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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201815451 審決 商標
不服201318044 審決 商標
不服201811130 審決 商標
不服201414528 審決 商標
不服20185959 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない W09
管理番号 1354316 
審判番号 不服2018-12296 
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-12 
確定日 2019-08-05 
事件の表示 商願2017-68516拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は,「ガンジス」の文字を標準文字で表してなり,第9類「電子応用機械器具(「ガイガー計数器・高周波ミシン・サイクロトロン・産業用X線機械器具・産業用ベータートロン・磁気探鉱機・磁気探知機・地震探鉱機械器具・水中聴音機械器具・超音波応用測深器・超音波応用探傷器・超音波応用探知機・電子応用扉自動開閉装置・電子顕微鏡」を除く。),電子管,半導体素子,電子回路(「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路」を除く。),電子計算機用プログラム,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」を指定商品として,平成29年5月19日に商標登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『ガンジス』の文字を標準文字で表してなるところ,『ガンジス』は,インドの大河であって,ヒンドゥー教徒の崇拝の対象であることが認められる。そうすると,本願商標を,一私人である出願人に対して登録を認め,その指定商品について使用をする権利を専有させることは穏当ではないばかりか,『ガンジス』を崇拝するヒンドゥー教徒に不快な印象を与えるものである。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第3 当審においてした証拠調べ通知
当審において,本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べを実施し,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対し,平成30年12月17日付けの証拠調べ通知書(別掲参照)によってこれを開示し,期間を指定して,意見を述べる機会を与えた。

第4 証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)
1 本願商標は,その構成中に「ガンジス」の文字を標準文字で表してなるところ,「ガンジス」の文字が「ガンジス川」を意味するとしても,世界遺産に登録されておらず,現実は,ヒンズー教徒が「聖なる川」とあがめていることに反して,ガンジス川は汚染が深刻化していることに照らせば,「ガンジス川」が聖なる川であることには疑問の余地があり,加えて,他の登録事例(「ガンジス」の文字を含む商標の登録事例,「富士」の文字を含む商標の登録事例,「ウルル(Uluru)」の文字を含む商標の登録事例等)に鑑みて,「ガンジス川」は,世界遺産に登録されていない現時点では,我が国で商標登録を認めて,本願商標を使用することが,「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」の権威を損ない,国際信義に反するということにはならない。
2 請求人は,浄土三部経である「仏説無量寿経」,「仏説観無量寿経」,「仏説阿弥陀経」に,「ガンジス河の砂の数ほど(の仏がた)」とあるところから,砂の数ほどのご縁を紡ぐことを願って,本願商標「ガンジス」を第9類の指定商品に使用するものであり,本願商標は,単に「インドの河川名」を表したものにすぎず,直ちに「ヒンドゥー教徒の崇拝の対象を表した」と認識されるとはいえず,これをその指定商品に使用しても,片仮名からなる本願商標が,直ちに,「ガンジス」を崇拝する者に不快な印象を与えるものとはいい難いものであって,これが,ヒンズー教の権威と尊厳とを損ね,インド国民の感情を害するとまでは認められない。
