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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W32
管理番号 1351526 
審判番号 取消2016-300915 
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-12-28 
確定日 2019-04-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5639700号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5639700号商標の指定商品中、第32類「全指定商品」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5639700号商標(以下「本件商標」という。)は、「菌活」の文字を標準文字で表してなり、平成25年2月8日に登録出願、第32類「きのこ入りビール,きのこ入り合成ビール,きのこ入りスタウト,きのこ入りラガービール,きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」のほか、第29類ないし第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同年12月27日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成29年1月19日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成26年(2014年)1月19日ないし同29年(2017年)1月18日である(以下「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第26号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第32類「きのこ入りビール,きのこ入り合成ビール,きのこ入りスタウト,きのこ入りラガービール,きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、第32類「きのこ入りビール,きのこ入り合成ビール,きのこ入りスタウト,きのこ入りラガービール,きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」についての本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 審判事件弁駁書における主張
(1)「生アガリクス100%エキス」及び「梅香るアガリクスエキス」について(乙4、乙5)
ア 本件審判の請求に係る指定商品には該当しないこと
被請求人は、乙第4号証及び乙第5号証を提出して、「生アガリクス100%エキス」及び「梅香るアガリクスエキス」なる商品(以下、請求人の主張の項において、まとめて「本件使用商品1」という。)のチラシに、商標「菌活」を付して頒布した旨主張する。
そこで検討すると、被請求人の公式オンラインショップのウェブサイトによれば、本件使用商品1に関し、「こんな方におすすめです/健康診断が気になる方/健康を維持したい方」「アガリクスエキスは、まずい!でも健康にいいんです。ホクトのアガリクスエキスは健康のことを一番に考え、他にはなにも加えずに、生のアガリクスをまるごと搾りました。」との記載があるほか(甲1)、「※健康補助食品として1日1本程度を目安にお飲みください。」との記載がある(甲2)。
また、ショッピングサイト楽天市場における「生アガリクス100%エキス」の紹介として、「健康食品ですので」「1日1本が適量なので」「こんな方におすすめです。/健康を維持したい方/体力に自信のない方/美容が気になる方/無添加健康食品をお探しの方/無農薬国産健康食品をお探しの方」といった記載がある(甲3)。
さらに、「生アガリクス100%エキス」及び「梅香るアガリクスエキス」なる商品は、いずれも、ショッピングサイト楽天市場において「サプリメント」「健康維持」の商品カテゴリに分類されている(甲4)。
加えて、本件使用商品1を紹介するウェブサイトでは、愛飲者の口コミとして、「多くの健康食品を試しましたが、どれも効果が得られませんでした。アガリクス100%エキスは知人から薦められて飲むようになりました。」「長い間体調が優れませんでしたが、アガリクス100%エキスを飲み始めてから元気になりました。」などの記載がある(甲5)。
これらの記載からすれば、本件使用商品1は、「健康増進」をその機能・用途とする「きのこ抽出エキスを主原料とした液状の健康食品」というべきであって、「止渇」がその用途・機能である「清涼飲料」「飲料用ジュース」とは異なるものである。
よって、本件使用商品1は、本件審判の請求に係る指定商品「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」には該当しない。
イ 要証期間に頒布されたものとはいえないこと
乙第4号証は、日付の記載が見受けられないため、要証期間に頒布されたものであるか否かが不明である。乙第5号証は、注文書でありFAXの送信日付が確認できるものの、乙第4号証と乙第5号証が対応するものであることの証明はされていないし、また、乙第5号証には本件商標が表示されていない。
よって、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標が付されたチラシが要証期間に頒布されたとはいえない。
ウ 商標としての使用に該当しないこと
被請求人は、乙第4号証のチラシにおいて、本件商標を表示していること及び「菌活」の文字がかぎ括弧でくくられ、他の文言と区別した態様で表示されている旨主張する。
そこで検討すると、商標の本質は、当該商標を使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものとして機能すること、すなわち、商品又は役務の出所を表示し、識別する標識として機能することにあると解されるから、商標がこのような出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているといえない場合には、形式的には商標法第2条第3項各号に掲げる行為に該当するとしても、当該行為は、商標の「使用」に当たらない。
これを本件についてみると、乙第4号証は、本件使用商品1のチラシであるところ、その文章中において、「ホクトは、きのこで『菌活』をテーマにこれからも多くの皆様においしさと健康をお届けして行きたいと考えております。」「この機会にアガリクスエキスで『菌活』を始めませんか?」との記載がある。
しかしながら、当該「菌活」の文字は、乙第4号証のチラシにおける全31行(空白行含む)にもわたる記載の中で僅か2か所、しかも、他の文字や文章ととともに本件使用商品1の広告文章の一部に含まれるにすぎず、商品の識別標識として機能しているとはいえないものである。
このことは、登録商標と社会通念上同一の商標が引用符でくくられているとしても、文章中において他の文字や文章とともに使用されている場合には、商品の広告に商標が付されているとは認められないと判断された以下の不使用取消審判の審決からも明らかである。
(ア)取消2016-300227審決(甲6)
(イ)取消2015-300313審決(甲7)
