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審決分類 |
審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) X30 |
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管理番号 | 1349862 |
判定請求番号 | 判定2018-600027 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標判定公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 判定 |
2018-08-20 | |
確定日 | 2019-03-22 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5136720号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | 商品「米」に使用するイ号標章は、登録第5136720号商標の商標権の効力の範囲に属しない。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5136720号商標(以下「本件商標」という。)は、「もう研ぐ米 もうとぐまい」の文字を標準文字で表してなり、平成19年12月19日に登録出願、第30類「米」を指定商品として、同20年6月6日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。 2 イ号標章 被請求人が商品「米」について使用する標章は、別掲1及び2のとおり、「研ぐ米」の文字を赤色又は黒色で横書きしてなるもの(以下「イ号標章」という。)である。 3 請求人の主張 請求人は、被請求人が商品「あきたこまち(稲穂の輝き)」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。 (1)判定請求の必要性 請求人は、米の販売等を業とする合資会社であり、本件商標の商標権者である。 被請求人は、「あきたこまち」という品種の米の製造・販売等を業とする株式会社であり、被請求人のホームページにおいてイ号標章を付して「あきたこまち(稲穂の輝き)」を販売している。 2018年7月12日付けで、請求人は、本件商標の商標権に基づいて被請求人のイ号標章の使用中止を求める通知書を送付した。 2018年7月31日付けで、被請求人は、被請求人によるイ号標章の使用は請求人の商標権を侵害するものではない旨を回答した。 請求人は、上記被請求人の回答に承服しかねるため、特許庁の判定を求める。 (2)イ号標章の説明 イ号標章は、「研ぐ米」の文字を黒色又は赤色のゴシック体で記載したものであり、「トグマイ」又は「トグコメ」との称呼を生じる。 被請求人は、被請求人のホームページにおいて、「あきたこまち(稲穂の輝き)」なる品種の米に対してイ号標章を記載して販売している。 (3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明 ア 本件商標とイ号標章の対比 本件商標の要部は、「もう研ぐ米」であり、当該要部の中にイ号標章を一部として含むので、本件商標は、イ号標章と外観において類似している。 本件商標は、「モウトグマイ」との称呼であるのに対し、イ号標章は、「トグマイ」又は「トグコメ」との称呼である。 よって、本件商標は、イ号標章と称呼において類似している場合がある。 本件商標は、「もうお米を研がない」という観念を想起させるのに対し、イ号標章は、「米を研がない」ことという観念を想起させる他に、研いだ後の米を想起させることもある。 よって、本件商標は、イ号標章と観念においても類似している場合がある。 したがって、本件商標とイ号標章とは、外観が類似しており、称呼及び観念においても類似する場合があることから、全体として両者を対比したときに、本件商標とイ号標章とは互いに類似している。 イ 被請求人の商品である「あきたこまち(稲穂の輝き)」は本件商標の指定商品である第30類の「米」に含まれる。 (4)2018年7月31日付けの被請求人代理人の回答書について ア 被請求人は、「研ぐ米」なる文字は、無洗米に対して研ぐ必要のある米であることを明示するために「研ぐ米」と記載したものであり、米の状態を説明する記述として用いているものであって、商標として用いているものではない旨、主張する。 しかしながら、イ号標章は、「トグマイ」及び「トグコメ」のいずれの称呼も有するところ、イ号標章が付された米を需要者が見たときに、その米が研ぐ必要があるか否かを需要者が判別することができないので、イ号標章が米の状態を説明する記述といえない。 イ 被請求人は、「研ぐ米」は商品の品質を普通に用いられる方法で表示する商標である旨、主張する。 しかしながら、上述のとおり、イ号標章だけからでは、その標章を付された米が研ぐ必要がある米か否かを需要者が判別することができず、イ号標章が商品の品質を表示するものということはできない。 また、米の取引実情に鑑みても、研ぐ必要のない米のことを「無洗米」と呼ぶのに対し、研ぐ必要がある米のことを「研ぐ米」と称することが普通に用いられているわけでもない。 したがって、イ号標章は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する商標であるとは認められず、イ号標章の使用が商標法第26条第1項第2号の商標権の効力が及ばない範囲での使用に該当するとはいえない。 