3 ガンジス川が,インド政府による公共的な施策の対象としても利用されているものと認められるとしても,当該施策に関係する商品及び役務である「飲料水,水処理及び浄化等」は,第9類の本願の指定商品には含まれておらず,本願商標は,インド政府による公共的な施策を何ら阻害するものでもない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号の意義
商標法4条1項7号は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は,商標登録を受けることができないと規定する。ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,(1)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(3)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである。
また,商標登録が特定の国との国際信義に反するかどうかは,当該商標の文字・図形等の構成,指定商品又は役務の内容,当該商標の対象とされたものがその国において有する意義や重要性,我が国とその国の関係,当該商標の登録を認めた場合にその国に及ぶ影響,当該商標登録を認めることについての我が国の公益,国際的に認められた一般原則や商慣習等を考慮して判断すべきである。
その上で,当該商標が商標法第4条第1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に当たるかどうかは,当該事案に現れた上記(1)?(5)の具体的な事情を総合的に考慮して決することになる(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号,平成18年9月20日判決参照)。
2 上記第3の証拠調べによれば,以下の事実が認められる。
(1)「ガンジス」の語義及び「ガンジス(川)」に対するヒンドゥー教徒の認識について
ア 本願商標は,上記第1のとおり,「ガンジス」の文字を標準文字で表してなるところ,「ガンジス」の語は,我が国の多数の辞書類において,「インドの大河。・・・ヒンドゥー教徒の崇拝の対象で,流域に聖地が多い。」,「インド北東部,ヒマラヤに発しベンガル湾に注ぐ大河。・・・ヒンドゥー教徒の信仰の源泉・・・」,「インド北部の大河。・・・ヒンズー教徒では聖なる川とし,巡礼者の訪れる聖地が各所にある。」,「インド北部の大河。・・・ヒンズー教徒では聖なる川とし,巡礼者の訪れる聖地が各所にある。」,「インド北東部を東流する大河。・・・ヒンズー教徒により『聖なる川』とされている。」,「ガンジス川:ヒンドゥー教徒にとっては聖なる川」と記載されている(別掲1)。
イ 「ガンジス(川)」に対するヒンドゥー教徒の認識については,2009年(平成21年)から2018年(平成30年)の間に発行された我が国の多数の新聞において,「ヒンズー教徒にとって神聖なガンジス川の水」,「ヒンズー教では古くから天国に通じる川として神聖視され,名前は女神ガンガーに由来。川沿いにはバラナシなど数多くの聖地がある。その水は罪やけがれを浄化するとされ,多くの人が川岸で身を清める。」,「ガンジス川では今年,12年に1度のヒンズー教の祭典『クンブ・メラ』が開かれた。3月10日までの約2カ月間,計1億人の信者が礼拝と沐浴を目的にインド各地から訪れ,その圧倒的な巡礼者の数から『世界最大の宗教行事』ともいわれる。」,「聖なるガンジス。人々は沐浴(もくよく)場から川へと向かう。」,「ガンジス川はヒンズー教徒の死をも包容する『魂』そのもの。・・・信者に汚染を気にする様子は全くない。来る日も来る日も全国からヒンズー教徒がこの水を求めてやってくる。」のように報道されている(別掲2)。
ウ 上記ア及びイによれば,「ガンジス」の文字は,インドの大河である「ガンジス(川)」を意味する語であること,及び当該「ガンジス(川)」がインドの宗教の約8割を占めるヒンドゥー教の信者にとって,崇拝の対象又は信仰の源泉であり,多くの巡礼者が訪れる「聖なる川」として神聖視されていることが認められる。そして,そのことは,我が国の多数の辞書類及び新聞に掲載されていることからすると,我が国においても一般に広く知られているといえる。