また、「菌活」の文字は、近年では、「キノコ、ヨーグルト、納豆などの体に良い働きをする菌を含む食品を食生活に取り入れる活動」を意味する一般的な語となっている。
加えて、被請求人自身が、「『菌活』とは、『菌を食べる』事の重要性をとなえた言葉です。」「『菌活』で元気に過ごしましょう。」のようにキャッチコピーとして使用している事実からしても、「菌活」なる語は、需要者の間で「菌を含む食材(発酵食品など)を積極的に摂取する活動」との意味合いで理解されているというべきである(甲8)。
そうすると、乙第4号証の記載における「菌活」の文字は、一連の文中に含まれているにすぎず、また、「菌を含む食材(発酵食品など)を積極的に摂取する活動」ほどの意味を説明したものと理解させるにすぎないから、かぎ括弧でくくられた態様であったとしても、商品の識別標識として機能しているとはいえない。
エ 小括
以上によれば、乙第4号証及び乙第5号証によっては、本件商標が、本件審判請求の登録前3年以内に、その請求に係る指定商品について使用をされたことが証明されたとはいえない。
(2)「ホクトの青汁」について(乙6、乙7)
ア 社会通念上同一の商標ではないこと
(ア)本件商標と「菌活」の文字を図案化した標章(以下「菌活(図案化)」という場合がある。また、「菌」の文字を図案化した標章を以下「菌(図案化)」という場合がある。)とは同一ではないこと
被請求人は、乙第6号証の商品パッケージ右上方に、本件商標と社会通念上同一と認識し得る商標が表示されている旨主張する。
そこで検討すると、乙第6号証の商品パッケージ右上方には、別掲1の構成よりなる標章(以下「使用標章1」という。)が見受けられるところ、赤い地色の角丸四角形の枠内において、「美容も健康も毎日の食事から。」の文字と「きのこで菌活(図案化)。」の文字(以下「使用標章2」という。)とが、白抜き文字で二段書きで表されている。
本件商標と使用標章1とを対比すると、使用標章1の構成中、菌活(図案化)(以下「使用商標3」という。)の菌(図案化)の部分が極めて高度に図案化されているため、使用標章1は、外観において、本件商標と全く異なる印象を需要者に看取させるものである。
また、使用標章3の菌(図案化)の部分は、草冠の下に「口」が配されていることから、何らかの漢字を模した図形と認識されることがあるとしても、かかる構成からなる漢字は、「菌」のほかに、「苗」「茵」「茴」「薗」など複数あり、菌(図案化)が、これらの漢字のうち、どの漢字を模したものであるのかを推測することは極めて困難であるから、菌(図案化)の部分から「菌」の文字が認識されるとはいえない。
この点につき、被請求人は、使用標章3と近似した商標を商標登録出願しており、特許庁のデータベースにおいて、当該商標に「キンカツ」の称呼が付与されていることを理由の一つとして、菌(図案化)の図形から「菌」の漢字が認識できる旨主張するが、需要者は、乙第6号証に表された商品パッケージそのものを視認することにより商品を識別するのであるから、特許庁のデータベースにおいて付与された称呼は、実際の使用態様において考慮されるものではない。
なお、被請求人は、本件商標と使用標章3とが社会通念上同一であると主張する根拠の一つとして審決(乙8)を引用するが、当該審決では、「HOP」という成語があり、渦巻き状の図形が、左右の文字とあいまって、容易に欧文字「O」を表したものと看取されるからこそ、登録商標と使用商標とが同一の構成文字からなるものと判断されているものである。
一方、本件では、「きのこで○活。」なる成語は存在しない上、菌(図案化)の部分が極めて高度に図案化され、菌(図案化)の部分から「菌」の漢字が認識されることはない。
したがって、乙第8号証の審決と本件とは、事案を異にするものであるから、被請求人が答弁書に記載した審決(乙8)は、本件に関して、被請求人の主張を裏付ける証拠にはなり得ないものである。
以上より、本件商標と使用標章3とは、社会通念上同一とはいえない。
このことは、文字商標と図案化された商標について、社会通念上同一の商標と認められないと判断された以下の不使用取消審判の審決からも明らかである。
a 取消2009-301085審決(甲9)
b 取消2004-30370審決(甲10)
c 取消2005-31529審決(甲11)
d 取消2002-30949審決(甲12)
e 取消2016-300084審決(甲13)
(イ)使用標章2より使用標章3のみが分離抽出されないこと
仮に、菌(図案化)の図形が「菌」の漢字に通じることがあるとしても、使用標章2は、同一枠内において、語尾に文章の終わりを示す句点「。」が付され、ほぼ同一の書体、同一の大きさ、等間隔にて、一連一体にまとまりよく表されている。かかる構成によれば、使用標章2は、外観上一体として看取されるものであり、このような外観構成より生じる「キノコデキンカツ」の称呼も、格別冗長なものではなく、淀みなく一気に称呼できるものである。また、仮に、菌(図案化)の図形から「菌」の漢字が認識されることがあるとしても、「きのこで菌活。」の文字からは、全体として、「きのこを食べて菌を含む食材(発酵食品など)を積極的に摂取する活動をしよう」ほどの1つのまとまった観念を生じる。
してみれば、使用標章2より、殊更、使用標章3のみを分離抽出する合理的な理由はなく、使用標章2は、常に一体として認識されるものである。
そうとすれば、本件商標と使用標章2とは、その外観、称呼及び観念のいずれの観点からも全く別異の商標であり、社会通念上同一の商標とはいえない。
(ウ)小括
以上のとおり、使用標章3において、菌(図案化)より「菌」の漢字が認識されることはないし、使用標章2は、一体としてのみ把握されるものである。
よって、本件商標と使用標章1は、社会通念上同一の商標とはいえない。
イ 本件審判の請求に係る指定商品には該当しないこと
被請求人は、乙第6号証に記載の商品「ホクトの青汁」(以下、請求人の主張の項において、「本件使用商品2」という。)が、「きのこを配合した青汁」であるため、「きのこを使用した清涼飲料」に相当するものである旨主張する。
そこで検討すると、本件使用商品2の商品の「名称」の欄には、「大麦若葉末加工食品」と記載されている。
また、被請求人の公式オンラインショップにおいても、商品「ホクトの青汁」は、「大麦若葉末加工食品」として掲載されている(甲16)。
さらに、商品「ホクトの青汁」は、ショッピングサイトAmazonにおいて、「栄養補助食品」「サプリメント」「植物由来サプリメント」のカテゴリに分類されており(甲17)、楽天市場では、「健康食品」のカテゴリに分類されている(甲18)。
これらの事実からすれば、本件使用商品2は、「健康増進」をその機能・用途とする「大麦若葉を主原料とした粉末状の加工食品」というべきであって、「止渇」がその用途・機能である「清涼飲料」「飲料用ジュース」とは異なるものである。
このことは、特許庁においても、「大麦若葉を主原料とする粉末状の加工食品」が、第5類に属するものとして採用されていることからも明らかである(甲19)。
よって、本件使用商品2は、本件審判の請求に係る指定商品「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」に該当しない。
ウ 乙第9号証及び乙第10号証について
