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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W42
管理番号 1353235 
審判番号 取消2018-300106 
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-02-20 
確定日 2019-06-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5711250号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5711250号商標の指定役務中、第42類「インターネットにおける電子掲示板へのアクセスタイムの賃貸,インターネットサイトにおける検索エンジンの提供,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供,オンラインによる登録ユーザーの認証及びこれに関する情報の提供,キーワードや業種・店舗名から電話番号の検索を可能とするための電子計算機用データベースへのアクセスタイムの賃貸,事業の管理・運営用コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,写真情報を内容とするコンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,インターネットにおける電子掲示板用のサーバーの記憶領域の貸与,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,インターネットにおいて利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバーの記憶領域の貸与,電気通信を利用した顧客情報管理装置のコンピュータプログラムの提供及びこれに関する情報の提供,電子認証のためのコンピュータプログラムの提供,インターネットにおける電子会議室用のサーバーの記憶領域の貸与,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5711250号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成26年5月21日に登録出願、「インターネットにおける電子掲示板へのアクセスタイムの賃貸,インターネットサイトにおける検索エンジンの提供,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供,オンラインによる登録ユーザーの認証及びこれに関する情報の提供,キーワードや業種・店舗名から電話番号の検索を可能とするための電子計算機用データベースへのアクセスタイムの賃貸,事業の管理・運営用コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,写真情報を内容とするコンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,インターネットにおける電子掲示板用のサーバーの記憶領域の貸与,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,インターネットにおいて利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバーの記憶領域の貸与,電気通信を利用した顧客情報管理装置のコンピュータプログラムの提供及びこれに関する情報の提供,電子認証のためのコンピュータプログラムの提供,インターネットにおける電子会議室用のサーバーの記憶領域の貸与,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を含む第42類、第36類、第38類、第39類、第41類及び第43類ないし第45類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同26年10月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成30年3月5日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の同27年3月5日から同30年3月4日までを、以下「要証期間」という場合がある。