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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W182528 |
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管理番号 | 1351576 |
審判番号 | 無効2018-890064 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2018-08-24 |
確定日 | 2019-05-07 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5952435号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5952435号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5952435号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成28年12月1日に登録出願,第18類「かばん類,袋物,傘」,第25類「被服,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「遊戯用器具,おもちゃ,人形,運動用具」を指定商品として,同29年4月19日に登録査定され,同年6月9日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が引用する商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,同人が「ゴルフウェア,帽子,キャディーバッグ,バッグ,ゴルフクラブカバー,傘,タオル」等について使用し,請求人の商標として周知・著名となっているとするものである。 なお,引用商標に係る登録出願(商願2017-92283号,平成29年7月10日登録出願)は,現在審査に係属している。 第3 請求人の主張 請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲1?54(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は,商標法4条1項7号,同項10号,同項15号及び同項19号に違反して登録されたものであるから,同法46条1項1号により,その登録は無効にすべきものである。 2 具体的な理由 (1)本件商標について 本件商標は,微笑んだ丸い顔の図形の目の箇所に「P」と「G」の文字を表示してなる図形商標である。 本件商標は,請求人が2009年(平成21年)春より「ゴルフウェア,帽子,キャディーバッグ,バッグ,ゴルフクラブカバー,傘,タオル」等について使用している,周知・著名な商標とその構成を共通にするものである。 (2)本件商標の指定商品について 本件商標は,第18類「かばん類,袋物,傘」,第25類「被服,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「遊戯用器具,おもちゃ,人形,運動用具」を指定商品とするものである。 これらの商品は,需要者等を共通にするものであるところ,本件商標の指定商品中に含まれる「ゴルフウェア,ゴルフシューズ,ゴルフ用傘,スポーツバッグ,キャディーバッグ,ゴルフ用具」などのスポーツアパレル商品やスポーツ用品との関係においては,需要者,販売部門,用途等の共通性は相当高いものということができる。 (3)請求人の使用商標(引用商標)について ア 引用商標の構成について 引用商標は,微笑んだ丸い顔の図形の目の箇所に「P」と「G」の文字を表示してなるものである(以下「PGフェイスマーク」という場合がある。)。 イ 引用商標の使用実績,周知・著名性等について 請求人は,引用商標を2009年(平成21年)春より「ゴルフウェア」等について使用を開始し,その後,請求人による継続的な使用,プロゴルファーを起用した宣伝広告活動等の結果,引用商標は,本件商標の登録出願時には既に請求人の商標として周知・著名となっていたものである。 (ア)請求人について 請求人は,衣料品,スポーツ用品,日用雑貨品等の企画,製造,販売及び輸出入等を主な事業内容とするアパレルメーカーであり,請求人の主要ブランドの一つに「PEARLY GATES」がある(甲3?5等)。 請求人は,「PEARLY GATES」ブランドの下,ゴルフウェア,帽子,ベルトなどの被服類,その他のゴルフグッズを製造,販売している。 なお,請求人と本件商標の権利者との間で業務上の取引は無く,経済的にも組織的にも一切無関係である。 (イ)請求人のアパレルブランド「PEARLY GATES」について 「PEARLY GATES」は,1989年(平成元年)春にスタートし,以来,好評を博しており,2013年(同25年)3月ないし2017年(同29年)2月までの販売実績(売上金額)は,毎年74.1億円ないし102.9億円である(甲4)。 以上からも,「PEARLY GATES」は,日本有数のアパレルブランドであることが明らかであると思料するが,請求人により継続使用されており,請求人の営業努力,宣伝広告活動の結果,需要者の間で既に著名となっている。 