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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
審判 全部申立て  登録を維持 W33
管理番号 1353362 
異議申立番号 異議2017-900372 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-08 
確定日 2019-06-28 
異議申立件数
事件の表示 登録第5980585号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5980585号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5980585号商標(以下「本件商標」という。)は、「PASCUA」の文字を標準文字により表してなり、平成28年2月24日に登録出願、第33類「ぶどう酒,発泡性のぶどう酒,洋酒,果実酒」を指定商品として、同29年8月31日に登録査定、同年9月15日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は、以下の(1)及び(2)に示すとおりであり、いずれも、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4261273号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成9年10月6日に登録出願、第33類「果実酒,洋酒,薬味酒」を指定商品として、同11年4月9日に設定登録されたものである。
(2)国際登録第1121090号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2012年4月13日にItalyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2012年(平成24年)7月23日に国際商標出願(事後指定)、第33類「Alcoholic beverages (except beers).」を指定商品として、平成25年5月2日に設定登録されたものである。
以下、これら2件をまとめていうときは「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第137号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、「PASCUA」の文字からなり、他方、引用商標は、「PASQUA」の文字からなるか、あるいは当該文字を要部とするものである。
本件商標と、引用商標の構成中の「PASQUA」の文字とは、文字数及び6文字中5文字「P」「A」「S」「U」及び「A」において共通し、相違点は、4文字目の1字のみであり、外観上相紛らわしく、極めて近似する印象を与える。
また、本件商標から生じる称呼について、本件商標権者は、平成28年11月2日付け意見書において「パスキュア」の称呼が生じると主張しているが、「パスクア」の称呼も生じ得るものであり、引用商標の構成中の「PASQUA」からも、「パスクア」及び「パスキュア」の称呼が生じ得る。
そうすると、両商標は、共に「パスクア」及び「パスキュア」の称呼が生じ得ることから、称呼は同一である。
してみれば、本件商標と引用商標とは類似するものであり、また、その指定商品も引用商標の指定商品と同一である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標、特に「PASQUA」の文字は、申立人の業務に係る商品、特に「ワイン」を表示する商標として、1983年から現在に至るまで、我が国において継続的に使用されてきたものである。その結果、引用商標は、遅くとも本件商標の登録出願日である平成28年2月24日には、関連する需要者及び取引者の間で周知著名に至っていたというべきであり、その周知、著名性は、現在に至るまで維持されている。
本件商標に係る指定商品は、申立人の業務に係る商品と同一又は密接に関連するものである。
引用商標は、申立人の社名の一部であり、申立人は、自身が製造、販売するワインのボトルに引用商標及び引用商標を含むロゴを付して我が国を含む50か国以上の国々でワインを販売しており、本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、需要者及び取引者の間で広く知られている引用商標と類似する。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接した需要者及び取引者は、申立人又は同人と資本関係又は業務提携関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者及び取引者の間に広く認識されている引用商標と類似する。また、申立人のワインが世界中で高い評価を得ており、我が国において長年にわたり申立人のワインが販売されていることに鑑みると、本件商標権者は、引用商標が申立人によって採択され、使用されていることを、本件商標の登録出願時点において認識していたことは明らかである。
してみれば、本件商標に係る出願は、不正の目的をもって行われたものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標及び「PASQUA」の文字の周知性について
ア 申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、イタリア北東部ヴェネト州ヴェローナに本拠を構える1925年創業のワインの生産者であり、申立人の製造するワイン(以下「申立人商品」という。)は、世界50か国以上の国に輸出されていることがうかがえるものの(甲4、甲6)、その具体的な輸出先は明らかではない。
(イ)申立人商品は、我が国では国分グループ本社株式会社(以下「国分グループ」という。)を代理店として、1983年からその販売が開始されて以来継続して販売されており、当該商品には、主に「PASQUA」の文字(以下「使用商標」という。)及び引用商標2が使用されている(甲11?甲74、甲88)。
なお、申立人作成の「INVOICE(請求書)」(甲64?甲73)は外国語で作成されたものであり、その詳細な内容は明らかとはいえず、また、国分グループ作成の申立人商品に関するチラシやカタログ等(甲12?甲63)は、その作成部数、配布先、配布範囲等が明らかではない。