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書、弁駁書及び口頭審理陳述要領書において要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第42類「インターネットにおける電子掲示板へのアクセスタイムの賃貸,インターネットサイトにおける検索エンジンの提供,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供,オンラインによる登録ユーザーの認証及びこれに関する情報の提供,キーワードや業種・店舗名から電話番号の検索を可能とするための電子計算機用データベースへのアクセスタイムの賃貸,事業の管理・運営用コンピュータプログラムの設計・作成又は保守,写真情報を内容とするコンピュータデータベースへのアクセスタイムの賃貸,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,インターネットにおける電子掲示板用のサーバーの記憶領域の貸与,ウェブサイト経由から接続可能なダウンロードできないソフトウェアアプリケーションの一時使用の提供,インターネットにおいて利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバーの記憶領域の貸与,電気通信を利用した顧客情報管理装置のコンピュータプログラムの提供及びこれに関する情報の提供,電子認証のためのコンピュータプログラムの提供,インターネットにおける電子会議室用のサーバーの記憶領域の貸与,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」(以下「取消請求役務」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、乙第1号証、乙第2号証を証拠として、「『スマート介護』の文字からなる商標を、被請求人の業務に係わる介護・福祉施設向けデリバリーサービスのカタログの表紙等に付している。」としているが、当該証拠において、「スマート介護」の文字からなる商標は、商品「カタログ」に使用されており、取消請求役務に使用されていないことは明らかである。
(2)被請求人は、乙第3号証、乙第4号証を証拠として、「『スマート介護』の文字からなる商標を、本件サービスの公式ウェブサイト及び同ウェブサイトに表示されたデジタルカタログに付している。」としているが、当該証拠において、「スマート介護」の文字からなる商標は、役務「カタログ情報の提供」についての使用であり、取消請求役務には使用されていないことは明らかである。
(3)被請求人は、乙第5号証、乙第6号証を証拠として、「青色略正方形図形内において『スマート』及び『介護』の各文字が二段で白抜きされてなる商標を、介護・福祉施設向けデリバリーサービスを利用する際のアイコンとして使用している。」としているが、当該証拠において、取消請求役務に「スマート介護」の文字からなる商標は使用されていないことは明らかである。
(4)被請求人は、乙第7号証、乙第8号証を証拠として、「本件商標を、本件サービスの告知用ウェブサイトに付している。」としているが、当該証拠は、カタログ発行の告知であり、当該証拠において、取消請求役務に「スマート介護」の文字からなる商標が使用されていないことは明らかである。
(5)まとめ
以上述べたように、乙第1号証ないし乙第8号証は要証期間内に日本国内において、取消請求役務について、本件商標を使用しているとの証拠にはならない。
3 口頭審理陳述要領書による主張
(1)被請求人の「合議体の暫定的見解に対する意見」について
本件商標は、青色略正方形の枠内に表記している「スマート」からなる文字と「介護」からなる文字とは結合しておらず、完全に分離しており、かつ「介護」からなる文字は「スマート」からなる文字に比べて大きなサイズで表示されている。また、「介護」は漢字表記であり、「スマート」はカタカナ表記である。そのため、需要者は、本件商標について、「介護」からなる文字と「スマート」からなる文字とを完全に分離して認識し、「スマート介護」のように一体的には認識しない。一方、被請求人が使用を主張する商標は、「スマート介護」の文字を一段で各文字を同サイズで表示した文字商標である。したがって、両商標における外観の差異は大きく、自他役務識別標識として異なる機能を果たし、両商標は社会通念上同一の商標とは認められない。
(2)被請求人の「弁駁に対する意見」について
ア 乙第1号証、乙第2号証において、「スマート介護」の文字からなる商標はカタログの名称としてフロントページに大きく表記されていると共に、各ページの最下欄に「スマート介護 お悩み解決!」と表記されている。ここで、「ウェブサイト作成」サービスの内容が掲載されているページにおいて、「スマート介護」の文字からなる商標は、「ウェブサイト作成」サービス内容が掲載されている位置との関係で、それが「ウェブサイト作成」サービスの商標であると需要者が認識できるように(自他役務識別力を発揮するように)使用されていない。すなわち、「ウェブサイト作成」サービスの内容が掲載されているページにおいて、「Googleマップ インドアビューTM・HP作成サービス」の文字からなる商標がページ最上段、並びにその下方に大きく表示されている。したがって、需要者は、「Googleマップ インドアビューTM・HP作成サービス」を、「ウェブサイト作成」サービスの商標(サービス名)として認識するものであり、「スマート介護」の文字からなる商標を「ウェブサイト作成」サービスの商標としては認識しない。
そのため、乙第1号証、乙第2号証において、「スマート介護」の文字からなる商標が、取消請求役務に使用されていないことは明らかである。