乙第9号証に記載された使用標章2が、本件商標と社会通念上同一ではなく、また、本件使用商品2が、本件審判の請求に係る指定商品「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」に該当しないものであることは、前述のとおりであり、さらに、乙第9号証には日付の記載がないため、要証期間に頒布されたものであることも立証されていない。このため、乙第9号証は、被請求人の主張の裏付けとはならない。
乙第10号証は、新聞記事の写しであるところ、新聞記事は、商標法第2条第3項第8号の「広告、価格表若しくは取引書類」のいずれにも該当するものではなく、その他、商標権者等が、本件審判の請求に係る指定商品について登録商標を使用していたことを証明するものではない。
なお、乙第10号証には、本件使用商品2に関し、「(青汁は)・・・今秋以降は主戦場であるドラッグストアルートでの拡販を目指す。」との記載がある。当該記載からも本件使用商品2は、「大麦若葉を主原料とする粉末状の加工食品」に該当する商品であり、本件審判の請求に係る指定商品「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」に該当しないことが明らかである。
3 平成29年8月22日付け口頭審理陳述要領書における主張
(1)請求人の適格性について
請求人の適格性について、請求人の住所は、現実の営業所であり、本審判請求の要件を満たさないとする理由はない(甲20)。また、請求人は、手続補正書を提出し、請求人の住所を補正したので、この点に関する被請求人の主張は、もはや理由がなくなったものと思料する。
(2)合議体の暫定的認定
被請求人は、本件商標を本件審判の請求に係る指定商品中、第32類「きのこを使用した清涼飲料,清涼飲料用きのこジュース」に使用しており、その使用行為は、商標法第2条第3項第1号及び第2号(乙6)並びに同項第8号(乙4、乙9)に該当するものであるとし、その証拠として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出している。
しかしながら、合議体による審理事項通知書によれば、提出に係る乙各号証からは、本件審判の請求に係る指定商品のいずれについても、本件商標の使用をしていることが見いだせないため、被請求人が商標法第50条第2項に規定する証明をしたものとは認められないとしている。
(3)被請求人による陳述要領について
被請求人は、乙第11号証及び乙第12号証を新たに提出することにより、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを証明しようとしている。
具体的には、乙第11号証に記載の商品(本件使用商品2)の左側面には、「菌活食材の王様、きのこを使った菌活(図案化)とは」なる文字と、「『菌活』とは菌の力を利用した食品を食べることで、健康やキレイを目指す活動のこと。きのこは菌そのものだけを食べられる唯一の食材です。」との表現がある。
しかしながら、かかる表現は、「菌活」なる文字についての一般的な定義・説明を与えるものであって、商品の自他商品識別機能を発揮する態様での使用には該当するものではない。
また、「菌活食材の王様、きのこを使った菌活(図案化)とは」なる文字と、「『菌活』とは菌の力を利用した食品を食べることで、健康やキレイを目指す活動のこと。きのこは菌そのものだけを食べられる唯一の食材です。」なる文字が、正面や背面という自他商品識別機能に必要不可欠な部位に記載されておらず、左側面というやや見難い箇所に付されている点からも、自他商品識別力を発揮する態様で使用していないことは明らかなものと思料する。特に、甲第14号証が示すとおり、本件使用商品2の左側面は、縦方向に谷折りしてなるものであるから、左側面に記載の文字は見難いものであって、商品陳列した場合には、需要者から全く認識されることがない箇所である。
したがって、かかる表現及び使用態様では、商標的使用に該当しないので、商標法第50条第2項に規定する証明をしたものとは認められない。
仮に、商標的使用に該当したとしても、本件使用商品2は、本件審判の請求に係る指定商品への使用に該当しない。本件審判の請求に係る指定商品は、第32類「清涼飲料」に属する商品であり、その用途及び機能は「喉の渇きを癒し、清涼感をおぼえさせる飲料」である。
一方、被請求人は、本件使用商品2の商品説明において、「名称 大麦若葉末加工食品」として記載しており(甲16)、「青汁を飲みながら菌活もできちゃうWでヘルシーなホクトの青汁。」や「毎日のヘルシー生活習慣に加えてみませんか?」などと説明して、健康食品であることを強調しており、かつ、多数の通信販売サイトにおいて、本件使用商品2は、健康食品のカテゴリーに分類される商品として販売されていることからすれば(甲21?甲26)、本件使用商品2は、健康増進を用途及び機能とする健康食品であり、第5類「大麦若葉を主原料とする粉末状加工食品(類似群コード:32F15)」に属する商品というべきものである。
なお、被請求人は、乙第11号証の左側面における「菌活食材の王様、きのこを使った菌活(図案化)とは」なる文字における菌活(図案化)(以下「使用標章4」という。)が、商標的使用に該当するものとして、本件商標と社会通念上同一の範囲に属する商標的使用に該当すると主張している。
しかしながら、「菌活食材の王様、きのこを使った菌活(図案化)とは」なる表示は、上述したとおり、自他商品識別力を発揮する態様での使用ではなく、商標的使用にそもそも該当しない。
また、「菌活食材の王様、きのこを使った菌活(図案化)とは」なる文字は、一体のものであるから、本件商標と社会通念上同一のものとは認められない。
さらに、「菌活食材の王様、きのこを使った菌活(図案化)とは」から使用標章4のみを分離したとしても、弁駁書で既に主張したとおり、本件商標と社会通念上同一のものとは認められないことは明らかなものと思料する。
以上から、本件商標は、要証期間に、その指定商品について、商標権者等により使用された事実が存しないものであるといわざるを得ない。
(4)乙第6号証及び乙第11号証について
被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「乙第11号証の商品パッケージの画像は、乙第6号証として提出した商品パッケージと同一の商品パッケージについてのものである」と述べている。
そして、乙第6号証及び乙第11号証が示す商品パッケージの裏面中段には、本製品の製造工程が、「栽培、加工、混合及び包装」の4工程からなることが写真とともに示されている。
しかしながら、乙第6号証では、「栽培、加工、混合及び包装」の各工程を表す文字が当該各写真の上部に記載されているのに対して、乙第11号証では、「栽培、加工、混合及び包装」の各工程を表す文字が当該各写真の下部に記載されており、両者は明らかに異なる。
また、乙第6号証及び乙第11号証が示す商品パッケージの裏面下段には、商品に関する消費者からの問合せを受けるためと思しき電話番号が記載されている。
しかしながら、乙第6号証では、当該電話番号の左欄に「ホクト株式会社」なる文字と「フリーダイヤル」なる文字とが上下二段に記載されているのに対して、乙第11号証では、これらの文字はいずれも見当たらず、当該電話番号の左欄に「お客様相談窓口」なる文字のみが記載されている。更にいえば、乙第6号証と乙第11号証は、受付時間に関する記載方法も異なっている。
よって、「乙第11号証の商品パッケージの画像は、乙第6号証として提出した商品パッケージと同一の商品パッケージについてのものである」とする被請求人による主張は、明らかに誤りである。