(2)「ガンジス川」に関するインド政府及び日本政府の施策について
ア 2016年(平成28年)に発行された我が国の新聞において,「インドのプラサド情報通信技術相はインド北部を流れる大河ガンジス川の『聖なる水』を,インドの郵便局がインターネットで販売する方針を明らかにした。PTI通信などが30日,伝えた。インド人の8割が信仰するヒンズー教では,ガンジス川の水は罪を洗い流す効果があると信じられている。流域には聖地バラナシなど多くの沐浴(もくよく)場があり,多くの信者らがインド全土から巡礼に訪れている。プラサド氏によると,北部の聖地ハリドワルとリシュケシュから手に入れた『純粋』な水を販売するサイトを設置するよう郵政当局に指示したという。」との報道がされており,これと同旨の内容が,同年に発行された我が国の他の多数の新聞においても報道されている(別掲3(1))。
イ 2014年(平成26年)に発行された我が国の新聞において,「ガンジス川」について,「日本とインドの両政府が,インドの象徴ともされる大河ガンジス川の浄化計画で協力することが30日,分かった。複数の日印政府筋が明らかにした。9月1日の安倍晋三首相とインドのモディ首相の首脳会談後に発表する共同声明に盛り込む見通し。」及び「浄化計画は,5月に首相に就任したモディ氏が属するインド人民党(BJP)が総選挙(下院選)で目玉公約として掲げていた。関係者によると,ガンジス川浄化計画は,熱心なヒンズー教徒のモディ氏にとっても思い入れが強いプロジェクトで,協力はインド側から日本に持ち掛けられたという。日本側は国際協力機構(JICA)や国際協力銀行(JBIC)などの資金支援のほか,水質浄化技術や汚染対策に広範なノウハウを持つ日系企業とも協力する。」と報道されている(別掲3(2))。
ウ 上記ア及びイによれば,インド政府は,「ガンジス川」の浄化計画をインド政府の目玉公約として掲げるとともに,インド人の8割が信仰するヒンズー教徒にとって,罪を洗い流す効果があると信じられている「ガンジス川」の水を「聖なる水」として通信販売する方針を明らかにした。そして,当該浄化計画に日本政府も協力することが認められることからすると,「ガンジス(川)」は,インド政府による公共的な施策の対象であるとともに,当該浄化計画が,インド政府と日本国政府とのパートナーシップを強化する協力事業の対象のひとつに位置づけられており,両国政府にとって重要なものということができる。
3 本願商標の商標法第4条第1項第7号該当性
本願商標は,「ガンジス」の文字を標準文字で表してなるところ,上記2の認定の事実によれば,「ガンジス」の文字がインドの大河である「ガンジス(川)」を意味する語であって,「ガンジス(川)」は,インドの宗教の約8割を占めるヒンドゥー教の信者にとって,「聖なる川」として神聖視されているものであること,そして,そのことは,我が国においても一般に広く知られているといえること,さらに,「ガンジス(川)」は,インド政府による公共的な施策の対象であるとともに,「ガンジス(川)」の浄化計画が,インド政府と日本国政府との協力関係において重要なものということからすると,「ガンジス」の文字からなる本願商標は,その登録を一個人に認めることは,少なくともインドの宗教の約8割を占めるヒンドゥー教の信者をして,ヒンドゥー教の尊厳を毀損し,信仰上の感情を害するおそれがあることはもとより,我が国とインドの国際信義に反し,両国の公益を損なうおそれが高いものというべきである。
してみれば,「ガンジス」の文字からなる本願商標は,上記1(4)の「一般に国際信義に反する場合」に該当し,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」であるといわなければならない。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 請求人の主張