イ 乙第3号証において、「スマート介護」の文字からなる商標が各種商品・サービスのデジタルカタログ情報を提供するウェブページのサイト名(タイトル)として表記されている。
ここで、乙第3号証には、「スマート介護」の文字からなる商標は、「ウェブサイト作成」サービスの商標と需要者が認識するようには使用されていない。
また、乙第4号証には、「Googleマップ インドアビューTM・HP作成サービス」について掲載されているが、「スマート介護」の文字からなる商標が、「ウェブサイト作成」サービスの商標として需要者が認識できるようには使用されていない。
さらに、乙第4号証が、乙第3号証のデジタルカタログ内の内容であるかについても確認できない。
ウ 乙第5号証において、「スマート介護」の二段表記がアイコンとして使用されているとしているが、当該「スマート介護」の二段表記の商標と、本件商標とは外観が全く異なり、社会通念上同一とはいえない。
また、乙第5号証において、「スマート介護」の二段表記の商標と、「ウェブサイト作成」サービスの内容が掲載されている箇所との関係が乙第6号証からも不明であり、需要者が「ウェブサイト作成」サービス名として「スマート介護」の二段表記の商標を認識できるようには表示されているかを確認できない。
エ 乙第7号証、乙第8号証の証拠は、カタログ発行の告知であり、当該証拠において、取消請求役務に「スマート介護」の文字からなる商標が使用されていないことは明らかである。
オ 乙第5号証において、「スマート介護」の二段表記がアイコンとして使用されているとしているが、「スマート介護」の二段表記の商標と、「ウェブサイト作成」サービスの内容が掲載されている箇所との関係が乙第6号証及び乙第15号証からも不明であり、「ウェブサイト作成」サービス名として「スマート介護」の二段表記の商標を需要者が認識できるように表示されているかを確認できない。
また、当該「スマート介護」の二段表記の商標と、本件商標とは外観が全く異なり、社会通念上同一とはいえない。
(3)まとめ
以上述べたように、被請求人が提出した証拠は、被請求人が、要証期間内に日本国内において、取消請求役務について、本件商標を使用しているとの証拠にはならない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を答弁書及び口頭審理陳述要領書等において要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第30号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件登録商標の使用について
ア 被請求人は、「スマート介護」の文字からなる商標(以下「使用商標1」という。)を、被請求人の業務に係る介護・福祉施設向けデリバリーサービス(以下「本件サービス」という。)のカタログの表紙等に付している(乙1、乙2)。
本件登録商標は、青色略正方形図形内において、「スマート」及び「介護」の各文字が二段で白抜きされてなる商標であるところ、使用商標1は、本件登録商標と称呼及び観念を共通にする社会通念上同一と認められる商標である。
イ 被請求人は、使用商標1を、本件サービスの公式ウェブサイト及び同ウェブサイトに表示されたデジタルカタログに付している(乙3、乙4)。
デジタルカタログは、紙媒体のカタログと同一内容の情報で構成された電子媒体であり、本件サービスの利用者は、デジタルカタログを閲覧して、本件サービスを利用することができる。
ウ 被請求人は、青色略正方形図形内において、「スマート」及び「介護」の各文字が二段で白抜きされてなる商標(以下「使用商標2」という。)を、本件サービスを利用する際のアイコンとして使用している(乙5、乙6)。
使用商標2は、本件商標と同一の構成からなる商標である。
本件サービスの利用者は、スマートフォンの画面などに作成及び表示されたアイコン(使用商標2)をタップすることにより、本件サービスのウェブサイトに飛ぶことができ、デジタルカタログを閲覧して、本件サービスを利用することができる(乙5、乙6)。
エ 被請求人は、使用商標1及び使用商標2を、本件サービスの告知用ウェブサイトに付している(乙7、乙8)。
本件サービスの利用者は、本件サービスの告知用ウェブサイトに表示されたURLをクリックすることにより、本件サービスのウェブサイトに飛ぶことができ、デジタルカタログを閲覧して、本件サービスを利用することができる(乙5、乙6)。
(2)指定役務についての使用について
ア 本件サービスには、文具・生活用品、レクリエーション・リハビリ用品の販売サービスのほか、介護・福祉施設経営者向けの「お悩み解決サービス」が含まれる(乙1の772頁、乙2の922頁)。
「お悩み解決サービス」には、「ホームページ制作サービス」が含まれ(乙1の773頁、乙2の940頁、乙4の940頁)「ホームページ制作サービス」は、本件登録商標の指定役務中の「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」に包含される「ウェブサイトの作成」である(乙9)。