そして、被請求人は、「乙第6号証及び乙第11号証として提出した商品パッケージは、2016年4月の販売開始以降、変更されていない」と主張しているが、上述のとおり、乙第6号証が示す商品パッケージと乙第11号証が示す商品パッケージとは、明らかに異なるものであるから、被請求人による上記主張には何ら根拠がない。
(5)乙第12号証について
被請求人は、乙第12号証について、「2016年4月28日に、被請求人が長崎県長崎市の取引先に『ホクトの青汁』を48パック納品したことを証明するものである」と述べている。
しかしながら、乙第12号証で示す書面は、「受領書」と題されており、「納品書」ではない。
また、乙第12号証の記載によれば、被請求人が長崎県長崎市の取引先に宛てたものと解されているが、被請求人による上記主張と明らかに矛盾する。
さらに、乙第12号証は、「受領書」であるにもかかわらず、「受領印」が捺印されていないので、その真正性もそもそも疑わしいといわざるを得ない。
更にいえば、甲第21号証ないし甲第26号証によれば、商品「ホクトの青汁」の単価は、907円ないし1,058円であるにもかかわらず、乙第12号証における単価は、490円となっており、甲第21号証ないし甲第26号証が示す価格帯の半値に近い価格が示されている。この点からも、乙第12号証は、その真正性も疑わしいといわざるを得ない。
(6)乙第10号証に基づく新たな主張について
被請求人は、乙第10号証中の「青汁は発売以降、・・・拡販を目指す。」における「発売以降」の時期について、乙第12号証に記載の日付(2016年4月28日)と解することができる旨主張している。
しかしながら、乙第12号証は、上述のとおり、その真正性も疑わしいといわざるを得ないものであるので、乙第10号証に基づく新たな主張は妥当しない。
4 平成29年10月3日付け上申書における主張
(1)乙第6号証及び乙第11号証の不一致について
被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「乙第11号証の商品パッケージの画像は、乙第6号証として提出した商品パッケージと同一の商品パッケージについてのものである」と述べていたところ、乙第6号証及び乙第11号証の不一致についての請求人からの指摘を受けて、平成29年9月19日付け上申書において、「いずれも商標とは無関係かつささいな不一致である」と主張している。
しかしながら、乙第6号証及び乙第11号証は、商標権者等が要証期間に当該商標を使用したことを示すためのものであって、その真正性が重要なものであるから、「無関係かつささい」なことでは決してないと思料する。
なお、被請求人は、「乙第6号証及び乙第11号証として提出した商品パッケージに表示された使用標章2、4及び5は、2016年4月の発売開始以来、変更されていない」と上申書において主張しているが、かかる主張を裏付ける具体的な証拠は提示していない。
(2)乙第12号証について
被請求人は、乙第12号証として提出した受領書に受領印が押されていない理由として、長年の取引によって築かれた信頼関係に基づいて、取引先の担当者が受領印を押印する手間を省いているためと主張している。
しかしながら、取引行為における押印(捺印)行為は、当事者の意思表示の表れであり、納入品の検品確認作業は、企業間取引において重要なものであることはいうまでもない。それは、納品の確認ができていないにもかかわらず、費用請求がされた場合や、欠品や欠陥品が見つかった場合、その責任を納品者と受領者とのいずれが負担するかを明確にし、このような疑義が生じないよう受領印を捺印するのであって、担当者が受領印を捺印する手間がごく僅かであることを考えると、被請求人による説明には合点し難いものがある。
また、被請求人は、平成29年9月19日付け上申書において、本件受領書の詳細について、口頭審理の場における説明と異なる点があったとして、口頭審理の場で説明したことを覆す新たな説明を試みている。上述のとおり、乙号証は、商標権者等が要証期間に当該商標を使用したことを示すためのものであって、その真正性が重要なものである。その説明内容が二転三転し、大幅な訂正を加えるということは、提出した乙号証の記載との帳尻を合わせるための後付けの理由とも受け取られ、本件審判事件における全ての乙号証及び説明に対する信頼性が大幅に失われかねないものと思料する。
さらに、被請求人は、乙第18号証及び乙第19号証を新たに提出することにより、乙第12号証の信ぴょう性を傍証しようとしている。
しかしながら、被請求人も述べるとおり、乙第18号証及び乙第19号証は、取引先の社名や住所が黒塗りされているところ、そもそも、被請求人が営業秘密を保護する必要があると考えるのであれば、被請求人が保有する営業秘密が記載された旨の申し出をすることで、第三者に対する交付請求や閲覧請求を制限することができる(商標法第72条第1項第1号)のであり、そうした商標法上の制度を利用することもなく、恣意的な箇所を安易に黒塗りした乙号証を提出するという被請求人の対応は、甚だ不誠実な姿勢というほかはなく、そのような姿勢に基づいて提出された乙号証をみても、請求人としては、その信ぴょう性については疑わしいといわざるを得ない。
(3)出荷許可証及び証明書について
被請求人は、乙第20号証及び乙第21号証を新たに提出することにより、乙第12号証の信ぴょう性を傍証しようとしている。
しかしながら、被請求人も述べるとおり、乙第20号証及び乙第21号証は、取引先の社名や住所が黒塗りされていることから、請求人としては、その信ぴょう性については疑わしいといわざるを得ない。
(4)請求人の口頭審理陳述要領書の補足事項
被請求人は、乙第6号証及び乙第11号証における文字が本件商標と社会通念上同一である旨の主張をしている。
しかしながら、審理事項通知書及び請求人による口頭審理陳述要領書に記載のとおり、仮に、乙第6号証及び乙第11号証に示された商品パッケージの右上部に表示された使用標章2が、「きのこで菌活。」と読めたとしても、これは、「キノコデキンカツ」としか読めない一連一体のものであるから、本件商標と社会通念上同一のものとは認められない。
また、「菌活食材の王様、きのこを使った菌活(図案化)とは」から使用標章4のみを分離したとしても、弁駁書で既に主張したとおり、本件商標と社会通念上同一のものとは認められるものではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第22号証を提出した。
1 審判事件答弁書における主張
(1)本件審判の請求に係る指定商品への本件商標の使用について
本件商標権者は、要証期間に日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品「きのこ入りビール,きのこ入り合成ビール,きのこ入りスタウト,きのこ入りラガービール,きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」のうち、「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」に相当する商品について本件商標を使用しているので、以下に詳述する。
ア 「生アガリクス100%エキス」及び「梅香るアガリクスエキス」
本件商標権者は、「生アガリクス100%エキス」及び「梅香るアガリクスエキス」のチラシに本件商標を表示している(乙4)。