「PEARLY GATES」は,直営店が国内に62店舗存在し(平成29年9月現在。甲5),直営店以外の取扱い店舗を加えれば100店舗以上にて販売されており,オンラインショップによっても販売されている(甲5)。 また,海外にも展開されており,現時点で中国,韓国において実際に販売されている。 「PEARLY GATES」のゴルフウェア等は,プロゴルファーや著名人にも愛用されている(甲11?17)。 さらに,「PEARLY GATES」は,その人気の高さゆえ,海外から多くの模倣品が輸入されており,かかる模倣品対策にも力を入れている実情がある。 請求人は,商標「PEARLY/GATES」の商標権者であるところ,当該商標権に基づき輸入差止申立てをしている(甲6?8)。 その結果として,数多くの「PEARLY GATES」侵害品が輸入差止めされている事実がある(甲9,10)。この事実も「PEARLY GATES」の周知・著名性を立証する強力な証左である。 (ウ)引用商標の使用実績について 請求人は,「PEARLY GATES」ブランドにおいて,PGフェイスマークを制作し,2009年(平成21年)春より商標の使用を開始した(甲23)。 言うまでもなく,「P」「G」は「PEARLY GATES」の頭文字から採択されたものである。 引用商標の周知・著名性については,例えば,インターネット検索サイト「Google」にて「pearlygates smile」と検索すると,多数の「PGフェイスマーク」の画像が検索結果として表示されることからも明らかである(甲18)。 その他,芸能人やプロゴルファーが引用商標を使用したゴルフウェアを着用している写真が通販サイトやテレビCMで紹介され(甲13?17),また,引用商標が使用されたゴルフウェア,帽子,キャディーバッグ,バッグ,ゴルフクラブカバー,傘,タオルなどが,ゴルフ雑誌やインターネット上の記事などで紹介されている(甲19?22,26?29,31?33)。 また,請求人は,引用商標を2009年(平成21年)春より使用を開始し,現在も継続して使用している(甲23?25,34?53)。 引用商標の使用に係る商品のうち,「キャディーバッグ」及び「ゴルフカバー」についての2017年(平成29年)第1週?第39週までの売上実績は,1.8億円である(甲30)。 さらに,アパレルメーカー向けの事業を行っている複合専業商社である日鉄住金物産株式会社及びゴルフ関連の総合サイト「ゴルフダイジェスト・オンライン」の運営者である株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインは,a)引用商標が「PEARLY GATES」の「ゴルフウェア等の被服,キャディーバッグ,バッグ,ゴルフクラブカバー,その他のゴルフグッズ,傘,タオル」等の商標として2009年(平成29年)春から独占的に使用されていること,b)引用商標は,平成28年12月1日には既に取引業者,需要者間に広く認識されており,これを見れば容易に請求人の「PEARLY GATES」の商品であることを認識することができたこと,及びc)本件商標の登録出願時点で,引用商標と同一又は類似の商標が請求人以外の第三者に使用された場合,使用に係る商品が請求人の販売する「PEARLY GATES」ブランドの商品であると,あるいは経済的又は組織的に何等かの関係がある者の商品であると誤認,混同を生ずるおそれがあったと考えられることを証明している(甲53,54)。 以上のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願日前より,「ゴルフウェア,帽子,キャディーバッグ,バッグ,ゴルフクラブカバー,傘,タオル」などについて継続使用されている周知・著名の商標であることが立証される。 (4)本件商標が引用商標を剽窃したものであることについて 本件商標の構成中「DESIGNED BY HARVEY BALL」の文字部分からは「ハーベイボールによるデザイン」との意味が生じるところ,上記のとおり,PGフェイスマークは請求人により2009年(平成29年)春の時点で制作,使用されていることが明らかである。 そして,PGフェイスマークの「P」「G」が,請求人のアパレルブランド「PEARLY GATES」の頭文字より採択されたものであることも上記のとおりであるところ,本件商標権者が,「P」「G」の文字を採択する合理的な理由は見当たらない(仮に合理的な理由があるのであれば,その理由を開示すべきである。)。 したがって,本件商標の構成中の「DESIGNED BY HARVEY BALL」との表示は明らかに誤りであり,本件商標は,請求人の周知・著名な引用商標を剽窃したものであることが明らかである。 (5)本件商標と引用商標は類似することについて 本件商標と引用商標は,その構成をほとんどそのまま共通にするものであるから,一見して明らかに類似の商標である。 (6)本件商標が取り消されるべき理由 ア 商標法4条1項7号該当性について 上記(3)で述べたとおり,引用商標は,本件商標の登録出願日前より,「ゴルフウェア,帽子,キャディーバッグ,バッグ,ゴルフクラブカバー,傘,タオル」などについて継続使用されており,請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている周知・著名な商標である。 