4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。 (1)本件商標とイ号標章との類否について ア 本件商標は、商標全体が一体不可分的に結合しており、なかんずく「もう」と「研ぐ米」は、より強固に結合しており、「研ぐ米」の部分を殊更に抜き出すことはできない。 したがって、商標全体として、本件商標とイ号標章を比べると、外観は、非類似である。 イ 本件商標は、商標全体が一体となって、なかんずく「もう」と「とぐまい」は強固に結合して、「もう研ぐまい」の意味を有するのであって、「とぐまい」の部分を殊更に抜き出すことはできない。加えて、「もう研ぐ米 もうとぐまい」、「もう研ぐ米」、あるいは「もうとぐまい」の称呼が格別冗長ということもなく一連に読めるので、本件商標から「トグマイ」の称呼は生じない。 したがって、本件商標とイ号標章とは、称呼についても非類似である。 ウ 本件商標は、「もうお米を研がない」、更にいえば、「もうお米を研ぐ必要のない米」という観念を生じさせるのに対し、イ号標章は、研ぐ必要のある米を観念させ、両者の観念は、正反対である。 エ 小活 以上のとおり、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれも異なり、両者は非類似である。 (2)イ号標章の使用が商標法第26条第1項第2号に該当することについて ア 被請求人のホームページで「秋田県大潟村産あきたこまち100%\稲穂の輝き」(乙1)と、大きく「稲穂の輝き」を記載していることからわかるように、被請求人は、「稲穂の輝き」を商標として使用している。イ号標章は、「稲穂の輝き(無洗米・研ぐ米)」(甲1?甲3)として使われており、「稲穂の輝き」という商品名に対し、「研ぐ米」は、カッコ内に記載されているのに加え、「無洗米」と併記されているので、米の状態を記述しているにすぎない。 イ 「米を研ぐ」は、日常的に使われる言葉であり、無洗米に対し、研ぐ必要のある米のことを「研ぐ米」と称することは自然なことで、商品の品質を表しているにすぎない。研ぐことが不要な米は、一般に「無洗米」と称されるが、研ぐことが必要な米を表す一般的な語はないので、これを表すのには「研ぐ米」と説明的に記載する他ない。 また、「研ぐ米」は、飾り文字などではなく、普通に用いられる方法で記載されている。 したがって、イ号標章は、商標法第26条第1項第2号の商標権の効力の及ばない範囲での使用に該当する。 (3)まとめ 以上のとおり、被請求人が商品「米」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属さない。 5 当審の判断 (1)イ号標章の使用商品について 請求人は、イ号標章の使用商品を「あきたこまち(稲穂の輝き)」としているが、当審においては、イ号標章の使用商品を「米」として、以下判断する。 (2)本件商標について 本件商標は、上記1のとおり、第30類「米」を指定商品とし、「もう研ぐ米 もうとぐまい」の文字を標準文字で表してなるところ、「もう研ぐ米」と「もうとぐまい」の文字が組み合わせられていることから、子細に見れば、全体として「もう米を研ぐまい」ほどの意味合いを看取する場合があるといえるものの、直ちに特定の意味合いを看取するものとはいえない。 そうすると、本件商標は、その構成文字に相応し、「モウトグマイモウトグマイ」のほか、「モウトグマイ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)イ号標章について イ号標章は、別掲1及び2のとおり、「米」を使用商品とし、「研ぐ米」の文字を赤色又は黒色で横書きしてなるものであるところ、これは、「稲穂の輝き(無洗米・研ぐ米)」との表示の一部であり(甲1?甲3)、普通に用いられる方法で表示するものである。 そして、別掲2(甲3)の商品紹介中の、「稲穂の輝き(無洗米・研ぐ米)5kg」のほか、「もち米(無洗米)2kg」「[白米]稲穂の輝き(無洗米のみ)1合袋×30袋×1箱」との記載を総合してみると、イ号標章(「研ぐ米」の文字)は、「無洗米」の文字との関係から、「無洗米ではなくて、研ぐことが必要な米」を表示したものと理解されるものといえるから、これは、商品の品質を表示したにすぎず、自他商品の識別標識として表示されているものではないというのが相当である。 (4)むすび 以上のとおり、イ号標章は、商品「米」の品質を普通に用いられる方法で表示するものであるから、商標法第26条第1項第2号に該当するものといわざるを得ず、本件商標とイ号標章との類否については判断するまでもなく、被請求人が商品「米」に使用するイ号標章は、本件商標の効力の範囲に属しないものである。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
別掲 1 甲第1号証に表示された赤色のイ号標章及び商品説明(色彩については原本参照のこと。) 2 甲第3号証に表示された黒色のイ号標章及び商品説明(色彩については原本参照のこと。) |
判定日 | 2019-03-12 |
出願番号 | 商願2007-125210(T2007-125210) |
審決分類 |
T
1
2・
9-
ZB
(X30)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田口 善久、武谷 逸平 |
特許庁審判長 |
金子 尚人 |
特許庁審判官 |
小松 里美 大森 健司 |
登録日 | 2008-06-06 |
登録番号 | 商標登録第5136720号(T5136720) |
商標の称呼 | モウトグマイ、モートグマイ |
代理人 | 山下 隆志 |
代理人 | 佐々 健太郎 |
代理人 | 佐々 百合子 |