「生アガリクス100%エキス」は、きのこの一種であるアガリクスのエキスからなる商品で、「梅香るアガリクスエキス」は、アガリクスのエキスに梅の果汁等を含む商品なので、「生アガリクス100%エキス」及び「梅香るアガリクスエキス」は、商品「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」に相当するものである。
本件商標権者は、登録商標を他の文言と区別する目的で、乙第4号証に示すチラシにおいて、菌活を「」(かぎ括弧)でくくって他の文言と区別した態様で表示している。
乙第4号証に示すチラシは、「生アガリクス100%エキス」又は「梅香るアガリクスエキス」等を購入した顧客に対して継続購入を勧誘する目的で頒布されているもので、表面に広告宣伝文が記載され、裏面が注文用紙となっている。継続購入を希望する顧客が、注文用紙に必要事項を記入して、本件商標権者にFAX送信すると、配達希望日に商品が配達される。
実際の注文例として、本件商標権者が2016年12月14日にFAX受信した注文用紙の写しを提出する(乙5)。乙第5号証にはFAX受信日(2016年12月14日)及び配達希望日(平成28年12月19日)が明確に表示されている。なお、氏名・住所・生年月日は、個人情報保護の観点から黒く塗りつぶして提出する。
また、乙第5号証によって、乙第4号証に示すチラシは、遅くとも平成28年12月14日以前に需要者へ頒布されていたことが明らかとなる。
そして、本件商標権者がチラシに本件商標を付して頒布した行為は、商標法第2条第3項第8号規定の使用行為に該当する。
以上のとおり、要証期間に日本国内において、本件商標権者は、本件審判の請求に係る指定商品「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」に相当する商品について、本件商標を使用している。
イ 「ホクトの青汁」
本件商標権者は、「ホクトの青汁」の商品パッケージの右上方に本件商標と社会通念上同一と認識し得る商標(使用標章3)を表示している(乙6)。
乙第6号証の商品パッケージに「国産きのこ配合」と明記されているとおり、「ホクトの青汁」は、「きのこを配合した青汁」なので、「きのこを使用した清涼飲料」に相当するものである。
上記商品パッケージの右上方において、使用標章3の前に「きのこで」の文字が表示されているが、「きのこで」の文字はやや小さいのに対し使用標章3はやや大きく、「きのこで」の書体と使用標章3の書体も異なるため、使用標章3がより目立つ構成であるといえ、「きのこで」と使用標章3とは、分離観察されるものであって、一連の構成と認識されるものではない。
使用標章3は、「菌」の文字の「禾」の部分をきのこのイラストに置き換えた構成であるが、近年、構成文字の一部をデザイン化したり、図形をもって表現することが少なくない実情にあることから、「禾」の部分をきのこのイラストに置き換えた構成の「菌(図案化)」は、漢字の「菌」を表したものと認識することが可能である。
本件商標権者は、使用標章3と同一商標について、商標登録出願しており、その称呼として「キンカツ」が付与されているという事実からも、「禾」の部分をきのこのイラストに置き換えた構成の「菌(図案化)」は、漢字の「菌」を表したものと認識されることが明らかである(乙7)。
また、取消2004-30723等の審決においては、登録商標は構成文字の一部を図に置き換えた構成であるのに対し、使用商標は図に置き換えない構成であったものの、使用商標は、登録商標と社会通念上同一の商標と判断されている。当該審決からすれば、構成文字の一部をきのこのイラストに置き換えた使用標章3は、本件商標と社会通念上同一と認識し得る範囲内の商標と思料する(乙8)。
そして、本件商標権者が乙第6号証に示す商品パッケージに本件商標と社会通念上同一の商標を付して譲渡した行為は、商標法第2条第3項第1号及び第2号の使用行為に該当し、本件商標権者が各種展示会用に作成した2016年度商品案内書に本件商標と社会通念上同一の商標を付して展示会の来訪者へ頒布した行為は、商標法第2条第3項第8号の使用行為に該当する(乙9)。
さらに、2016年10月19日の日本食糧新聞に「ホクトの青汁」に関する記事が掲載され、商品パッケージに使用標章3が表示されている写真も掲載されたことからすれば(乙10)、遅くとも2016年10月19日には、「ホクトの青汁」に本件商標と社会通念上同一の範囲内の商標が使用されていたことは明らかである。
以上のとおり、要証期間に日本国内において、本件商標権者は、本件審判の請求に係る指定商品「きのこを使用した清涼飲料」に相当する商品について、本件商標と社会通念上同一の範囲内の商標を使用している。
2 平成29年8月7日付け上申書における主張
被請求人が請求人の登記事項証明書を法務局で取得しようとしたところ、審判請求書に記載された請求人の住所には、請求人の名称で登記されている法人は存在しないことが判明した。
審判請求書記載の請求人の住所は、事実上の居所であると思われるが、登記事項証明書が入手できない以上、被請求人は、請求人が実在することの確認及び請求人の特定ができない。
また、審決に対して訴訟を提起する際には、法人の資格証明書の添付が要求されるので、請求人の住所が法人の資格証明書と不一致の場合、訴訟提起にも支障を来す。
そこで、請求人に対して、法人登記のされている真の住所を明らかにすべき旨の補正命令を行うよう、上申する。
3 平成29年8月8日付け口頭審理陳述要領書における主張
(1)答弁の理由の補足
ア 新たな証拠(乙11)の提出について
被請求人は、新たに、「きのこを配合した青汁」の商品パッケージの正面、背面及び両側面の画像を提出する(乙11)。なお、乙第11号証の商品パッケージの画像は、乙第6号証として提出した商品パッケージと同一の商品パッケージについてのものである。
乙第11号証に示す商品パッケージの左側面では、別掲2に示すとおり、最上段に記載された「ホクトの青汁」の表示の下に設けられた長方形の枠の内部に、使用標章4が表示されている。使用標章4は、上段の「ホクトの青汁」と同様に、他の文字より一際大きく表示された上、他の文字とは異なるピンク色に着色されているため、見る者の注意をひく態様である。
また、使用標章4の下には、「菌活」に関する文章が記載されており、その文章の冒頭にかぎ括弧でくくられた「菌活」(以下「使用標章5」という場合がある。)が表示されている。使用標章5は、かぎ括弧でくくられることで他の文字より強調され、見る者の注意をひく態様である。
本件審判の請求に係る飲料の分野では、商品パッケージに文字等を表示できる部分が狭いため、正面のみならず背面及び両側面にも複数の商標が表示される。使用標章4及び5は、左側面に表示されているが、左側面には原材料名や栄養成分表示の記載等があるため、需要者及び取引者は、左側面も観察した上で商品の購入を決定する。
したがって、飲料の分野の取引の実情からすれば、左側面に記載された使用標章4及び5も商標としての機能を有する。
なお、乙第6号証及び乙第11号証として提出した商品パッケージは、2016年4月の販売開始以来、変更されていない。
イ 使用標章4について
使用標章4は、「菌」の文字の構成中の「口」の内部の「禾」を図形化して表示したものである。
後記(2)イに詳述するとおり、草冠の下に「口」を有する漢字で一般的に使用されているものはほとんどない上、使用標章4は「きのこを配合した青汁」の商品パッケージに表示されているため、使用標章4に接する需要者及び取引者は、菌(図案化)の文字を「菌」としか認識しない。