「ウェブサイトの作成」に関し、制作費用につき、「¥67,000+税?」の記載があり、サービス年間利用料につき、「¥29,760+税(月額換算¥2,480+税)」の記載がある(乙1の773頁、乙2の940頁、乙第4の940頁)。
当該告知用ウェブサイトのとおり、平成26年5月に開始されたものであり、本件サービスのカタログについては、「スマート介護カタログvol3」が平成28年5月1日に30,000部発行されており、「スマート介護カタログvol4」が平成29年5月1日に30,000部発行されおり(乙7、乙8)、カタログの頒布は、要証期間内である。
また、デジタルカタログは、紙媒体のカタログと同一内容の情報で構成された電子媒体であるから、その公表時期は、紙媒体のカタログの配布時期と共通し、要証期間内である。
イ 「ホームページ制作サービス」は、介護・福祉施設などの利用者に対して直接提供される場合のほか、被請求人の取引先である販売店を通じて利用者に対して提供する場合があるところ、平成28年5月20日発行の請求書(乙10)は、本件サービスの販売店に対して発行されたものである。被請求人の販売店を通じて利用者に対して提供される場合、利用者は、販売店から本件サービスの成果物を受け取ることになる。
当該請求書中、同年4月28日の「10 991-335 HP初期製作費用_DS」の項目につき、「6,265円」の記載があり、同日の「10 991-336 HP初期製作費用_DH」の項目につき、「50,685円」の記載があり、同日の「初期導入サポートパック_DS」の項目につき、「900円」の記載があり、同日の「初期導入サポートパック_DH」の項目につき、「8,100円」の記載があり、被請求人は、要証期間内に、本件サービス中の「ホームページ制作サービス」を提供している。
ウ 結語
以上によれば、被請求人は、要証期間内に日本国内において、本件審判の請求に係る指定役務中の「ウェブサイトの作成」のカタログ及びウェブサイトについて、本件登録商標と社会通念上同一と認められる使用商標1及び使用商標2を付して頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供しているといえる。
したがって、本件登録商標に係る商標権者は、要証期間内に日本国内において、取消請求役務について、本件登録商標の使用をしているものである。
2 口頭審理陳述要領書における主張
(1)合議体の暫定的見解に対する意見
使用商標1は、「スマート介護」の文字からなる商標であるのに対し、本件商標は、青色略正方形図形内において、「スマート」及び「介護」の各文字が二段で白抜きされてなる商標であるところ、両商標は、「スマート介護」の文字に相応して、同一の「スマートカイゴ」の称呼を生ずる。
また、「スマート」の文字は、「からだつきや物の形が細くすらりとして恰好がよいさま。身なりや動作などが洗練されているさま。装置・機器などが情報処理機能を具えること。」の意味合いを有し、「介護」の文字は、「高齢者・病人などを介抱し、日常生活を助けること。」の意味合いを有する文字として慣れ親しまれているから(乙11)、両商標は、全体として「洗練された介護」又は「情報処理機能を具えた介護」という同一の観念を生ずる。
そうすると、両商標は、同一の称呼及び観念を生ずる商標である。
他方で、両商標は、外観において、文字が横一連に書されているか二段書きで書されているかという差異、青色略正方形図形の有無の差異がある。
しかし、本件商標の「スマート介護」の文字部分は、「スマート」及び「介護」の各文字が二段で白抜きされてなるところ、その文字は、太く大きく表示されており、本件商標において、取引者、需要者に対し自他役務識別標識として強く支配的な印象を与える部分であることは明らかである。そして、商取引の実際において、本件商標のように二段書きで書された文字を、使用商標1のように横一連に書されている文字に変更して使用されることは普通に行われており、両商標の文字の書体は共通する。
本件商標において、自他役務の識別標識としての機能は、「スマート介護」の文字部分にあり、この文字部分が取引者、需要者の記憶に強く印象付けられるものであって、両商標は、前述のとおり、同一の称呼及び観念を生ずることに加え、その文字の書体も共通することからすれば、自他役務識別標識として同一の機能を果たし、文字部分につき共通した印象を与えるものといえる。
これに対し、本件商標の青色略正方形図形は、極めて単純なありふれた図形であり、格別特徴的なものではなく、本件商標の青色略正方形図形は、「スマート介護」の文字の後に配されていることより、単なる背景図形とみるのが相当である。仮に何らかの図形であると連想できたとしても、近年、スマートフォンなどの普及により、画面中にアイコンが用いられることは一般的であり、そのアイコンには同じ略正方形図形が採用されていることも顕著な事実であることを考慮すると(乙6)、アイコンを表したものと容易に理解できる本件商標の図形部分は、取引者、需要者に特に顕著な印象を与えるものとはいい難い。それゆえ、本件商標においては「スマート介護」の文字以外に自他役務の識別標識としての機能を見出せない。
