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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W11
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W11
管理番号 1352452 
審判番号 不服2018-3563 
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-12 
確定日 2019-06-07 
事件の表示 商願2017-64294拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第11類「業務用加湿機」を指定商品として、平成29年5月11日に立体商標として登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、「本願商標は、本願の指定商品『業務用加湿機』に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、正面上部中央に配置された横長長方形枠は操作用のパネルと、その直下にある縦長長方形は水位量確認用の窓と、左右側面角辺下部の窪みは、空気の吸込口と理解し、全体として、直ちに、移動用の4個のキャスター及び移動用の取っ手が付いた『業務用加湿機』本体の立体的形状であると認識するものといえ、また、本願商標において、商品の出所識別標識としての機能を果たし得る特徴的な文字や図形等の表示は何ら認められないから、本願商標は、その指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。そして、本願商標が商標法第3条第2項の適用を受けることができるか否かについて検討すると、(a)本願加湿機の形状は、他の業務用加湿機と比較して顕著な形状とはいえないこと、(b)本願加湿機は、2015年5月頃に展示会等に出展され、同年10月19日に発売されたものであって、その販売期間は短く、また、その販売台数も多いことが認められないこと、(c)本願商標のみでの宣伝広告はなく、本願加湿機は、『うるおリッチ』の名称で宣伝広告され、需要者も『うるおリッチ』の名称で本願加湿機を識別しているものと認められること等を総合的に判断すると、本願商標が使用により需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認めることはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における手続の経緯(要旨)
(1)審判長は、請求人に対し、平成30年6月29日付けで次のとおり審尋し、回答を求めた。
請求人は、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当することについては争っていないから、本願商標の同条第2項該当性について、以下に暫定的な見解を示す。
ア 使用態様について
本願の願書に記載した1番目の図(正面右から見た斜視図。以下「右斜視図」という。)に相当する証拠は見いだせるが、本願の願書に記載した2番目の図(正面左から見た斜視図。以下「左斜視図」という。)に相当する証拠は、第1号証、第24号証及び第35号証の僅かな証拠において、不鮮明ながら見いだせるにすぎず、さらに、その他の第各号証においても、左斜視図に表された「手押しハンドル」と思しきものを説明する記述も見いだせない。
そうすると、本願の願書に記載した2つの図面からなる商標と請求人が提出した第各号証による使用態様との同一性を認めることができないため、本願の願書に記載した範囲について、登録を認めることは困難である。
イ 使用数量について
請求人は、業務用加湿機の生産台数(第36号証)並びに出荷台数及び顧客数(第37号証)を示しており、「販売だけでなくレンタル機として出荷することもあり、レンタル期間が終了してメンテナンス後に再び出荷することもある」旨述べている(審判請求書4頁)。
しかしながら、業務用加湿機を「商品として販売した実績」は見いだせず、また、職権調査により、請求人のウェブサイトを見ても、レンタル料やリース料に係る記事はあるものの、商品の価格を具体的に表示した記事は見いだせない。
そうすると、本願の指定商品「業務用加湿機」に本願商標を使用していると認めることは困難である。
したがって、本願商標は、請求人が提出した第各号証によっては、商品に使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることができない。
(2)請求人は、上記(1)の審尋に対し、平成30年7月24日付け回答書を提出した。
ア 使用態様
(ア)請求人が販売する業務用加湿機の型式について
第35号証(本願加湿機が掲載されたカタログ)の2ページ目には、請求人が販売する業務用加湿機の型式が記載されている。
本願加湿機の型式は、SAT-UR22MとSAT-UR22MBで、この2つの違いは、主に販売用に製造されたか主にレンタル用に製造されたかが異なるだけであり、外観は同じである。
また、筐体の形状が本願加湿機に類似する製品として、SAT-UR22Fがあり、これは、据置型であるため、キャスター(車輪)ではなく支持脚が付属される点で、SAT-UR22M、SAT-UR22MBと異なる。