また、審判事件答弁書で述べたとおり、「菌活」は、被請求人による造語であり、被請求人が平成25年3月20日から「菌活」を使用した広告宣伝活動を継続して行った結果、被請求人の商標として周知性を獲得している。
使用標章4は、「菌活」が被請求人の商標として周知性を獲得してから使用されているので、使用標章4に接する需要者及び取引者は、使用標章4を「菌活」の「菌」の一部を図形化したものと認識している。
したがって、使用標章4が需要者及び取引者に「菌活」と認識されていることからすれば、使用標章4は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
ウ 使用標章5について
使用標章5は、「菌活」の由来を説明する文章の冒頭に表示されている。この文章は、「菌活」が被請求人による造語であり、直ちに特定の意味合いを想起させるものではないため、被請求人が「菌活」に込めた意味合いを需要者へ伝えるために記載されているものである。
使用標章5は、本件商標と同一の商標であり、かぎ括弧でくくられて表示され、他の文字より強調されているので、商標としての機能を有している。
エ 乙第6号証について
審理事項通知書では、「使用標章2は、一体のものであり、本件商標『菌活』と社会通念上同一のものとは認められない。」との見解が示されている。
しかしながら、「きのこで」の文字の大きさと使用標章3の文字の大きさは異なる。さらに、「きのこで」の文字は、一般的な書体であるにもかかわらず、使用標章3の文字は特殊な書体である。すなわち、使用標章3の文字は、「菌」の文字構成中の「口」の内部の図形化に合わせて、「活」の文字構成中の「ロ」も拡大したものである。
そのため、需要者及び取引者は、使用標章2について、その全体が一体とは認識せず、「きのこで」と使用標章3に分離して認識する。
上記イで詳述したように、使用標章4は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標なので、使用標章2から分離して認識される使用標章3は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
オ 新たな証拠(乙12)の提出について
審理事項通知書の指摘に対して、被請求人は、「ホクトの青汁」の納品に関する2016年4月28日付け受領書の写しを提出する(乙12)。なお、営業秘密保護の観点から受領書の宛名の一部を黒く塗りつぶしている。
乙第12号証は、本件審判の請求の登録前3年以内である2016年4月28日に、被請求人が長崎県長崎市の取引先に「ホクトの青汁」を48パック納品したことを証明するものである。「ホクトの青汁」は、「きのこを配合した青汁」の商品名であり、「ホクトの青汁」の商品パッケージは、乙第6号証及び乙第11号証で提出した商品パッケージと同一のもので、使用標章2、4及び5が表示されている。
したがって、乙第12号証は、要証期間における本件商標の使用を証明するとともに、「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡した時」も証明する。
カ 乙第10号証に関する新たな主張について
2016年10月19日発行の日本食糧新聞に掲載された「ホクトの青汁」に関する記事(乙10)では、最終段の第28行目から第34行目にかけて「青汁は発売以降、生鮮キノコの販売チャネルであるGMS農産売場などで販売されてきたが、今秋以降は主戦場であるドラッグストアルートでの拡販を目指す。」と記載されている。
上記の「発売以降」とは、遅くとも乙第12号証に示す2016年4月28日以降を指す。
したがって、乙第10号証は、要証期間における本件商標の使用を証明するものである。
キ 小括
以上のとおり、要証期間に日本国内において、本件商標権者は、本件審判の請求に係る指定商品「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」に相当する「きのこを配合した青汁」(ホクトの青汁)について、本件商標と同一の商標(使用標章5)及び本件商標と社会通念上同一と認められる商標(使用標章2及び4)を使用している。
(2)請求人の主張に対する反論
ア 審判事件弁駁書の4頁の下から4行目以降について
請求人は、「菌活」の文字が一般的な語となっていると主張するが、当該主張は誤っている。
上記(1)イで詳述したとおり、「菌活」は、被請求人による造語であり、被請求人の商標として周知性を獲得しているので、一般的な語ではない。
イ 審判事件弁駁書の5頁目以降について
請求人は、審判事件弁駁書において、使用標章3は、菌(図案化)の部分が、「菌、苗、茵、茴、薗」のうち、どの漢字を模したものであるのかを推測することは極めて困難であるとして、菌活(図案化)は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標ではないと主張する。
しかしながら、「菌、苗、茵、茴、薗」のうち、「茵、茴、薗」は、一般的に知られていない漢字であるため、需要者及び取引者が認識可能なものは、「菌」又は「苗」である。そして、「苗」の文字構成中の「口の内部の十」は、「きのこの図」と形状が全く異なる。
また、需要者及び取引者は、「きのこを配合した青汁」の商品パッケージに記載された商標に「苗」の文字が含まれるとは通常考えないため、菌(図案化)を「苗」とは認識しない。
一方、「菌」の文字構成中の「口の内部の禾」は、「きのこの図」と形状に共通点がある。
さらに、「きのこを配合した青汁」の商品パッケージには、使用標章3の直前に「きのこで」の表示があり、「国産きのこ配合」の表示や、きのこに関する会社として周知な被請求人のハウスマークの表示もあるため、需要者及び取引者は、菌(図案化)を「菌」と認識する。
このように、需要者及び取引者が使用標章3を「菌活」と認識する以上、使用標章3は、「菌活」と社会通念上同一と認められる商標である。
また、甲第9号証ないし甲第13号証に示す審決は、いずれも本件と事案を異にするものであり、本件に関して請求人の主張を裏付ける根拠にはなり得ない。
4 平成29年9月19日付け上申書における主張
(1)乙第6号証及び乙第11号証の不一致箇所について
請求人が主張する乙第6号証及び乙第11号証の不一致箇所は、使用標章2、4及び5のいずれも記載されていない商品パッケージの裏面にあり、製造工程を示す写真と文字のどちらが上に配置されるかの違いや、問合せ先を「ホクト株式会社フリーダイヤル」と記載するか、「お客様相談窓口」と記載するかの違いであって、いずれも商標とは無関係かつささいな不一致である。商品パッケージに表示された使用標章2、4及び5は、2016年4月の販売開始以来、変更されていない。
したがって、被請求人が平成29年8月8日付けの口頭審理陳述要領書に記載した「なお、乙第6号証及び乙第11号証として提出した商品パッケージは、2016年4月の販売開始以来、変更されていない」とは、「乙第6号証及び乙第11号証として提出した商品パッケージに表示された使用標章2、4及び5は、2016年4月の販売開始以来、変更されていない」という意味である。
(2)乙第12号証について
ア 受領印が押されていない理由について
乙第12号証として提出した受領書(以下「本件受領書」という。)に受領印が押されていない理由は、長年の取引によって築かれた信頼関係に基づいて、取引先の担当者が受領印を押印する手間を省いているためである。
イ 本件受領書記載の「品名・規格」及び「数量」について