そうすると、本件商標において、自他役務の識別標識としての機能は、「スマート介護」の文字部分にあり、この文字部分が取引者、需要者の記憶に強く印象付けられるものであり、両商標は、「スマートカイゴ」の称呼、「洗練された介護」又は「情報処理機能を具えた介護」の観念をもって取引に資させるものというのが商取引の実際に照らし相当である。
したがって、両商標における外観の差異は、文字部分における共通した印象からすれば微差の範囲にとどまるものであって、使用商標1は、本件商標と商標本来の機能である自他役務識別標識としての実質的な差異はなく、社会通念上同一と認められる商標である。
(2)弁駁書に対する意見
請求人は、被請求人提出の証拠(乙1?乙8)が取消請求役務についての本件商標の使用の証拠にならない旨主張する。
しかし、請求人の上記主張は当を失する。以下、その理由を述べる。
ア 乙第1号証及び乙第2号証は、被請求人が本件サービスの提供するために発行されているカタログであり、本件サービスには、審判請求に係る役務中の「ウェブサイトの作成」(ホームページ制作サービス)が含まれる(乙1、乙2、乙4、乙9)。そして、当該カタログは、「ウェブサイトの作成」(ホームページ制作サービス)に関する取引書類である。
したがって、本件商標は、取消請求役務との具体的関係において使用されているものであり、商品「カタログ」との具体的関係において本件商標が使用されているものではない。
イ 乙第3号証及び乙第4号証は、被請求人が本件サービス(ホームページ制作サービスを含む。)を提供するために発信している公式ウェブサイト及びデジタルカタログであり、「ウェブサイトの作成」(ホームページ制作サービス)に関する情報が含まれる。
そして、公式ウェブサイト及びデジタルカタログに本件商標を使用することは、「役務に関する広告、価格表若しくは取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」であるから、本件商標は、取消請求役務との具体的関係において使用されているものである。
ウ 乙第5号証及び乙第6号証は、本件サービスを利用する際のアイコンとして本件商標を使用していることを示す証拠であり、報告書記載の説明のとおり、アイコンをタップすれば、公式ウェブサイト及びデジタルカタログ(乙3)を見ることができる。公式ウェブサイト及びデジタルカタログ(乙3)には、「ウェブサイトの作成」(ホームページ制作サービス)に関する情報が含まれる(乙4)。
このような仕組みになっていることに照らすと、アイコンとしての本件商標の使用は、「役務に関する広告、価格表若しくは取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」であるから、本件商標は、取消請求役務との具体的関係において使用されているものである。
エ 乙第7号証及び乙第8号証は、本件サービス(ホームページ制作サービスを含む。)の告知用ウェブサイトであり、告知用ウェブサイトに表示されたURLをクリックすることにより、本件サービスのウェブサイトに飛ぶことができ、デジタルカタログを閲覧して、本件サービスを利用することができる。そして、使用商標1及び使用商標2は、当該告知用ウェブサイトにおいて、本件サービスと具体的に関連する商標と理解できる位置に明記されている。
このような仕組みになっていることに照らすと、告知用ウェブサイトにおける本件商標の使用は、「役務に関する広告、価格表若しくは取引書類を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」であるから、本件商標は、取消請求役務との具体的関係において使用されているものである。
オ 乙第1号証ないし乙第8号証は、いずれも、被請求人が要証期間内に日本国内において、取消請求役務について本件商標を使用しているとの十分な証拠になるものであり、請求人の主張は、いずれも理由がなく、失当というほかない。
(3)使用商標2についての補足の証拠の提出
乙第15号証は、使用商標2に関し、情報端末での設定及び使用方法を表す証拠であり、既に提出した証拠に加え、乙第15号証を提出したことにより、使用商標2が取消請求役務との具体的関係において使用されているものであることは、より明確になった。
3 上申書(平成29年10月26日付け)における主張
被請求人は、乙第2号証のカタログ(スマート介護カタログvol4)の作成・頒布につき、次のとおり、補足する。
まず、同カタログを30,000部作成した事実を示す証拠として、乙第16号証を提出する。乙第16号証は、乙第2号証のカタログ一式に係る請求書であって、同カタログを30,000部作成したものについての請求書である。なお、同請求書の商品名欄記載の「企画編集」、「撮影」、「制作」、「データ納品」、「その他」、「用紙」、「印刷」、「名入れ」、「発送」、「納品用ダンボール」、「発送(ユーザー直送分)」の数量は、「1」と記載されているが、30,000部のカタログ作成の各作業に対応する作業項目数として「1」を記載したものである。
