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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0942
審判 全部申立て  登録を維持 W0942
審判 全部申立て  登録を維持 W0942
審判 全部申立て  登録を維持 W0942
管理番号 1349847 
異議申立番号 異議2018-900277 
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-25 
確定日 2019-02-28 
異議申立件数
事件の表示 登録第6056483号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6056483号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6056483号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成29年9月19日に登録出願,第9類「アプリケーションソフトウェア,電子計算機用プログラム」及び第42類「オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),電子計算機用プログラムの提供,電子計算機の貸与,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を指定商品及び指定役務として,同30年6月7日に登録査定,同年6月29日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する国際登録第1343189号商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,2016年(平成28年)11月18日に国際商標登録出願,第9類「computer software for fitting, adjusting and verifying hearing aids」(参考訳:補聴器のフィッティング・調節及び検証用コンピュータソフトウエア)を含む第9類,第10類,第35類及び第44類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,平成30年8月3日に設定登録されたものであり,その商標権は現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから,その登録は同法第43条の2第1号に該当し,同法第43条の3の規定により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号違反について
ア 本件商標
本件商標は,やや丸みを帯びた赤色の四角形の内部に,緩やかな波線のごとく一筆で表される欧文字「W」を白抜きで配してなる構成であり,当該白抜きの「W」の右端は四角形の外側まで達し,同左端は四角形の外側にほぼ達している。かかる構成から,「ダブリュウ」の称呼が自然に生じ,「二倍の」,「二つの」等の観念が生じる(甲3の1)。
イ 引用商標
引用商標は,やや丸みを帯びた黒色の四角形の内部に,緩やかな波線のごとく一筆で表される欧文字「W」を白抜きで配してなる構成であり,当該白抜きの「W」の両端は四角形の外側まで達している。かかる構成から,「ダブリュウ」の称呼が自然に生じ,「二倍の」, 「二つの」等の観念が生じる(甲3の1)。
ウ 本件商標と引用商標の対比
上述のとおり,本件商標と引用商標は,外観上の特徴をほぼ共通にしている。異なる点は,色彩の他,「W」の左端が四角形の外側まで達しているか否かのみであり,これらの差異が全体に及ぼす影響は極めて少ないものである。そのため,両商標を時と場所を別にしてみた場合には,全体の構成が相紛らわしいものである。
また,両商標は,上述のとおり,称呼及び観念を共通にしている。
エ 指定商品について
本件商標の指定商品中の第9類「アプリケーションソフトウェア,電子計算機用プログラム」は,引用商標の指定商品中の第9類「computer software for fitting, adjusting and verifying hearing aids」と類似する商品である。
また,本件商標の指定役務中の第42類「オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供(SaaS),電子計算機用プログラムの提供」は,引用商標の指定商品といわゆる備考類似の関係に立つ関係にある。
オ 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標との関係において,外観上,称呼上及び観念上,相紛らわしいものであり,指定商品又は指定役務も,同一又は類似するものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号違反について
ア 引用商標の著名性
引用商標は,世界における6大補聴器メーカーの一つである申立人のカンパニーマークの一つである。申立人は,1956年(昭和31年)にデンマークにて設立され,その製品は現在では世界100か国以上の国々で使用され,世界シェアは約10パーセントである。また,1995年(平成7年)に世界初の耳穴型フルデジタル補聴器を開発したことでも知られている(甲3の2,甲4)。
申立人の年次報告書によると,財務状況は好調であり,2017年(平成29年)ないし2018年(平成30年)も上記世界シェアを維持している(甲5)。
申立人は,38か国に現地法人を有し,我が国においても持分100%の「株式会社ワイデックス」を有しているところ(甲5),我が国においても申立人は6大補聴器メーカーの一つとして広く知られており(甲6),申立人の製品は大手家電量販店から補聴器専門の販売店まで,多くの店舗で購入することができる。
我が国における補聴器の総出荷台数は562,747台(2017年(平成29年))であるところ(甲7),同年の申立人製品の出荷台数は63,254台であり,申立人の国内販売シェアは11.2パーセントである。
そして,全国の各販売店においては,引用商標が付された販促物が展示され,カタログが配布されている。
例えば,国内顧客向け総合カタログ(甲8の1)は,2018年(平成30年)9月から配布が開始され,同年12月21日現在,103,000部が配布されている。新製品の「WIDEX EVOKE」のパンフレット(甲8の2)は,同年9月から配布が開始され,これまでに148,600部が配布されている。「WIDEX BEYOND Z」のスタンドホップ(甲8の6)については,同年5月から配布が開始され,これまでに3,500部が配布されている。同製品のポスターは,同年12月から配布が開始され,これまでに870部が配布されている。
これらの事実を総合的に判断すれば,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国において著名な商標であったということができる。
イ 本件商標と引用商標との類似性
上述のとおり,本件商標と引用商標は,外観上の特徴をほぼ共通にし,称呼及び観念を共通にしていることから,これらが類似することは明らかである。
ウ 本件商標の指定商品等と申立人の商品との関連性
本件商標の指定商品及び指定役務は,上記1のとおりである。他方,申立人が製造・販売する商品には「補聴器のフィッティング・調節及び検証用コンピュータソフトウエア」が含まれることから,本件商標の指定商品等と申立人の商品との間には技術的な関連性が認められる。
そうすると,本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合,申立人の商品あるいはそれと関連する役務であると誤認される可能性も十分にあるといえる。
エ 小括