口頭審理後に本件受領書記載の取引の詳細を確認したところ、口頭審理の場における説明と異なる点があったため、改めて以下で具体的に説明する。
本件受領書の「品名・規格」の欄に記載された「ホクトの青汁(48パック入り)」とは、商品パッケージを最大48袋梱包可能なダンボール大箱を指す。「ホクトの青汁(48パック入り)」には、顧客の要望に応じた数の商品パッケージを梱包するため、受領書の「数量」の欄には、梱包された商品パッケージの数が記載される。
本件受領書の「数量」の欄には「24」と記載されているので、本件受領書は、乙第6号証及び乙第11号証に示す商品パッケージ(52.5g(2.5g×21包))24袋が「ホクトの青汁(48パック入り)」に梱包されて納品されたことを示している。
以下に、本件受領書記載の取引を説明する。
まず、商品パッケージ12袋をダンボール小箱1箱に梱包する。乙第15号証の画像に示すとおり、ダンボール小箱1箱には商品パッケージが12袋しか梱包できないため、小箱の画像の右下には「[52.5g(2.5g×21包)]×12袋入」と記載されている。
次に、乙第16号証の画像に示すとおり、商品パッケージ12袋を梱包したダンボール小箱を2箱準備し、ダンボール大箱(「ホクトの青汁(48パック入り)」)1箱に梱包する。
上述のとおり、「ホクトの青汁(48パック入り)」には商品パッケージが最大48袋(12袋入りのダンボール小箱4箱)梱包可能なので、乙第17号証の画像に示すとおり、「ホクトの青汁(48パック入り)」の正面の右下には[52.5g(2.5g×21包)]×12袋×4入」と記載されている。
上述のとおり、本件受領書に記載された取引は、「ホクトの青汁(48パック入り)」1箱に商品パッケージ24袋(12袋入りのダンボール小箱2箱)を梱包して納品したものである。
ウ 証明書及び請求書について
被請求人は、本件受領書に記載の取引が実際に行われたことを証明するため、証明書(乙18)及び請求書(乙19)を提出する。なお、これらは、営業秘密の保護の観点から、取引先の社名及び住所を黒塗りして提出する。
乙第18号証に示す証明書は、本件受領書記載の取引先の代表者によるものであって、本件受領書に記載の取引が実際に行われたことを証明する内容である。
また、乙第19号証に示す請求書は、2016年4月30日付けで発行されたもので、2016年4月28日付けで発行された本件受領書と対をなす書類であり、商品名(品名・規格)、数量、単価、金額の記載は、全て本件受領書の記載と一致する。
(3)出荷許可書及び証明書について
被請求人は、要証期間に乙第6号証に示す商品パッケージが出荷されたことを証明するため、出荷許可書を提出する(乙20)。また、乙第20号証に示す出荷許可書が、品質保証を行う会社の社内規定に従って作成されたことを証明する証明書も提出する(乙21)。
乙第6号証に示す商品パッケージの裏面の下方には、賞味期限の欄に「2018.10/AA」と記載されている。乙第20号証に示す出荷許可書には、ロットNo.として「2018.10/AA」が付された「きのこを配合した青汁(ホクトの青汁)」1920袋について、2016年4月12日に出荷が許可された旨が記載されている。2016年4月12日に出荷を許可された「きのこを配合した青汁(ホクトの青汁)」1920袋は、賞味期限を有する商品の性質上、遅くとも出荷許可日から半年後である2016年10月頃までには出荷されていると思われるので、要証期間に譲渡されている。
(4)請求人の口頭審理陳述要領書に対する補足事項
ア 平成29年7月18日発送の審理事項通知書に記載のとおり、乙第6号証に示された商品「きのこを配合した青汁」は、「きのこを使用した清涼飲料、飲料用きのこジュース」の範ちゅうに含まれる商品である。
イ 使用標章2及び4における菌(図案化)の文字は、漢字「菌」の「禾」の部分をきのこの図形に置き換えて創作したものである。「禾」の部分をきのこの図形へ置き換える着想は、漢字「菌」が「きのこ」の意味を有することにヒントを得ている(乙22)。「禾」は、「ノ」と「木」から構成される。きのこの図形は、「ノ」の部分を「横に伸びたきのこの笠」で表し、「木」の部分を「きのこの笠から左斜め下方に延びたきのこの柄」で表している。
この点、草冠の下に「ロ」が配された漢字のうち、需要者及び取引者が認識することが可能な漢字は、「菌」と「苗」のみであり、きのこの図形は、柄(縦)の部分が笠(横)部分から上方に突き出ていないのに対し、「苗」の「十」の部分は、縦線が横線から上方に突き出ている形状であるので、きのこの図形が「十」を表すと認識する者はいない。
したがって、需要者及び取引者は、「菌(図案化)」を「菌」としか認識しないので、「菌(図案化)」は、「菌」と同一の観念を有し、「キン」と称呼される。
また、乙第3号証に示すとおり、被請求人の広告宣伝によって、本件商標は周知著名となっており、被請求人(ホクト)といえば「菌活」、「菌活」といえば被請求人(ホクト)とのイメージが需要者及び取引者の意識に定着している。そのため、「ホクトの青汁(きのこを配合した青汁)」の商品パッケージに接する需要者及び取引者は、使用標章3及び4について、「菌活」を観念するとともに、「キンカツ」と称呼する。
さらに、乙第6号証及び乙第11号証に示すとおり、使用標章4の上には「菌活食材の王様、きのこを使った」の記載があり、使用標章4の下には「『菌活』とは菌の力を利用した」との記載がある。そうすると、使用標章4を目にする需要者及び取引者は、使用標章4の上下の「菌活」の文字とともに使用標章4を認識するので、使用標章4について、「菌活」と観念して、「キンカツ」と称呼する。
上述のとおり、使用標章3及び4は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であると思料する。
ウ 使用標章4は、他の文字とは異なるピンク色で、他の文字よりも大きく表示されているので、他の文字とは明確に区別されている。したがって、使用標章4に一瞬でも接する需要者及び取引者は、使用標章4を商標として認識する。
また、使用標章5は、造語である本件商標の意味・語源を説明している文章の語頭に、かぎ括弧を付けて他の文字と区別されて表示されているので、商標として表示されているといえる。
さらに、使用標章2は、商品パッケージの正面の右上方の赤色の長方形の枠の中に表示されており、需要者及び取引者を引き付ける構成なので、商標として表示されているといえる。
エ 本件商標権者が本件商標を使用する商品は、「きのこを配合した青汁」であり、乙第6号証及び乙第11号証の商品パッケージの正面に配合成分が複数記載されているので、需要者及び取引者は、配合成分が気になり、原材料名や栄養成分表示の記載を探して、商品パッケージの正面の他に側面及び裏面を確認した上で商品を購入する。
また、甲第14号証にも表れているとおり、「きのこを配合した青汁(ホクトの青汁)」の商品パッケージは、自立する形状であって、請求人が主張するような縦方向に谷折りしてなり、文字が見難いものではない。左側面に記載された使用標章4及び5も、需要者及び取引者の目に触れる部分であるといえる。
したがって、本件商標権者が本件商標を使用する商品の取引の実情に鑑みれば、商品パッケージの左側面に記載された使用標章4及び5は需要者及び取引者の目に触れるといえ、特に、使用標章4は、ピンク色かつ大きな表示であることから、一瞬見ただけでも需要者及び取引者の印象に強く残る商標といえる。

第4 当審の判断