次に、乙第2号証のカタログを30,000部作成し、頒布した事実を示す他の証拠として、乙第17号証の見積書、乙第18号証ないし乙第30号用の請求書及び見積書を提出する。乙第17号証の見積書は、乙第2号証のカタログの作成費用に係る見積書であり、作業項目毎に、詳細な数量・単価・金額が記載されている。30,000部のカタログ作成に係る見積書であることは、例えば「スマート介護カタログ 印刷・名入れ 30,000冊」という記載から把握できる。そして、乙第17号証より、乙第2号証のカタログにつき、社内用カタログが555部、販売店サンプル用カタログが610部、サプライヤー用カタログが400部発送されることを把握できる。また、乙第18号証ないし乙第30号証の請求書及び見積書は、乙2のカタログの配送費用に係る請求書及び見積書である。乙第18号証は、初回配送分のものであり、15,062部の配送費が記載されている。乙第19号証は、平成29年5月都度配送分のものであり、1,342部の配送費が記載されている。乙第20号証は、平成29年6月都度配送分のものであり、1,643部の配送費が記載されている。乙第21号証は、平成29年7月都度配送分のものであり、912部の配送費が記載されている。乙第22号証は、平成29年8月都度配送分のものであり、447部の配送費が記載されている。乙第23号証は、平成29年9月都度配送分のものであり、748部の配送費が記載されている。乙第24号証は、平成29年10月都度配送分のものであり、1,643部の配送費が記載されている。乙第25号証は、平成29年11月都度配送分のものであり、1,417部の配送費が記載されている。乙第26号証は、平成29年12月都度配送分のものであり、1,228部の配送費が記載されている。乙第27号証は、平成30年1月都度配送分のものであり、584部の配送費が記載されている。乙第28号証は、平成30年2月都度配送分のものであり、663部の配送費が記載されている。乙第29号証は、平成30年3月都度配送分のものであり、1,208部の配送費が記載されている。乙第30号証は、平成30年4月都度配送分のものであり、27,559部の配送費が記載されている。以上より、初回配送分から平成30年4月都度配送分までの合計配送数は、27,559部である。
最後に、カタログの作成・頒布方法の詳細について述べると、カタログの作成は、被請求人が印刷会社にその業務を委託して作成されるものであり、カタログの頒布は、被請求人が印刷会社にその業務を委託して配送する場合と、被請求人が保有するものを直接配送する場合の2つの方法があるが、主に前者の方法で頒布されるものである。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証及び乙第2号証について
乙第1号証及び乙第2号証は、カタログの抜粋の写しであり、該カタログの表紙の上部に使用商標1の記載がある。
(2)乙第5号証について
乙第5号証は、被請求人代理人の記名押印のある報告書であり、右上に「平成30年4月2日」の記載があり、被請求人がインターネット上で提供している「スマート介護」と称するサービスについて、利用者がそのウェブサイトヘスマートフォンからアクセスするために、使用商標2(アイコン)を掲載するとともに、使用商標2(アイコン)を作成、表示するための手順が記載されている。
(3)乙第6号証について
乙第6号証は、被請求人代理人の記名押印のある報告書であり、右上に「平成30年4月2日」の記載があり、使用商標2(アイコン)を掲載するとともに、使用商標2(アイコン)をタップすると、被請求人が運営している「スマート介護」と称するウェブサイトへ飛び、そのウェブサイトからデジタルカタログへリンクすること、そのデジタルカタログに、被請求人が提供するサービスの一つとしてホームページ制作サービスがある旨が記載されている。
(4)乙第7号証及び乙第8号証について
乙第7号証及び乙第8号証は、被請求人のウェブサイトの写しであり、乙第7号証は3葉目、乙第8号証は2葉目に、使用商標2が掲載されている。
2 判断
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、青色のグラデーションが施された隅丸四角形(以下「図形部分」という場合がある。)内に白抜きで「スマート」の文字と「介護」の文字を二段書きで表してなるものである。
(2)使用商標について
ア 使用商標1について
(ア)被請求人が使用していると主張する使用商標1は、別掲2のとおり、青地に白抜きで「スマート介護」の文字を横書きしてなるものである(乙1、乙2)。
(イ)本件商標と使用商標1の社会通念上の同一性について
本件商標と使用商標1は、それぞれ前記(1)、上記(ア)のとおりの構成からなるものであるから、外観において顕著な差異を有している。
したがって、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一の商標であるとはいえない。
イ 使用商標2について