そして,本件商標と引用商標は,その構成を同一にするものである。 したがって,本件商標は,引用商標が商標登録されていないことを奇貨として,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受けたものであることは明らかである。 さらには,本件商標をその指定商品に使用する場合には,引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)されて,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力が毀損されるばかりでなく,公正な取引秩序を乱すものといわざるを得ない。 してみれば,本件商標は,不当な利益を得る等の不正の目的をもって剽窃的に商標出願したものであることは明らかであり,出願の経緯に社会的相当性を欠き,登録を認めることが商標法の目的にも反するものであるから,商標法4条1項7号に該当する。 イ 商標法4条1項10号該当性について 引用商標は,上述のとおり,「ゴルフウェア,帽子,キャディーバッグ,バッグ,ゴルフクラブカバー,傘,タオル」などについて継続使用されている周知・著名の商標である。 そして,本件商標と引用商標は,類似の商標であり,その類似の程度は極めて高いことも上述のとおりである。 したがって,本件商標は,その指定商品中,引用商標の使用に係る「ゴルフウェア,帽子,キャディーバッグ,バッグ,ゴルフクラブカバー,傘,タオル」などと同一又は類似の「かばん類,袋物,傘」,「被服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」や「運動用具」との関係では,需要者の間に広く認識されている引用商標に類似する商標であって,引用商標の使用に係る商品又はそれらに類似する商品について使用をするものであるから,商標法4条1項10号に該当する。 ウ 商標法4条1項15号該当性について 引用商標は,請求人の商標として広く知られていること,本件商標と引用商標の類似の程度は,極めて高いことは既に述べたとおりである。 そして,本件商標の指定商品中,「バンド,ベルト,履物,仮装用衣服」及び「遊戯用器具,おもちゃ,人形」については,これらの商品は引用商標使用に係る「ゴルフウェア,帽子,キャディーバッグ,バッグ,ゴルフクラブカバー,傘,タオル」などと販売部門の共通性,需要者の共通性,用途の共通性等を有するものであり,特にゴルフ用の商品の場合には,その共通性は更に強力なものということができる。 したがって,本件商標と引用商標の類似性の程度,引用商標の周知・著名性の程度,需要者等の共通性等を総合勘案すれば,本件商標権者が本件商標をその指定商品に使用すると,これに接する取引者,需要者は,請求人の周知・著名な引用商標を直ちに想起するものであり,請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品等であると誤認し,需要者が商品等の出所について混同を生ずるおそれが多分に存するものであることは明らかである。 したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当する。 エ 商標法4条1項19号該当性について 引用商標は,請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている周知・著名な商標であること,本件商標と引用商標はその構成を同一にするものであること,及び本件商標が不正の目的をもって商標出願されたものであることは,上記で述べたとおりである。 したがって,本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 被請求人の答弁 被請求人は,請求人の主張に対し何ら答弁していない。 第5 当審の判断 1 引用商標の周知性について (1)証拠及び請求人の主張によれば,以下の事実を認めることができる。 ア 請求人は,婦人服,紳士服,服飾品,スポーツ用品,日用雑貨品等の企画,製造,販売及び輸出入等を主な事業内容とする株式会社であり,同人が1989年(平成元年)から展開するブランドの一つである「PEARLY GATES」の商品は,北海道から鹿児島まで全国100以上の店舗で販売されているほか,オンラインショップやアウトレットでも販売されている(甲3,5,23)。 イ 「PEARLY GATES」ブランドでは,ポロシャツ,スカート,Tシャツ,帽子などの被服,キャディーバッグ,ゴルフクラブカバーなどのゴルフ用の商品が販売されており(甲23?25),同ブランドの2013年(平成25年)3月ないし2017年(同29年)2月の販売実績(売上金額)は,毎年74.1億円ないし102.9億円であった(甲4)。 ウ 「PEARLY GATES」ブランドの商品は,著名人やプロゴルファーにも着用され,そのことがインターネット上の記事及びテレビCMで紹介されている(甲11?17)。 