このように,引用商標の著名性,本件商標との類似性及び両商標の商品・役務の関連性を総合的に考慮すると,本件商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合,これに接する取引者及び需要者は,申立人と何らかの関係のある営業主の業務に係る商品又は役務であるかのごとく,出所について誤認・混同を生じるおそれがあるといえる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)結び
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,ピンク色の隅丸四角形内に白抜きの「W」の欧文字を筆記体のような態様で表してなるものであり,該「W」の右端は四角形の外側まで達し,左端は内側に止まっている。
そして,該「W」の文字はほぼ同じ太さで表され上部及び下部が曲線で表されていることから,本件商標は,全体としてピンク色の色彩と相まって,看者をして柔らかな印象を与えるものであって,その構成態様から特定の称呼及び観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標は,別掲2のとおり,やや丸みを帯びた黒色の四角形内に白抜きの「W」の欧文字を活字体のような態様で表してなるものであり,該「W」の両端は四角形の外側まで達している。
そして,該「W」の文字は緩やかな直線的な線で表され下部が太く表されていることから,引用商標は,全体として黒色の色彩と相まって,看者をして落ち着いた印象を与えるものであって,その構成態様から特定の称呼及び観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標との類否
(ア)外観
本件商標と引用商標を比較すると,両商標はいずれも略四角形内に白抜きの「W」の欧文字を表してなるものであるが,前者は「W」の文字が筆記体のような態様で表され,全体として柔らかな印象を与えるのに対し,後者は「W」の文字が活字体のような態様で表され,全体として落ち着いた印象を与えるものであるから,両商標の外観全体から受ける視覚的印象は大きく異なり,両商標は,離隔的に観察しても,外観上相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
(イ)称呼及び観念
本件商標と引用商標は,いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから,比較できないものである。
(ウ)してみれば,両商標は,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
エ 申立人の主張について
申立人は,本件商標と引用商標の外観における共通点を挙げ,また,両商標はその構成からいずれも「ダブリュウ」の称呼,「二倍の」,「二つの」等の観念が生じるとして,両商標は類似する旨主張する。
しかしながら,両商標は,外観において,やや丸みを帯びた四角形の内に白抜きの「W」の欧文字を表してなるなどの共通点を有するものの,上記ウのとおり,両商標の外観全体から受ける視覚的印象は大きく異なるものである。
また,欧文字の一字である「W」は極めて簡単で,かつ,ありふれた標章であって,出所識別標識としての称呼,観念が生じないものというべきものであるから,両商標は,看者をして特定の称呼及び観念を生じない図形として認識されるものと判断するのが相当である。
したがって,申立人のかかる主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり,本件商標と引用商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
したがって,本件商標は,引用商標の指定商品と同一又は類似の商品及び役務に使用するとしても,引用商標と非類似の商標であるから,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知著名性について
(ア)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
a 申立人は,1956年(昭和31年)にデンマークで設立された補聴器メーカーであって,世界における補聴器の市場シェアの約10%を占め,補聴器の世界6大メーカーの一つである(甲3の2,甲4,甲6)。
b 申立人の商品「補聴器」(以下「申立人商品」という。)は,現在,100か国以上の国々で使用され,我が国を含む38か国の子会社などを通じ販売されている(甲3の2,甲5,甲6)。
c 申立人商品は,我が国において,東京都墨田区所在の申立人の子会社「ワイデックス株式会社」(以下,申立人とあわせて「申立人等」という。)などを通じ,1964年(昭和39年)頃から販売されていることが推認できる(甲3の2,甲5)。
d 引用商標は,我が国において,申立人商品のカタログ,パンフレット,スタンドポップ及びポスターなどに表示されているほか,申立人等の略称と認められる「WIDEX」の「W」の文字に置き換えて,別掲2のとおりのハウスマークとして,該パンフレットや申立人等のホームページに表示されている(甲4?甲6,甲8)。
e しかしながら,引用商標及び上記ハウスマークは,2016年(平成28年)頃から使用されていることがうかがえるものの(甲8の3),それ以前の使用は確認できず,また,我が国における申立人商品の販売数量(又は出荷台数),販売シェアなど販売実績を示す証左は見いだせない。
(イ)上記(ア)の事実からすれば,申立人商品は,我が国において,昭和39年頃から販売されていることが推認できるものの,引用商標及び上記ハウスマークが本件商標の登録出願前から使用されていることが確認できないこと(登録出願前の使用がうかがえるものは1件のみ(甲8の3)。),我が国における申立人商品の販売実績を示す証左は見いだせないことから,引用商標は,本件商標の登録出願時ないし登録査定時において,他人(申立人等)の業務に係る商品を表示するものとして補聴器の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
イ 商標法第4条第1項第15号該当性
引用商標は,上記アのとおり,申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであり,本件商標は,上記(1)ウのとおり,引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
そうすると,本件商標の登録査定時において,本件商標権者が,本件商標をその指定商品又は指定役務について使用をしても,これに接する取引者,需要者が,引用商標を連想,想起することはなかったというべきであり,本件商標は,その取引者,需要者をして,当該商品又は役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように,商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれがあったものとは認められない。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標(色彩は原本参照。)

別掲2 引用商標


異議決定日 2019-02-19 
出願番号 商願2017-124971(T2017-124971) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W0942)
T 1 651・ 263- Y (W0942)
T 1 651・ 262- Y (W0942)
T 1 651・ 261- Y (W0942)
最終処分 維持  
前審関与審査官 原田 信彦 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 平澤 芳行
大森 友子
登録日 2018-06-29 
登録番号 商標登録第6056483号(T6056483) 
権利者 株式会社イグニス
商標の称呼 ダブリュウ 
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所 

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