1 被請求人は、本件商標権者が、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件審判の請求に係る指定商品中の「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」について、要証期間に日本国内において使用していると答弁し、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第22号証を提出しているので、以下検討する。
なお、被請求人は、乙第9号証について、各種展示会用に作成した2016年度商品案内書であり、これを展示会の来訪者へ頒布した行為は商標法第2条第3項第8号の使用行為に該当する旨主張していたが、第1回口頭審理において、「乙第9号証に係る『ホクトの青汁』の商品案内書の頒布状況を証明する証拠の提出はしない」旨陳述したため、当該証拠については、要証期間の本件商標の使用を証する証拠として採用しない。
(1)使用標章1ないし5について
ア 使用標章3及び4について
使用標章3及び4は、それぞれ、別掲1及び2のとおりの構成からなるところ、これを本件商標と比較すると、本件商標の構成中、「菌」の文字とは、「禾」の部分が「きのこの図形」で表されているところに差異があり、同じく、「活」の文字とは、文字の右肩に「十字の星様の図形」が付加されているところに差異があり、これらの差異は、一般に行われる文字のデザイン化の範囲を大きく超えるものといえるから、使用標章3及び4は、本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
そうすると、使用標章3及び4をもって、本件審判の請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていることを被請求人が証明したとはいえない。
イ 使用標章5について
使用標章5は、別掲2のとおり、「菌活」の文字を何ら特徴のない書体で表してなるものであるから、標準文字で表してなる「菌活」の文字からなる本件商標と社会通念上同一の商標である。
しかしながら、使用標章5は、以下のとおり、自他商品の識別標識として需要者に認識されるものではないから、これをもって、本件審判の請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていることを被請求人が証明したとはいえない。
すなわち、使用標章5は、「ホクトの青汁」という商品の包装の左側面に表示されたものである(乙11の3葉目、甲15、別掲2)。そこには、「ホクトの青汁」と大書した下に、横長の付箋様のものの上段に「菌活食材の王様、きのこを使った」の記載があり、その下にピンク色の使用標章4を大きく表示し、その右に小さく「とは」の記載がある。
そして、その下に、「『菌活』とは菌の力を利用した食品を食べることで、健康やキレイを目指す活動のこと。」「きのこは菌そのものだけを食べられる唯一の食材です。」との記載がある。これには、かぎ括弧でくくられた使用標章5が表示されているが、当該表示は、「菌活」という健康やキレイを目指す活動についての説明文中に表示されているものであるところ、この説明文をみた需要者が「菌活」の文字を「ホクトの青汁」という商品の商標として理解するとは到底いえない。
そうすると、説明文中に表示されたにすぎない使用標章5の表示をもって、商品の商標であると需要者が認識するものではないから、使用標章5は、商標としての使用とはいえず、自他商品の識別標識として需要者に認識されるものではない。
ウ 使用標章1及び2について
使用標章1及び2は、別掲1のとおりの構成からなるところ、それらの構成中に含まれる使用標章3は、上記アのとおり、本件商標と社会通念上同一の商標ではないから、結局、使用標章1及び2をもって本件審判の請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていることを被請求人が証明したとはいえない。
(2)乙第4号証及び乙第5号証について
乙第4号証及び乙第5号証に示された「生アガリクス100%エキス」及び「梅香るアガリクスエキス」なる商品は、いわゆる健康食品(「アガリクスエキスを主原料とする液状の加工食品」)の範ちゅうに属する商品であり、「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」の範ちゅうに属する商品であるとは認められないから、これらの証拠によっては、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていることを被請求人が証明したとはいえない。
(3)小括
上記(1)及び(2)のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、本件審判の請求に係る指定商品中の「きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース」について、要証期間に、本件商標権者が本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを被請求人が証明したとはいえない。
その他、被請求人が提出した全証拠によっては、要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件審判の請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていることを証明し得る事実を見いだせない。
2 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもがその請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したということはできず、また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その指定商品中の「結論掲記の指定商品」について、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(色彩については、原本参照のこと。)
構成全体:使用標章1
構成中の「きのこで菌活(図案化)。」:使用標章2
構成中の「菌活(図案化)」:使用標章3



別掲2(色彩については、原本参照のこと。)
構成中の「菌活(図案化)」:使用標章4
構成中の「『菌活』」:使用標章5





審理終結日 2019-02-15 
結審通知日 2019-02-19 
審決日 2019-03-06 
出願番号 商願2013-8173(T2013-8173) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W32)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福田 洋子 
特許庁審判長 田中 敬規
特許庁審判官 大森 健司
小松 里美
登録日 2013-12-27 
登録番号 商標登録第5639700号(T5639700) 
商標の称呼 キンカツ 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所 
代理人 中村 勝彦 
代理人 田中 克郎 
代理人 星宮 一木 
代理人 阪田 至彦 

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