(1)請求人は,「ガンジス」の文字が「ガンジス川」を意味するとしても,世界遺産に登録されておらず,現実は,ヒンズー教徒が「聖なる川」とあがめていることに反して,ガンジス川は汚染が深刻化していることに照らせば,「ガンジス川」が聖なる川であることには疑問の余地があり,加えて,他の登録事例(「ガンジス」の文字を含む商標の登録事例,「富士」の文字を含む商標の登録事例,「ウルル(Uluru)」の文字を含む商標の登録事例等)に鑑みて,「ガンジス川」は,世界遺産に登録されていない現時点では,我が国で商標登録を認めて,本願商標を使用することが,「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」の権威を損ない,国際信義に反するということにはならないというべきである旨主張する。
しかしながら,上記3のとおり,「ガンジス川」はインドの宗教の約8割を占めるヒンドゥー教の信者にとって,神聖視されているものであること,及び「ガンジス(川)」の浄化計画が,インド政府と日本国政府との協力関係において重要なものということから,「ガンジス」の文字からなる本願商標の登録は,我が国とインドの国際信義に反するというべきであって,「ガンジス川」が世界遺産登録されていないことや,水質汚染が深刻化していることは,上記判断を左右するものではない。
また,請求人が挙げる過去の商標の登録事例は,本願商標とは,商標登録の可否についての判断の時期や商標の構成が異なるものであるから,本願商標が我が国とインドの国際信義に反するかどうかについての判断を左右するものではない。
(2)請求人は,請求人が浄土三部経である「仏説無量寿経」,「仏説観無量寿経」,「仏説阿弥陀経」に,「ガンジス河の砂の数ほど(の仏がた)」とあるところから,砂の数ほどのご縁を紡ぐことを願って,本願商標「ガンジス」を第9類の指定商品に使用するものであり,本願商標は,単に「インドの河川名」を表したものにすぎず,直ちに「ヒンドゥー教徒の崇拝の対象を表した」と認識されるとはいえず,これをその指定商品に使用しても,片仮名からなる本願商標が,直ちに,「ガンジス」を崇拝する者に不快な印象を与えるものとはいい難いものであって,これが,ヒンズー教の権威と尊厳とを損ね,インド国民の感情を害するとまでは認められない旨主張する。
しかしながら,本願商標の採択理由及びその経緯が請求人主張のとおりであるとしても,本願の指定商品を取り扱う業界において,その採択理由等が広く浸透しているとはいい難く,本願商標が我が国とインドの国際信義に反するというべきことは,上記3のとおりである。
(3)請求人は,ガンジス川が,インド政府による公共的な施策の対象としても利用されているものと認められるとしても,当該施策に関係する商品及び役務である「飲料水,水処理及び浄化等」は,第9類の本願の指定商品には含まれておらず,本願商標は,インド政府による公共的な施策を何ら阻害するものでもない旨主張する。
しかしながら,たとえその指定商品が,インド政府による施策に直接的に関連するものではないとしても,上記3のとおり,「ガンジス」の文字がインドの大河である「ガンジス(川)」を意味する語であって,「ガンジス(川)」は,インドの宗教の約8割を占めるヒンドゥー教の信者にとって,「聖なる川」として神聖視されているものであること,そして,そのことは,我が国においても一般に広く知られているといえること,さらに,「ガンジス(川)」は,インド政府による公共的な施策の対象であるとともに,「ガンジス(川)」の浄化計画が,インド政府と日本国政府との協力関係において重要なものということからすると,本願商標は,国際信義に反するおそれがあるというべきである。
(4)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。
5 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 証拠調べ通知書において示した事実
1 「ガンジス」の語義について
(1)「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店)において,「ガンジス【Ganges】」の説明として,「インドの大河。西部ヒマラヤ山脈に発源,諸支流を合わせて南東に流れ,ベンガル湾に注ぐ。長さ約2500キロメートル。ヒンドスタン大平原を形成,下流はインドの主要米作地帯。三角洲はブラマプトラ川と合し,広大。ヒンドゥー教徒の崇拝の対象で,流域に聖地が多い。恒河(ごうが)。ガンガー。」の記載がある。