エ 「PEARLY GATES」ブランドの商品は,雑誌やインターネット等でも紹介等されている(甲12,14?22,26?29,31?33)。 オ 商標「PEARLY GATES」に係る商標権侵害品(帽子)が少なくとも平成28年9月及び10月に輸入差止されている(甲6?10)。 カ 引用商標は,「PEARLY GATES」ブランドの商品「ポロシャツ,スカート,Tシャツ,帽子,キャディーバッグ,ゴルフクラブカバー」などの一部(その割合は不明である。)について,遅くとも2009年(平成21年)春頃から商標又はデザインとして用いられている(甲20,23,25)。 キ しかしながら,請求人は,引用商標が商標又はデザインとして用いられている商品(以下「引用商標使用商品」という。)全体の売上高,シェアなど販売実績を示す主張はしておらず,また,証左も見いだせない。 (2)上記(1)認定の事実からすれば,「PEARLY GATES」ブランドは,請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間にある程度認識されているものと認めることができる。 しかしながら,引用商標については,請求人が引用商標をポロシャツ,スカート,Tシャツ,帽子,キャディーバッグ,ゴルフクラブカバーなど(引用商標使用商品)に,遅くとも2009年(平成21年)から現在まで継続して使用していることが認められるものの,引用商標使用商品全体の販売実績を示す証左はなく,また,引用商標が需要者の間に広く認識されていると認めるに足る証左は見いだせないから,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 さらに,仮に,引用商標使用商品のうち,キャディーバッグ及びゴルフクラブカバーの2017年(平成29年)第1週ないし第39週の売上げが1.8億円である(甲30)としても,その期間は本件商標の登録出願日後であって,第17週以降は登録査定日後であり,加えて,かかる金額がキャディーバッグ及びゴルフクラブカバーの1ブランドの売上げとして,その周知性を基礎付けるほど多額であると認めるに足りる証左は見いだせないから,上記判断を覆し得ない。 また,引用商標使用商品の広告については,雑誌やインターネットの掲載回数が多くはないこと,商品カタログは発行時期・部数などが確認できないこと,引用商標の周知性などに係る証明書(甲53,54)は,あらかじめ印字された同一の書式に証明者が署名捺印をしたものであって,その内容の裏付けとなる根拠が明らかでないものであることから,引用商標が請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めるに足りない。 したがって,引用商標は,請求人の業務に係る商品を表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 また,引用商標が外国における需要者の間に広く認識されているものである旨の主張及びその証左の提出はないから,引用商標は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。 2 商標法4条1項7号について (1)商標法4条1項7号の解釈 本号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,a)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,c)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,d)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知財高裁判決 平成17年(行ケ)第10349号)。 (2)本件商標 本件商標は,別掲1のとおり,中央に太い線で描いた円輪郭内の上部に「P」と「G」の文字を人の両目を表したかのように並べて配し,その下に口と思しき両端上がりの弧線を描いた構成からなるものである。 (3)引用商標 引用商標は,別掲2のとおり,本件商標とほぼ同一の構成態様,すなわち,中央に太い線で描いた円輪郭内の上部に「P」と「G」の文字を人の両目を表したかのように並べて配し,その下に口と思しき両端上がりの弧線を描いた構成からなるものである。 そして,引用商標は,円輪郭,弧線,「P」の文字及び「G」の文字の4つの要素からなり,各要素自体はいずれも独創性の程度が高いものとはいえないものの,円輪郭内の上部に「P」と「G」の文字,下部に両端上がりの円弧を配し,全体としてみた場合には,「P」と「G」の文字を両目とする,微笑んだ丸い顔を描いたものと認識させる構成としている点において,独創性の程度の高いものといえる。 (4)本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標とを比較すると,両者は外観上ほぼ同一といえる構成態様であるから,酷似(類似)の商標と認められる。 (5)本件商標の登録出願の時期と引用商標の使用開始時期 本件商標の登録出願日は,上記第1のとおり,平成28年12月1日であり,引用商標の使用開始時期は,上記1(1)カのとおり,遅くとも2009年(平成21年)春頃であるから,前者が後者よりも遅い時期であること明らかである。 (6)本件商標の指定商品と引用商標使用商品 本件商標の指定商品は,上記第1のとおり,第18類「かばん類,袋物,傘」,第25類「被服,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「遊戯用器具,おもちゃ,人形,運動用具」であり,引用商標使用商品は,上記1(1)カのとおり,「ポロシャツ,スカート,Tシャツ,帽子,キャディーバッグ,ゴルフクラブカバー」などであり,本件商標の指定商品中「被服」及び「運動用具」には,それぞれ,引用商標使用商品中「ポロシャツ,スカート,Tシャツ,帽子」及び「キャディーバッグ,ゴルフクラブカバー」が含まれていると認められる。 (7)本件商標の登録出願の経緯 上記(1)?(6)のとおり,引用商標は独創性の高い商標であること,本件商標と引用商標とは外観上ほぼ同一といえる構成態様であって酷似していること,本件商標の登録出願日は引用商標の使用開始時期よりも遅いこと,及び本件商標の指定商品には引用商標使用商品が含まれていることを併せ考慮すれば,本件商標は,被請求人が偶然に引用商標と酷似したものをその要部として登録出願したものとは考え難く,引用商標の存在を承知しながら引用商標が商標登録されていないことを奇貨として,請求人が引用商標を使用することを阻止し,あるいは使用契約締結を強制するなどの目的で出願したものと判断するのが相当である。 そうすると,本件商標は,上記(1)のe)その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するものというべきである。 なお,請求人は,仮に被請求人が本件商標中に「P」及び「G」の文字を採択する合理的な理由があるのであれば,その理由を開示すべきである旨主張したのに対し,被請求人は何ら答弁していない。 (8)小括 以上のとおりであるから,本件商標は,商標法4条1項7号に該当する。 3 付加的判断 当審は,上記のとおり,本件商標は,商標法4条1項7号に該当すると判断するものであるが,本件の速やかな解決に資するため,以下のとおり付加的に判断を明示する。 (1)商標法4条1項10号該当性について 上記2(4)のとおり,本件商標と引用商標は,類似するものであって,また,本件商標の指定商品中「被服」及び「運動用具」は,それぞれ,引用商標使用商品中「ポロシャツ,スカート,Tシャツ,帽子」及び「キャディーバッグ,ゴルフクラブカバー」とは,同一又は類似の商品と認められる。 しかしながら,引用商標は,上記1のとおり,請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。 したがって,本件商標は,商標法4条1項10号には該当しない。 (2)商標法4条1項15号該当性について 引用商標は,上記1のとおり,請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。 そうすると,たとえ,本件商標と引用商標が類似するものであって,本件商標の指定商品と引用商標使用商品とが同一又は類似のもの若しくは関連性の程度が強いものだとしても,本件商標は,これに接する取引者,需要者が,引用商標又は請求人を連想若しくは想起するものということはできない。 したがって,本件商標は,本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標又は請求人を連想若しくは想起させることはなく,その商品が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 よって,本件商標は,商標法4条1項15号には該当しない。 (3)商標法4条1項19号該当性について 引用商標は,上記1のとおり,請求人の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから,たとえ,本件商標がその登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるとしても,商標法4条1項19号には該当しない。 4 むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法4条1項7号に違反してされたものであるから,同法46条1項の規定に基づき無効にすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標) |
審理終結日 | 2019-03-07 |
結審通知日 | 2019-03-11 |
審決日 | 2019-03-26 |
出願番号 | 商願2016-140503(T2016-140503) |
審決分類 |
T
1
11・
22-
Z
(W182528)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 渡辺 悦子 |
特許庁審判長 |
小出 浩子 |
特許庁審判官 |
平澤 芳行 田村 正明 |
登録日 | 2017-06-09 |
登録番号 | 商標登録第5952435号(T5952435) |
商標の称呼 | ピイジイ |
代理人 | 鈴木 亜美 |
代理人 | 保崎 明弘 |
代理人 | 和田 光子 |
代理人 | 水野 勝文 |