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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) W25 |
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管理番号 | 1353399 |
異議申立番号 | 異議2018-900048 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-02-23 |
確定日 | 2019-07-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6000424号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6000424号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6000424号商標(以下「本件商標」という。)は,「CHLOEFRANCIS」の文字を標準文字により表してなり,平成29年5月25日に登録出願,同年11月2日に登録査定,第25類「靴類」を指定商品として,同年12月1日に設定登録されたものである。 第2 引用商標及び申立人商標 1 登録第1360443号商標(以下「引用商標1」という。)は,「CHLOE」の欧文字を横書きしてなり,昭和50年2月18日に登録出願,第22類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同53年11月30日に設定登録,その後,平成21年1月21日に指定商品を第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」及び第25類「履物」とする指定商品の書換登録がされたものである。 2 登録第1895841号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,昭和59年3月2日に登録出願,第22類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として,同61年9月29日に設定登録,その後,平成18年8月2日に指定商品を第14類「貴金属製靴飾り」,第18類「ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,傘」,第25類「履物」及び第26類「靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具」とする指定商品の書換登録がされ,さらに,同28年8月16日には,第14類,第18類及び第25類について商標権の存続期間の更新登録がされたものである。 3 登録第5214700号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成19年5月11日に登録出願,第35類「被服(帽子を含む。)及び履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,財布・キーケース・その他のかばん類・袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝飾品・身飾品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,香料類・香水類・化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として,同21年3月19日に設定登録されたものである。 4 申立人が,本件登録異議の申立ての理由において,本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する標章は,「Chloe」(「e」の上には,アクサンテギュ記号が付されている。特に断りのない限り,以下同じ。)の欧文字を横書きした構成からなるものである。 以下,上記標章「Chloe」のほか,「CHLOE」(「E」の上には,アクサンテギュ記号が付されている。特に断りのない限り,以下同じ。ただし,本件商標の構成中の文字を示すときは,この限りでない。)を含めて「申立人商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号,同項第15号及び同項第8号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきである旨申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第2号証ないし甲第486号証(枝番号を含む。)を提出した(なお,枝番号の全てを示すときは,枝番号を省略する。ただし,甲9の中において,甲1?403と付されているものを,それぞれ,甲9の1?403と読み替える。)。 1 本件商標は,「クロエフランシス」の称呼を生じ,かつ,申立人のファッションブランド「クロエ」の著名性より「クロエ」の称呼をも生ずるものである。これに対して,引用商標1ないし3は「クロエ」の称呼が生ずる。 したがって,本件商標と引用商標1ないし3とは,共に「クロエ」の称呼を共通にする類似の商標である。また,本件商標の指定商品「靴類」と,引用商標1及び2の指定商品「履物」並びに引用商標3の指定役務「履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは互いに類似する。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 「Chloe」は防護標章登録(商標登録第1895840号防護第1号)を受けている標章であり(甲5),申立人のファッションブランド「クロエ」を表示するものとして広く一般に知られた著名商標である(甲6?甲484)。 