(ウ)申立人商品は、スーパーマーケット、インターネットによる通信販売、生活協同組合、百貨店等により販売及び紹介されていることがうかがえるが(甲75?甲85)、申立人商品の掲載されているチラシの作成枚数、配布地域、配布部数やインターネットウェブサイトへの掲載日、引用商標を付した申立人商品の売上高等は明らかではない。
(エ)申立人は、2017年(平成29年)10月27日に大阪で開催された「トップイタリアンワインロードショー in大阪2017」に参加しているが(甲86、甲87)、当該イベントの入場者数は明らかではなく、また、これは、ワイナリーが60社以上参加し、250種類以上のワインが試飲できるものであるところ、申立人が具体的に何種類のワインをどのように提供したのか等、その詳細は明らかではなく、さらに、当該イベントは、本件商標の登録査定後に行われたものである。
(オ)食品産業新聞社「酒類飲料日報」の2013年ないし2016年における輸入酒銘柄別ランキングでは、イタリア産ワインの中で6位ないし9位である(甲89?甲92)が、当該順位は、同社が行ったアンケートの回答を基に集計したものである旨の記載があるところ、当該アンケートの対象者、方法等その内容が明らかではなく、また、申立人商品の輸入代理店である国分グループのマーケティング開発部の担当者が作成した証明書(甲88)によれば、申立人商品の2015年ないし2017年の売上高、販売本数、販売容量は、それぞれ、約4億7千万円ないし6億5千万円、約90万本ないし120万本、約550キロリットルないし580キロリットルであり、申立人商品の輸入イタリア産ワイン市場における占有率も、我が国のボトルワインの輸入量(甲93)に照らすと、それ程多いとはいえないものである。
(カ)申立人商品は、我が国におけるワイン審査会に2014年から出品し、2017年まで、ダブルゴールド賞、ゴールド賞、シルバー賞等を受賞し(甲102?甲105)、また、世界最大のワインコンクール「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2016」において金賞を受賞するなどしている(甲7?甲9)が、これらの受賞歴が需要者の認識にどの程度の影響を与えているのかは明らかではなく、申立人商品の外国及び我が国における知名度の高さを推し量ることはできない。
(キ)申立人商品は、雑誌や新聞で紹介等されているが(甲107?甲123)、掲載された雑誌はワインの専門雑誌のみであり、かつ、本件商標の登録出願前のものは、2011年に2回、2015年に1回の僅か3回にすぎない。また、新聞記事(甲116?甲123)は、国分グループの取扱い商品についての記載にとどまるものである。
イ 上記アから以下のとおり判断することができる。
申立人商品は、国分グループを輸入代理店として1983年頃から我が国に輸入され、販売されていることがうかがえるものの、その販売は、限られた店舗及び複数のインターネット通信販売を通じたものであって、提出されたインターネットのウェブサイトの掲載時期も確認できないものである。また、新聞社独自のアンケートの回答を基に集計した輸入酒の順位及び申立人商品の販売額、販売本数、販売容量によっては、申立人商品のシェアが高いものとまではいえず、ワインコンクール等の受賞歴によっては、需要者の認識を推し量ることはできない。さらに、広告宣伝については、ワイン専門雑誌に本件商標の登録出願前に僅か3回掲載されたにすぎないものであり、ほかに、申立人商品の宣伝広告の期間、範囲、金額等の詳細を明らかにする証拠の提出はない。
そうすると、申立人商品に使用されている使用商標及び引用商標2は、申立人が提出した証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の商品「ワイン」を表すものとして、我が国はもとより外国の取引者及び需要者の間において周知、著名となるに至るほど広く認識されていたものと認めることができない。
また、引用商標1の周知性について検討してみるに、申立人の提出した証拠によっては、申立人の商品「ワイン」を表すものとして、我が国はもとより外国の取引者及び需要者の間において、広く認識されていたものと認めることができない。
なお、申立人は、台湾の知的財産局における異議審定書を提出しているが、本件の判断が他国の官庁の判断に左右されるものではない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり「PASCUA」の文字よりなるところ、当該文字は「パスクワ島(Easter Islandのスペイン語名)」、「復活祭、イースター」等を意味するスペイン語ではあるものの、当該語が我が国において一般的に親しまれ知られているとはいえないことから、特定の意味合いが想起されることのない一種の造語と理解されるものである。 そして、「PASCUA」の文字は、我が国において親しまれている英語の発音に照らせば、その構成中の「CU」の文字部分が、例えば、「(若い女性の)きびきびしてあいくるしいさま」の意味を有する英語の「cute」が「キュート」と、「文書、証書」等の意味を有する「document」が「ドキュメント」と及び「立方体」の意味を有する「cube」が「キューブ」と発音されることからすれば、当該文字部分は「キュ」と称呼されるものとみるのが自然であるから、本件商標はその構成文字に相応して「パスキュア」と称呼されるというのが相当である。
したがって、本件商標は、「パスキュア」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標について
(ア)引用商標1は、別掲1のとおり、「PASQUA」の文字(「PAS」及び「UA」の文字部分には下線が引かれており、中間の「Q」の文字は、ややデザイン化されている。以下同じ。)を横書きしてなるものであるところ、「PASQUA」の文字は、「復活祭」等を意味するイタリア語ではあるものの、当該語が我が国において一般的に親しまれ知られているとはいえないことから、特定の意味合いが想起されることのない一種の造語と理解されるものである。
そして、「PASQUA」の文字は、我が国において親しまれた英語における発音に照らせば、その構成中の「QU」の文字部分が、例えば、「正方形、四角形」等の意味を有する英語の「square」が「スクエア」と、「水。水の」等の意味を有する英語の「aqua」が「アクア」と発音されことからすれば、当該文字部分は「ク」と称呼されるものとみるのが自然であるから、引用商標1はその構成文字に相応して「パスクア」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標2は、別掲2のとおり、上段に縦長の楕円図形を配し、中央に大きく「PASQUA」の欧文字(中間部の「Q」の文字は、その終筆を「U」の文字の下部まで曲線により描いた構成。以下同じ。)を横書きし、下段に小さく「A FAMILY PASSION」の文字を配した構成からなるものである。