それ以外に請求人が現在又は過去に製造した業務用加湿機としては、第35号証の2ページ目に示す他の型式の業務用加湿機、及び、第31号証から第34号証(請求人の過去の業務用加湿機のカタログ)に示す業務用加湿機等がある。一見して明らかなように、これらの業務用加湿機は、本願加湿機の外観的な特徴を有していない。
(イ)本願加湿機の左斜視図及び手押しハンドルについて
請求人が販売するSAT-UR22M、SAT-UR22MBの業務用加湿機(本願加湿機)の左斜視図及び手押しハンドルに関する資料として、第42号証から第46号証を提出する。
第42号証は、SAT-UR22M、SAT-UR22MBの仕様書で、第43号証は、SAT-UR22MBに関する請求人のWEBサイトである。また、第44号証は、SAT-UR22MBの導入事例に関する請求人のWEBサイトである(下側に記載の導入事例を参照)。これらの資料では、願書に記載した業務用加湿機の左斜視図の形状、特に、本体側面に手押しハンドルが設けられることが記載されている。
第45号証及び第46号証は、請求人が公開している本願加湿機に関する動画のキャプチャ画像である。第45号証には、手押しハンドルの使用例が記載されている。第46号証には、手押しハンドルの具体的な形状が記載されている。第45号証及び第46号証には、型式が明確には記載されていないが、各画像に表示された業務用加湿機の外観を参照すれば、これらの業務用加湿機がSAT-UR22M、SAT-UR22MBであることは明らかである。
イ 使用数量
第48号証は、請求人が販売する業務用加湿機の販売台数及びレンタル台数を示すリストであり、リストでは型式のうち「SAT-」を省略している。上述したように、本願加湿機の型式はUR22M、UR22MBである。
したがって、本願加湿機の2015年度の販売台数は321台、2016年度の販売台数は482台、2017年度の販売台数は876台であり、本願加湿機の2017年度までの合計の販売台数は、1,679台である。
参考までに、レンタルの合計の台数は、4,702台である。なお、業務用加湿機については、購入者とレンタル者の需要者層はかなり共通しているはずである。
したがって、業務用加湿機のレンタルが指定商品との関係で直接的な使用とはいえないまでも、このレンタル台数の多さは、需要者が本願加湿機の形状を認識していることを示す事実の1つになると思料する。
第49号証は、請求人が販売又はレンタルした業務用加湿機の過去の3年度分の実績を示すリストであり、同号証には多数の設置先(顧客)が記載されているので、本願加湿器が多数の需要者に販売又はレンタルされている(請求人の業務に係る商品であると認識されている)ことを客観的に示す資料になると思料する。
第50号証は、過去の3年度分の決算報告書、残高試算表、及びそれらをまとめた資料であり、本願加湿機の売上に関するデータの参考として示す資料である。1ページ目のまとめ資料には、型式にURが含まれる加湿機の売上が記載されているので、必要に応じて参照されたい。第48号証に示すように、型式にURが含まれる加湿機のほとんど本願加湿機であるため、型式にURが含まれる加湿機の売上は本願加湿機の売上に近似する値になると考えている。
(3)審判長は、請求人に対し、平成30年10月10日付けで次のとおり審尋し、回答を求めた。
請求人は、審判請求書において「本願加湿機のような移動型の業務用加湿機は、業務用であるため家庭用と比較してかなり大きいが、壁等への埋め込みは当然不要である。この種の加湿機は、医療施設、福祉施設、教育施設、加湿が必要なオフィス(コールセンター等)、加湿が必要な工場(印刷工場や電子部品工場等)、及び美術館等の施設に配置される。したがって、それらの施設の経営者、運営者、勤務者がこの種の業務用加湿機の需要者であるといえる。」と述べているが、たとえ、本件審判に係る「請求人の業務用加湿機」が限られた需要者を対象とする商品であるとしても、一般的な「業務用加湿機」の需要者の範囲は、業種等が限定されることはなく、「家庭用加湿機」では用をなさない程度の広さの執務室等を有する日本国内の企業の事業経営者などを含む広い範囲と考えている。
(4)請求人は、上記(3)の審尋に対し、平成30年10月12日付け回答書を提出した。
審判請求書において列挙した施設は、確かに請求人の販売実績が高い施設を列挙しているが、「・・・等の施設」と記載されているように一例として挙げているだけであり、列挙した施設に関する者のみが需要者であるとの意図はない。また、「加湿が必要なオフィス」、「加湿が必要な工場等」といった広い概念の施設も列挙しているため、需要者が狭い業種のみであるとも認識していない。ただし、家庭用加湿機と比較すると販売先が少なく、市場規模が小さいと考えている。
(5)合議体は、請求人の求めに応じ、平成30年11月16日に独立行政法人工業所有権情報・研修館 近畿統括本部(INPIT-KANSAI)において面接を行った。
合議体からは、請求人に対し商標法第3条第2項該当性についての一般的な考え方を説明し、請求人からは、合議体に対し本願商標の使用について説明した。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、角が丸みを帯びた、縦長の略直方体の業務用加湿機の立体的形状からなるものであり、一般的に採用し得る、操作パネル、空気取り入れ口、キャスター、手押しハンドル等を備えているところ、それらの構成態様は、業務用加湿機の機能や美感を向上させるために一般的に採用し得る形状の一つといえ、格別特異な部分は見いだせない。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者をして、一般的な形状からなるものであると認識されるにすぎないというのが相当であるから、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項該当性について