したがって,本件商標は,他人の著名な商標を一部に有する商標であり,その指定商品に使用された場合,申立人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 「CHLOE FRANCIS」の氏名を有する人が現存している(甲485,甲486)。よって,本件商標は他人の氏名を含む商標である。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。 第4 取消理由の通知 当審において,本件商標権者に対し,「本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を平成31年2月13日付けで通知した。 第5 取消理由に対する商標権者の意見 本件商標は,「CHLOEFRANCIS」の文字が同書・同大で隙間なく表示されているものであるから,取引者・需要者は殊更「CHLOE」と「FRANCIS」に分離することなく,「CHLOEFRANCIS」を1つの造語として認識することは明らかである。申立人は,本件商標のようにアクサンテギュのない「e」「E」を使用することもなければ,大文字を隙間なく並べ立てて使用することもない。本件商標と申立人商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体を対比するのが相当であり,本件商標の構成中の「CHLOE」の文字部分だけを申立人商標と比較して類否を判断することは許されない。申立人のブランド「Chloe」のようなハイブランドは,比較的ファッション感度の高い人に知られているのみで,老若男女の取引者・需要者にまで広く認識されているとはいえないし,ファッション感度の高い人であればアクサンテギュのない「e」「E」を使用し,かつ,大文字が隙間なく並べられた商標を見て,申立人の「Chloe」ブランドと混同するなどありえない。 第6 当審の判断 1 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)申立人商標の周知著名性及び独創性の程度について ア 証拠及び申立人の主張並びに職権調査によれば,以下の事実が認められる。 (ア)申立人商標は,1952年にギャビー・アギョンによって創設されたフランスのファッションブランドであり,1970年代には,既製服を高級生地を使って作るプレタポルテ市場の草分け的存在として,時代を象徴するファッションブランドの一つとなった。そして,申立人は,「婦人服,靴,バッグ,財布,香水」等の商品(以下「申立人商品」という。)について申立人商標を使用している(甲6?甲9)。 (イ)我が国においては,遅くとも1976年(昭和51年)には申立人の婦人服が紹介されており(甲9の379),申立人は,全国の有名百貨店及びアウトレットモールや,申立人が申立人のブランド「Chloe」(クロエ)の普及版と主張する「シーバイクロエ(SEE BY CHLOE)」の店舗を合わせ,50を超える店舗を展開している(甲10,11,職権調査:http://chloeharbor.seesaa.net/category/10964329-1.html)。 (ウ)申立人商標及び申立人商品は,日本で刊行されている雑誌・書籍等でも数多く紹介された。例えば,日本で販売されている一流ブランド品を紹介した「世界の一流品大図鑑」(昭和51年6月5日発行?平成16年4月22日発行。甲9の379?398)に婦人服,時計,香水が紹介されており,ファッション雑誌においても靴が紹介されている(甲9の7?9,24,29,32,33,73,74,145,209,216,217,259,287,302,303,327)。そして,ファッション雑誌には申立人の広告も掲載されており,申立人は申立人商標を用いて宣伝広告活動を行ってきたことがうかがえる(平成18年12月7日発行?平成24年9月20日発行。甲9の4?378)。 (エ)平成27年11月7日,14日,21日,28日,同年12月5日,12日,同28年6月4日,11日,18日付け読売新聞に,申立人商標を表示して婦人用バッグの広告が掲載された(甲475,甲476)。 イ 上記アの認定事実によれば,申立人商標は,本件商標の登録出願時には既に,申立人商品について使用する商標として我が国のファッション関連の分野の取引者,需要者の間に広く認識されていたものであり,その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。 ウ 申立人商標に係る「Chloe」又は「CHLOE」(アクサンテギュ記号のないものを含む。)の文字は,英語・仏語・独語・伊語のいずれの辞書にも掲載されていないことからすると,独創性の程度は比較的高いものといえる。 (2)本件商標と申立人商標との類似性の程度について ア 本件商標 本件商標は,「CHLOEFRANCIS」の欧文字を横書きしてなるところ,その構成中前半の「CHLOE」の文字は,上記(1)イのとおり,周知著名な「Chloe」からアクサンテギュ記号を除いたものとつづりを同じくするものであって,一般の辞書等に掲載がなく,特定の意味を有しない造語と理解されるものである。また,後半の「FRANCIS」の文字は,「英語の男子名」(広辞苑第六版)の意味を有するものである。 そうすると,本件商標は,「CHLOE」の文字(語)と「FRANCIS」の文字(語)から構成されるものと理解され,本件商標は,構成全体として特定の意味合いをもって知られたものではないから,特定の観念を生じないものである。そして,構成中の「CHLOE」の文字部分は,指定商品「靴類」との関係においては,周知著名な「Chloe」を容易に認識するから,本件商標に接する取引者,需要者は,該文字部分に着目し,強く印象付けられるといえ,本件商標は,構成文字全体から生じる「クロエフランシス」の称呼のほか,「CHLOE」の文字部分より,単に「クロエ」の称呼をも生じるものであって,これよりは「申立人の業務に係るChloeブランド」の観念を生じるものとみるのが相当である。 