(ア)被請求人が使用していると主張する使用商標2は、別掲1のとおり、青色のグラデーションが施された隅丸四角形内に白抜きで「スマート」及び「介護」の文字を二段書きしてなるものである(乙5?乙8)。
(イ)本件商標と使用商標2の社会通念上の同一性について
本件商標と使用商標2を比較すると、それぞれ前記(1)、上記(ア)のとおりの構成からなるものであり、外観において同視されるものであるから、使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。
(3)使用商標2の使用役務について
ア 乙第5号証及び乙第6号証について
乙第5号証及び乙第6号証は、使用商標2を使用している内容の報告書であるが、各報告書の作成日は、平成30年4月2日であり、要証期間外に作成されたものであるから、要証期間内に使用商標2を取消請求役務に使用した事実を証明するものではない。
イ 乙第7号証及び乙第8号証について
乙第7号証及び乙第8号証は、「スマート介護Vol.3」及び「スマート介護Vol.4」と称するカタログの発刊の告知を掲載したウェブサイトの写しであり、使用商標2の掲載が確認できるものの、これをいかなる役務に使用しているか不明である。
また、上記ウェブサイトには、取消請求役務に関する記載はない。
ウ その他、使用商標2を要証期間内に取消請求役務について使用した事実は認められない。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一の商標とは認めることはできず、使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標であるとしても、これを要証期間内に取消請求役務について使用していたものと認めることができない。
その他、被請求人が提出した乙各号証において、被請求人(商標権者)が、要証期間内に取消請求役務について、本件商標の使用をしていた事実を認めるに足りる証拠を見いだせない。
(5)被請求人の主張について
被請求人は、過去の審決例をあげるとともに、「本件商標のように二段書きで書された文字を、使用商標1のように横一連に書されている文字に変更して使用されることは普通に行われており、両商標の文字の書体は共通する。また、本件商標の青色略正方形図形は、極めて単純なありふれた図形であり、格別特徴的なものではなく、本件商標の青色略正方形図形は、『スマート介護』の文字の後に配されていることより、単なる背景図形とみるのが相当であるから、本件商標において、自他役務の識別標識としての機能は、『スマート介護』の文字部分にあり、両商標における外観の差異は、文字部分における共通した印象からすれば微差の範囲にとどまるものであって、使用商標1は、本件商標と商標本来の機能である自他役務識別標識としての実質的な差異はなく、社会通念上同一と認められる商標である。」旨主張する。
しかしながら、本件商標は、青色のグラデーションが施された隅丸四角形内に文字部分を白抜きで表してなるところ、図形部分と文字部分がまとまりよく一体的に表されており、構成全体としてアイコンと認識させるものであるから、「スマート介護」の文字を横一連に表した使用商標1とは、明らかにその外観が相違するものである。
そうすると、使用商標1と本件商標は、社会通念上同一の商標とはいえないものとみるのが相当である。
さらに、被請求人が挙げた審決例は、図形部分が文字部分の背景図形であるかどうか、文字の一部がモノグラム化しているかどうかの審決例であって、本件のように構成中の図形部分と文字部分が一体となって表されている商標とは事案を異にするものというべきである。
したがって、被請求人の主張は採用することはできない。
(6)むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、取消請求役務について、本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定役務中「結論掲記の指定役務」について、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標及び使用商標2(色彩は原本を参照。)


別掲2 使用商標1(色彩は原本を参照。)



審理終結日 2019-03-06 
結審通知日 2019-03-08 
審決日 2019-04-19 
出願番号 商願2014-40436(T2014-40436) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W42)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡邉 あおい 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 小俣 克巳
木住野 勝也
登録日 2014-10-17 
登録番号 商標登録第5711250号(T5711250) 
商標の称呼 スマートカイゴ、スマート 
代理人 藤森 裕司 
代理人 飯島 紳行 

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