を充分かつ明確に知覚しているといえるところであって,通常の注意力をもってすれば,かかる両文字間の相違点について,それを看過し,両者を混同するものとはいい難く,その差異は明らかに認識でき互いに見誤るおそれはないものである。 したがって,本件商標と引用商標1とは,時と所を異にした離隔観察はもとより,対比観察においても,両商標の差異が明瞭に看て取れるものであるから,両商標は,外観において,相紛れるおそれはない。 (イ)称呼 まず,本件商標から生じる「アイウォッチ」の称呼と引用商標1から生じる「スウォッチ」の称呼とを比較すると,両称呼は,称呼の識別上,重要な要素をしめる語頭において,「アイ」と「ス」という明確な差異を有するものであり,構成音数の相違及び相違する構成音の差によって,明瞭に聴別できるものである。 次に,本件商標から生じる「アイウォッチ」の称呼と引用商標1から生じる「アイスウォッチ」の称呼を比較すると,両称呼は,第3音目における「ス」の音の有無という差異があり,この差異音である「ス」の音は,弱く発音される音である「イ」の音に続く音であることから,比較的明瞭に発音,聴取されるものとなり,引用商標は,「アイ・スウォッチ」と二音節風に称呼され,「アイ」と「スウォッチ」との間に称呼上の段落が生ずるのに対し,本件商標は「アイウォッチ」と一音節風によどみなくなめらかに発音され,特に切れ目なく一気に称呼されるものであるから,この差異が称呼全体に与える影響は決して小さいものとはいえないものであって,それぞれを一連に称呼するときは,語感,語調が相違し,互いに聴き誤るおそれはなく十分に聴別し得るものとみるのが相当である。 (ウ)観念 本件商標からは特定の観念が生じないものであるのに対し,引用商標1の「swatch」から「申立人の業務に係る商品(腕時計)」の観念が生じるとしても,両商標は,観念上の共通性はなく,また,相紛れるおそれのある特段の事情は見いだせない。 エ 上記アないしウによれば,本件商標と引用商標1とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 イ 本件商標と引用商標2ないし4との類否 (ア)外観 引用商標2は,「SWATCH」の文字を横書きしてなり,引用商標3及び4は,「swatch」の文字をややデザイン化したしたものと認められる。 そして,本件商標と引用商標2ないし4の外観について比較すると,本件商標と引用商標2ないし4とは,引用商標3及び4がややデザイン化してなるとしても,5文字という少ない文字構成にあって,「Watch(watch)」の文字を共通にするものの,語頭の「i」及び「S(s)」の文字の有無において相違するものであるから,我が国における英語教育及び英語の普及度を考慮すれば,通常の知識を有する者は,欧文字における各文字の字形・形象の相違並びに各文字から生ずる相違を充分かつ明確に知覚しているといえるところであって,通常の注意力をもってすれば,かかる両文字間の相違点について,それを看過し,両者を混同するものとはいい難く,その差異は明らかに認識でき互いに見誤るおそれはないものである。 したがって,本件商標と引用商標2ないし4とは,時と所を異にした離隔観察はもとより,対比観察においても,両商標の差異が明瞭に看て取れるものであるから,両商標は,外観において,相紛れるおそれはない。 (イ)称呼 本件商標から生じる「アイウォッチ」の称呼と引用商標2ないし4から生じる「スウォッチ」の称呼とを比較すると,両称呼は,称呼の識別上,重要な要素をしめる語頭において,「アイ」と「ス」という明確な差異を有するものであり,構成音数の相違及び相違する構成音の差によって,明瞭に聴別できるものである。 (ウ)観念 本件商標からは特定の観念が生じないものであるのに対し,引用商標2ないし4の「swatch」から「申立人の業務に係る商品(腕時計)」の観念が生じるとしても,両商標は,観念上の共通性はなく,また,相紛れるおそれのある特段の事情は見いだせない。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば,本件商標と引用商標2ないし4とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 ウ 本件商標と引用商標5との類否 本件商標と引用商標5とは,構成文字及び態様の相違により,外観上,相紛れるおそれのないことは明らかである。 また,本件商標から生じる「アイウォッチ」の称呼と引用商標5から生ずる,「アイダブリュアットマークシーエイチ」,「アイワッチ」及び「イワッチ」の称呼とは,構成音数に顕著な差異を有するものであるから,全体の語感,語調が相違し,相紛れるおそれはなく,称呼上,容易に区別することができるものである。 そして,本件商標と引用商標5とは,共に特定の観念を生じるものではないから,両商標は,観念上,相紛れるおそれはない。 したがって,本件商標と引用商標5,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 (4)以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから,請求に係る本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)申立人使用商標の周知性 申立人使用商標である「swatch」は,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,我が国の取引者,需要者において,申立人使用商品「腕時計」を表示する商標として広く認識されていた。 (2)申立人使用商標の独創性 申立人使用商標である「swatch」は,「布切れ,見本(飾り)の小切れ」を意味する既成の語(現代英和辞典 第1版 株式会社研究社)であり,しかも,申立人使用商品「腕時計」の関係からしても,「s」の1文字と「腕時計」を意味する英語として親しまれている「watch」の語を組み合わせたものと容易に看取されるというのが相当であるから,独創性が高いものとはいえない。 (3)本件商標と申立人商標との類似性 ア 本件商標は,上記4(1)のとおり,一体不可分の一種の造語を表したものとみるのが自然であるから,構成文字全体に相応して,「アイウォッチ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 他方,申立人使用商標は,ややデザイン化してなるものの「swatch」の文字を書したものと容易に看取されるものであるから,その文字構成全体に相応して,「スウォッチ」の称呼を生じ,その周知性を踏まえれば「申立人の業務に係る商品(腕時計)」の観念を生じるものと認められる。 イ 本件商標と申立人使用商標は,いずれも「時計」を意味する親しまれた英語「Watch(watch)」の語頭に欧文字1文字「i」又は「s」を付加したものと看取されるものである。 そして,申立人使用商標が申立人使用商品「腕時計」を表示する商標として,広く認識されることからすると,これに接する取引者,需要者は,申立人使用商標を特に語頭「s」の文字に注意を払って,申立人の業務に係る商品を識別するというのが相当である。 そうすると,両商標は,当該語頭の欧文字1文字部分において,「i」と「s」が異なるものであるから,外観上,相紛れるおそれはない。 しかも,本件商標から生じる「アイウォッチ」の称呼と,申立人使用商標から生じる「スウォッチ」は,語頭音において「アイ」と「ス」の差異を有するものであるから,5音という短い音構成において,これらの差異が称呼全体に与える影響は決して小さいものとはいえない。 また,本件商標は上記4(1)のとおり,特定の観念を生じないものであるから,観念において比較できないものである。 ウ 以上よりすると,本件商標と申立人使用商標とは,観念において比較できないものとしても,外観,称呼及び観念のいずれにおいても類似するものではなく,その類似性の程度は極めて低いというべきである。 (4)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性 本件商標の指定商品は,申立人の業務に係る商品「腕時計」を含むものであるから,商品の品質,用途及び需要者の範囲も共通する。 また,上記以外の本件商標の指定商品は,「腕時計」以外の時計,宝飾品及び宝玉時計等であって,申立人の業務に係る商品「腕時計」とは,貴金属店及び宝石等を取り扱う店等において共に取り扱われている場合があることから,販売部門や流通経路に関連性があるもので,需要者層も一部重複するものといえる。 (5)出所の混同のおそれについて 申立人使用商標は,上記(1)ないし(4)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者において,申立人の業務に係る商品「腕時計」を表示する商標として広く認識され,本件商標の指定商品が,申立人の業務に係る商品「腕時計」申立人商品と販売部門や流通経路,また需要者層において一定程度関連があるとしても,独創性が高いものとはいえず,本件商標とは,類似性の程度は極めて低いもので,本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が,申立人使用商標を連想又は想起することは考え難い。 そうすると,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,その取引者及び需要者をして,当該商品が申立人の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ではなく,また,当該商品が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ともいえないから,申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じるおそれがある商標ではない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 6 結論 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録は維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1 引用商標1 別掲2 引用商標3及び4並びに申立人使用商標 別掲3 引用商標5 |
異議決定日 | 2019-07-17 |
出願番号 | 商願2017-131485(T2017-131485) |
審決分類 |
T
1
651・
263-
Y
(W0914)
T 1 651・ 262- Y (W0914) T 1 651・ 261- Y (W0914) T 1 651・ 271- Y (W0914) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 箕輪 秀人 |
特許庁審判長 |
薩摩 純一 |
特許庁審判官 |
早川 文宏 大森 友子 |
登録日 | 2018-08-24 |
登録番号 | 商標登録第6074158号(T6074158) |
権利者 | アップル インコーポレイテッド |
商標の称呼 | アイウオッチ、イウオッチ、ウオッチ |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 |
代理人 | 門田 尚也 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 西尾 隆弘 |