(2)「コンサイスカタカナ語辞典第4版」(株式会社三省堂)において,「ガンジス」の説明として,「インド北東部,ヒマラヤに発しベンガル湾に注ぐ大河。長さ2510km。その流れはヒンドゥー教徒の信仰の源泉,流域はインド文化発展の舞台。」の記載がある。
(3)「大辞泉第二版上巻」(株式会社小学館)において,「ガンジス-がわ【ガンジス川】<Ganges>」の説明として,「インド北部の大河。・・・ヒンズー教徒では聖なる川とし,巡礼者の訪れる聖地が各所にある。」の記載がある。
(4)「大辞林第三版」(株式会社三省堂)において,「ガンジス(Ganges)」の説明として,「インド北東部を東流する大河。・・・ヒンズー教徒により『聖なる川』とされている。」の記載がある。
(5)「コンサイス外国地名事典第3版」(株式会社三省堂)において,「ガンジス(川)Ganges」の説明として,「インド北・東部,同国第1の川。・・・ヒンドゥー教徒にとり“聖なる川”と考えられる。」の記載がある。
(6)「ランダムハウス英和大辞典第2版」(株式会社小学館)において,「Ganges」の説明として,「(インドの)ガンジス川:ヒンドゥー教徒にとっては聖なる川」の記載がある。
2 「ガンジス川」に対するヒンドゥー教徒の認識について
(1)「ガンジス川」に関する新聞記事について
ア 2018年7月23日付け「産経新聞」東京朝刊において,「【外信コラム】ガンジスのほとりで 聖なる水と大腸菌」の見出しの下,「かつて北インドで勢力を誇ったマハラジャ(王侯)は旅行の際,従者に巨大なおけを持たせた。中になみなみと入っているのはヒンズー教徒にとって神聖なガンジス川の水。『旅先での入浴や洗髪も聖なる水以外は使わない』というこだわりを伝える小話だ。あるマハラジャは訪英の際もガンジスの水を銀製のつぼに入れて輸送したという。・・・川沿いには水を持ち帰るための容器も売っており,喜んで買っていた。」の記載がある。
イ 2014年8月30日付け「北海道新聞」夕刊全道(総合)において,「ガンジス浄化 日本協力*印に資金,ノウハウ提供」の見出しの下,「ガンジス川はインド国民の8割が信仰するヒンズー教における“聖なる川”。」及び「◇ガンジス川◇・・・ヒンズー教では古くから天国に通じる川として神聖視され,名前は女神ガンガーに由来。川沿いにはバラナシなど数多くの聖地がある。その水は罪やけがれを浄化するとされ,多くの人が川岸で身を清める。」の記載がある。
ウ 2013年5月5日付け「熊本日日新聞」朝刊において,「世界川物語=ガンジス川(インド)母なる流れ『罪』を浄化」の見出しの下,「●1億人が巡礼・・・サンガムを望むガンジス川では今年,12年に1度のヒンズー教の祭典『クンブ・メラ』が開かれた。3月10日までの約2カ月間,計1億人の信者が礼拝と沐浴を目的にインド各地から訪れ,その圧倒的な巡礼者の数から『世界最大の宗教行事』ともいわれる。」及び「●天国に通じる・・・全長約2500キロの大河は,神話の世界ではもともと天界を流れる川とされ,古くから天国に通じる川として神聖視されてきた。」の記載がある。
エ 2010年10月16日付け「大阪読売新聞」朝刊において,「[天竺はるか](下)バラナシ 聖なる川 女神の調べ(連載)」の見出しの下,「聖なるガンジス。人々は沐浴(もくよく)場から川へと向かう。」及び「紀元前の昔から,インド北東部にあるヒンズー教の聖地バラナシでは,日の出とともに同じ光景が繰り返されてきた。沐浴はすべての罪を洗い流すと言われ,年間100万人を超える巡礼者が訪れる。300キロ離れた街から来たというサカルテップサ・パサードさん(73)は,『心が洗われて,信仰も深まる』と体をぬぐった。」の記載がある。
オ 2009年6月17日付け「熊本日日新聞」朝刊において,「聖なるガンジス川救え!! 汚濁深刻,日本が支援へ 厚い信仰,浄化の壁に」の見出しの下,「深い土色の水をたたえ,インド北部をとうとうと流れるヒンズー教徒の聖なる川,ガンジス。ここで沐浴[もくよく]すればあらゆる罪が清められると教徒は信じて疑わない。」,「・・・ヒンズー教徒にとって一生に一度は訪れたい聖地。『ガンジス川の水は決して腐らない』と信じている人は多く,『聖水』として販売もされている。」及び「▽『魂』そのもの・・・ガンジス川はヒンズー教徒の死をも包容する『魂』そのもの。・・・信者に汚染を気にする様子は全くない。来る日も来る日も全国からヒンズー教徒がこの水を求めてやってくる。」の記載がある。