イ 申立人商標 申立人商標は,「Chloe」又は「CHLOE」の欧文字を横書きしてなるものであり,該文字部分に相応し「クロエ」の称呼を生じるものであって,上記(1)イのとおり,申立人商品を表すものとして,我が国のファッション関連の分野の取引者,需要者の間に広く認識されていたものであるから,「申立人の業務に係るChloeブランド」の観念を生じるものとみるのが相当である。 ウ 本件商標と申立人商標との類似性の程度について 本件商標の要部である「CHLOE」の欧文字部分と申立人商標とは,アクサンテギュの有無という点を除けば,各つづり字を共通にするものであるから,両商標は,外観が近似し,「クロエ」の称呼及び「申立人の業務に係るChloeブランド」の観念を共通にするから,両商標の類似性の程度は高いものといえる。 (3)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性並びに需要者の共通性その他取引の実情について 申立人商品には「靴」が含まれており,これは本件商標の指定商品「靴類」に含まれることは明らかであって,その需要者は一致する。 また,本件商標は,「CHLOEFRANCIS」の欧文字を一連に横書きしてなるが,本件商標権者は,「CHLOE」と「FRANCIS」の間にスペースを設け,「CHLOE FRANCIS」でも使用している(甲484,甲485)。 (4)出所の混同を生ずるおそれについて 申立人商標は,上記(1)イ及びウのとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人商品を表すものとして,我が国のファッション関連の分野の取引者,需要者の間に広く認識されていたものであって,その独創性の程度も比較的高いものといえる。また,上記(2)ウのとおり,本件商標と申立人商標との類似性の程度は高いものといえる。 そして,本件商標の指定商品と申立人商品とは,同一の商品を含む関係にあり,その需要者も共通にすることなどを併せ考慮すれば,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,本件商標をその指定商品について使用した場合には,これに接する取引者,需要者は,周知著名となっている申立人商標を連想,想起し,該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し,その出所について混同を生じるおそれがあったものというべきである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 2 商標権者の主張について 商標権者は,「本件商標は,『CHLOEFRANCIS』の文字が同書・同大で隙間なく表示されているものであるから,取引者・需要者は殊更『CHLOE』と『FRANCIS』に分離することなく,『CHLOEFRANCIS』を1つの造語として認識することは明らかである。申立人のブランド『Chloe』のようなハイブランドは,比較的ファッション感度の高い人に知られているのみで,老若男女の取引者・需要者にまで広く認識されているとはいえず,ファッション感度の高い人であればアクサンテギュのない『e』『E』を使用し,かつ,大文字が隙間なく並べられた商標を見て,申立人の『Chloe』ブランドと混同するなどありえない。」旨主張する。 しかしながら,本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとした理由において,本件商標と申立人商標との類似性の程度については,その前提として,申立人の使用する商標「Chloe」又は「CHLOE」の著名性を認めたうえで,本件商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対しその商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合にあたると判断したものである。 そして,本件商標中には,申立人の著名な「CHLOE」の文字を認識させる「CHLOE」の文字を含むものであるから,本件商標をその指定商品に使用した場合には,これに接する取引者,需要者は,周知著名となっている申立人商標を連想,想起し,該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断したのであって,単に,本件商標と申立人商標との類否のみをもって,本件商標の商標法第4条第1項第15号該当の判断をしたのではない。 また,本件商標の指定商品である「靴類」の需要者は,ファッションについて格別関心の高い者に限られるものではなく,一般需要者といえ,これを購入するに際して払われる注意力は,さほど高いものでないというべきであるから,文字の一つにアクサンテギュが付されているか否かまでは気にとめることはないといわざるを得ない。 したがって,商標権者のいずれの主張も採用することはできない。 3 まとめ 以上のとおり,本件商標は,商標第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,その余の申立ての理由について論及するまでもなく,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 引用商標2及び3 |
異議決定日 | 2019-05-23 |
出願番号 | 商願2017-71047(T2017-71047) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Z
(W25)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 大渕 敏雄 |
特許庁審判長 |
小出 浩子 |
特許庁審判官 |
山田 啓之 平澤 芳行 |
登録日 | 2017-12-01 |
登録番号 | 商標登録第6000424号(T6000424) |
権利者 | 株式会社Jay Jay Japan |
商標の称呼 | クロエフランシス、クロエ、フランシス |
代理人 | 中嶋 慎一 |
代理人 | 鳥巣 実 |
代理人 | 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所 |
代理人 | 鳥巣 慶太 |