そして、中央に大きく表された「PASQUA」の文字部分が看者の注意を強く惹くものといえることから、上記(ア)のとおり、当該文字部分に相応して「パスクア」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
(ア)本件商標と引用商標1との類否
本件商標は、上記アのとおりの構成からなり、他方、引用商標1は、上記イ(ア)のとおりの構成からなるところ、両商標は、その構成中の「C」と「Q」の文字を異にするものであり、引用商標1の「PAS」及び「UA」の文字部分には下線が引かれ、異なる文字である引用商標1の「Q」の文字がデザイン化されていることからすれば、明らかに異なり、外観上、相紛れるおそれはないものである。
また、本件商標から生じる「パスキュア」の称呼と引用商標1から生じる「パスクア」の称呼とを比較するに、両称呼は、第3音における「ク」と「キュ」の音に差異を有するところ、共に短い4音からなる音構成であることから該差異音がそれぞれの称呼全体に及ぼす影響は小さいものとはいえず、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときには、語感語調を異にし、十分に聴別し得ることから、称呼上、相紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標と引用商標1は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両商標は、観念上、比較することができないものである。
してみれば、本件商標と引用商標1とは、観念において比較することができないものであるとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両商標が需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、非類似の商標というべきものである。
(イ)本件商標と引用商標2との類否
本件商標は、上記アのとおりの構成からなり、他方引用商標2は、上記イ(イ)のとおりの構成からなるところ、両商標は、図形及び「A FAMILY PASSION」の文字の有無に差異があることから、明らかに異なり、外観上、相紛れるおそれはないものである。また、本件商標と引用商標2の構成中の「PASQUA」の文字部分とは、「C」と「Q」の文字を異にするものであり、異なる文字である引用商標2の「Q」の文字の終筆を「U」の文字の下部まで曲線により描いた特徴のある構成であることからすれば、明らかに異なり、外観上、相紛れるおそれはないものである。
また、本件商標から生じる「パスキュア」の称呼と引用商標2から生じる「パスクア」の称呼とを比較するに、両称呼は、上記(ア)のとおり、それぞれ一連に称呼するときには、語感語調を異にし、十分に聴別し得ることから、称呼上、相紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標と引用商標2は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両者は、観念上、比較することができないものである。
してみれば、本件商標と引用商標2とは、観念において比較することができないものであるとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両商標が需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、非類似の商標というべきものである。
エ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標及び使用商標は、前記(1)のとおり、申立人の業務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものである。
そして、本件商標と引用商標とは、前記(2)ウのとおり、外観及び称呼が明らかに相違する別異の商標であって、その類似性も低いものである。また、使用商標は、「PASQUA」の文字からなり、引用商標と同様に「パスクワ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない造語と理解されるものであるから、本件商標とは、観念において比較することができないものであるとしても、称呼において相紛れるおそれはなく、外観において5文字中の1文字を異にするものであるから、これらを総合勘案すれば、両商標は類似性が高いとはいえないものである。
そうすると、本件商標をその指定商品について使用した場合に、これに接する取引者、需要者は、引用商標又は使用商標を連想、想起することはなく、当該商品が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
前記(1)のとおり、引用商標及び使用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、外国及び我が国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることができないものである。
さらに、本件商標権者が、不正の目的をもって本件商標の使用をするものであることを裏付ける証拠の提出はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1
(引用商標1)


別掲2
(引用商標2)


異議決定日 2019-06-20 
出願番号 商願2016-19817(T2016-19817) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W33)
T 1 651・ 262- Y (W33)
T 1 651・ 263- Y (W33)
T 1 651・ 261- Y (W33)
T 1 651・ 222- Y (W33)
最終処分 維持  
前審関与審査官 椎名 実 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 中束 としえ
小松 里美
登録日 2017-09-15 
登録番号 商標登録第5980585号(T5980585) 
権利者 ビニヤ コンチャ イ トロ ソシエダード アノニマ
商標の称呼 パスキュア、パスクア 
代理人 杉村 憲司 
代理人 西尾 隆弘 
代理人 中山 健一 
代理人 勝見 元博 
代理人 杉村 光嗣 
代理人 門田 尚也 
代理人 鮫島 睦 

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