(2)上記1及び2(1)によれば,「ガンジス」の文字は,インドの大河である「ガンジス(川)」を意味する語であって,我が国の辞書類及び新聞に多数掲載されていることからすれば,インド国民はもとより,我が国においても広く知られているものと認められる。
また,該「ガンジス(川)」は,インドの宗教の約8割を占めるヒンドゥー教の信者にとって,崇拝の対象又は信仰の源泉であり,多くの巡礼者が訪れる「聖なる川」として神聖視されているものと認められる。
3 「ガンジス川」に対するインド政府の施策について
(1)2016年6月1日付け「毎日新聞」朝刊において,「インド:『聖なる水』通販 ガンジス川で採取」の見出しの下,「インドのプラサド情報通信技術相はインド北部を流れる大河ガンジス川の『聖なる水』を,インドの郵便局がインターネットで販売する方針を明らかにした。PTI通信などが30日,伝えた。インド人の8割が信仰するヒンズー教では,ガンジス川の水は罪を洗い流す効果があると信じられている。流域には聖地バラナシなど多くの沐浴(もくよく)場があり,多くの信者らがインド全土から巡礼に訪れている。プラサド氏によると,北部の聖地ハリドワルとリシュケシュから手に入れた『純粋』な水を販売するサイトを設置するよう郵政当局に指示したという。」の記載があり,これと同様の内容の記事が,2016年6月3日付け「熊本日日新聞」夕刊,2016年6月2日付け「中国新聞」セレクト,2016年6月1日付け「静岡新聞」朝刊,2016年6月1日付け「愛媛新聞」,2016年5月31日付け「日本経済新聞」夕刊,2016年5月31日付け「産経新聞」大阪夕刊,2016年5月31日付け「中日新聞」夕刊,2016年5月31日付け「京都新聞」夕刊及び2016年5月31日付け「西日本新聞」夕刊においても記載されている。
(2)2014年8月30日付け「北海道新聞」夕刊全道(総合)において,「ガンジス浄化 日本協力*印に資金,ノウハウ提供」の見出しの下,「日本とインドの両政府が,インドの象徴ともされる大河ガンジス川の浄化計画で協力することが30日,分かった。複数の日印政府筋が明らかにした。9月1日の安倍晋三首相とインドのモディ首相の首脳会談後に発表する共同声明に盛り込む見通し。」及び「浄化計画は,5月に首相に就任したモディ氏が属するインド人民党(BJP)が総選挙(下院選)で目玉公約として掲げていた。関係者によると,ガンジス川浄化計画は,熱心なヒンズー教徒のモディ氏にとっても思い入れが強いプロジェクトで,協力はインド側から日本に持ち掛けられたという。日本側は国際協力機構(JICA)や国際協力銀行(JBIC)などの資金支援のほか,水質浄化技術や汚染対策に広範なノウハウを持つ日系企業とも協力する。」の記載がある。
(3)上記(1)及び(2)の記事によれば,「ガンジス」の文字が意味する「ガンジス川」については,その浄化計画がインド政府の目玉公約として掲げられ,該浄化計画に日本政府も協力することが,2014年9月1日に開催された安倍晋三首相とインドのモディ首相との首脳会談における共同声明に盛り込まれ,インド政府が,「ガンジス川」の水を「聖なる水」として通信販売する方針を明らかにしたことなどが,新聞記事として掲載されている。
そうすると,「ガンジス川」は,ヒンドゥー教徒にとっての崇拝の対象であると同時に,インドを象徴するもののひとつとして,インド国民に親しまれていることが理解できるものであって,かつ,インド政府による公共的な施策の対象としても利用されているものと認められる。

審理終結日 2019-06-07 
結審通知日 2019-06-10 
審決日 2019-06-25 
出願番号 商願2017-68516(T2017-68516) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (W09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷村 浩幸齋藤 健太浦崎 直之 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 榎本 政実
渡邉 あおい
商標の称呼 ガンジス 
代理人 佐藤 富徳 

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