(1)本願商標の使用状況について
本願商標は、第11類「業務用加湿機」の立体的形状についてのものであるところ、請求人が提出した資料等(第1号証?第50号証)及び同人の主張によれば、請求人の業務に係る商品であって、型式をSAT-UR22M及びSAT-UR22MBとする商品「業務用加湿機」(以下「本件商品」という。)の販売期間、販売台数などに関しては、以下の事実が認められる。
ア 本件商品の販売期間について
本件商品は、第30号証(別掲2)のとおり、従来商品をフルモデルチェンジして、2015年(平成27年)10月19日に発売されたものである(第14号証、第30号証等)。
イ 発売後3年間の本件商品の販売台数、レンタル台数及び生産台数について
(ア)第48号証によれば、本件商品は、発売後3年間で計1,679台販売され、据置き型を含む旧モデル(以下「旧モデル」という。)は、同期間に計369台販売されているところ、本件商品の割合は、旧モデルを合わせた全商品の約80%である。
また、同期間の本件商品のレンタル台数は計4,702台であり、旧モデルのレンタル台数は計7,977台であるところ、本件商品のレンタル台数の割合は、旧モデルを合わせた全レンタル台数の約40%である。
同期間の販売台数とレンタル台数の合計は、6,381台である。
(イ)第36号証によれば、本件商品の3年間の生産台数は、計4,230台である。
(ウ)第37号証によれば、本件商品の3年間の顧客数は、計2,048社であり、出荷台数は、計6,032台である。
(2)本件商品の広告宣伝について
第39号証によれば、2015年4月から2018年2月までで、かなりの額の広告宣伝費が記載されているが、本件商品の広告(第35号証、第40号証等)のいずれにも標章「うるおリッチ」が表示されている。
なお、旧モデルの広告宣伝のいずれにも標章「うるおリッチ」が表示されている(第33号証、第34号証)。
(3)判断
ア 上記(1)イ(ア)及び(イ)によれば、本件商品の2015年から2017年の3年間の生産台数が計4,230台であるのに対し、販売台数が計1,679台であるから、差し引いた計2,551台がレンタル品であることがうかがえる(ただし、一度レンタルした後、販売されたなどのケースは考慮しない。以下、同じ。)。
イ 上記ア並びに上記(1)イ(イ)及び(ウ)によれば、2015年から2017年の3年間の生産台数が計4,230台(販売台数:計1,679台、レンタル台数:計2,551台)であるのに対し、出荷台数は計6,032台と生産台数をかなり超えており、顧客数が計2,048社であることからすると、レンタル品及び顧客の内訳においては、重複するものがあることがうかがえる。
仮に、同期間の顧客数である計2,048社が、内訳において重複しないとしても、一般的な「業務用加湿機」の需要者の範囲は、業種等が限定されることはなく、「家庭用加湿機」では用をなさない程度の広さの執務室等を有する日本国内の企業の事業経営者などを含む広い範囲であるから、本件商品を購入又はレンタルしている需要者の数は、決して多いものとはいえない。
ウ 上記(1)ア及びイによれば、本件商品は、従来商品をフルモデルチェンジして、2015年(平成27年)10月19日に発売されたものであるが、従来商品もいまだ販売又はレンタルされており、本件商品のみが、請求人の業務に係る「業務用加湿機」であるとはいえず、その他に本件商品の立体的形状を目印にして需要者が商品を選択しているという事情は見いだせない。
エ 上記(2)によれば、本件商品及び従来商品も「うるおリッチ」の表示の下、広告宣伝されており、これを目印にして需要者が商品を選択しているとはいえるものの、その他に本件商品の立体的形状を目印にして需要者が商品を選択しているという事情は見いだせない。
(4)まとめ
以上を総合勘案すると、本願商標は、使用をされた結果、その使用に係る商品(「業務用加湿機」)について、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとはいえない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項に該当するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1 本願商標







2 第30号証





審理終結日 2019-03-29 
結審通知日 2019-04-01 
審決日 2019-04-18 
出願番号 商願2017-64294(T2017-64294) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W11)
T 1 8・ 17- Z (W11)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森山 啓 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 小田 昌子
小松 里美
代理人 桂川 直己 

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